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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200680032 審決 特許
無効2009800065 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  C08K
管理番号 1143671
審判番号 無効2005-80071  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-02-05 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-03-08 
確定日 2006-07-11 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3529139号発明「包装フィルムにおけるゼオライト」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3529139号の請求項1〜13に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3529139号に係る発明は、1996年3月7日及び1997年3月7日に米国にした特許出願を基礎とする優先権を主張して平成9年3月7日に国際出願され、平成16年3月5日に特許権の設定登録がなされ、平成17年3月8日付けで請求項1〜15に係る特許について東洋製罐株式会社(以下、「請求人」という。)より無効審判請求がなされ、平成17年6月22日に被請求人 クライオバツク・インコーポレイテツド(以下、「被請求人」という。)より答弁書及び訂正請求書が提出され、平成17年8月1日に請求人より弁駁書が提出され、平成17年10月14日に請求人より口頭審理陳述要領書及び上申書が、被請求人より口頭審理陳述要領書が、それぞれ提出され、同日口頭審理(場所:特許庁審判廷)が実施され、同日書面審理への移行が宣言された。そして、平成17年10月28日付けで請求項1〜15に係る特許について無効理由通知がなされ、その応答期間内である平成17年12月20日に意見書及び訂正請求書が提出され、平成18年1月4日付けで請求人に対して審尋がなされ、平成18年1月25日に請求人より回答書が提出されたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の要旨
平成17年12月20日付訂正請求書に添付された全文訂正明細書の記載からみて、被請求人は以下の訂正を求めるものと認められる。

(1)訂正事項1
請求項1及び13項を削除する。
(2)訂正事項2
請求項2〜12、14及び15を、それぞれ、請求項1〜13に繰り上げ、新請求項3(訂正前の請求項4)の「請求項2」を「請求項1」と、新請求項4(訂正前の請求項5)の「請求項1〜3」を「請求項1〜2」と、新請求項5(訂正前の請求項6)の「請求項1〜3」を「請求項1〜2」と、新請求項6(訂正前の請求項7)の「請求項2」を「請求項1」と、新請求項7(訂正前の請求項8)の「請求項1〜3」を「請求項1〜2」と、新請求項8(訂正前の請求項9)の「請求項1〜3」を「請求項1〜2」と、新請求項9(訂正前の請求項10)の「請求項1〜3」を「請求項1〜2」と、新請求項10(訂正前の請求項11)の「請求項1又は2」を「請求項1」と、新請求項12(訂正前の請求項14)の「請求項13」を「請求項11」と、新請求項13(訂正前の請求項15)の「請求項13」を「請求項11」と、訂正する。
(3)訂正事項3
新請求項1(訂正前の請求項2)の
「a)酸素バリア物質を含有する第1の層;b)酸素スカベンジャーを含有する第2の層;およびc)ゼオライトを含有する第3の層よりなるフィルムであり、前記酸素スカベンジャーが、i)被酸化性化合物と遷移金属触媒、ii)エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒、iii)アスコルビン酸塩、iv)イソアスコルビン酸塩、v)遷移金属触媒含有アスコルビン酸塩(ここで、触媒は、遷移金属の、単純金属もしくは塩、又は化合物、錯体もしくはキレートよりなる)、vi)ポリカルボン酸、サリチル酸、又はポリアミンの、遷移金属錯体又はキレート、vii)還元型のキノン、光還元性色素、又はUVスペクトルで吸収を有するカルボニル化合物、およびviii)タンニンよりなる群から選択される物質よりなることを特徴とする前記フィルム。」を
「a)酸素バリア物質を含有する第1の層;b)酸素スカベンジャーを含有する第2の層;c)ゼオライトを含有する第3の層よりなるフィルムであり、酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする、酸素感受性物品包装用包装フィルム。」と訂正する。
(4)新請求項2(訂正前の請求項3)の「前記フィルム」を「、酸素感受性物品包装用包装フィルム。」と訂正する。
(5)訂正事項5
新請求項11(訂正前の請求項12)の
「酸素スカベンジャーとゼオライトを含有するポリマー性密封性コンパウンドであり、前記酸素スカベンジャーが、i)被酸化性化合物と遷移金属触媒、ii)エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒、iii)アスコルビン酸塩、iv)イソアスコルビン酸塩、v)亜硫酸塩、vi)遷移金属触媒含有アスコルビン酸塩(ここで、触媒は、遷移金属の、単純金属もしくは塩、又は化合物、錯体もしくはキレートを含む)、vii)ポリカルボン酸、サリチル酸、又はポリアミンの、遷移金属錯体又はキレート、viii)還元型のキノン、光還元性色素、又はUVスペクトルで吸収を有するカルボニル化合物、およびix)タンニンよりなる群から選択される物質よりなることを特徴とする前記ポリマー性密封性コンパウンド。」を
「酸素スカベンジャーとゼオライトを含有するガスケットであり、前記酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする前記ガスケット。」と訂正する。
(6)訂正事項6
新請求項12及び13(訂正前の請求項14及び15)の「密封性コンパウンド」を「ガスケット」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1は請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(2)訂正事項2は、訂正事項1による請求項の削除に伴って請求項の項番を整理し、引用請求項の項番を整理後の項番に改めるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3)訂正事項3には、次の2つの訂正が含まれている。
訂正事項3-1:「前記酸素スカベンジャーが、i)被酸化性化合物と遷移金属触媒、ii)エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒、iii)アスコルビン酸塩、iv)イソアスコルビン酸塩、v)遷移金属触媒含有アスコルビン酸塩(ここで、触媒は、遷移金属の、単純金属もしくは塩、又は化合物、錯体もしくはキレートよりなる)、vi)ポリカルボン酸、サリチル酸、又はポリアミンの、遷移金属錯体又はキレート、vii)還元型のキノン、光還元性色素、又はUVスペクトルで吸収を有するカルボニル化合物、およびviii)タンニンよりなる群から選択される物質よりなる」を「酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる」と訂正する。
訂正事項3-2:「前記フィルム」を「、酸素感受性物品包装用包装フィルム」と訂正する。
なお、訂正前の「・・・第2の層;およびc)・・・」が訂正後には「・・・第2の層;c)・・・」とされているが、この点は実質的な訂正とはいえない。
これらについて以下に検討する。
(3-1)訂正事項3-1は、「i)〜viii)よりなる群から選択される物質」とされていた新請求項1の「酸素スカベンジャー」を、ii)の「エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3-2)訂正前の特許明細書には、「本発明は一般的に、酸素捕捉反応の副生成物を捕捉するための組成物、物品及び方法に関する。・・・酸素に感受性の品を酸素に曝すことを抑制することにより、その製品の質と貯蔵期間が維持され高められることはよく知られている。」(特許公報第4欄第16〜21行)及び「酸素へ曝すことを抑制するもう一つの手段には、包装構造それ自体に酸素スカベンジャーを導入することである。」(特許公報第4欄第43〜45行)と記載されており、訂正事項3-2は、これらの記載に基づいて新請求項1の「前記フィルム」を「酸素感受性物品包装用包装フィルム」に用途限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(4)訂正事項4は、前記(3-2)と同様、新請求項2の「前記フィルム」を「酸素感受性物品包装用包装フィルム」に用途限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(5)訂正事項5には、次の2つの訂正が含まれている。
訂正事項5-1:「前記酸素スカベンジャーが、i)被酸化性化合物と遷移金属触媒、ii)エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒、iii)アスコルビン酸塩、iv)イソアスコルビン酸塩、v)亜硫酸塩、vi)遷移金属触媒含有アスコルビン酸塩(ここで、触媒は、遷移金属の、単純金属もしくは塩、又は化合物、錯体もしくはキレートを含む)、vii)ポリカルボン酸、サリチル酸、又はポリアミンの、遷移金属錯体又はキレート、viii)還元型のキノン、光還元性色素、又はUVスペクトルで吸収を有するカルボニル化合物、およびix)タンニンよりなる群から選択される物質よりなる」を「前記酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる」と訂正する。
訂正事項5-2:「ポリマー性密封性コンパウンド」(2箇所)を「ガスケット」と訂正する。
これらについて以下に検討する。
(5-1)訂正事項5-1は、「i)〜ix)よりなる群から選択される物質」とされていた新請求項11の「酸素スカベンジャー」を、ii)の「エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(5-2)訂正事項5-2は、訂正前の請求項12及び13の「・・・前記ポリマー性密封性コンパウンド。」及び「前記ポリマー性密封性コンパウンドがガスケットの形態であることを特徴とする請求項12に記載の密封性コンパウンド。」との記載に基づいて新請求項11の「前記ポリマー性密封性コンパウンド」を「ガスケット」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(6)訂正事項6は、前記(5-2)と同様、新請求項12及び13の「密封性コンパウンド」を「ガスケット」に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(7)そして、訂正事項1〜6はいずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.まとめ
したがって、上記訂正は、特許法第134条第2項ただし書及び同条第5項において読み替えて準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
上記の結果、訂正後の本件請求項1ないし13に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、訂正された明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認められる。

「【請求項1】a)酸素バリア物質を含有する第1の層;b)酸素スカベンジャーを含有する第2の層;c)ゼオライトを含有する第3の層よりなるフィルムであり、酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする、酸素感受性物品包装用包装フィルム。
【請求項2】a)エチレン/ビニルアルコールコポリマーを含む第1の層;b)エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒を含む第2の層;c)微孔性結晶性アルミノシリケート又は微孔性結晶性アルミノホスフェートを含む第3の層;およびd)オレフィン性ポリマーを含む第4の熱シール性層よりなるフィルムであり、前記第1の層および第4の層がフィルムの外側表面を形成することを特徴とする、酸素感受性物品包装用包装フィルム。
【請求項3】前記ゼオライトが微孔性結晶性アルミノシリケートおよび微孔性結晶性アルミノホスフェートよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】前記ゼオライトが合成ゼオライトよりなることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項5】前記フィルムが熱シール性層を有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項6】前記フィルムが中間接着層を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項7】前記フィルムが架橋されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項8】前記フィルムが延伸されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項9】前記フィルムが熱収縮性であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項10】前記酸素バリア物質が、a)エチレン/ビニルアルコールコポリマー、b)塩化ビニリデンコポリマー、c)ポリエステル、d)ポリアミド、e)金属、およびf)シリカ被覆よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項11】酸素スカベンジャーとゼオライトを含有するガスケットであり、前記酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする前記ガスケット。
【請求項12】前記ガスケットが、ポリマー、酸素スカベンジャー、およびゼオライトを含有することを特徴とする請求項11に記載のガスケット。
【請求項13】前記ガスケットが、蓋を硬い又は半ば硬い容器に接着させることを特徴とする請求項11に記載のガスケット。」

4.請求人の主張及び提出した証拠方法
4-1.請求人の主張
請求人は、「第3529139号特許は、これを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、下記甲第1〜20号証を提出して、訂正前の請求項1〜15に係る特許は以下(1)〜(3)の理由により、特許法第123条第1項第2号に該当するので、無効とされるべきであると主張している。
(1)請求項2及び5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、又は甲第1、8及び9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
(2)請求項1、5〜15に係る発明は、甲第2〜4号証に記載された発明に基づいて、又は甲第2〜4、8〜11及び14号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)訂正前の請求項2〜11に係る発明は、甲第1、2及び4号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1、2、4、8〜11及び14号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4-2.証拠方法及び記載事項
甲第1号証:特開平6-100042号公報
甲第2号証:特開平5-115776号公報
甲第3号証:特開平5-247276号公報
甲第4号証:特開昭54-23079号公報
甲第5号証:特開平5-4645号公報
甲第6号証:特開平5-278747号公報
甲第7号証:特開平6-171039号公報
甲第8号証:神谷著「有機酸化反応 自動酸化の理論と応用」,技報堂,S48.8.5,p318-321、332-335、表紙、奥付
甲第9号証:特開昭64-85113号公報
甲第10号証:特開昭54-107942号公報
甲第11号証:冨永編「ゼオライトの科学と応用」,講談社サイエンティフィク,1991.8.10,p.1、4、5、10、11、96、97、表紙、目次、奥付
甲第12号証:「マグローヒル 化学技術用語大辞典 第3版」,日刊工業新聞,1996.9.30,p947-948、表紙、奥付
甲第13号証:小野、八嶋編「ゼオライトの科学と工学」,講談社サイエンティフィク,2000.7.10,「1 ゼオライトの構造と合成」の頁、p10-11、表紙、目次、奥付
甲第14号証:特開平3-164412号公報
甲第15号証:日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<新版>」,(社)日本ゴム協会,S.54.5.1,p.49、1324、1325、1406-1411、表紙、目次、奥付
甲第16号証:太田著「油脂食品の劣化とその防止」,幸書房,S60.11.15,p8-11、18、19、138-141、表紙、奥付
甲第17号証:特開平4-29741号公報
甲第18号証:古川監修「オリゴマーハンドブック」,化学工業日報社,S52.3.31,p88-97、106-109、表紙、奥付
甲第19号証:日科技連官能検査委員会編「新版 官能検査ハンドブック」,日科技連,1995.2.6,p182-183
甲第20号証:岩崎著「臭気の嗅覚測定法 三点比較式臭袋法則定マニュアル」,(社)臭気対策研究協会,1999.4.1,p118-119、表紙、奥付

なお、甲第15、16号証は平成17年8月1日付弁駁書に、甲第17号証は平成17年10月14日付上申書に、そして、甲第18〜20号証は平成18年1月25日付回答書に、それぞれ添付されたものである。

5.被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人が主張する上記(1)〜(3)の理由、及び合議体が通知した下記6-1.の無効理由に対して、訂正後の請求項1〜13に係る発明は、甲第1〜14号証に記載された発明、又はこれらと甲第15〜17号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない、旨主張している。

6.合議体の判断
6-1.合議体が通知した無効理由
平成17年10月28日付けで通知した無効理由は、平成17年6月22日付けで訂正された明細書の請求項1〜15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである、というものであり、下記の甲各号証が引用された。

甲第1号証:特開平6-100042号公報(請求人が提出した甲第1号証)
甲第2号証:特開平5-115776号公報(同、甲第2号証)
甲第3号証:特開平5-247276号公報(同、甲第3号証)
甲第4号証:特開昭54-23079号公報(同、甲第4号証)
甲第5号証:特開平5-4645号公報(同、甲第5号証)
甲第9号証:特開昭64-85113号公報(同、甲第9号証)
甲第10号証:特開昭54-107942号公報(同、甲第10号証)
甲第11号証:冨永編「ゼオライトの科学と応用」,講談社サイエンティフィク,1991.8.10,p.1、4、5、10、11、96、97、表紙、目次、奥付(同、甲第11号証)
甲第14号証:特開平3-164412号公報(同、甲第14号証)
甲第15号証:日本ゴム協会編「ゴム工業便覧<新版>」,(社)日本ゴム協会,S.54.5.1,p.49、1324、1325、1406-1411、表紙、目次、奥付(同、甲第15号証)
甲第16号証:太田著「油脂食品の劣化とその防止」,幸書房,S60.11.15,p8-11、18、19、138-141、表紙、奥付(同、甲第16号証)
甲第17号証:特開平4-29741号公報(同、甲第17号証)

6-2.甲第1〜5、9〜11及び14〜17号証の記載事項
甲第1号証
(1-1)「少なくとも金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層と吸着剤を含有する熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする酸素バリアー性積層体。」(特許請求の範囲)
(1-2)「本発明者等は既に、500ppm以下のラジカル抑制剤を含有する熱可塑性樹脂及び金属化合物からなる組成物を提供することにより、熱可塑性樹脂の酸素バリアー性を改良し、優れたガスバリアー性組成物が得られることを見いだし特許出願した。・・・
しかしながら、これらの組成物は酸素バリアー性には優れているが、加工後、徐々に熱可塑性樹脂の酸化に伴い、臭気が発生する問題があった。
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、安価で加工性が良く、高い酸素バリアー性を有しかつ臭気を抑えた積層体を提供することにある。」(段落【0006】〜【0008】)
(1-3)「本発明における熱可塑性樹脂層に係る熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましく、例えば高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの単独重合体やエチレン、プロピレン、ブテン、メチルペンテンなどのオレフィンから選ばれる二つ以上のモノマーの共重合体が挙げられる。」(段落【0011】)
(1-4)「前記熱可塑性樹脂に添加する金属化合物としては、ステアリン酸やナフテン酸、リノール酸、ジメチルジチオカルバミン酸などと、Co、Ni、Fe、Al、Mg、Mn、Cu、V、Crなどの金属イオンとの有機酸塩が用いられ、特にポルフィリン、フタロシアニン、キノリンなどを配位子とした有機金属錯塩も好ましく用いられる。」(段落【0012】)
(1-5)「本発明に用いられる吸着剤とは、主に物理吸着能を有し、臭気成分を多孔質物質の表面へ吸着させて除去するものである。このような吸着剤としては、天然ゼオライト、合成ゼオライト、シリカゲル、活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。」(段落【0015】)
(1-6)「包装体とする場合には、積層体の金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層の外側に、接着剤により酸素バリヤー性材料層と基材とをこの順に順次積層することも好ましく行われる。」(段落【0020】)
(1-7)「前記包装体とするときの酸素バリアー性材料層に係る酸素バリアー性材料としては、ポリ塩化ビニリデンやEVOHを用いることができる。・・・また、他の材料としてアルミニウムや珪素酸化物などがフィルム状の基材に蒸着されたものを用いることができる。」(段落【0023】)
(1-8)「【作用】前記金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層においては、いわゆる溶解、拡散による酸素の透過を物理的に抑制する働きと、熱可塑性樹脂が金属化合物の触媒作用により酸化されて層内に酸素をトラップする働きとにより酸素バリアー性が発現される。」(段落【0025】)

甲第2号証
(2-1)「【請求項1】酸素掃去に適した配合物において、(a)エチレン性不飽和炭化水素、及び(b)遷移金属触媒を含むことを特徴とする配合物。
-中略-
【請求項20】酸素掃除去に適した層において、(a)エチレン性不飽和炭化水素、及び(b)遷移金属触媒を含むことを特徴とする層。
-中略-
【請求項39】請求項20に記載の層において、1種類又はそれ以上の他の層に隣接していることを特徴とする層。
【請求項40】請求項39に記載の層において、少なくとも1種類の他の層が酸素遮断層であることを特徴とする層。
【請求項41】請求項40に記載の層において、該酸素遮断層がポリ(エチレン-ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルクロリド)、ポリアミド、ポリ(ビニリデンジクロリド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、シリカ及び金属箔から成る群のひとつを含むことを特徴とする層。
-中略-
【請求項47】酸素に敏感な製品を包装するための製品において、請求項20-46に記載の層を含む製品。
-以下省略-」(特許請求の範囲)
(2-2)「本発明は一般的に、酸素に敏感な製品、特に食品及び飲料を含む環境中の酸素を掃去するための配合物、製品及び方法に関する。下記の記載から明らかな通り、“酸素掃去剤”という言葉は、ある環境中から酸素を消滅させる、抑制する又はその量を減少させる配合物、製品などを言う。」(段落【0002】)
(2-3)「酸素の掃去剤として有効であり、酸素に敏感な生成物を含む製品に使用する層に挿入するのに適した配合物を得ることが本発明の目的である。・・・
酸素に敏感な生成物を含む多層製品中の柔軟性層で使用することができる、酸素掃去のための配合物を得ることも本発明の目的である。」(段落【0011】〜【0013】)
(2-4)「包装の便利さ、及び/又は掃去の有効性という観点から、包装壁の一体部分として本発明を使用するのが好ましいが、本発明は非一体包装成分、例えば皮膜、キャップライナー、接着又は非接着シート挿入物、シーラント又は繊維マット挿入物として使用することもできる。」(段落【0020】)
(2-5)「食品及び飲料用の包装製品の他に、酸素に敏感な他の製品の包装も本発明により利益を受けることができる。そのような製品は医薬品、酸素に敏感な医療用製品、腐食性金属又は電子装置などである。」(段落【0021】)
(2-6)「エチレン性不飽和炭化水素(a)は置換又は非置換であることができる。・・・非置換エチレン性不飽和炭化水素の好ましい例にはジエンポリマー、例えばポリイソプレン(例えばtrans-ポリイソプレン)、ポリブタジエン(特に1,2-ポリブタジエン、これは50%と等しいかそれ以上の1,2微細構造を有するポリブタジエンと定義される)、及びこれらのコポリマー、例えばスチレン-ブタジエンが含まれるが、これらに限られるわけではない。・・・好ましい置換エチレン性不飽和炭化水素には、エステル、カルボン酸、アルデヒド、エーテル、ケトン、アルコール、ペルオキシド、及び/又はヒドロペルオキシドなどの酸素-含有部分を有するエチレン性不飽和炭化水素が含まれるが、これらに限られるわけではない。このような炭化水素の特別な例には、炭素-炭素二重結合を有するモノマーから誘導したポリエステルなどの縮合ポリマー;オレイン酸、リシノール酸、脱水リシノール酸及びリノレン酸などの不飽和脂肪酸及びそれらの誘導体、例えばエステルが含まれるがこれらに限られるわけではない。」(段落【0022】〜【0023】)
(2-7)「上記の通り、酸素掃去配合物は、柔軟性又は剛性単層又は多層製品で使用することができる。配合物を含む層はいくつかの形態であることができる。それらは“延伸”又は“熱収縮性”フィルムを含む保存フィルムの形態であることができ、これは結局バッグなどに加工される。層は又、包装キャビティーに置くシート挿入物の形態であることもできる。飲料容器、熱成型トレー又はカップなどの剛性製品の場合、層は容器の壁内にあることができる。さらに層は容器の蓋又はキャップと共に又はその中に置くライナーの形態であることもできる。層は上記の製品のいずれかひとつの上に被覆又は積層することもできる。」(段落【0037】)
(2-8)「典型的な酸素遮断剤はポリ(エチレンビニルアルコール)ポリアクリロニトリル、ポリビニルクロリド、ポリ(ビニリデンジクロリド)、ポリエチレンテレフタレート、シリカ、及びポリアミドを含む。上記のある材料のコポリマー、及び金属箔層も使用することができる。」(段落【0038】)
(2-9)「特に食品用の柔軟性包装のためのひとつの好ましい具体化の場合、層は包装の外側から最深部に向かって順に(i)酸素遮断層、(ii)本発明の、すなわち前に定義した掃去成分を含む層、及び任意に(iii)酸素透過性層を含む。・・・さらに層(iii)はヒートシール性、透明性及び/又は多層フィルムの粘着に対する抵抗性を増すことができる。」(段落【0039】)
(2-10)「酸素遮断層及び酸素透過層の他に接着層などの他の層を上記の層のいずれかに隣接させることができる。」(段落【0040】)

甲第3号証
(3-1)「ポリオレフィン、酸化触媒及び吸着剤を含有することを特徴とする酸素バリアー性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
(3-2)「これを改善するためには、500ppm以下のラジカル抑制剤を含有するポリオレフィンに酸化触媒を加えて、ポリオレフィンの酸素バリアー性を改良することが考えられるが、こうすれば酸素バリアー性には優れるが、加工後、徐々に、ポリオレフィンの酸化に伴い、臭気が発生するという問題が生じる。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、より高価な他の酸素バリアー性樹脂を併用することなく、優れた酸素バリアー性を与え、かつポリオレフィンの酸化に伴う臭気を抑えた酸素バリアー性樹脂組成物を提供することにある。」(段落【0004】〜【0005】)
(3-3)「本発明に用いられるポリオレフィンとしては、例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、エチレンとプロピレンとの共重合体、エチレンとブテンとの共重合体、エチレンとペンテンの共重合体が挙げられ、酸素バリアー性の点からプロピレンモノマーの単独重合体又は共重合体が好ましく用いられる。」(段落【0007】)
(3-4)「本発明に用いられる酸化触媒としては、遷移金属の化合物等からなる金属触媒が好ましく用いられる。
このような遷移金属としては、好ましくはCo、Mn、Fe、Cu、Ni、Ti、V、Cr等の金属が挙げられ、中でもCoが好ましく用いられる。これらの金属の化合物としては、有機酸の塩が好ましく用いられる。このような有機酸としては例えば、ステアリン酸、アセチルアセトン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、リノール酸、ナフテン酸等が挙げられる。」(段落【0008】〜【0009】)
(3-5)「本発明に用いられる吸着剤としては、天然ゼオライト、合成ゼオライト、シリカゲル、活性炭、活性白土、活性酸化アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム等が挙げられる。」(段落【0013】)

甲第4号証
(4-1)「共役ジオレフインの単独重合体もしくは共重合体またはそれらの誘導体の酸化反応生成物からなる膜を用いて酸素の透過を遮断する方法。」(特許請求の範囲)
(4-2)「共役ジオレフインの単独重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、・・・などである。」(第2頁右上欄第2〜6行)
(4-3)「酸素の遮断に有効な酸化は分子間の架橋をもたらすような酸化であり、・・・」(第4頁左上欄第17〜18行)
(4-4)「従って酸化促進剤として金属成分を添加する時、鉄-ジメチルグリオキシム錯体のような錯化合物の形、塩化鉄、塩化コバルトのような塩化物、更には酸化物の形で加えることも可能である。」(第4頁左下欄第5〜9行)

甲第5号証
(5-1)「 ・・・ポリオレフィン樹脂フィルムとアルミ箔と、ポリエステル樹脂フィルムを各層間に接着剤を設けて積層した積層フィルムを、ポリオレフィン樹脂フィルム層を密着して重ね合せ、三方の周縁部をヒートシールすることを特徴とする、食品包装用積層袋の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項9)

甲第9号証
(9-1)「(1)・・・結晶性珪素系分子篩に有機化合物の分子を接触させて吸着させることから成る、環境から有機臭を除く方法であって、・・・を特徴とする方法。
-中略-
(3)珪素系分子篩が、35より大きい骨格SiO2/Al2O3モル比を有するアルミノ珪酸塩であることを特徴とする請求項(1)の方法。
-中略-
(8)臭いのもとになる有機化合物が、単一の-COOH基または-CHO基を含み、12個未満の炭素原子を含む脂肪酸またはアルデヒドから成ることを特徴とする請求項(1)の方法。
-中略-
(18)・・・シリカ多形体および少なくとも35の骨格SiO2/Al2O3モル比を有するY型のゼオライトの混合物から成る臭いの吸着的除去に有用な組成物。
-以下、省略-」(特許請求の範囲)
(9-2)「本発明の実施に適切に使用される珪素系の分子篩には微細孔結晶性アルミノ珪酸塩すなわちゼオライト系分子篩ならびにいわゆるシリカ多面体が含まれる。」(第4頁左下欄第17〜20行)

甲第10号証
(10-1)「近年共役ジエン重合体を含む樹脂は塗料などに用いられている。これらはとくに樹脂中に含まれている2重結合の酸化重合により、加熱硬化するかあるいは加熱することにより2重結合同志のラジカル重合により架橋して硬化することを利用したものである。」(第1頁左下欄第12〜17行)
(10-2)「加熱乾燥するするさいに発生する臭気は、どういうメカニズムで発生するか不明だが、一般には加熱する際に樹脂中の2重結合が酸化されるか、2重結合の隣りの炭素に酸素が結合して、ハイドロパーオキサイド等が生成し、その後2重結合の切断などが起きて、臭気となる成分が気化していくものと推定されている。」(第1頁左下欄末行〜同頁右下欄第6行)

甲第11号証
(11-1)「ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩である。・・・この選択的な分子吸着作用がゼオライトの細孔が分子オーダーの寸法をもつためであることから、ゼオライトは分子ふるい(molecular sieve)と呼ばれることがある。」(第1頁第1〜9行)
(11-2)「4.3.3アルミノリン酸塩モレキュラーシーブ
リン酸アルミニウム(AlPO4)はシリカ鉱物と同形の構造をとることが知られている。・・・これらはゼオライトと同様にAlO4とPO4四面体が頂点を共有して3次元的に連結した網目構造から成り、AlO4とPO4四面体が交互に配列していることが特徴である。」(第97頁第5〜11行)

甲第14号証
(14-1)「この新規な結晶性アルミノ燐酸塩は、燐およびアルミニウムの酸素四面体を骨格構造の形成単位とするモレキュラーシーブであり、触媒,触媒担体,吸着分離剤等として有用である。」(第2頁左上欄第12〜15行)

甲第15号証
(15-1)「8.4.1 酸化機構
ゴムの酸化機構はオレフィンの酸化とよく似ており、・・・・。-中略-
A部;もとのままの生ゴム部で加硫ゴムの大部分がこれである。-中略-
a.A部の変化 天然ゴムの分子構造はイソプレンの重合体であるから、一つのイソプレンごとに二重結合一つとメチル基一つを持っている。今イソプレンの炭素に番号をつけると次のようになる。-式省略-
(1)(註:原文では丸付きの1)の炭素は二重結合に対してα炭素であるから、この炭素と水素の結合は最も弱い。したがって熱、光などのエネルギーがこの結合を励起すると、空気中の酸素によって水素の引抜きあるいはそのままH・の分離が起こる。-中略-
このように酸素による水素の引抜きは水素と炭素との結合の弱いためのみでなく、酸素の水素に対する親和性によるところが多い。生成したヒドロペルオキシド・・・によって酸化の連鎖反応が始まる。」(第1409頁第3行〜第1410頁式(8.3)下4行)
(15-2)式(8.3’)及び(8.2’)には、ヒドロペルオキシドによる酸化の連鎖反応機構及びそれにより副生成物を生ずることが示されている。(第1410頁)

甲第16号証
(16-1)「自動酸化(autoxidation)は、分子状酸素によって常温において徐々に起こる酸化反応と定義される。」(第8頁第8〜9行)
(16-2)「2.1.2 ヒドロオペルオキシドの生成
上記のような不飽和油脂の自動酸化の結果、油脂の過酸化物が生成する。油脂の場合この過酸化物は、ほとんどすべてヒドロペルオキシド(hydroperoxide)の形である。」(第10頁第3〜6行)
(16-3)「1)オレイン酸の自動酸化
オレイン酸の場合には以下のように、まず二重結合を中心とするNo.8,9,10,11の炭素のうちからH・が1個離脱して4種のラジカル異性体の混合物が作られる。このとき、一部に二重結合の移動が起こる。このラジカルに空気中の酸素分子O2が付加し、さらに他のオレイン酸分子から離れたH・も同時に付加して、4種類のヒドロペルオキシドが生成する。」(第10頁第12〜17行)
(16-4)「2)リノール酸の自動酸化
リノール酸の酸化はオレイン酸に比べて12〜20倍の速さで進行する。リノール酸の場合は、No.11のメチレン基(-CH2-)が二重結合の間にはさまれているため反応しやすいからである。リノール酸の自動酸化はNo.11のCH2のH・の離脱から始まり、O2、H・の付加をへて、以下のように、2種のヒドロペルオキシド混合物が作られる。」(第10頁下から4行〜第11頁第2行)
(16-5)「2.2 油脂の自動酸化の二次生成物
油脂の酸化の一次生成物は前述のようにヒドロペルオキシドであるが、このヒドロペルオキシドは脂肪酸の種類にもよるが、とにかく不安定なものであるから、生成すると同時に更に変化して、極めて複雑な多種多様の二次生成物へ移行する。」(第18頁下から2行〜第19頁第3行)
(16-6)図2.2には、脂質ヒドロペルオキシドが分解して、アルデヒド類、ケトン類、OH化合物を生ずることが記載されている。(第19頁)

甲第17号証
(17-1)「不飽和脂肪族炭化水素および/または不飽和脂肪族化合物を主剤とし、かつ酸素吸収を促進する物質を含んでいることを特徴とする酸素吸収用組成物。」(特許請求の範囲)
(17-2)「本発明は水分、酸素、酸性物質等の吸収機能を有して、金属類、金属製品、乾燥食品、医薬品、写真フイルム、古文書、絵画、押し花等の保存に好適に用いられる酸素吸収用組成物に関する。」(第1頁左下欄第11〜14行)
(17-3)「すなわち本発明の組成物は不飽和脂肪族炭化水素および/または不飽和脂肪酸化合物(A)に、塩基性物質(B)、吸着剤(C)、触媒(D)、担持体(E)、あるいは発熱防止体(F)の二種以上を加えた組成物である。」(第2頁右上欄第2〜6行)
(17-4)「不飽和脂肪族炭化水素として具体的にはイソプレンあるいはブタジエンの重合物、アセチレンの重合物、あるいはスクアレンなどが挙げられ・・・」(第2頁右上欄第10〜13行)
(17-5)「吸着剤(C)は不飽和脂肪族炭化水素あるいは不飽和脂肪酸化合物が酸素を吸収したことによって生成する分解物質、または水分の吸着と、酸素吸収速度の増大または組成物の製造を容易にする物質である。具体的にはシリカゲル,活性白土,ゼオライト、活性炭、パーライト等である。」(第2頁右下欄第2〜7行)
(17-6)「触媒(D)は主剤の酸素吸収速度を増大させるものであり、遷移金属および/またはその化合物である。具体的には鉄、コバルト、クロム、銅、ニッケル等の遷移金属類およびこれらの化合物としては硫酸塩、塩化物、硝酸塩等の無機塩、脂肪酸塩等の有機酸塩、アミン化合物との錯化合物等が挙げられる。」(第2頁右下欄第11〜17行)
(17-7)「この酸素吸収用組成物は不飽和脂肪族炭化水素および/または不飽和脂肪族化合物を含む組成物であれば特に限定するものではないが、・・・(A)と(C)と(D)からなる組成物-4、・・・等であり、・・・」(第3頁左上欄第13行〜同頁右上欄第1行)

6-3.対比・判断
本件発明1〜13と、上記甲各号証の記載事項とを以下に対比する。
(1)本件発明1
甲第2号証には、その特許請求の範囲の請求項1に、「酸素掃去に適した配合物において、(a)エチレン性不飽和炭化水素、及び(b)遷移金属触媒を含むことを特徴とする配合物」が記載されており、同請求項20、39、40、41及び47には、それぞれ、「酸素掃除去に適した層において、(a)エチレン性不飽和炭化水素、及び(b)遷移金属触媒を含むことを特徴とする層」、「請求項20に記載の層において、1種類又はそれ以上の他の層に隣接していることを特徴とする層」、「請求項39に記載の層において、少なくとも1種類の他の層が酸素遮断層であることを特徴とする層」及び「請求項40に記載の層において、該酸素遮断層がポリ(エチレン-ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルクロリド)、ポリアミド、ポリ(ビニリデンジクロリド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、シリカ及び金属箔から成る群のひとつを含むことを特徴とする層」及び「酸素に敏感な製品を包装するための製品において、請求項20-46に記載の層を含む製品」(摘示記載(2-1))が記載されている。また、甲第2号証には、「酸素に敏感な生成物を含む製品に使用する層に挿入するのに適した配合物を得ること」(摘示記載(2-3))を目的とすること、「食品及び飲料用の包装製品の他に、酸素に敏感な他の製品の包装」(摘示記載(2-5))にも適用し得ること、及び、酸素掃去配合物を含む層をフィルムの形態とすること(摘示記載(2-7))も記載されている。
そして、甲第2号証の特許請求の範囲に記載された(a)エチレン性不飽和炭化水素及び(b)遷移金属触媒を含む「酸素掃去に適した配合物」は、ある環境中から酸素を消滅させる配合物(摘示記載(2-2))であるから本件発明1における「酸素スカベンジャー」に相当し、また、「酸素遮断層」は具体的にはポリ(エチレン-ビニルアルコール)や金属箔等からなり(摘示記載(2-1))酸素を遮断する機能を有する層であるから、「酸素バリア物質を含む層」といい得るものであり、更に、酸素掃除去に適した層に酸素遮断層を隣接させてフィルムとした「酸素に敏感な製品を包装するための製品」は、本件発明1における「酸素感受性物品包装用包装フィルム」に相当するものである。
そうすると、甲第2号証には、「a)酸素バリア物質を含有する第1の層及びb)酸素スカベンジャーを含有する第2の層を含むフィルムであり、酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる、酸素感受性物品包装用包装フィルム」である点で本件発明1と一致する発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているが、甲2発明は本件発明1の次の構成要件を備えていない点でこれらの発明の間には一応の相違が認められる。
(あ)「ゼオライトを含有する第3の層」を設ける点
そこで、この相違点について以下に検討する。
甲第17号証には、その特許請求の範囲に、「不飽和脂肪族炭化水素および/または不飽和脂肪族化合物を主剤とし、かつ酸素吸収を促進する物質を含んでいることを特徴とする酸素吸収用組成物」(摘示記載(17-1))が記載されており、不飽和脂肪族炭化水素としてイソプレンあるいはブタジエンの重合物等を用いること(摘示記載(17-4))、主剤の酸素吸収速度を増大させる触媒として遷移金属および/またはその化合物を用いること(摘示記載(17-6))、該組成物に吸着剤を配合すること(摘示記載(17-3)、(17-7))、及び、吸着剤は不飽和脂肪族炭化水素等が酸素を吸収したことによって生成する分解物質の吸着を容易にする物質であり、ゼオライト等が用いられること(摘示記載(17-5))が記載されている。この「不飽和脂肪族炭化水素」は具体的にはイソプレンあるいはブタジエンの重合物等(摘示記載(17-4))であるから、甲2発明における「エチレン性不飽和炭化水素」に相当し、これと遷移金属化合物触媒とを配合した組成物は、甲2発明における「酸素スカベンジャー」にあたるものであるから、甲第17号証には、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる酸素スカベンジャーと、吸着剤としてのゼオライトを併用して、エチレン性不飽和炭化水素が酸素を吸収したことによって生成する分解物質をゼオライトに吸着させることが記載されているものということができる。
一方、甲第1号証には、「少なくとも金属化合物を含有する熱可塑性樹脂層と吸着剤を含有する熱可塑性樹脂層が積層されてなることを特徴とする酸素バリアー性積層体」(摘示記載(1-1))が記載されており、熱可塑性樹脂が金属化合物の触媒作用により酸化されて層内に酸素をトラップする働きにより酸素バリアー性が発現されること(摘示記載(1-8))、吸収剤が、熱可塑性樹脂の酸化に伴って発生する臭気を吸着する機能を有し、吸着剤としてゼオライト等が用いられること(摘示記載(1-2)、(1-5))が記載されている。この、金属化合物と熱可塑性樹脂とを組合せたものは酸素をトラップするところから「酸素スカベンジャー」と称し得るものであるから、甲第1号証には、酸素スカベンジャー含有層と、酸素スカベンジャーから発生する臭気を吸着するゼオライト含有層とを積層することが開示されているものといえる。
そして、甲2発明において、同様の組成の酸素スカベンジャーに係る甲第17号証に記載された発明において用いられている、エチレン性不飽和炭化水素の酸素吸収に伴う分解物質をゼオライトに吸着させる技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たものというべきであり、該適用にあたり、甲第1号証に開示された酸素スカベンジャー含有層とゼオライト含有層とを積層する技術を用い、本件発明1のようにする点に、特に困難性は見出せない。

なお、この点に関しては、次のようにいうこともできる。
即ち、甲第10号証には、共役ジエン重合体を含む樹脂を加熱乾燥すると、樹脂中の2重結合が酸化されるか、2重結合の隣りの炭素に酸素が結合して、ハイドロパーオキサイド等が発生し、その後2重結合の切断などが起きて、臭気となる成分が気化していくことが推定される(摘示記載(10-2))と記載されており、また、甲第15号証にはイソプレンの重合体である天然ゴムが空気中の酸素により自動酸化してヒドロキシペルオキシドを生成し、副生成物を生ずること(摘示記載(15-1)、(15-2))が記載され、更に甲第16号証には、オレイン酸やリノール酸が自動酸化してヒドロキシペルオキシドを生成すること(摘示記載(16-1)、(16-2))、及び、ヒドロキシペルオキシドが更に変化してアルデヒド、ケトン等を生ずること(摘示記載(16-5)、(16-6))が記載されている。このように、本件発明1及び甲2発明における「エチレン性不飽和炭化水素」に含まれる各種の物質が自動酸化によってハイドロパーオキサイドを生じ、更に副生成物を生ずることは当業界で広く知られていたものというべきであり、エチレン性不飽和炭化水素を酸素スカベンジャーとして用いる場合においても、酸化作用が働く点で自動酸化と反応機構に本質的な差異はないものと解されるから、同様の副生成物が生ずることは当然予測される範囲内のことにすぎない。そして、これら副生成物にアルデヒドやケトンが含まれ得る以上、風味等の観点からこれらを避けるべき用途において吸着剤を併存させる程度のことは当業者が容易に想到し得たものというべきであり、その吸着剤として甲第9号証(摘示記載(9-1))に記載されているように有機臭を吸着することが周知であるゼオライトを採用した点に特に困難性はない。
したがって、本件発明1は甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、特許を受けることができない。
(2)本件発明2
本件発明2は、本件発明1において、(i)「a)酸素バリア物質を含有する第1の層」を「a)エチレン/ビニルアルコールコポリマーを含む第1の層」とし、(ii)「c)ゼオライトを含有する第3の層」を「微孔性結晶性アルミノシリケート又は微孔性結晶性アルミノホスフェートを含む第3の層」とし、更に、(iii)「d)オレフィン性ポリマーを含む第4の熱シール性層」を付加したものである。(「酸素スカベンジャーを含有する第2の層」については、本件発明1と本件発明2とは表現が異なるのみである。)
しかしながら、甲第2号証には、(i)酸素遮断層がポリ(エチレン-ビニルアルコール)等を含むこと(摘示記載(2-1)、(2-8))が記載されている。また、(ii)甲第11号証(摘示記載(11-1)、(11-2))及び甲第14号証(摘示記載(14-1))に記載されているように、微孔性結晶性アルミノシリケート及び微孔性結晶性アルミノホスフェートよりなるゼオライトはいずれも当業界において周知であり、上記のように甲2発明においてゼオライトを用いるにあたり、これら周知のゼオライトを採用する点に何らの困難性もない。更に、(iii)甲第2号証には、酸素遮断層、掃去成分を含む層の他にヒートシール性を増加させた酸素透過性層を設けること(摘示記載(2-9))が記載されており、甲第5号証に記載されているように、積層フィルムにおいて外側層をヒートシール性のポリオレフィンフィルムとすること(摘示記載(5-1))は普通に行われていることにすぎないから、甲2発明において、オレフィン性ポリマーを含む熱シール性層を設けることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、上記のように本件発明1は甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2は、甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3
本件発明3は、本件発明1において「前記ゼオライトが微孔性結晶性アルミノシリケートおよび微孔性結晶性アルミノホスフェートよりなる群から選択されること」との限定を付したものであるが、上記のようにこの点は甲第11号証及び甲第14号証に記載されているように周知である。
そして、上記のように本件発明1は甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3は、甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4
本件発明4は、本件発明1〜2において「前記ゼオライトが合成ゼオライトよりなること」との限定を付したものであるが、上記のように甲第11号証及び甲第14号証に記載された周知の微孔性結晶性アルミノシリケートおよび微孔性結晶性アルミノホスフェートが合成ゼオライトであることは自明である。
そして、上記のように本件発明1〜2は甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4も、甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5
本件発明5は、本件発明1〜2において「前記フィルムが熱シール性層を有すること」との限定を付したものであるが、上記のように甲第2号証には、酸素遮断層、掃去成分を含む層の他にヒートシール性を増加させた酸素透過性層を設けること(摘示記載(2-9))が記載されており、甲第5号証に記載されているように、積層フィルムにおいて外側層をヒートシール性のポリオレフィンフィルムとすること(摘示記載(5-1))は普通に行われていることにすぎないから、甲2発明において、オレフィン性ポリマーを含む熱シール性層を設けることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。
そして、上記のように本件発明1〜2は甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5も、甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6
本件発明6は、本件発明1において「前記フィルムが中間接着層を有すること」との限定を付したものであるが、甲第2号証には、「酸素遮断層及び酸化透過層の他に接着層などの他の層を上記の層のいずれかに隣接させることができる」(摘示記載(2-10))ことが記載されている。
そして、上記のように本件発明1は甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6も、甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7
本件発明7は、本件発明1〜2において「前記フィルムが架橋されていること」との限定を付したものであるが、甲第4号証には、共役ジオレフィンを架橋して酸素の透過を遮断すること(摘示記載(4-1)〜(4-3))が記載されており、甲2発明においても、酸素掃除去用配合物のエチレン性不飽和炭化水素の酸化に際して架橋を生じさせる点に特に困難性はない。
そして、上記のように本件発明1〜2は甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明7は、甲第1、2、4、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明8、9
本件発明8及び9は、本件発明1〜2において、それぞれ「前記フィルムが延伸されていること」及び「前記フィルムが熱収縮性であること」との限定を付したものであるが、甲第2号証には、酸素掃去配合物を含む層は”延伸”又は”熱収縮性”フィルムを含む保存フィルムの形態であることができる(摘示記載(2-7))ことが記載されている。
そして、上記のように本件発明1〜2は甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明8及び9は、甲第1、2、5、9〜11、14〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明10
本件発明10は、本件発明1において、「前記酸素バリア物質が、a)エチレン/ビニルアルコールコポリマー、b)塩化ビニリデンコポリマー、c)ポリエステル、d)ポリアミド、e)金属、およびf)シリカ被覆よりなる群から選択されること」との限定を付したものであるが、甲第2号証には、酸素遮断層がポリ(エチレン-ビニルアルコール)、ポリアクリロニトリル、ポリ(ビニルクロリド)、ポリアミド、ポリ(ビニリデンジクロリド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、シリカ及び金属箔から成る群のひとつを含むこと(摘示記載(2-1)、(2-8))が記載されている。
そして、上記のように本件発明1は甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明10は、甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件発明11
本件発明11は「酸素スカベンジャーとゼオライトを含有するガスケットであり、前記酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする前記ガスケット」に係るものであるが、上記のように、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる酸素スカベンジャーは甲第2号証に記載されており、更に、これらにゼオライトを併存させた組成物は甲第17号証に記載されている。そして、甲第2号証には、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる酸素スカベンジャー配合物を、飲料容器、熱成型トレー又はカップなどの剛性製品の壁内、容器の蓋又はキャップと共に又はその中に置くライナー、更にはこれらの製品のいずれかひとつの上に被覆又は積層して用いること(摘示記載(2-7))が記載されているのであるから、「ガスケット」としての用途についても示唆されているものというべきである。
なお、(1)で指摘したように、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなる酸素スカベンジャーにゼオライトを併存させることは、甲第9、10、15、16号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に想到することができたものということもできる。
したがって、本件発明11は、甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(11)本件発明12、13
本件発明12及び13、本件発明11において、それぞれ「前記ガスケットが、ポリマー、酸素スカベンジャー、およびゼオライトを含有すること」及び「前記ガスケットが、蓋を硬い又は半ば硬い容器に接着させること」との限定を付したものであるが、甲第2号証には、酸素スカベンジャーを構成するエチレン性不飽和炭化水素としてポリイソプレン等のポリマーを用いることも記載されている。また、上記のように甲第2号証には、酸素スカベンジャー配合物を容器の蓋又はキャップと共に又はその中に置くライナーとして用いることが記載されており、蓋を硬い容器に接着させるガスケットとしての用途についても、容易に想到し得る程度のものにすぎない。
そして、上記のように本件発明11は甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明12及び13も、甲第1、2、9、10、15〜17号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効にすべきものである。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
包装フィルムにおけるゼオライト
(57)【特許請求の範囲】
1.a)酸素バリア物質を含有する第1の層;
b)酸素スカベンジャーを含有する第2の層;
c)ゼオライトを含有する第3の層よりなるフィルムであり、酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする、酸素感受性物品包装用包装フィルム。
2.a)エチレン/ビニルアルコールコポリマーを含む第1の層;
b)エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒を含む第2の層;
c)微孔性結晶性アルミノシリケート又は微孔性結晶性アルミノホスフェートを含む第3の層;および
d)オレフィン性ポリマーを含む第4の熱シール性層よりなるフィルムであり、前記第1の層および第4の層がフィルムの外側表面を形成することを特徴とする、酸素感受性物品包装用包装フィルム。
3.前記ゼオライトが微孔性結晶性アルミノシリケートおよび微孔性結晶性アルミノホスフェートよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
4.前記ゼオライトが合成ゼオライトよりなることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
5.前記フィルムが熱シール性層を有することを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
6.前記フィルムが中間接着層を有することを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
7.前記フィルムが架橋されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
8.前記フィルムが延伸されていることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
9.前記フィルムが熱収縮性であることを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のフィルム。
10.前記酸素バリア物質が、
a)エチレン/ビニルアルコールコポリマー、
b)塩化ビニリデンコポリマー、
c)ポリエステル、
d)ポリアミド、
e)金属、および
f)シリカ被覆よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
11.酸素スカベンジャーとゼオライトを含有するガスケットであり、前記酸素スカベンジャーが、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒よりなることを特徴とする前記ガスケット。
12.前記ガスケットが、ポリマー、酸素スカベンジャー、およびゼオライトを含有することを特徴とする請求項11に記載のガスケット。
13.前記ガスケットが、蓋を硬い又は半ば硬い容器に接着させることを特徴とする請求項11に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は一般的に、酸素捕捉反応の副生成物を捕捉するための組成物、物品及び方法に関する。
発明の背景
酸素に感受性の品を酸素に曝すことを抑制することにより、その製品の質と貯蔵期間が維持され高められることはよく知られている。食品包装産業では、酸素に曝されることを抑制する幾つかの手段が既に開発されている。
これらの手段には、包装の内部環境を改変するための改変空気包装(MAP);ガス流入;真空包装;酸素バリア包装材料を使用する真空包装;などがある。酸素バリアフィルム及び積層品は、外部環境から包装内部への酸素浸透を減少させるか、又は遅延させる。
現在使用されているもう一つの方法は“活性包装”によるものである。包装の空洞又は内部に酸素スカベンジャーを含めることは、活性包装の一形態である。典型的には、このようなスカベンジャーは、化学反応によって酸素を捕捉する組成物を含有する包み(サチェット)の形態である。包みの一つの型は、酸化される鉄組成物を含有する。包みのもう一つの型は、粒子状吸着剤上の不飽和脂肪酸塩を含有する。包みの更に別の型は、金属/ポリアミド錯体を含有する。
包みの一つの欠点は、各包装に包みを加えるというもう一つの包装操作が必要なことである。袋の使用から起るもう一つの欠点は、捕捉が適当な速度で起るために、包装内におけるある空気条件(例えば、高湿度、低CO2レベル)が必要なことである。
酸素へ曝すことを抑制するもう一つの手段には、包装構造それ自体に酸素スカベンジャーを導入することである。このことにより、包装内中で、より均一な捕捉効果が達成される。包装内で空気循環が抑制されている場合、このことは特に重要でありうる。更に、このような導入によって、酸素が包装の壁(本明細書では、“活性酸素バリア”という)を通過するときに、酸素を遮断し、捕捉し、それによって包装内中でできるだけ低い酸素レベルを維持する手段が提供できる。
酸素捕捉壁を製造する一つの試みには、無機粉末及び/又は塩の導入がある。しかし、これらの粉末及び/又は塩の導入によって、壁の透明性と引裂き力などの物理的性質の低下が生じる。更に、これらの化合物によって、加工の困難性、特にフィルム構造内の薄フィルム又は薄層の製造における加工の困難性が生じうる。更にまた、これらの化合物を含む壁の捕捉速度は、ある種の市販の酸素捕捉適用、例えば包みを使用する適用などには不適切である。
その他の努力は、包装壁内に金属触媒-ポリアミド酸素捕捉系を導入することに向けられてきた。しかし、この系は、商業的に利用可能な速度で酸素捕捉を示さない。
本発明のフィルムにおける商業的使用に適した酸素スカベンジャーは米国特許第5,350,622号に開示され、酸素捕捉を開始させる方法は一般的に米国特許第5,211,875号に開示されている。両方の特許は引用によりそれらの全部が本明細書に含まれるものとする。米国特許第5,350,622号によれば、酸素スカベンジャーは、エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒から製造される。好適なエチレン性不飽和炭化水素は置換されていても置換されていなくともよい。本明細書の定義では、非置換エチレン性不飽和炭化水素は、少なくとも1個の脂肪族炭素-炭素二重結合を有し、100重量%の炭素と水素を含む化合物である。置換エチレン性不飽和炭化水素とは、少なくとも1個の脂肪族炭素-炭素二重結合を有し、約50〜99重量%の炭素と水素を含むエチレン性不飽和炭化水素と本明細書では定義する。好適な置換又は非置換のエチレン性不飽和炭化水素は、分子当り2個以上のエチレン性不飽和基を有するものである。より好ましくは、それは、3個以上のエチレン性不飽和基を有し、1,000以上の重量平均分子量である重合化合物である。
非置換エチレン性不飽和炭化水素の好適な例には、ポリイソプレンなどのジエンポリマー(例えばトランス-ポリイソプレン)及びそれらのコポリマー、シス及びトランス1,4-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエン(50%以上の1,2ミクロ構造を有するポリブタジエンと定義する)、並びにスチレン-ブタジエンコポリマーなどのそれらのコポリマーがあるがそれらに限定されない。このような炭化水素にはまた、ポリペンテナマー、ポリオクテナマー並びに環状オレフィンメタセシスにより製造されたその他のポリマーなどのポリマー化合物、;スクアレンなどのジエンオリゴマー;及びジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、4-ビニルシクロヘキセン、又は2個以上の炭素-炭素二重結合(共役又は非共役)を含む他のモノマー由来の不飽和ポリマー又はコポリマーがある。
好適な置換エチレン性不飽和炭化水素には、エステル、カルボン酸、アルデヒド、エーテル、ケトン、アルコール、ペルオキシド及び/又はヒドロペルオキシドなどの酸素含有部分を有するものがあるがそれらに限定されない。このような炭化水素の特定の例には、炭素-炭素二重結合を含むモノマーと、オレイン酸、レシノレイン酸、脱水レシノレイン酸、リノレイン酸などの不飽和脂肪酸及びその誘導体、例えばエステル、との縮合ポリマーがあるがそれに限定されない。このような炭化水素には、(メタ)アリル(メタ)アクリレート由来のポリマー又はコポリマーもある。適切な酸素捕捉ポリマーはトランス-エステル化によって製造できる。このようなポリマーはWO95/02616[引用によりその全部が本明細書に含まれるものとする]に開示されている。使用する組成物は、上記の置換又は非置換エチレン性不飽和炭化水素の2種以上の混合物も含む。重量平均分子量は1,000以上が好適であるが、より低分子量のエチレン性不飽和炭化水素も、それがフィルム形成ポリマー又はポリマーの混合物と混合されるならば、使用できる。
室温で固体の透明層を形成するのに適切なエチレン性不飽和炭化水素は、上記の包装用品において酸素の捕捉のために好ましいことも明白であろう。透明性が必要な大部分の適用において、可視光の少なくとも50%の透過が可能な層が好ましい。
本発明の透明な酸素捕捉層を製造する場合、1,2-ポリブタジエンが室温での使用のために特に好ましい。例えば、1,2-ポリブタジエンは、ポリエチレンと同様の透明性、物理的性質及び加工特性を示すことができる。更に、このポリマーは、酸素能の大部分又は全部が無くなった後でさえ、及び希釈樹脂がほとんど又は全く存在しないときでさえ、透明性と物理的な完全な形を保つことが知見されている。更にまた、1,2-ポリブタジエンは比較的高い酸素能を示し、捕捉し始めると、比較的高い捕捉速度も示す。
低温での酸素の捕捉が所望の場合、1,4-ポリブタジエン、スチレンとブタジエンのコポリマー、スチレンとイソプレンのコポリマーが特に好ましい。このような組成物は米国特許第5,310,497号[Speerら,1994年5月10日発行;引用によりその全部が本明細書に含まれるものとする]に開示されている。多くの場合に、上記ポリマーをエチレンのポリマー又はコポリマーと混合することが望ましい。
上記のように、エチレン性不飽和炭化水素を遷移金属触媒と組合せる。理論に拘泥されるものではないが、本発明者らは、適切な金属触媒は少なくとも2種の酸化状態に容易に転換されうるものであることを観察した。Sheldon,R.A.,Kochi,J.K.,“Metal-Catalyzed Oxidations of Organic Compounds”Academic Press,New york1981を参照されたい。
好ましくは、触媒は遷移金属塩の形態である。ここで、その金属は、周期率表の第1、第2又は第3遷移系列から選択される。適切な金属には、マンガンII又はIII、鉄II又はIII、コバルトII又はIII、ニッケルII又はIII、銅I又はII、ロジウムII、III又はIV、及びルテニウムII又はIIIがあるが、それらに限定されない。導入されるときの金属の酸化状態は必ずしも活性型のそれである必要はない。好ましくは、金属は鉄、ニッケル又は銅であり、より好ましくはマンガンであり、最も好ましくはコバルトである。金属の適切な対イオンは、塩素イオン、酢酸イオン、ステアリン酸イオン、パルミチン酸イオン、カプリル酸イオン、リノール酸イオン、タレート(tallate)イオン、2-エチルヘキサン酸イオン、ネオデカン酸イオン、オレイン酸イオン、又はナフテン酸イオンがあるが、それらに限定されない。特に好適な塩には、2-エチルヘキサン酸コバルト(II)とネオデカン酸コバルト(II)がある。金属塩はイオノマーでもありうる。その場合、ポリマー性対イオンを用いる。このようなイオノマーは当業界で周知である。
エチレン性不飽和炭化水素と遷移金属触媒は更に1種以上のポリマー希釈剤、例えばプラスチック包装用品でのフィルム層を形成するために典型的に使用される熱可塑性ポリマーなどと組合せることができる。ある包装用品の製造において、周知の熱硬化性物質もポリマー希釈剤として使用できる。
希釈剤として使用できるポリマーには、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、低密度もしくは超低密度ポリエチレン、ウルトラ低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、並びにエチレン-酢酸ビニル、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート、エチレン-(メタ)アクリル酸及びエチレン-(メタ)アクリル酸イオノマーなどのエチレンコポリマーがあるが、それらに限定されない。異なる希釈剤の混合物も使用できる。しかし、上記のように、ポリマー希釈剤の選択は主に、製造される製品と最終用途による。このような選択因子は当業界で周知である。
製造される特定の製品のために望まれる性質を与えるために、更なる添加剤も組成物に含めることができる。このような添加剤には、充填剤、色素、染料、抗酸化剤、安定化剤、加工助剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤などがあるが、それらに限定されない。
好ましくは、上記成分の混合は、50〜300℃の範囲の温度で融解混合によって行う。しかし、溶媒の使用、続いて蒸発のような代替法も使用できる。混合は、最終製品の製造直前に行いうるし、あるいは最終の包装用品の製造における後の使用のための原料又はマスターバッチの製造に先立って行いうる。
これらの技術は包装への適用において大きな可能性を提供するが、ときには酸素捕捉構造は、包装された物質の味や臭い(即ち官能的性質)に影響を与えうる、又は食品規制問題を起こしうる反応副生成物を産生しうる。これらの副生成物には、酸、アルデヒド、及びケトンがある。
本発明者らは、この問題は、臭いの原因となる反応副生成物を吸収するゼオライト(有機物親和性ゼオライトなど)を使用して最小にできることを見出した。ゼオライトは、酸素捕捉層を含む多層フィルムの1枚以上の層又は容器に導入できる。しかし、当業者ならば、本発明は、酸、アルデヒド、及びケトンなどの副生成物を産生する任意の酸素捕捉系に適用できることを容易に理解しよう。
定義
本明細書の“フィルム”(F)は、物を包装するために使用できるフィルム、積層物、シート、ウエブ、被覆などを意味する。
本明細書の“ゼオライト”は、大イオン及び/又は水分子によって占有される空洞を囲む骨組み構造をもつアルミノホスフェート及びアルミノシリケートであって、該アルミノホスフェートとアルミノシリケートの両方ともイオン交換と可逆的脱水を可能とする運動のかなりの自由度を有することを特徴とする該アルミノホスフェート及びアルミノシリケートを含む分子篩を指す。骨組みは、Mn、Ti、Co及びFeなどの他のカチオンも含みうる。このような物質の例は、チタノシリケート分子篩及びチタノアルミノシリケート分子篩である。無定形物質とは異なり、これらの結晶構造は異なる大きさの空隙を有する。典型的な天然ゼオライトは、式Na13Ca11Mg9K2Al55Si137O384・235H2Oを有する鉱物フォージャサイトである。
アンモニウム及びアルキルアンモニウムカチオン、例えばNH4、CH3NH3、(CH3)2NH2、(CH3)3NH及び(CH3)4Nは、合成ゼオライトに導入できる。ゼオライトの中には、ソーダライトの構造に特徴的な結合短縮オクタヘドラ(β-ケージ)の骨組みをもつものもある。多数の合成ゼオライトが利用できる。
本明細書の“酸素スカベンジャー”(OS)などは、ある環境からの酸素を消費し、枯渇させ、又は酸素と反応する組成物、物品などを意味する。
本明細書の“化学線放射”などは、米国特許第5,211,875号(Speerら)に開示された、紫外線放射又は電子線照射などの任意の型の放射を意味する。
本明細書の“ポリマー”などは、ホモポリマーと、ビスポリマー、ターポリマーなどを含むコポリマーも意味する。
本明細書の“エチレン α-オレフィン コポリマー”などは、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖中密度ポリエチレン(LMDPE)及び超低密度ポリエチレンとウルトラ低密度ポリエチレン(VLDPEとULDPE)などの不均質物質;並びにExxonによって供給されるEXACTTM及び三井石油化学(株)によって供給されるTAFMERTM物質などのメタロセンによって触媒されるポリマーのような均質ポリマーを意味する。これらの物質は一般的に、エチレンと、ブテン-1(即ち1-ブテン)、ヘキセン-1、オクテン-1などのC4〜C10α-オレフィンから選択される1種以上のコモノマーとのコポリマーであって、コポリマー分子は、比較的数少ない側鎖分岐又は架橋構造しか有しない長鎖を有することを特徴とするコポリマーである。この分子構造は、それぞれ対応するものよりより多く分岐している通常の低又は中密度ポリエチレンと対照的であるはずである。ダウケミカルから市販されている、AFFINITYTM樹脂として知られる長鎖分岐均一エチレン/α-オレフィンコポリマーなどの他のエチレン/α-オレフィンコポリマーも、本発明に有用なエチレン/α-オレフィンコポリマーの別の型として含める。
本明細書で使用する“ポリアミド”という用語は、分子鎖にアミド結合を有するポリマー、好ましくはナイロンなどの合成ポリアミドを指す。更に、このような用語は、重合してポリアミドを生成するカプロラクタムのようなモノマー由来の繰返し単位を含有するポリマーと、本明細書で一般的に“コポリアミド”とも言う、ナイロンターポリマーを含む2種以上のアミドモノマーからなるコポリマーの両方を包含する。
本明細書の“LLDPE”は、直鎖低密度ポリエチレンを意味し、これはエチレン α オレフィン コポリマーである。
本明細書の“EVOH”は、エチレン ビニルアルコール コポリマーを意味する。
本明細書の“EVA”は、エチレン 酢酸ビニル コポリマーを意味する。
本発明の概要
本発明の一つの面では、物品は、酸素スカベンジャーとゼオライトを含む。
本発明の第2の面では、包装は、物品と、該酸素感受性物品が入れられ、酸素スカベンジャーとゼオライトを含有する成分とを含む容器を含む。
本発明の第3の面では、酸素を捕捉する反応の副生成物の移行が減少した製品の製造方法は、酸素スカベンジャーとゼオライトを含有する製品を提供し、該製品を化学線放射に曝すことを含む。
図面の簡単な説明
図1〜5は、本発明のフィルムの種々の実施態様の模式的断面図であるが、その図面に基づき、本発明を更に理解できよう。
好適実施態様の説明
本発明を用いて、種々の物品、化合物、物質の組成物、被覆などを製造できる。2種の好適な型は、密封用コンパウンド(混合物)と柔軟性フィルムであり、両方とも食品と非食品物の包装に有用である。
硬い容器の市場のためのガスケットの製造における密封用混合物の使用は公知である。典型的には、大きな、大直径のガスケットは、液体プラスチゾルを用いて製造される。このプラスチゾルは、可塑剤中のポリマー粒子の、非常に粘度が高い液体懸濁液である。金属もしくはプラスチックのキャップ、蓋などの製造において、この液体プラスチゾルを、ジャーなどの容器の環に適用し、適用されたプラスチゾルを有する容器はオーブンで“融解され”、プラスチゾルを固化させてガスケットにする。結果として、容器の環の廻りに形成されたガスケットを得る。
典型的には、より小さいガスケットは、ビール瓶の冠における使用のために製造される。溶解したポリマーを、冠の全内面に冷成形によって適用する。PVCと他のポリマーの両方をこの適用で使用する。
典型的には、プラスチックキャップのディスクは、ガスケット材料のリボンを用い、ディスクを製造し、そのディスクをプラスティックキャップに挿入して製造される。
これらの適用の全てにおいて、有利なことには、酸素スカベンジャーとゼオライトの使用により、容器の内部環境から酸素が除去され、一方酸素捕捉反応の所望しない副生成物が抑制される。
即ち、ガスケットは、ポリマー組成物、酸素スカベンジャー及びゼオライトを含む。ガスケットは、硬い、もしくは半ば硬い容器に、金属もしくはプラスティックの蓋もしくはキャップを接着させ、容器を蓋もしくはキャップで密閉させる。
図1では、層12と14を有する多層フィルム10を示す。
図2は、層12、14、16を有する多層フィルムを示す。好ましくは、層12、14、16はポリマーである。
層12はゼオライトを含む。好適な材料は、米国特許第4,795,482号(Gioffreら)[引用によりその全部が本明細書に含まれるものとする]に開示の型の分子篩である。Davison divison of W.R.Grace & Co.-Connが販売のゼオライトも本発明で有用である。本発明で使用されるゼオライトの好適な粒子サイズは0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜3μmである。
層14は、酸素スカベンジャー、好ましくはポリマー性酸素スカベンジャー、より好ましくは上記材料の一つである。
層16は、エチレン ビニルアルコール コポリマー(EVOH)、サラン(塩化ビニリデンコポリマー)、ポリエステル、ポリアミド、金属、シリカ被覆などの酸素バリア物質を含む。
図3は、3層フィルムが第2のフィルムに接着した積層フィルムを示す。層32、34、36は機能的、組成的に、それぞれ図2の12、14、16に対応し、層38は、ポリオレフィンなどのポリマー物質、より好ましくは、エチレン/α-オレフィン及びエチレン/不飽和エステルコポリマー、より好ましくはエチレン/酢酸ビニルコポリマーなどのエチレン性ポリマーのような任意のポリマー材料を含みうる中間層である。層31は、ポリウレタン接着剤のような通常の接着剤を表す。表6の比較2は、図3の積層フィルムの例である。
図4は、4層フィルムが第2のフィルムに接着した積層フィルムを示す。層42、44、46、48は機能的、組成的に、それぞれ図3の32、34、36、38に対応する。層49は、ポリオレフィンなどの任意のポリマー物質、より好ましくは、エチレン/α-オレフィン及びエチレン 酢酸ビニルコポリマーなどのエチレン/不飽和エステルコポリマーなどのエチレン性ポリマーを含みうる最内層熱シール可能層である。層46はフィルム構造に酸素バリアを与え、通常の接着剤41により層48に接着する。この接着剤は図3の層31に対応し、太線として簡単に表されている。表6の実施例2と3は、図4の積層フィルムの例である。
図5は、9層フィルムを示す。表2の実施例1と比較1は、図5のフィルムの例である。
層57は、包装適用で使用するときに、フィルムの最外層として有用な濫用耐性層である。
層54と56は機能的、組成的に、図2と3のそれぞれ14と16に、図4のそれぞれ層44と46に対応する。
層52、53、58、59は接着剤を含む。好ましくは接着剤はポリマー、より好ましくは酸もしくは酸無水物でグラフトされたポリオレフィンである。更にこれらの層はゼオライトを含みうる。
層55は熱耐性物質を含む。これは、適切な任意のポリマー物質、好ましくはナイロン6などのアミドポリマー、又はポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルでありうる。
層51は熱シール性物質を含む。これは、適切な任意のポリマー物質、好ましくはエチレン性ポリマーなどのオレフィン性ポリマー、より好ましくはエチレンα-オレフィン コポリマーでありうる。更に層51はゼオライトを含みうる。
本発明は、以下の実施例に言及することによって更に理解できよう。表1によって、実施例で使用する物質を同定する。残りの表は、これらの物質によって製造されるフィルム、及びこれらのフィルムの幾つかから得られる官能又は移行データを示す。


フィルム構造の幾つかの場合、ある物質同士を混合したが、これらの混合物は以下のように同定される:
PEB1=90%PE1+10%AB1
PEB2=90%PE1+10%PEB3
PEB3=80%PE3+20%PE4
PPB1=60%PP1+40%EB1
PPB2=40%PP1+60%EB1
OSB1=76.5%OS1+13.5%OS2+9.2%EV1+0.5%PI1+0.3%TC1
OSB2=50%OS3+40%PE3+8.54%EV1+0.90%TC1+0.50%PI1+0.05%酸化カルシウム+0.01%抗酸化剤(Irganox1076)
OSB3=60%OS3+38.83%EV3+1.06%TC2+0.10%PI2+0.01%抗酸化剤(Irganox1076)
OSB4=40%OS3+58.83%EV3+1.06%TC2+0.10%PI2+0.01%抗酸化剤(Irganox1076)
ZB1=87%PE1+10%AB1+3%Z1
ZB2=90%PE2+10%Z1
ZB3=90%PE2+10%Z2
ZB4=90%PE2+6%PE3+2%PE4+1%Z3+1%Z4
ZB5=80%PE2+20%Z2
ZB6=80%PE3+20%Z2
表2で、本発明の9層フィルム構造と比較フィルムを開示する。これらは各々、層の共押出しで製造された。

9層フィルムの各層の(ミルにおける)目標(及びほぼ実際の)寸法を以下に示す。好ましくは、層9は、典型的包装適用における食品又は物品接触層である。

ゼオライトが抽出性物質の濃度を減少させることができるかどうかを評価するために、実施例1と比較1のフィルムで食品法の移行試験を行った。米国特許第5,211,875号開示の方法により、フィルムに紫外線を照射した。フィルムを280cm2の袋にし、その袋に食品擬似物を入れた。次に、充填された袋を100℃に30分間保ち、50℃で10日間保存した。食品擬似物を袋から取出し、分析した。表3は抽出可能物質のリストを示す。表4は、フィルムを8%エタノール溶液で抽出したときの食品擬似物と同一の抽出性物質の濃度を示す。表5は、フィルムを水で抽出したときの食品擬似物と同一の抽出性物質の濃度を示す。表4と5の両方で、各抽出性物質の濃度はng/mLの単位である。ゼオライトは、規制問題の原因となりうるある種の抽出性物質の濃度を減少させることができる。



表6で、2種の本発明の5層積層構造と1種の比較の4層積層構造を開示する。通常の接着剤を用い、共押出しをした4層フィルムを第2のフィルム(=層5)に積層することによって、2種の5層構造を各々製造した。通常の接着剤を用い、共押出しをした3層フィルムを第2のフィルム(=層4)に積層することによって、比較構造を製造した。

本発明の積層構造の各層の(ミルにおける)目標(及びほぼ実際の)寸法は以下のとおりであった。

比較積層構造の各層の(ミルにおける)目標(及びほぼ実際の)寸法は以下のとおりであった。

ゼオライトが、酸化副生成物を除去できるかどうかを評価するために、実施例2と3のフィルムに食品法の移行試験を行った。効率を比較2と比較した。抽出性物質のリストを表3に示す。試験は、表7に要約してあるように、Miglyol812(Huls America販売)である脂肪食品擬似物によるフィルムの抽出である。ゼオライトは、規制問題の原因となりうるある種の抽出性物質の濃度を減少させることができる。

表8に、3種の本発明の5層積層構造と1種の比較の5層積層構造を開示する。通常の接着剤を用い、共押出し4層フィルムを第2のフィルム(=層5)に積層することによって、5層構造を各々製造した。

本発明と比較の積層構造の各層の(ミルにおける)目標(及びほぼ実際の)寸法は以下のとおりであった。

スライスした七面鳥胸肉を、実施例4、5、6、及び比較3のフィルムから製造した包装中で保存した。ゼオライトが、酸素補足反応の副生成物が原因のオフフレーバーを減少させることができるかどうかを評価するために、官能パネルは七面鳥スライスを試食した。
米国特許第5,211,875号に開示の方法で、フィルムに紫外線を照射し

70Bフィルムを、包装の底ウエブとして用いた。各包装は七面鳥の1個のスライスを含んでいた。各包装に、99%N2と1%O2からなる混合気体を流入させた。暗所、40°Fで7日間、包装を保存した。
官能パネルは、七面鳥スライスの味覚を評価した。尺度は1〜6であり、1は非常なオフフレーバーを示し、6はオフフレーバーの無いことを示していた。平均得点を表9に要約する。幾つかの場合に、ゼオライトは、酸素捕捉反応の副生成物が原因のオフフレーバーを減少させることができる。

表10に、2種の本発明の5層積層構造と2種の比較の5層積層構造を開示する。通常の接着剤を用い、共押出し4層フィルムを第2のフィルム(=層5)に積層することによって、5層構造を各々製造した。

本発明と比較の積層構造の各層の(ミルにおける)目標(及びほぼ実際の)寸法は以下のとおりであった。

スライスした七面鳥胸肉を、実施例7、8、及び比較4、5のフィルムから製造した包装中で保存した。ゼオライトが、酸素捕捉反応の副生成物が原因のオフフレーバーを減少させることができるかどうかを評価するために、官能パネルは七面鳥スライスを試食した。
米国特許第5,211,875号に開示の方法で、フィルムに紫外線を照射し

70Bフィルムを、包装の底ウエブとして用いた。各包装は七面鳥の1個のスライスを含んでいた。各包装に、99%N2と1%O2からなる混合気体を流入させた。暗所、40°Fで7日間、包装を保存した。
官能パネルは、七面鳥スライスの味覚を評価した。尺度は1〜6であり、1は非常なオフフレーバーを示し、6はオフフレーバーの無いことを示していた。表11は、包装された七面鳥スライスでオフフレーバーを知覚しなかった(即ち、得点6)のパネリストの割合を要約する。幾つかの場合に、ゼオライトは、酸素捕捉反応の副生成物が原因のオフフレーバーを有意に減少させることができる。

ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(GC)法を用いて、物質がアルデヒドを吸収する能力を測定した。物質(粉末6〜7mg、又は4%吸収剤を含むLLDPEフィルムの25mmディスク)をヘッドスペースGCバイアル(22mL)に入れ、メタノール中の示したアルデヒドを各約0.1%含むアルデヒド混合液2μLを各バイアルに注入した。バイアルを80℃で1時間インキュベートし、GCに注入した。表12のデータは、適切な対照(吸収剤又はLLDPEディスクを含まないバイアル)に対し、各物質の場合のアルデヒド濃度のパーセント変化を示す。

表12のデータは、種々のゼオライトはアルデヒドの移行を減少することができることを示す。更に、種々の物質の特異性により、物質の混合に利点がありうることが分る。
本発明のフィルムは、共押出し、積層化、押出し被覆、又はコロナ結合、場合によっては照射及び/又は延伸などの通常の手段によって製造できる。本発明のフィルムは、所望ならば、機械方向又は横断方向のどちらか又は両方で延伸比1:2〜1:9で、延伸又は横延伸によって熱収縮性にすることができる。収縮適用の場合、本発明のフィルムは、どちらか一方の方向又は両方の方向で、90℃で、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、最適には少なくとも30%の自由収縮を有するように製造できる。
本発明のガスケット組成物は、熱可塑性組成物のための押出し混合、及びプラスチゾル組成物のための通常の混合装置を含むがそれらに限定されない通常の方法で製造できる。次に、本発明のガスケット組成物は、冷成形法、挿入ディスク、加圧ノズルによる液体プラスチゾルの適用、次いでオーブンでの固化を含むがそれらに限定されない通常の方法で蓋上でガスケットに形成されることができる。
下記の請求の範囲から逸脱することなしに、種々の改変及び修飾を行うことができる。例えば、異なるゼオライトの混合物を同一製品(例えばフィルム又は密封性混合物)で使用できる。フィルムにおいて、ゼオライトは、酸素スカベンジャーよりも、食品又は酸素感受性品でありうる包装の内容物により近く配置されるように、ゼオライトがフィルム中で、及び包装物質として使用されることが好ましいが、酸素スカベンジャー含有層が、ゼオライト含有層よりも、フィルムから製造される包装の内容物により近く配置されるように、ゼオライトが酸素スカベンジャーの“外に”配置される適用もありうる。あるいは、ゼオライトは、酸素スカベンジャーの両側に配置されることができる。また、同一フィルム内で、第1のゼオライトを第1層で使用し、第1ゼオライトとは異なる第2のゼオライトをフィルムのもう一つの層で使用できる。
あるいは、上記配置に加えて、又はその代わりに、ゼオライトは、酸素捕捉物質と同一層(単数又は複数)に配置できる。例を挙げると、例及び図の14、34、44、54は、ゼオライトを層重量の任意の適切なパーセント含むことができる。このような混合層における酸素スカベンジャーとゼオライトの好適混合は95〜99.5%の酸素スカベンジャー及び0.5〜5%のゼオライトである。任意の適切なポリマー物質を、ゼオライト含有フィルムで使用でき、本明細書記載のものに限定されない。
本発明のフィルムで使用されるゼオライトの量は、好ましくはそれが存在する層の0.1〜5%である。これらの割合は、本質的にゼオライト物質(例えばゼオライト)に基づき、ゼオライト物質が、ポリエチレンなどの別の物質とのマスターバッチとして使用される場合には、適当な調整を行う。層の5%超で、フィルムの光学的性質はある程度悪くなりうるが、フィルムはまだ多くの適用で使用できる。不透明フィルム又は容器のガスケットのような、光学的性質が包装の決定的性質ではない最終使用の適用において、より大量のゼオライトを有益に使用できる。
本明細書開示のゼオライトは、フィルムもしくは被覆と共に、もしくはそれらの中で使用でき、あるいは層もしくは別の物体上の被覆のような、又は瓶のキャップもしくは瓶のライナーのような、接着もしくは非接着挿入物、シーラント、ガスケット、繊維状マットもしくは他の挿入物のような、又は硬い、半ば硬い、もしくは柔らかい容器の非必須成分のような、捕捉用途もしくは他の用途のための種々の他の支持体に吸収されることができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-02-09 
結審通知日 2006-02-15 
審決日 2006-03-01 
出願番号 特願平9-531943
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (C08K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤本 保  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐野 整博
船岡 嘉彦
登録日 2004-03-05 
登録番号 特許第3529139号(P3529139)
発明の名称 包装フィルムにおけるゼオライト  
代理人 川口 義雄  
代理人 小野 誠  
代理人 大崎 勝真  
代理人 川口 義雄  
代理人 箱田 篤  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 平山 孝二  
代理人 小川 信夫  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 大崎 勝真  
代理人 坪倉 道明  
代理人 坪倉 道明  
代理人 小野 誠  

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