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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A62B
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A62B
管理番号 1143679
審判番号 無効2005-80243  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-13 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-08-10 
確定日 2006-07-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3488821号発明「マスク」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3488821号の請求項1〜5に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3488821号に係る発明は、平成9年12月26日(優先権主張 平成9年3月17日、平成9年7月31日)に出願され、平成15年10月31日に特許権の設定登録がされたものであって、その後の平成17年8月10日に株式会社メディテックジャパンより本件特許明細書の請求項1〜9に係る発明の特許について特許無効の審判が請求され、これに対して被請求人より平成17年10月26日に答弁書及び訂正請求書が提出され、さらに、請求人より平成17年12月2日に弁駁書が提出されたものである。

2.当事者の主張
(1)請求人の主張の概要
審判請求書によれば、審判請求人は、次の理由a)〜c)及び証拠から、本件の請求項1〜9に係る発明の特許が特許法123条第1項第2号および第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。 また、弁駁書によれば、審判請求人は、次の理由d)〜f)及び証拠から、本件の訂正後の請求項1〜5に係る発明の特許が特許法123条第1項第2号および第4号に該当し、無効とすべきものであると主張している。
(理由)
a)本件の請求項1に係る発明は、甲1号証の1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し、特許を受けることができないものである。
b)本件の請求項1〜9に係る発明は、甲第1号証の1〜甲第6号証の1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
c)本件の請求項1〜9に記載の「弾性部材」及び本件の請求項2に記載の「裏面側」については、本件の発明の詳細な説明の欄に、当業者が各請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件は特許を受けることができないものである。
d)本件の訂正後の請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証の1〜甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
e)本件の訂正後の請求項1〜5に記載の「弾性部材」については、本件の発明の詳細な説明の欄に、当業者が各請求項に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件特許は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件は特許を受けることができないものである。
f)本件の訂正後の請求項1〜4の「…する際、…されることを特徴とするマスク」という記載は明確でないから、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件は特許を受けることができないものである。
(証拠)
甲第1号証の1:米国特許第3,985,132号明細書
甲第1号証の2:米国特許第3,985,132号明細書の日本語訳(請求人作成)
甲第2号証の1:実開昭53-159696号公報
甲第2号証の2:実願昭52-65319号(実開昭53-159696号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開平8-107939号公報
甲第4号証:実願昭61-88989号(実開昭62-200351号)のマイクロフィルム
甲第5号証の1:米国特許第4,662,005号明細書
甲第5号証の2:米国特許第4,662,005号明細書の一部日本語訳(請求人作成)
甲第6号証の1:米国特許第3,802,429号明細書
甲第6号証の2:米国特許第3,802,429号明細書の要約部分日本語訳(請求人作成)
甲第7号証:本件特許出願の平成13年5月11日付け意見書
甲第8号証:インターネット辞書「大辞林」による「溶着」の解説
甲第9号証:登録実用新案第3033312号公報

なお、審判請求人は、弁駁書において上記甲第8号証及び甲第9号証を提出している。

(2)被請求人の主張の概要
一方、答弁書によれば、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると主張している。

3.訂正請求について
(1)訂正事項
本件特許の願書に添付した明細書及び図面(以下、「本件特許明細書」という。)の訂正請求(以下、「本件訂正」という。)は、平成17年10月26日付け訂正請求書(以下、「訂正請求書」という。)によると、次の事項をその訂正内容とするものである。

(A)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1乃至9を
「【請求項1】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の裏側部材と、この裏側部材に対向して設けられると共に紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、
前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを特徴とするマスク。
【請求項2】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化すると共に、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを特徴とするマスク。
【請求項3】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、長手形状の弾性部材が前記長方形状のマスク本体に内在して取り付けられ、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿うと共に前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏則部材と前記表側部材を縫製により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束することを特徴とするマスク。
【請求項4】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を溶着により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束することを特徴とするマスク。
【請求項5】長手形状の弾性部材の両端部が長方形状のマスク本体の両短辺側の略中央にそれぞれ位置していることを特徴とする請求項3又は4記載のマスク。」
と訂正する。

(B)訂正事項b
b1.本件特許明細書の段落【0011】、【0012】、【0014】、【0015】、【0051】、【0052】、【0054】および【0055】の記載を削除する。

b2.本件特許明細書の段落【0013】の記載を「【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するためになされた請求項1記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の裏側部材と、この裏側部材に対向して設けられると共に紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されるものである。」と訂正する。

b3.本件特許明細書の段落【0016】の記載を「また、請求項2記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化すると共に、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されるものである。」と訂正する。

b4.本件特許明細書の段落【0017】の記載を「また、請求項3記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、長手形状の弾性部材が前記長方形状のマスク本体に内在して取り付けられ、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿うと共に前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を縫製により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束するものである。」と訂正する。

b5.本件特許明細書の段落【0018】の記載を「また、請求項4記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を溶着により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束するものである。」と訂正する。

b6.本件特許明細書の段落【0019】の記載を「また、請求項5記載のマスクは、請求項3又は4記載のマスクにおいて、長手形状の弾性部材の両端部が長方形状のマスク本体の両短辺側の略中央にそれぞれ位置しているものである。」と訂正する。

b7.本件特許明細書の段落【0053】の記載を「【発明の効果】請求項1記載のマスクによれば、長手形状の弾性部材が長方形状のマスク本体に内在されているから、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体が顔に触れ、長手形状の弾性部材が顔に直接触れないため、マスクの使用勝手を向上させることができる。」と訂正する。

b8.本件特許明細書の段落【0056】の記載を「請求項2記載のマスクによれば、裏側部材と表側部材との両短辺側を溶着により一体化する際、裏側部材と表側部材との両短辺側の一体化以外に、長手形状の弾性部材の両端部の移動をも阻止することができ、弾性部材を容易にマスク本体内に取り付けることができる。」と訂正する。

b9.本件特許明細書の段落【0057】の記載を「請求項3記載のマスクによれば、マスクを顔面に装着する際、折り目を広げるようにして使用すれば、弾性部材とマスク本体が共に変形し、マスク本体の略中央部が突出する略凸形状となり、しかも、弾性部材によりマスク本体の略凸形状の状態を保持することができ、この状態でマスクを顔面に装着すれば、マスク本体の略凸形状の裏面側は略凹形状となり、マスクと口との間隔を取ることができ、マスクが口に直接当たりにくい構成となり、マスクの使用勝手を向上させることができる。」と訂正する。

b10.本件特許明細書の段落【0058】の記載を「請求項4記載のマスクによれば、マスクを顔面に装着した場合、マスク本体に内在した長手形状の弾性部材の両端部がマスク本体の両短辺側に達する手前に位置しているため、長手形状の弾性部材の両端部が裏側部材を介して皮膚に当たらず、違和感を解消することができる。」と訂正する。

b11.本件特許明細書の段落【0059】の記載を「請求項5記載のマスクによれば、折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束され、両端部を除く他の折り目の部分は拘束されず、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部を前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置させ、長手形状の弾性部材の周囲を溶着により前記マスク本体に一体化されているから、マスクを顔面に装着する際、折り目を広げるようにして使用すれば、弾性部材とマスク本体が共に変形し、マスク本体の略中央部が突出する略凸形状となり、しかも、弾性部材によりマスク本体の略凸形状の状態を保持することができ、この状態でマスクを顔面に装着すれば、マスク本体の略凸形状の裏面側は略凹形状となり、マスクと口との間隔を取ることができ、マスクが口に直接当たりにくい構成となり、マスクの使用勝手を向上させることができ、また、マスクを顔面に装着する際、略平坦形状のマスクを折り目を広げるようにして使用することができるため、マスクを工場等で製造し出荷する際、マスクを略平坦形状でコンパクトに包装等することができる。」と訂正する。

(2)訂正の適否について
(イ)特許請求の範囲の訂正の適否
訂正事項aにおける請求項1についての訂正内容は、訂正前の請求項1を引用する請求項3の構成に同訂正前の請求項6の一部の構成を付加すると共に、訂正前の請求項1に記載された「・・・前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、・・・前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着、接着、縫製等により・・・」という事項および訂正前の請求項6に記載された「・・・前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着、接着、縫製等により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着、接着、縫製等による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束される・・・」という事項における「溶着、接着、縫製等」を「溶着」のみに限定するものであるから、訂正前の請求項3に基づいて特許請求の範囲の減縮をしたものといえる。
また、訂正事項aにおける請求項2についての訂正内容は、訂正前の請求項1を引用する請求項6につき、引用形式で記載されたものを独立形式に改めると共に、訂正前の請求項6に記載された「・・・前記表側部材の周囲を溶着、接着、縫製等により一体化すると共に、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着、接着、縫製等により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着、接着、縫製等により・・・」という事項における「溶着、接着、縫製等」を「溶着」のみに限定するものであるから、訂正前の請求項6に基づいて特許請求の範囲の減縮をしたものといえる。
また、訂正事項aにおける請求項3についての訂正内容は、訂正前の請求項7に記載されていたものに「前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され」および「前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を縫製により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束する」との限定をするものであるから、訂正前の請求項7に基づいて特許請求の範囲の減縮をしたものといえる。
また、訂正事項aにおける請求項4についての訂正内容は、訂正前の請求項8に記載された「・・・前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を溶着、接着、縫製等により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束する・・・」という事項における「溶着、接着、縫製等」を「溶着」のみに限定するものであるから、訂正前の請求項8に基づいて特許請求の範囲の減縮をしたものといえる。
また、訂正事項aにおける請求項5についての訂正内容は、上述した訂正に伴い訂正前の請求項1、7又は8を引用する請求項9を、訂正後の請求項3又は4を引用する形式に変えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものといえる。
さらに、上記訂正内容は、いずれも本件特許明細書の特許請求の範囲の記載、段落【0037】の記載、段落【0040】の記載及び段落【0056】の記載から自明な事項であるといえるから、本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものである。
そして、上記訂正事項aの訂正内容は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないといえる。

(ロ)発明の詳細な説明の記載の訂正の適否
訂正事項bの訂正内容(b1〜b11)は、上記の特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであることが明らかである。
そして、訂正事項bの訂正内容(b1〜b11)は、上述したように本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないといえる。

したがって、上記訂正事項a、bは、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、いずれも、本件特許明細書に記載されている事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き各号並びに同条第5項の規定において準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

4.本件発明について
上記3.のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1〜5に係る発明(以下順に、「本件発明1」〜「本件発明5」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面(以下、「訂正明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりの次のものと認める。

(本件発明1)
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の裏側部材と、この裏側部材に対向して設けられると共に紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、
前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを特徴とするマスク。」

(本件発明2)
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化すると共に、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを特徴とするマスク。」

(本件発明3)
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、長手形状の弾性部材が前記長方形状のマスク本体に内在して取り付けられ、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿うと共に前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏則部材と前記表側部材を縫製により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束することを特徴とするマスク。」

(本件発明4)
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を溶着により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束することを特徴とするマスク。」

(本件発明5)
「長手形状の弾性部材の両端部が長方形状のマスク本体の両短辺側の略中央にそれぞれ位置していることを特徴とする請求項3又は4記載のマスク。」

なお、審判請求人が理由f)として記載が明確でないと指摘する「前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されること」に関しては、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側が溶着により一体化される際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを意味するものと解すれば、すなわち、単に、受動態として表現されるべきところの一部箇所が能動態として表現されただけで、その記載表現が異なることにより実質的な意味に影響を与えるものではないから、その記載が不備であるとまではいえず、請求項1〜4に記載されたとおりに認定した。

5.刊行物記載事項
(1)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第1号証の1(米国特許第3,985,132号明細書)の刊行物(以下、「刊行物1」という。)には、「フィルターマスク」に関して、図面の図1〜図7とともに、次の事項が記載されている(括弧内の翻訳は請求人によるものを示した。)。
(イ)「Size reductions have been achieved by pleating the filter medium, for example, as disclosed in U.S. Pat. No. 3,802,429. … It would therefore be an improvement in the art of filter masks to provide a filter mask foldable into relatively reduced dimensional and flat configuration for ease of packaging and shipment while also providing an enlarged filtering surface having an integral support therein. … (小型化は、例えば米国特許第3,802,429号に開示されているように、フィルター素材に折り目をつけることにより達成される。 … それ故、包装と輸送を容易にするため、平らな形状に折り畳んで比較的小さくした寸法形状のフィルターマスクを提供し、一方その中に必須の支持体を有する拡大されたろ過する表面を提供することもまた、フィルターマスクの技術において改良点である。)」(1欄44〜55行)
(ロ)「It is another object of this invention to provide a filter mask which is pleated so as to present a planar configuration prior to use and a generally hemispherical contour when the pleats are opened. … An even still further object of this invention is to provide a filter mask which has an integral stiffening member which supports the filter medium away from the nose and mouth of the wearer. … (本発明の他の目的は、使用前は折り畳まれて平らな形状で、使用に際しては折り目が開いたとき一般に半球状形状を与える為に折り畳まれたフィルターマスクを提供することである。 … 更にそれ以上の本発明の目的は、フィルター部材を着用者の鼻と口から離すように支えるのに不可欠な芯部材を有するフィルターマスクを提供することである。)」(2欄10〜21行)
(ハ)「… The stiffening members extend parallel to and substantially the entire length of the pleats and may even extend to the borders as represented by seam bindings 20 and 22. With the stiffening members 30 and 32 extending parallel with the pleats 14, 16 and 18 and the ends of the pleats being joined by seam bindings 20 and 22 any vertical opening of the pleats, for example, as shown in FIG.3, will cause a foreshortening of the lateral dimension of filter mask 10. This lateral foreshortening of filter mask 10 causes a subsequent bowing of the stiffening members 30 and 32 causing them to bow outwardly as shown in FIG.3 and support filter medium 12 away from the nose and mouth of the wearer 34, FIG.4. Stiffening members 30 and 32 may be fabricated from any suitable stiffening material such as a wire, plastic strip, or other material having a stiffening action so as to bow outwardly and support the filter medium when the pleats are opened. Desirably, the members 30 and 32 have memory to return toward a flat configuration when the mask 10 is allowed to come to rest upon a flat surface. (芯部材は折り目へ平行に、実質的に折り目の長さ全体に伸び、さらに縁取り布20と22で示される縁へまでも延長することができる。折り目14,16と18に平行に伸びる芯部材30と32及び縁取り布20と22により接合された折り目の端により、例えば図3に示されるように折り目の縦方向のいかなる開きもフィルターマスク10の横方向寸法の縮小を引き起こす。このフィルターマスク10の横方向への縮小は、芯部材30と32のその後の弓形の変形を引き起こし、これらが図3に示されるように外側へ弓形に変形する原因となり、フィルター部材12を着用者34の鼻と口から離れて支持する(図4)。芯部材30と32は、折り目が開いたときフィルター部材を外側へ弓形に変形し支持することができるように硬くする作用を有する、ワイヤー、プラスチックの細長い片、あるいは他の材料のような、適当な硬化する材料から作られる。望ましくは、部材30と32は、マスク10が平らな面に置かれたとき、平らな形状へ戻る復元力を有していることが好ましい。)」(3欄14〜36行)
(ニ)「1. A filter mask adapted to be worn upon the face of a wearer, the mask comprising:
an initially generally planar surface of filter medium having a vertical and a horizontal dimension and being foreshortened vertical by having at least one pleat folded into the medium, the pleat being joined at each end to the border of the planar surface;
at least one horizontally extending resilient elongated, thin stiffener secured at least at the ends thereof to the filter medium parallel to the pleat, the elongated, thin stiffener bowing outwardly upon opening of the pleat so as to exert an outward force on the mask;
attachment means for releasably securing the filter medium upon the face of a wearer; and
a yieldable deformable conforming means horizontally extending across the upper edge of the filter medium so as to conform the filter medium to the nasal contour of the wearer.
(1.着用者の顔へ装着するように適応されたフィルターマスクであり、マスクは以下を含む:
縦と横の寸法を有するフィルター材料の初めは一般的に平らな表面、これが材料へ折り込まれた少なくとも一つの折り目を有することにより縦へ縮まっており、折り目はそれぞれの端で平らな表面の縁へ接合しており;
折り目へ平行に、フィルター材料に少なくともその端で確保され、横方向に渡っている弾性的で細長く薄い少なくとも一つの芯材、この細長い薄い芯材はマスクに外へ向かう力を働かせるために折り目を開くとき外側へ弓形に曲がり;
着用者の顔へフィルター材料を取り外しすることを確保する為の取付手段;および
着用者の鼻の輪郭へフィルター材料を適合させるためのフィルター材料上端に渡って横方向に伸びている、たわんで変形できる適合手段。)」(4欄27〜46行)
(ホ)図2には、芯材がマスク本体に内在されている態様、および、芯材がマスクの縦方向中央部に配設されている態様が示されており、図4には、マスク本体が、少なくとも、鼻、口に臨んでいる態様が示されている。

上記記載事項並びに図面に示された内容を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「少なくとも一つの折り目を有することにより縦へ縮まっており、折り目はそれぞれの端で平らな表面の縁へ接合されている縦と横の寸法を有するフィルター材料の初めは一般的に平らな表面と、マスクに外へ向かう力を働かせるために折り目を開くとき外側へ弓形に曲がるようにされた芯材であって、折り目へ平行に、フィルター材料に少なくともその端で確保され、横方向に渡っている弾性的で細長く薄い少なくとも一つのマスク本体に内在された芯材とを含む、少なくとも、鼻、口に臨んで、着用者の顔へ装着するように適応されたフィルターマスク」

(2)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第2号証の2(実願昭52-65319号(実開昭53-159696号)のマイクロフィルム)の刊行物(以下、「刊行物2」という。)には、「手術用マスク」に関して、図面の第1図〜第5図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「…本考案のマスクは、適当な可撓性を有する合成樹脂や金属製等の細長い線材や板材等からなる力骨を、マスクに接着するか、縫いつけるか、或いは取付取外し自在に、横方向に取付けてなる事を特徴とするものである。」(明細書2ページ9〜13行)
(ロ)「…該マスクは紙製の表面層1'と、同じく紙製の裏面層1''、及びその中間に介在する脱脂綿製中間層1'''の3層よりなる複合層1の上下縁を、縁取材2・2で縁取し、第3図に示すように折加工し、その裏面層1''中央部に、左右両側及び上縁に糊付して木綿布製の力骨収容帯6を貼着し、左右両側を縁取材3・3で縁取し、該縁取材3・3の夫々の両側を延長して結び紐3'・3'・3'・3'となし、更に表面層1'下部中央部に、合成樹脂製平板5を貼着し、上記力骨収容帯6内に、第4図に示されるような湾曲した合成樹脂製線材(力骨)4を収容したものである。」(同2ページ16行〜3ページ7行)

(3)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第3号証(特開平8-107939号公報 )の刊行物(以下、「刊行物3」という。)には、「マスク」に関して、図面の第2図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 それ自身の左右両側部に耳かけ用紐状体が取り付けられたマスク本体を濾過効果を有する不織布で形成し、上記マスク本体の中央部に横方向に延びる折り返し部を複数条形成し、上記マスク本体の上端部から上方に向かって突出する状態で可撓性を有する眼部被覆用の透明板を取り付けたことを特徴とするマスク。
【請求項2】 マスク本体が3層の不織布で構成され、中央の不織布が、その他の2層の不織布よりも緻密に形成された請求項1記載のマスク。」
(ロ)「【0009】【実施例】…、表面側に配置された第1層不織布22は、上記第2層,第3層不織布21,20よりも上下方向にやや大きく形成されており、これらを3層積重した状態で上下端部の所定幅が裏面側へ折り返されており、この部分が、かがり部23a,23bに形成されている。この両かがり部23a,23bは、それぞれの上下端縁部が全長にわたって(マスク本体10の横方向に)鎖線状に熱融着されている。そして、マスク本体10の上側に位置するかがり部23aには、その上下の融着部15の隙間に形成された横方向に延びる袋状部分に、マスク本体の横幅よりも少し短く形成された折り曲げ自在な金属製の帯状ワイヤ13が装入されている。…」
(ハ)「【0010】上記透明板11は、合成樹脂製で可撓性を有する薄板状に形成されており、図3に示すように、正面視略四角形でその下端辺がゆるやかな凹曲状に形成され、この下端辺の中央部には、切れ込み部16が形成されている。また、上記透明板11の表面は、防曇処理が施されている。そして、この透明板11は、その左右両端の下端部が、上記マスク本体の上側の左右両端部分と熱融着によって固定されている。図において17は融着部である。」

(4)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第4号証(実願昭61-88989号(実開昭62-200351号)のマイクロフィルム)の刊行物(以下、「刊行物4」という。)には、「マスク」に関して、図面の第2図とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「…2層の熱融着性繊維を含む不織布(11)の間に、濾過性能を高めるためにメルトブロー法により作成された10μm以下の平均直径の微細繊維からなる不織布(12)が挟まれた形に積層されている。…」(明細書7ページ4〜8行)
(ロ)「…微細繊維からなる不織布層として密度の異なる2層を用いて4層構造としてもよく、あるいは活性炭を保持した不織布などの他の性能を有する繊維質層と組合せて4層構造、あるいはそれ以上の多層構造としてもよい。」(同8ページ5〜10行)

(5)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第5号証の1(米国特許第4,662,005号明細書)の刊行物(以下、「刊行物5」という。)には、次の事項が記載されている(括弧内の翻訳は請求人によるものを示した。)。
(イ)「… the nose piece may be secured adhesively, such as between the binding strip and the outer surface of one of the layers 4 or 8 of the pad 2. …(ノーズピース(26)は、結合片とパッド2の層4または8の一層の外表面の間に、接着剤的に固定することができる。)」(4欄52〜54行)

(6)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第6号証の1(米国特許第3,802,429号明細書)の刊行物(以下、「刊行物6」という。)には、次の事項が記載されている(括弧内の翻訳は請求人によるものを示した。)。
(イ)「There is disclosed a surgical face mask comprising two layers of a porous, nonwoven facing fabric and a nonwoven fabric filtration medium between the layer of facing fabric.(顔に面している布層間にあって、不織布からなるろ過性媒体と、多孔質で顔に面している不織布と、の2つの層からなる外科用顔面マスクが開示されている。)」(ABSTRACT)

(7)本件発明の特許出願日前に頒布されたところの甲第9号証(登録実用新案第3033312号公報)の刊行物(以下、「刊行物7」という。)には、「ガーゼマスク」に関して、図面の図1〜図5とともに、次の事項が記載されている。
(イ)「【0023】また、前記マスク本体2の鼻を横切って覆う部分10に、図6に示す横方向に向って延び針金などの軟質金属、または、この軟質金属に合成樹脂を被覆した屈曲可能な材質にて形成された鼻抑え芯材11を固定する。この鼻抑え芯材11は前記ガーゼ布1の折り込み位置5bと下縁との間の折り込む部分12の上部に縫着する。…」
(ロ)「【0031】 前記実施の形態では、鼻抑え芯材11および頬当部材15はマスク本体2に縫着したため、ずれが生じることがないとともに装着感を損なうことがないが、ホットメルトによる接着、熱熔着などより固定することもできる。」

6.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明の「縦と横の寸法を有するフィルター材料」の「平らな表面」は本件発明1の「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体」に相当し、同様に、引用発明の「縦へ縮ま」る「少なくとも一つの折り目」は本件発明1の「マスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目」に、引用発明の「折り目はそれぞれの端で平らな表面の縁へ接合されている」点は本件発明1の「マスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部」を「拘束された」点に、引用発明の「折り目へ平行に、フィルター材料に少なくともその端で確保され、横方向に渡っている弾性的で細長く薄い少なくとも一つのマスク本体に内在された芯材」は本件発明1の「長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置」し「マスク本体の両短辺側に一体化され」、「マスク本体に内在され」た「長手形状の弾性部材」に、それぞれ相当するといえる。

してみると、両者は、
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の部材を含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在されるマスク。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違するということができる。

[相違点1]
本件発明1では、折り目の両端部を溶着により拘束しているのに対して、引用発明では、折り目が溶着を用いて拘束されていない点。
[相違点2]
本件発明1では、長手形状の弾性部材の両端部がマスク本体の両短辺側に位置し、溶着によりマスク本体の両短辺側に一体化されているのに対して、引用発明では、長手形状の弾性部材の両端部がマスク本体の両短辺側に位置し、マスク本体の両短辺側に一体化されているものの、一体化が何によりなされているのか明らかでない点。
[相違点3]
本件発明1では、通気性素材からなる長方形状の部材が、裏側部材と表側部材とを含むのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。
[相違点4]
本件発明1では、裏側部材と表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、裏側部材と表側部材を溶着による一体化により長手形状の弾性部材の両端部が拘束されるのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。

(相違点の検討)
そこで、上記の相違点1〜3につき、以下検討する。
[相違点1]について
様々な部位の接合に、溶着を用いることは、刊行物3(上記「5.」(3)(ロ)、(ハ)参照)や刊行物7(上記「5.」(7)(ロ)参照)に示されるようにマスクの製造における周知技術である。
してみると、引用発明の折り目の両端部を拘束するに際して、周知技術である溶着を採用して、相違点1に係る本件発明1の構成を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
[相違点2]について
マスクの製造において、溶着を用いることは、「[相違点1]について」において説示したとおり、周知技術である。
してみると、引用発明に弾性部材の固定において、周知技術を適用して、相違点2に係る本件発明1の構成を得ることは当業者が容易に想到し得たものといえる。
[相違点3]について
ところで、裏側部材と表側部材とで構成される複層構造のマスクは、刊行物2(上記「5.」(2)(ロ)参照)や刊行物3(上記「5.」(3)(イ)参照)に示されるように周知技術である。
してみると、相違点3に係る本件発明1の構成は、引用発明に複層構造からなるマスクという周知技術を適用して、当業者が容易に想到し得たものといえる。
[相違点4]について
マスクの製造において、溶着を用いることは、「[相違点1]について」において説示したとおり、周知技術である。そして、部材を熱により融解させて接着を行うという溶着の性質に鑑みれば、工程として同時にできるものを単一工程とすることは、当業者が通常の創作能力を発揮してなし得ることといえる。
そうしてみると、相違点4に係る本件発明1の構成は、引用発明に周知技術を適用して当業者が容易に想到し得たものといえる。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1から「裏側部材」および「表側部材」の限定事項である「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の」との構成を省く一方で、「積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化する」との限定を付加したものといえるから、本件発明2と引用発明とを対比すると、次に示す点(以下、「一致点2」という)で一致し、上記「6.」(1)に記載した相違点1〜4で相違するとともに、さらに、次の点(以下、「相違点5」という。)で相違する。

[一致点2]
本件発明2および引用発明の両者共に
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む部材を含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在されるマスク。」
である点。

[相違点5]
本件発明2では、積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化するのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。

(相違点の検討)
[相違点1]〜[相違点4]について
相違点1〜4については、上記「6.」(1)で説示したとおりである。
[相違点5]について
マスクの製造において、溶着を用いることは、「[相違点1]について」において説示したとおり、周知技術であり、該周知技術を、裏側部材と表側部材の接合に際して用いることは、当業者であれば容易に想到し得たものといえる。

(3)本件発明3について
本件発明3と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明の「縦と横の寸法を有するフィルター材料」の「平らな表面」は本件発明3の「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体」に相当し、同様に、引用発明の「縦へ縮ま」る「少なくとも一つの折り目」は本件発明3の「マスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目」に、引用発明の「折り目はそれぞれの端で平らな表面の縁へ接合されている」点は本件発明3の「マスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部」を「接着」により「拘束された」点に、引用発明の「折り目へ平行に」、「横方向に渡っている弾性的で細長く薄い少なくとも一つのマスク本体に内在された芯材」は本件発明3の「長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿」って「マスク本体に内在して取り付けられ」た「長手形状の弾性部材」に、それぞれ相当するといえる。

してみると、両者は、
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を接着により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む部材を含み、長手形状の弾性部材が前記長方形状のマスク本体に内在して取り付けられ、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿ったマスク。」である点(以下、「一致点3」という。)で一致し、次の点で相違するということができる。

[相違点3-1]
本件発明3では、マスク本体が、裏側部材と表側部材とを含むのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。
[相違点3-2]
本件発明3では、長手形状の弾性部材の両端部はマスク本体の両短辺側に達する手前に位置しているのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。
[相違点3-3]について
本件発明3では、長手形状の弾性部材の周囲の裏則部材と表側部材を縫製により一体化して、長手形状の弾性部材をマスク本体内に拘束するのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。

(相違点の検討)
[相違点3-1]について
裏側部材と表側部材とで構成される複層構造のマスクは、刊行物2(上記「5.」(2)(ロ)参照)や刊行物3(上記「5.」(3)(イ)参照)に示されるように周知技術である。
してみると、相違点3-1に係る本件発明3の構成は、引用発明に複層構造からなるマスクという周知技術を適用して、当業者が容易に想到し得たものといえる。
[相違点3-2]について
ところで、かがり部に、マスク本体の横幅よりも少し短く形成された折り曲げ自在な金属製の帯状ワイヤを装入することは、刊行物3に記載されており(上記「5.」(3)(ロ)参照)、このことは、本件発明の「長手形状の部材の両端部をマスク本体の両短辺側に達する手前に位置」させることに実質的にみて相当する。
してみれば、引用発明における弾性部材を刊行物3に記載の弾性部材の如く、両端部がマスク本体の両短辺側に達する手前に位置するように構成して、相違点3-2に係る本件発明3の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。
[相違点3-3]について
ところで、長手形状の弾性部材の周囲の裏側部材と表側部材を縫製により一体化して、長手形状の弾性部材をマスク本体内に拘束することは、刊行物2に記載されている(上記「5.」(2)(イ)および(ロ)参照)。
してみれば、相違点3-3に係る本件発明3の構成は、引用発明に刊行物2に記載の技術事項を適用して、当業者が容易に想到し得たものといえる。

(4)本件発明4について
本件発明4と引用発明とを対比すると、その機能ないし構造からみて、引用発明の「縦と横の寸法を有するフィルター材料」の「平らな表面」は本件発明4の「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体」に相当し、同様に、引用発明の「縦へ縮ま」る「少なくとも一つの折り目」は本件発明4の「マスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目」に、引用発明の「折り目はそれぞれの端で平らな表面の縁へ接合されている」点は本件発明4の「マスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部」を「接着」により「拘束された」点に、引用発明の「折り目へ平行に」、「横方向に渡っている弾性的で細長く薄い少なくとも一つのマスク本体に内在された芯材」は本件発明4の「マスク本体に内在され」、「長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ」た「長手形状の弾性部材」に、それぞれ相当するといえる。

してみると、両者は、
「紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を接着により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む部材を含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられたマスク。」である点(以下、「一致点4」という。)で一致し、次の点で相違するということができる。

[相違点4-1]
本件発明4では、マスク本体が、裏側部材と表側部材とを含むのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。
[相違点4-2]
本件発明4では、長手形状の弾性部材の両端部はマスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、長手形状の弾性部材の周囲の裏則部材と表側部材を溶着により一体化して、長手形状の弾性部材をマスク本体内に拘束するのに対して、引用発明がそのような構成を具備しない点。

(相違点の検討)
[相違点4-1]について
裏側部材と表側部材とで構成される複層構造のマスクは、刊行物2(上記「5.」(2)(ロ)参照)や刊行物3(上記「5.」(3)(イ)参照)に示されるように周知技術である。
してみると、相違点3-1に係る本件発明4の構成は、引用発明に複層構造からなるマスクという周知技術を適用して、当業者が容易に想到し得たものといえる。

[相違点4-2]について
ところで、刊行物3には、上下端縁部が全長にわたって鎖線状に熱融着されたかがり部に、マスク本体の横幅よりも少し短く形成された折り曲げ自在な金属製の帯状ワイヤを装入することが記載されており(上記「5.」(3)(ロ)参照)、このことは、本件発明の「長手形状の弾性部材の両端部はマスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、長手形状の弾性部材の周囲の裏則部材と表側部材を溶着により一体化して、長手形状の弾性部材をマスク本体内に拘束する」ことに実質的にみて相当する。
してみれば、引用発明における弾性部材を刊行物3に記載の技術事項を適用して、相違点4-2に係る本件発明4の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たものといえる。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明3又は4を引用する発明であって、本件発明3又は4の構成を全て含むとともに、さらに、「長手形状の弾性部材の両端部が長方形状のマスク本体の両短辺側の略中央にそれぞれ位置している」という限定事項を加えたものといえるから、本件発明3を引用する本件発明5と引用発明とを対比すると、上記「6.」(3)に記載した一致点3で一致し、相違点3-1〜3-3で相違するものであるし、また、本件発明4を引用する本件発明5と引用発明とを対比すると、上記「6.」(4)に記載した一致点4で一致し、相違点4-1〜4-2で相違する。

(相違点および上記限定事項の検討)
[相違点3-1]〜[相違点3-3]について
相違点3-1〜3-3については、上記「6.」(3)で説示したとおりである。
[相違点4-1]〜[相違点4-2]について
相違点4-1〜4-2については、上記「6.」(4)で説示したとおりである。
[上記限定事項]について
上記限定事項については、刊行物1に同様の態様が示されている(上記「5.」(1)(ホ)参照)。
してみれば、上記限定事項についても、引用発明が実質的に具備しているものといえる。

そして、本件発明1〜5が奏する作用効果も、引用発明、刊行物2および3に記載の技術事項並び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものということができない。

以上のことから、本件発明1から5は、引用発明、刊行物2及び3に記
載の技術事項並び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。

7.むすび
したがって、本件発明1〜5の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、他の理由を検討するまでもなく、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
マスク
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長方形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスクの両短辺側に一本化され、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の裏側部材と、この裏側部材に対向して設けられると共に紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、
前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを特徴とするマスク。
【請求項2】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク体の両短辺側に一体化され、
前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化すると共に、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されることを特徴とするマスク。
【請求項3】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、長手形状の弾性部材が前記長方形状のマスク本体に内在して取り付けられ、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿うと共に前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を縫製により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束することを特徴とするマスク。
【請求項4】紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を溶着により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束することを特徴とするマスク。
【請求項5】長手形状の弾性部材の両端部が長方形状のマスク本体の両短辺側の略中央にそれぞれ位置していることを特徴とする請求項3又は4記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明(各請求項に係る発明)は、口と鼻を覆う衛生用品等としての顔面に使用するマスクに関するものであり、特に、病院等の手術室や半導体製造工場等のクリーンルーム等で用いられるものに関するものである。
【0002】
【従来の技術】外科手術室内やクリーンルーム内では、顔面マスク等を着用させて、細菌やダスト等による室内空気の汚染や汚れを防止している。マスク内外とのしゃ断を効果的に行うためには、顔面マスクを口や鼻の辺りの顔面形状とほぼ同じにする必要があることから、かかる顔面マスクには、例えば布地を部分的に折り重ねて両端を固着した折り重ねタイプや、予め立体形状になっており変形しない立体成型タイプ等の種類が存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】折り重ねタイプは、一枚の長方形の布を部分的に折り重ねて両端部を止めたものであり、重なり部を拡げるようにすると、マスク本体部が立体的な略凸形状になるというものである。すなわち、通常は一般的な顔面マスクで、平面的な形状であるが、使用する際に重なり部を拡げるようにするだけで、立体的形状にすることができる。
【0004】しかしながら、マスクで口や鼻を覆われること自体が息苦しいのに加え、用いられるマスクの素材は、ごく細かいメッシュであるとともに、マスク本体部裏面に口が直接あたるため、通気面積が狭くなりがちである。したがって、普通に呼吸したり他のスタッフと話をしたりするたびにマスクの布地が動き、より一層呼吸等がしづらくなる。
【0005】一方、立体成型タイプは、製造段階でマスク本体部の形状が立体的に製造されるため、変形させることなくそのまま使用すれば良く、使い勝手が非常に良い。
【0006】しかしながら、一体成型するための製造設備が必要になり、また、製造工程も大掛かりになるため、製造コストを押し上げている。大量の顔面マスクを保管したり輸送したりする際にも、デッドスペースが生まれてしまう。
【0007】本発明は、かかる問題点に着目してなされたものであり、呼吸する空間をマスク本体部と顔面との間に確保することができるとともに、運搬時や収納時にたくさん重ねる際に取扱いが簡易で、デッドスペースをなくすことができる顔面に使用するマスクを提供することを目的とする。
【0008】また、別の目的は、簡易な構造でも上記目的を達成できる顔面に使用するマスクの提供にある。
【0009】更に、別の目的は、息を吸うときでも、マスク本体部裏面側が口にあたることがない顔面に使用するマスクの提供にある。
【0010】更に、別の目的は、重なり部を拡げる際の手間がかからないで上記目的を達成できる顔面に使用するマスクの提供にある。
【0011】
【0012】
【0013】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決するためになされた請求項1記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の裏側部材と、この裏側部材に対向して設けられると共に紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されるものである。
【0014】
【0015】
【0016】
また、請求項2記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着により拘束されたマスクにおいて、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部が前記マスク本体の両短辺側に位置し、溶着により前記マスク本体の両短辺側に一体化され、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記長方形状のマスク本体に内在され、積層した前記裏側部材と前記表側部材の周囲を溶着により一体化すると共に、前記裏側部材と前記表側部材の両短辺側を溶着により一体化する際、前記裏側部材と前記表側部材を溶着による一体化により前記長手形状の弾性部材の両端部が拘束されるものである。
【0017】また、請求項3記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、長手形状の弾性部材が前記長方形状のマスク本体に内在して取り付けられ、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿うと共に前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を縫製により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束するものである。
【0018】また、請求項4記載のマスクは、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って折りたたんで設けられた折り目を有し、前記長方形状のマスク本体の両短辺側に位置する前記折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束されたマスクにおいて、前記長方形状のマスク本体は、少なくとも、鼻、口に臨む裏側部材と、この裏側部材と反対の側に位置する表側部材とを含み、前記長手形状の弾性部材は前記マスク本体に内在され、前記長手形状の弾性部材の長手方向は前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部は前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置し、前記長手形状の弾性部材の周囲の前記裏側部材と前記表側部材を溶着により一体化して、前記長手形状の弾性部材を前記マスク本体内に拘束するものである。
【0019】また、請求項5記載のマスクは、請求項3又は4記載のマスクにおいて、長手形状の弾性部材の両端部が長方形状のマスク本体の両短辺側の略中央にそれぞれ位置しているものである。
【0020】
【実施例】本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0021】顔面マスク全体は、図1(a)に示すような外観となり、マスク本体10、弾性部材、例えば、プラスチック薄板20、耳掛けゴムひも30及びサイドテープ40から構成されている。
【0022】マスク本体10は、長方形の高密度メッシュの一枚の布を、その中間部が部分的に折り重なるようにした後、折り目11(重なり部分)を含む対辺12のすべてにわたってサイドテープ40で固着したものである。固着する手段は、サイドテープ40に限らず、他の手段、例えば、接着剤でも良い。
【0023】マスク本体10の断面図を図1(b)に示す。このように、折り重ねたマスク本体10は、折り目(重なり部分)11が複数ある。場合により、折り目(重なり部分)11は、単数でも良い。この実施形態においては、一方向に順に折っていく折り方にしているが、図2に示すような折り方もあり、必要に応じて適宜変更することが可能である。
【0024】図1(a)に示すように、折り重ねられたマスク本体10の両端部(対辺)12は、一体化されているので、折り目11は拡がらない。両端部12以外では、一体化されていないので、折り目11を拡げることができる。
【0025】耳掛けゴムひも30は、マスク1を着用する際に耳に掛けるためのものであり、折り重ねられたマスク本体10の対辺12にそれぞれ取り付けられている。この場合には、マスク本体10の折り目11は上下方向に拡げることができる。なお、この変形例として、耳掛けゴムひも30を対辺13にそれぞれ取り付けることも考えられ、この場合は上下に拡げることができ、この場合は上下に拡げて耳掛けゴムひも30を頭に装着することができるようになる。
【0026】マスク本体10には、図1(b)に示すように、折り目11に沿って例えば、プラスチック薄板20が配置されている。プラスチック薄板20は細長の平板で、マスク本体10の布地に挟まれながら内部に入れられている。断面は長方形(又は、略長方形)であり、長辺がマスク本体10の布地と一体となるように、配置されている。
【0027】プラスチック薄板20は直線状態となるように、その両端がマスク本体10と一体的に止められている(固着)。また、固着する箇所は、全体に亙って固着しても良く、部分的に、例えば、プラスチック薄板20の略中央付近で、マスク本体裏面側14と止められるようにしても良く(固着)。この場合、中間部で止められているのは、裏面側のみであるので、外観上止めてある箇所が見えず、見映えも損なわれない。このように、使用状態にないときは、プラスチック薄板20は直線状態であり、マスク本体10は略平たん状態となっている。
【0028】マスク本体10は、折り目11の中間部を拡げたときには、図3に示すように、略凸形状になる。このとき、プラスチック薄板20もアーチ形状になり、マスク本体10の略凸形状部分(略カップ状部分)15が変形するのを阻止する。また、プラスチック薄板20は、マスク本体裏面側14で取り付けられているので、着用時に息を吸ってもマスク本体裏面側14の略凸形状15が保持され、口や鼻にまとわりついて呼吸を妨げるのが防止できる。
【0029】略凸形状から、略平たん状態に戻すときには、マスク本体10を折り目11に従って折り畳めば容易に元の形状に戻る。
【0030】図4乃至図11は、本発明の他の実施例で、図4において、10は、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体であって、この長方形状のマスク本体10には、長辺13(対辺)に平行に沿って折りたたんで設けられた複数の折り目11を有している。場合により、折り目(重なり部分)11は、単数でも良い。そして、マスク1は、長方形状のマスク本体10の両短辺12[両端部(対辺)]側に位置する折り目11の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束している。
【0031】本実施例においては、溶着(例えば、超音波による溶着)により折り目11の両端部を拘束している。特に、図6、10において、超音波による溶着部を×印で付している。
【0032】なお、溶着する場合、マスク本体10は、紙、布、不織布等の通気性を有する素材からなり、その素材として、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱溶着性材料やその他熱溶着性材料でないものからなり、一部に熱溶着性材料でないものが含まれていても良い。熱溶着性材料でないものが含まれる場合、例えば、熱溶着性材料でないものを熱溶着性材料で挟持する状態、つまり、熱溶着性材料、熱溶着性材料でないもの、熱溶着性材料の順に積層すれば良い。
【0033】そして、長方形状のマスク本体10は、少なくとも、鼻、口に臨み、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材であるフィルタ-機能を有する長方形状の裏側部材10bと、この長方形状の裏側部材10bと反対の側に位置すると共に紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材であるフィルタ-機能を有する長方形状の表側部材10aとを含み、本実施例では、図7、図8に示すように、表側部材10aと裏側部材10bとの間には、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状の中間部材101が介在している。
【0034】中間部材101の素材として、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン等の熱溶着性材料からなっている。場合により、中間部材101の素材は、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱溶着性材料やその他熱溶着性材料でないものからなっていても良い。
【0035】そして、長手形状の弾性部材、例えば、プラスチック薄板20がマスク本体10に内在し、長手形状の弾性部材20は、長手形状の弾性部材20の長手方向を長方形状のマスク本体10の長辺13に平行に沿って設けられ、長手形状の弾性部材20の両端部はマスク本体10に接合されている。
【0036】つまり、長手形状の弾性部材20の両端部は、マスク本体10の両短辺側に位置し、溶着、接着、縫製等によりマスク本体10の両短辺側に一体化されている。(なお、長手形状の弾性部材20は、図示では、単数であるが、場合により複数設けても良い。)
従って、このマスク1によれば、折り目11の両端部は溶着、接着、縫製等により拘束され、両端部を除く他の折り目11の部分は拘束されず、長手形状の弾性部材20の両端部がマスク本体10に接合され、弾性部材20の長手方向がマスク本体10の長辺13に平行に沿って設けられているから、マスク1を顔面に装着する際、折り目11を広げるようにして使用すれば、図9、図11に示すように、弾性部材20とマスク本体10が共に変形し、マスク本体10の略中央部が突出する略凸形状(略カップ状部分)となり、しかも、弾性部材20によりマスク本体10の略凸形状の状態を保持することができ、この状態でマスク1を顔面に装着すれば、マスク本体10の略凸形状の裏面側は略凹形状となり、マスク1と口との間隔を取ることができ、マスク1が口に直接当たりにくい構成となり、マスクの使用勝手を向上させることができ、更に、マスク1を顔面に装着する際、図4、図5に示す略平坦形状のマスク1を図9、図10、図11に示すように、折り目11を広げるようにして使用することができるため、マスク1を工場等で製造し出荷する際、マスク1を略平坦形状でコンパクトに包装等することができる。
【0037】次に、長手形状の弾性部材20の両端部とマスク本体10との接合について、詳述すれば、弾性部材20の両端部20a、20bは、長方形状の裏側部材10bと長方形状の表側部材10aとの両短辺側にそれぞれ位置し、裏側部材10bと表側部材10aとの両短辺側を熱溶着して弾性部材20の両端部20a、20bの移動を阻止している。
【0038】更に、詳述すれば、図6、図10に示すように、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン等の熱溶着性材料からなる折曲した長手形状の第1の帯状部材30aで長方形状の裏側部材10bの一方の短辺側と長方形状の表側部材10aの一方の短辺側とを挟持し、第1の帯状部材30a、長方形状の裏側部材10bの一方の短辺側、長方形状の表側部材10bの一方の短辺側を熱溶着して弾性部材20の一方の端部の移動を阻止し、また、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン等の熱溶着性材料からなる折曲した長手形状の第2の帯状部材30bで長方形状の裏側部材10bの他方の短辺側と長方形状の表側部材10aの他方の短辺側とを挟持し、第1の帯状部材30a、長方形状の裏側部材10bの他方の短辺側、長方形状の表側部材10bの他方の短辺側を熱溶着して弾性部材20の他方の端部の移動を阻止している。
【0039】このように、第1の帯状部材30a、第2の帯状部材30bをマスク本体10と一体化する際、マスク本体10の一方の端部を第1の帯状部材30a、裏側部材10b、表側部材10aで熱溶着して接合する際、弾性部材20の一方の端部の移動をも阻止、マスク本体10の他方の端部を第2の帯状部材30b、裏側部材10b、表側部材10aで熱溶着して接合する際、弾性部材20の他方の端部の移動をも阻止することができ、第1の帯状部材30a、第2の帯状部材30b、弾性部材20をより容易にマスク本体10に取り付けることができる。
【0040】なお、本実施例では、第1の帯状部材30aで長方形状の裏側部材10bの一方の短辺側と長方形状の表側部材10aの一方の短辺側とを挟持し、第2の帯状部材30bで長方形状の裏側部材10bの他方の短辺側と長方形状の表側部材10aの他方の短辺側とを挟持したが、第1の帯状部材30a、第2の帯状部材30bを使用せず、裏側部材10bと表側部材10aとの両短辺側を熱溶着して弾性部材20の両端部20a、20bの移動を阻止しても良い。
【0041】また、マスク1を装着して使用した場合、長方形状の裏側部材10bの通気抵抗を長方形状の中間部材101の通気抵抗より小とすれば、呼吸により長方形状の中間部材101が口側へ移動しようとするが、長手形状の弾性部材20によりその移動が阻止され、長方形状の裏側部材10bの通気抵抗は長方形状の中間部材101の通気抵抗より小である分、呼吸によって裏側部材10bが追随して移動しにくく、裏側部材10bの口側への移動を防止することができる。
【0042】また、マスク1を装着して使用した場合、目の細かい裏側部材10bであれば、呼吸による吸引力により裏側部材10bが口の方へ移動しようとするが、弾性部材20に裏側部材10bを直接接着等により付着させることにより、裏側部材10bの移動が弾性部材20により阻止され、マスク1の裏側部材10bが口に直接より当たりにくくなる。
【0043】また、50は、マスク1が顔に密着できるように、塑性変形する長手形状部材で、例えば、針金である。
【0044】また、上述の実施例においては、表側部材10aと裏側部材10bとの間に中間部材101を介在させたが、図12、図13に示すように、中間部材101を介在させず、マスク本体10を表側部材10aと裏側部材10bで構成しても良い。
【0045】また、上述の実施例においては、長手形状の弾性部材20を長方形状のマスク本体10に内在させたが、長手形状の弾性部材20を図14に示すように、マスク本体10の裏面側に位置させても良いし、図示しないが、長手形状の弾性部材20を表側部材10aに位置させても良く、また、長手形状の弾性部材20をマスク本体10に一体化させる場合、長手形状の弾性部材20を表側部材10a(又は、裏側部材10b)に、直に(直接)溶着、接着しても良い、要は、長手形状の弾性部材20が長方形状のマスク本体10に取り付けられていれば良い。
【0046】また、上述の実施例(図1乃至図14)においては、長手形状の弾性部材20の両端部がマスク本体10の両短辺側に位置し、溶着、接着、縫製等によりマスク本体10の両短辺側に一体化されているが、本発明にあっては、これに限らず、例えば、図15乃至図19に示すように、長手形状の弾性部材20の両端部はマスク本体10の両短辺側に達する手前に位置しても良い。
【0047】なお、特に、長手形状の弾性部材20の両端部がマスク本体10の両短辺側に位置し、溶着、接着、縫製等によりマスク本体10の両短辺側に一体化され、長手形状の弾性部材20の両端部がマスク本体10の両短辺側に位置している(図1乃至図14)と、かかる図1乃至図14記載のマスク1を顔面に装着した場合、マスク本体10に内在した長手形状の弾性部材20の両端部が裏側部材10bを介して皮膚に当たり、違和感を生じる場合がある。
【0048】かかる場合、違和感をなくすために、図15乃至図19に示すように、長手形状の弾性部材20の両端部をマスク本体10の両短辺側に達する手前に位置させ、この状態を保持するために、長手形状の弾性部材20の周囲を溶着、接着、縫製等により長手形状の弾性部材20をマスク本体10に一体化させている。(なお、図6、図10、図17中、×印は、溶着、接着、縫製等による箇所を示している。)長手形状の弾性部材20をマスク本体10に一体化させる手段としては、長手形状の弾性部材20をマスク本体10に直に(直接)溶着、接着しても良い。
【0049】なお、上述の実施例(図1乃至図19)においては、マスク本体10の両短辺側の略中央の一例として、長手形状の弾性部材20の両端部が長方形状のマスク本体10の両短辺12側の中央より上に位置しているが、これに限らず、例えば、マスク本体10の両短辺12側の中央でも良く、長方形状のマスク本体10の両短辺12側の中央より下に位置しても良い。
【0050】なお、上述の実施例(図1乃至図19)においては、長手形状の弾性部材20として、プラスチック薄板を例に挙げたが、これに限らず、材質的には金属、その他の材料でも良く、要は、マスク1を顔面に装着する際、折り目を広げるようにして使用すれば、弾性部材20とマスク本体10が共に変形し、マスク本体10の略中央部が突出する略凸形状に弾性変形が生じる部材であれば良く、上述の実施例(図1乃至図19)の長手形状の弾性部材20は、図示では、単数であるが、場合により複数設けても良い。
【0051】
【0052】
【0053】
【発明の効果】請求項1記載のマスクによれば、長手形状の弾性部材が長方形状のマスク本体に内在されているから、紙、布、不織布等の通気性を有する通気性素材からなる長方形状のマスク本体が顔に触れ、長手形状の弾性部材が顔に直接触れないため、マスクの使用勝手を向上させることができる。
【0054】
【0055】
【0056】請求項2記載のマスクによれば、裏側部材と表側部材との両短辺側を溶着により一体化する際、裏側部材と表側部材との両短辺側の一体化以外に、長手形状の弾性部材の両端部の移動をも阻止することができ、弾性部材を容易にマスク本体内に取り付けることができる。
【0057】請求項3記載のマスクによれば、マスクを顔面に装着する際、折り目を広げるようにして使用すれば、弾性部材とマスク本体が共に変形し、マスク本体の略中央部が突出する略凸形状となり、しかも、弾性部材によりマスク本体の略凸形状の状態を保持することができ、この状態でマスクを顔面に装着すれば、マスク本体の略凸形状の裏面側は略凹形状となり、マスクと口との間隔を取ることができ、マスクが口に直接当たりにくい構成となり、マスクの使用勝手を向上させることができる。
【0058】請求項4記載のマスクによれば、マスクを顔面に装着した場合、マスク本体に内在した長手形状の弾性部材の両端部がマスク本体の両短辺側に達する手前に位置しているため、長手形状の弾性部材の両端部が裏側部材を介して皮膚に当たらず、違和感を解消することができる。
【0059】請求項5記載のマスクによれば、折り目の両端部を溶着、接着、縫製等により拘束され、両端部を除く他の折り目の部分は拘束されず、長手形状の弾性部材の長手方向が前記長方形状のマスク本体の長辺に平行に沿って設けられ、前記長手形状の弾性部材の両端部を前記マスク本体の両短辺側に達する手前に位置させ、長手形状の弾性部材の周囲を溶着により前記マスク本体に一体化されているから、マスクを顔面に装着する際、折り目を広げるようにして使用すれば、弾性部材とマスク本体が共に変形し、マスク本体の略中央部が突出する略凸形状となり、しかも、弾性部材によりマスク本体の略凸形状の状態を保持することができ、この状態でマスクを顔面に装着すれば、マスク本体の略凸形状の裏面側は略凹形状となり、マスクと口との間隔を取ることができ、マスクが口に直接当たりにくい構成となり、マスクの使用勝手を向上させることができ、また、マスクを顔面に装着する際、略平坦形状のマスクを折り目を広げるようにして使用することができるため、マスクを工場等で製造し出荷する際、マスクを略平坦形状でコンパクトに包装等することができる。
【0060】更に、違和感を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るマスクの一実施例を表した説明図である。(a)は、マスク全体を表した斜視図である。(b)は、マスクを縦方向に切断した状態を表す断面図である。
【図2】図2は、マスクのマスク本体の折り方についての一変形例であり、(a)は全体を、(b)はその断面図を表したものである。
【図3】図3は、図1におけるマスクのマスク本体を拡げた状態を表す斜視図である。
【図4】図4は、他の実施例のマスクの概略的斜視図である。
【図5】図5は、図4のX-X線による概略的断面図である。
【図6】図6は、図4の一部を拡大して示す概略的平面図である。
【図7】図7は、図4のA-A線による概略的断面図である。
【図8】図8は、図4のB-B線による概略的断面図である。
【図9】図9は、図4記載のマスクを装着した状態の概略的断面図である。
【図10】図10は、図4記載のマスクの使用状態を示す概略的斜視図である。
【図11】図11は、図4のY-Y線による概略的断面図である。
【図12】図12は、図7記載と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【図13】図13は、図8記載と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【図14】図14は、図13記載と異なる他の実施例の概略的断面図である。
【図15】図15乃至図18記載のものは、図4記載のマスクと異なる他の実施例のマスクを示すもので、図15は、マスクの概略的斜視図である。
【図16】図16は、図15のX’-X’線による概略的断面図である。
【図17】図17は、図15記載のマスクの使用状態を示す概略的斜視図である。
【図18】図18は、図17のY’-Y’線による概略的断面図である。
【図19】図19は、図15記載のマスクを装着した状態の概略的断面図である。
【符号の説明】
1 マスク
10 マスク本体部
20 弾性部材
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-05-31 
結審通知日 2006-06-02 
審決日 2006-06-13 
出願番号 特願平9-359027
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (A62B)
P 1 113・ 537- ZA (A62B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩田 洋一  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 木原 裕
柴田 和雄
登録日 2003-10-31 
登録番号 特許第3488821号(P3488821)
発明の名称 マスク  
代理人 加藤 静富  
代理人 栗原 和彦  
代理人 入江 一郎  
代理人 野末 寿一  
代理人 加藤 静富  
代理人 入江 一郎  
代理人 野末 寿一  

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