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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01B
審判 訂正 3項(134条5項)特許請求の範囲の実質的拡張 訂正する H01B
審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する H01B
管理番号 1143680
審判番号 訂正2006-39088  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-11-07 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-05-29 
確定日 2006-08-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第1863604号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1863604号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 I.手続の経緯

本件特許第1863604号の請求項1〜4に係る発明は、昭和63年4月27日に特許出願(特願昭63-106014号)され、平成5年10月29日に出願公告(特公平5-78883号公報)され、平成6年8月8日に特許権の設定登録がされ、その後、平成18年5月29日に訂正審判の請求がなされたものである。

II.請求の要旨

本件訂正審判の請求の要旨は、特許第1863604号の明細書(以下「本件明細書」という。)を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち下記(1)〜(8)のとおり訂正することを求めるものである(下線部分が訂正に係る部分である。)。

(1)訂正事項a
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1において、
「(g-3) 前記剥取処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線の剥取端部を前記端子圧着部まで移動させ、前記端子圧着手段により前記剥取端部に端子を圧着する圧着処理を実行する圧着制御手段:」を、
「(g-3) 前記剥取処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記端子圧着部まで移動させ、前記端子圧着手段により前記剥取端部に端子を圧着する圧着処理を実行する圧着制御手段:」に訂正する。

(2)訂正事項b
本件明細書の特許請求の範囲の請求項2において、
「(j-4) 前記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線の剥取端部を前記第1の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第1の端子圧着手段により端子を圧着する第1の端子圧着処理を実行する第1の端子圧着制御手段、」を、
「(j-4) 前記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第1の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第1の端子圧着手段により端子を圧着する第1の端子圧着処理を実行する第1の端子圧着制御手段、」に訂正する。

(3)訂正事項c
本件明細書の特許請求の範囲の請求項2において、
「(j-5) 前記第2の剥取処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線の剥取端部を前記第2の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第2の端子圧着手段により端子を圧着する第2の端子圧着処理を実行する第2の端子圧着制御手段、」を、
「(j-5) 前記第2の剥取処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第2の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第2の端子圧着手段により端子を圧着する第2の端子圧着処理を実行する第2の端子圧着制御手段、」に訂正する。

(4)訂正事項d
本件明細書の第15頁第6行〜第10行(特公平5-78883号公報(以下、単に本件公告公報という)の第4頁右欄第31行〜第35行)の下記記載、「(g-3) 前記剥取処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線の剥取端部を前記端子圧着部まで移動させ、前記端子圧着手段により前記剥取端部に端子を圧着する圧着処理を実行する圧着制御手段:」を、
「(g-3) 前記剥取処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記端子圧着部まで移動させ、前記端子圧着手段により前記剥取端部に端子を圧着する圧着処理を実行する圧着制御手段:」に訂正する。

(5)訂正事項e
本件明細書の第18頁第18行〜第19頁第4行(本件公告公報の第5頁右欄第15行〜第21行)の下記記載、
「(j-4) 前記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線の剥取端部を前記第1の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第1の端子圧着手段により端子を圧着する第1の端子圧着処理を実行する第1の端子圧着制御手段、」を、
「(j-4) 前記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第1の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第1の端子圧着手段により端子を圧着する第1の端子圧着処理を実行する第1の端子圧着制御手段、」に訂正する。

(6)訂正事項f
本件明細書の第19頁第4行〜第9行(本件公告公報の第5頁右欄第21行〜第26行)の下記記載、
「(j-5) 前記第2の剥取処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線の剥取端部を前記第2の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第2の端子圧着手段により端子を圧着する第2の端子圧着処理を実行する第2の端子圧着制御手段、」を、
「(j-5) 前記第2の剥取処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第2の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第2の端子圧着手段により端子を圧着する第2の端子圧着処理を実行する第2の端子圧着制御手段、」に訂正する。

(7)訂正事項g
本件明細書の第46頁第20行(本件公告公報の第12頁右欄第3行)、同第47頁第20行(同公報の第12頁右欄第23行)、同第50頁の第4行〜第5行(同公報の第13頁左欄第25行)における「操作部700」を、「操作部900」に訂正する。

(8)訂正事項h
本件明細書の第50頁第19行〜第20行(本件公告公報の第13頁左欄第40行)の「剥取長さの変化が少なり」を、「剥取長さの変化が少なくなり」に訂正する。

III.当審の判断

1.訂正の目的の適否及び特許請求の範囲の拡張・変更等の存否について

1-1.訂正事項aについて
訂正事項aの訂正に関し、「圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ」被覆電線の剥取端部を端子圧着部まで移動させることは、本件明細書の第46頁第12行〜第15行(本件公告公報の第12頁左欄第38行〜第42行)の記載、すなわち、「予め操作部900より入力される圧着端子の種類等の情報に基づいて、上記第1の保持手段201の第1の端子圧着手段400に対する前後左右方向の移動量の調整が行なわれる。」という記載に基づくものであり、被覆電線の剥取端部を端子圧着手段の端子圧着部まで移動させる動作を限定するものであるから、この訂正は、平成6年改正前特許法126条第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

1-2.訂正事項bおよびcについて
訂正事項bの訂正に関し、「圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ」被覆電線の剥取端部を端子圧着部まで移動させることは、訂正事項aと同様に、「予め操作部900より入力される圧着端子の種類等の情報に基づいて、上記第1の保持手段201の第1の端子圧着手段400に対する前後左右方向の移動量の調整が行なわれる。」(本件明細書の第46頁第12行〜第15行(本件公告公報の第12頁左欄第38行〜第42行))という記載に基づくものであり、被覆電線の剥取端部を端子圧着手段の端子圧着部まで移動させる動作を限定するものであるから、この訂正は、平成6年改正前特許法126条第1項第ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

訂正事項cの訂正に関し、「圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ」被覆電線の剥取端部を端子圧着部まで移動させることは、「この場合も、予め操作部700より入力される圧着端子の種類等の情報に基づいて、第2の保持手段301の第2の端子圧着手段500に対する前後左右方向の移動量の調整が行なわれる。」(本件明細書の第47頁第19行〜第48頁第3行(本件公告公報の第12頁右欄第22行〜第26行))という記載に基づくものであり、被覆電線の剥取端部を端子圧着手段の端子圧着部まで移動させる動作を限定するものであるから、この訂正は、平成6年改正前特許法126条第1項第ただし書き1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

1-3.訂正事項d〜fについて
訂正事項d〜fは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために行うものであり、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、上記訂正事項d〜fは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

1-4.訂正事項gについて
訂正事項gは、「操作部700」を「操作部900」に訂正するものであるが、符号700がリールを示し、符号900が操作部を示していることは、本件明細書第38頁第12行(本件公告公報の第10頁右欄第4行)の「リール700」という記載、同第39頁第10行〜第11行(同公報の第10頁右欄第24行〜第25行)の「各種指令および情報を入力するための入力手段である操作部900(第1図)」という記載および第1図の記載から明らかであるから、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものといえる。
そして、上記訂正事項gは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

1-5.訂正事項hについて
訂正事項hは、「剥取長さの変化が少なり」を「剥取長さの変化が少なくなり」に訂正するものであるが、平成6年改正前特許法第126条第1項ただし書き第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものといえる。
そして、上記訂正事項hは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

1-6.まとめ
したがって、訂正事項a〜hに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明、誤記の訂正を目的とし、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載されている事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
よって、上記訂正は、平成6年改正前特許法第126条第1項及び第2項の規定に適合する。

2.独立特許要件について
訂正事項a〜cに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるところ、本件の特許第1863604号に係る特許に対し、特許異議の申立てがなされた、又は特許無効審判が請求されたという経緯はなく、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるとすべき理由を発見しない。
よって、上記訂正は、平成6年改正前特許法第126条第3項の規定に適合する。

IV.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年改正前特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ハーネス製造装置
(57)【特許請求の範囲】
(1)被覆電線を切断する処理と、切断された被覆電線の切断端部における被覆部を剥取る処理と、被覆部が剥取られた被覆電線の剥取端部に端子を取付ける処理とを実行するハーネス製造装置であって:
(a)前記被覆電線を電線送給方向に間欠的に送給する電線送給手段;
(b)前記被覆電線を挟み込んで切断する一方、前記被覆電線を挟み込むようにして前記被覆電線の被覆部を切込む電線切断・切込手段;
(c)前記被覆電線の剥取端部に端子を圧着するための端子圧着部を有する端子圧着手段;
(d)以下の(d-1)および(d-2)の要素を有する保持・移動手段;
(d-1)前記電線切断・切込手段による前記被覆電線の切断位置より電線送給方向に対して上流側の近傍位置で前記被覆電線を保持自在な保持手段、
(d-2)前記保持手段により保持された被覆電線が、前記電線送給手段による電線送給ラインと前記端子圧着部との間で移動自在となるように、前記保持手段を3次元方向に移動可能とする移動手段、
(e)前記電線送給手段,前記電線切断・切込手段,前記端子圧着手段および前記保持・移動手段を駆動する駆動手段;
(f)各種指令および情報を入力するための入力手段;
(g)以下の(g-1)から(g-3)までの要素を含み前記入力手段より入力された指令および情報に基づき前記駆動手段に駆動制御信号を与えて前記駆動手段の駆動制御を行なう制御手段:
(g-1)前記電線送給手段により前記被覆電線を送給し、その被覆電線を前記保持・移動手段により保持しながら前記電線切断・切込手段により切断する切断処理を実行する切断制御手段、
(g-2)前記切断処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線を電線送給方向へ所定量だけ前進させ、前記電線切断・切込手段により前記被覆部を切込み、その切込状態のまま前記保持・移動手段により前記被覆電線を後退させて、前記被覆部の切込位置より下流側を剥取る剥取処理を実行する剥取制御手段、
(g-3)前記剥取処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記端子圧着部まで移動させ、前記端子圧着手段により前記剥取端部に端子を圧着する圧着処理を実行する圧着制御手段:
によって特定される前記(a)から(g)までの各要素を備えることを特徴とするハーネス製造装置。
(2)被覆電線を切断して残留電線と切断電線とに分割する処理と、前記残留電線の切断端部の被覆部を剥取る処理と、前記切断電線の切断端部の被覆部を剥取る処理と、被覆部が剥取られた前記残留電線の剥取端部に端子を圧着する処理と、被覆部が剥取られた前記切断電線の剥取端部に端子を圧着する処理とを実行するハーネス製造装置であって:
(a)前記被覆電線を電線送給方向に間欠的に送給する電線送給手段;
(b)前記被覆電線を挟み込んで切断する一方、前記被覆電線を挟み込むようにして前記被覆部を切込む電線切断・切込手段;
(c)前記残留電線の剥取端部に端子を圧着するための第1の端子圧着部を有する第1の端子圧着手段;
(d)前記切断電線の剥取端部に端子を圧着するための第2の端子圧着部を有する第2の端子圧着手段;
(e)以下の(e-1)および(e-2)の要素を有する第1の保持・移動手段;
(e-1)前記電線切断・切込手段による前記被覆電線の切断位置より電線送給方向に対して上流側の近傍位置で前記残留電線を保持自在な第1の保持手段、
(e-2)前記第1の保持手段により保持された残留電線が、前記電線送給手段による電線送給ラインと前記第1の端子圧着部との間で移動自在となるように、前記第1の保持手段を3次元方向に移動可能とする第1の移動手段、
(f)以下の(f-1)および(f-2)の要素を有する第2の保持・移動手段;
(f-1)前記電線切断・切込手段による前記被覆電線の切断位置より電線送給方向に対して下流側の近傍位置で前記切断電線を保持自在な第2の保持手段、
(f-2)前記第2の保持手段により保持された切断電線が、前記電線送給手段による電線送給ラインと前記第2の端子圧着部との間で移動自在となるように、前記第2の保持手段を3次元方向に移動可能とする第2の移動手段、
(g)前記第2の保持手段により保持された切断電線を排出部に排出するための排出手段;
(h)前記電線送給手段,前記電線切断・切込手段,前記第1の端子圧着手段,前記第2の端子圧着手段,前記第1の保持・移動手段,前記第2の保持・移動手段および前記排出手段を駆動する駆動手段;
(i)各種指令および情報を入力するための入力手段;
(j)以下の(j-1)から(j-6)までの要素を含み、前記入力手段より入力された指令に基づき前記駆動手段に駆動制御信号を与えて前記駆動手段の駆動制御を行なう制御手段:
(j-1)前記電線送給手段により前記被覆電線を送給し、その被覆電線を前記第1および第2の保持手段によりそれぞれ保持しながら前記電線切断・切込手段により切断して残留電線と被覆電線に分割する切断処理を実行する切断制御手段、
(j-2)前記切断処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線を電線送給方向へ所定量だけ前進させ、前記電線切断・切込手段により前記残留電線の被覆部を切込み、その切込状態のまま前記第1の保持・移動手段により前記残留電線を後退させて、その被覆部の切込位置より下流側を剥取る第1の剥取処理を実行する第1の剥取制御手段、
(j-3)前記切断処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線を前記電線送給ラインに沿って所定量だけ後退させ、前記電線切断・切込手段により前記切断電線の被覆部を切込み、その切込状態のまま前記第2の保持・移動手段により前記切断電線を前進させて、その被覆部の切込位置より上流側を剥取る第2の剥取処理を実行する第2の剥取制御手段、
(j-4)前記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第1の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第1の端子圧着手段により端子を圧着する第1の端子圧着処理を実行する第1の端子圧着制御手段、
(j-5)前記第2の剥取処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第2の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第2の端子圧着手段により端子を圧着する第2の端子圧着処理を実行する第2の端子圧着制御手段、
(j-6)前記第2の端子圧着処理が完了した切断電線につき、その切断電線の前記第2の保持・移動手段による保持を解除し、その切断電線を前記排出手段により排出部に排出する排出処理を実行する排出制御手段:
によって特定される前記(a)から(j)までの各要素を備えることを特徴とするハーネス製造装置。
(3)前記制御手段は、前記第1および第2の剥取処理を同時に行なう手段をさらに備える請求項2記載のハーネス製造装置。
(4)前記電線切断・切込手段は一対のカッターを備え、
前記制御手段は、前記切断処理を実行する際の前記第1および第2の保持手段による前記残留電線および前記被覆電線の保持位置を、前記切断処理が実行されるたびに前記電線送給ラインに対し直交する方向へずらせることにより、前記被覆電線に対する前記カッターの切断位置を順次変化させる手段をさらに備える請求項3記載のハーネス製造装置。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
この発明は、被覆電線を切断する処理と、切断された被覆電線の切断端部における被覆部を剥取る処理と、被覆部が剥取られた被覆電線の剥取端部に端子を取付ける処理とを実行するハーネス製造装置に関する。
(従来の技術)
第19図はハーネス1の斜視図を示す。同図に示すように、このハーネス1は、被覆電線を切断してその両端の被覆部を剥取ることにより形成された切断電線2と、その切断電線2の両剥取端部3,3にそれぞれ取付けられる端子4,4とで構成される。
このようなハーネス1を製造する装置は、被覆電線を切断する処理、被覆電線の切断端部における被覆部を剥取る処理、被覆部が剥取られた被覆電線の剥取端部に端子を圧着する処理を実行する構成を備える必要がある。
第20図は、この発明の背景技術であるハーネス製造装置を示す。このハーネス製造装置は、被覆電線14を送給するための電線送給手段11と、被覆電線14を上下方向から挟み込むようにして切断しあるいはその被覆部に切込みを入れるための一対のカッターを有する電線切断・切込手段12を備えている。また、被覆電線14の剥取端部に端子を圧着するための端子圧着手段15が設けられる一方、被覆電線14を電線切断・切込位置から端子圧着位置まで移動させる移動手段13が設けられる。
このハーネス製造装置では、まず被覆電線14が電線送給手段11により矢符P方向に所定距離だけ送給された後、電線切断・切込手段12のカッターにより切断される。次に電線送給手段11により被覆電線14がその被覆部の剥取長さだけ前方に送られ、再び電線切断・切込手段12のカッターにより被覆電線12の被覆部に上下方向から切込みが入れられる。この後、上記カッターを切込位置に保ったまま、言い換えればカッターにより被覆部を上下両方向から挟み込んだ状態で電線送給手段11により被覆電線14を後退させることにより、被覆部の剥取りが行なわれる。こうして剥取処理された被覆電線14は、その剥取端部16に端子が圧着可能な位置まで移動手段13により移送され、その剥取端子16に端子圧着手段15により端子が圧着される。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、このようなハーネス製造装置では、電線送給手段11と電線切断・切込手段12との間に移動手段13を配置する必要があるため、電線送給手段11と電線切断・切込手段12間の距離が長くなる。その結果、剥取処理工程において、電線切断・切込手段12のカッターを被覆部に食い込ませたまま、被覆電線14を電線送給手段11により後退させると、カッターと電線送給手段11間の被覆部の領域が伸びて剥取端部16における芯線の露出の長さにばらつきが生じ剥取精度が低下するという問題があった。
また、移動手段13による被覆電線14の端子圧着手段15への送り位置が一義的に定められているため、寸法,形状の異なる異種端子の圧着を行うには、それぞれの端子ごとに端子圧着手段15の設定位置を移動調整する必要があり、その調整作業が繁雑であるという問題も有していた。
なお、第20図では、ハーネスの一端に端子を圧着する装置について説明したが、通常この種の装置では、ハーネスの両端に端子を圧着可能な構成にすることが望まれており、また、それらの装置における処理能力およびカッターの耐久性能の向上が強く要望されている。
(発明の目的)
この発明は、上記従来技術の問題を解消するためになされたもので、被覆電線の剥取精度に優れ、しかも異種端子に対し簡単な調整作業で端子圧着処理を行なえるハーネス製造装置を提供することを第1の目的とする。
また、この発明では、上記の第1の目的を達成した上でさらに、被覆電線の両端に端子を圧着できるハーネス製造装置を提供することを第2の目的とする。
また、この発明では、上記の第2の目的を達成した上でさらに、処理能力に優れたハーネス製造装置を提供することを第3の目的とする。
更に、この発明では、上記第3の目的を達成した上でさらに、カッターの耐久性能に優れたハーネス製造装置を提供することを第4の目的とする。
(課題を解決するための手段)
請求項1記載の発明は、被覆電線を切断する処理と、切断された被覆電線の切断端部における被覆部を剥取る処理と、被覆部が剥取られた被覆電線の剥取端部に端子を取付ける処理とを実行するハーネス製造装置であって:上記第1の目的を達成するため、(a)前記被覆電線を電線送給方向に間欠的に送給する電線送給手段;(b)前記被覆電線を挟み込んで切断する一方、前記被覆電線を挟み込むようにして前記被覆電線の被覆部を切込む電線切断・切込手段;(c)前記被覆電線の剥取端部に端子を圧着するための端子圧着部を有する端子圧着手段;(d)以下の(d-1)および(d-2)の要素を有する保持・移動手段;(d-1)前記電線切断・切込手段による前記被覆電線の切断位置より電線送給方向に対して上流側の近傍位置で前記被覆電線を保持自在な保持手段、(d-2)前記保持手段により保持された被覆電線が、前記電線送給手段による電線送給ラインと前記端子圧着部との間で移動自在となるように、前記保持手段を3次元方向に移動可能とする移動手段、(e)前記電線送給手段,前記電線切断・切込手段,前記端子圧着手段および前記保持・移動手段を駆動する駆動手段;(f)各種指令および情報を入力する入力手段;(g)以下の(g-1)から(g-3)までの要素を含み前記入力手段より入力された指令および情報に基づき前記駆動手段に駆動制御信号を与えて前記駆動手段の駆動制御を行なう制御手段:(g-1)前記電線送給手段により前記被覆電線を送給し、その被覆電線を前記保持・移動手段により保持しながら前記電線切断・切込手段により切断する切断処理を実行する切断制御手段、(g-2)前記切断処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線を電線送給方向へ所定量だけ前進させ、前記電線切断・切込手段により前記被覆部を切込み、その切込状態のまま前記保持・移動手段により前記被覆電線を後退させて、前記被覆部の切込位置より下流側を剥取る剥取処理を実行する剥取制御手段、(g-3)前記剥取処理が完了した被覆電線につき、前記保持・移動手段により前記被覆電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記端子圧着部まで移動させ、前記端子圧着手投により前記剥取端部に端子を圧着する圧着処理を実行する圧着制御手段:によって特定される前記(a)から(g)までの各要素を備える。
請求項2記載の発明は、被覆電線を切断して残留電線と切断電線とに分割する処理と、前記残留電線の切断端部の被覆部を剥取る処理と、前記切断電線の切断端部の被覆部を剥取る処理と、被覆部が剥取られた前記残留電線の剥取端部に端子を圧着する処理と、被覆部が剥取られた前記切断電線の剥取端部に端子を圧着する処理とを実行するハーネス製造装置であって:上記第2の目的を達成するため、(a)前記被覆電線を電線送給方向に間欠的に送給する電線送給手段;(b)前記被覆電線を挟み込んで切断する一方、前記被覆電線を挟み込むようにして前記被覆部を切込む電線切断・切込手段;(c)前記残留電線の剥取端部に端子を圧着するための第1の端子圧着部を有する第1の端子圧着手段;(d)前記切断電線の剥取端部に端子を圧着するための第2の端子圧着部を有する第2の端子圧着手段;(e)以下の(e-1)および(e-2)の要素を有する第1の保持・移動手段;(e-1)前記電線切断・切込手段による前記被覆電線の切断位置より電線送給方向に対して上流側の近傍位置で前記残留電線を保持自在な第1の保持手段、(e-2)前記第1の保持手段により保持された残留電線が、前記電線送給手段による電線送給ラインと前記第1の端子圧着部との間で移動自在となるように、前記第1の保持手段を3次元方向に移動可能とする第1の移動手段、(f)以下の(f-1)および(f-2)の要素を有する第2の保持・移動手段;(f-1)前記電線切断・切込手段による前記被覆電線の切断位置より電線送給方向に対して下流側の近傍位置で前記切断電線を保持自在な第2の保持手段、(f-2)前記第2の保持手段により保持された切断電線が、前記電線送給手段による電線送給ラインと前記第2の端子圧着部との間で移動自在となるように、前記第2の保持手段を3次元方向に移動可能とする第2の移動手段、(g)前記第2の保持手段により保持された切断電線を排出部に排出するための排出手段;(h)前記電線送給手段,前記電線切断・切込手段,前記第1の端子圧着手段,前記第2の端子圧着手段,前記第1の保持・移動手段,前記第2の保持・移動手段および前記排出手段を駆動する駆動手段;(i)各種指令および情報を入力するための入力手段;(j)以下の(j-1)から(j-6)までの要素を含み、前記入力手段より入力された指令に基づき前記駆動手段に駆動制御信号を与えて前記駆動手段の駆動制御を行なう制御手段:(j-1)前記電線送給手段により前記被覆電線を送給し、その被覆電線を前記第1および第2の保持手段によりそれぞれ保持しながら前記電線切断・切込手段により切断して残留電線と被覆電線に分割する切断処理を実行する切断制御手段、(j-2)前記切断処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線を電線送給方向へ所定量だけ前進させ、前記電線切断・切込手段により前記残留電線の被覆部を切込み、その切込状態のまま前記第1の保持・移動手段により前記残留電線を後退させて、その被覆部の切込位置より下流側を剥取る第1の剥取処理を実行する第1の剥取制御手段、(j-3)前記切断処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線を電線送給ラインに沿って所定量だけ後退させ、前記電線切断・切込手段により前記切断電線の被覆部を切込み、その切込状態のまま前記第2の保持・移動手段により前記切断電線を前進させて、その被覆部の切込位置より上流側を剥取る第2の剥取処理を実行する第2の剥取制御手段、(j-4)前記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、前記第1の保持・移動手段により前記残留電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第1の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第1の端子圧着手段により端子を圧着する第1の端子圧着処理を実行する第1の端子圧着制御手段、(j-5)前記第2の剥取処理が完了した切断電線につき、前記第2の保持・移動手段により前記切断電線の剥取端部を、圧着される端子の種類に応じて前後方向の移動量を調整しつつ前記第2の端子圧着部まで移動させ、その剥取端部に前記第2の端子圧着手段により端子を圧着する第2の端子圧着処理を実行する第2の端子圧着制御手段、(j-6)前記第2の端子圧着処理が完了した切断電線につき、その切断電線の前記第2の保持・移動手段による保持を解除し、その切断電線を前記排出手段により排出部に排出する排出処理を実行する排出制御手段:によって特定される前記(a)から(j)までの各要素を備える。
請求項3記戟の発明は、上記第3の目的を達成するために、請求項2記載のハーネス製造装置の前記制御手段に、前記第1および第2の剥取処理を同時に行なう手段がさらに備えられている。
請求項4記載の発明は、上記第4の目的を達成するため、請求項3記載のハーネス製造装置の前記電線切断・切込手段に一対のカッターが備えられ、さらに前記制御手段に、前記切断処理を実行する際の前記第1および第2の保持手段による前記残留電線および前記被覆電線の保持位置を、前記切断処理が実行されるたびに前記電線送給ラインに対し直交する方向へずらせることにより、前記被覆電線に対する前記カッター切断位置を順次変化させる手段が備えられている。
(実施例)
A.第1の実施例の概略
第1図は請求項2記載の発明に基づく第1の実施例であるハーネス製造装置Aを示す斜視図、第2図はその側面図、第3図(a),(b)はそれぞれ平面図である。この装置は請求項1記載の発明に共通な実施例を実現する装置をともなっている。
これらの図に示すように、この装置は両端に端子の取付けられたハーネス(第19図参照)を製造する装置であって、電線送給手段50と、電線切断・切込手段100と、第1および第2の保持・移動手段200,300と、第1および第2の端子圧着手段400,500と、排出手段550とを備える。
そして、2本の被覆電線600a,600bを同時に電線送給ラインXに沿って矢符P方向に所定量送給し、第1の保持・移動手段200により被覆電線600a,600bにおける切断予定領域近傍の電線送給方向Pに対し上流側を保持するとともに、第2の保持・移動手段300により下流側を保持し、電線切断・切込手段100により被覆電線600a,600bを各々切断して切断処理を実行し、残留電線と切断電線とに分割する。次に、第1の保持・移動手段200と電線切断・切込手段100とにより後に詳細するようにして残留電線の被覆部の下流側が剥取られ、更に第1の保持・移動手段200により残留電線が電線送給方向Pに交差する矢符R方向に移動され、残留電線の剥取端部に第1の端子圧着手段400により端子が圧着され、第1の保持・移動手段200により残留電線が矢符S方向に移動されて元の位置に戻る。一方、第2の保持・移動手段300と電線切断・切込手段100とにより後に詳細するようにして切断電線の被覆部の上流側が剥取られ、更に第2の保持・移動手段300により切断電線が矢符S方向に移動され、切断電線の剥取端部に第2の端子圧着手段500により端子が圧着される。その後切断電線が排出手段550により排出され、第2の保持・移動手段300が矢符R方向に移動されて元の位置に戻る。この動作が連続的に繰り返されて両端部に端子の取付けられたハーネスが順次製造される。なお、この装置では、被覆電線600a,600bを2本同時に送給するように構成しているが、1本の被覆電線を送給する場合にも基本的には同様な構成をとることになる。
以下、それぞれの各手段について詳細に説明する。
A-1.電線送給手段
第4図は電線送給手段50の斜視図である。第1図ないし第4図に示すように、電線送給手段50には、その本体51に2本の回転軸52,53が回転自在に貫通支持され、駆動手段を構成するモータ56の回転駆動が動力伝達機構70を介して上記回転軸52,53に同回転速度で伝達されるように構成される。また、回転軸52,53にはそれぞれ噛合しうるように開閉ギヤ58,59が回転自在に取付けられる。開閉ギヤ58,59にはそれぞれローラ支持プレート60,61がそれぞれ取付けられるとともに、ローラ支持プレート60が開閉シリンダ62のピストン部に軸支されて、ピストン部が摺動することにより、ローラ支持プレート60が回転軸52を支点として上方へ回転する一方、その回転力が開閉ギヤ58,59を介してローラ支持プレート61に伝達されて、ローラ支持プレート61が下方に回転し、これによりローラ支持プレート60,61が開閉するように構成されている。更に、回転軸52,53にはそれぞれ測長ローラ63,64(第2図)が取付けられるとともに、ローラ支持プレート60,61の先端側にはそれぞれ送給ローラ65,66が回転自在に支持され、更に測長ローラ63,64と送給ローラ65,66との間にそれぞれ送給ベルト67,68が掛け渡される。そして、被覆電線600a,600bを送給する際には、開閉シリンダ62を作動させてローラ支持プレート60,61を閉成させることにより、送給ローラ65,66で被覆電線600a,600bを挾持しながら、モータ56を回転駆動させて、回転軸52,53および測長ローラ63,64を介して送給ベルト67,68により被覆電線600a,600bを矢符P方向に送給させるように構成している。また、被覆電線600a,600bの送給を停止した際には、開閉シリンダ62により送給ローラ65,66を開成させて被覆電線600a,600bの送給ローラ65,66による挾持を解除するように構成している。
A-2.電線切断・切込手段
第5図は電線切断・切込手段100の要部斜視図である。第1図,第2図,第3図および第5図に示すように、電線切断・切込手段100は、被覆電線600a,600bを挟み込み可能に設けられた上下一対のカッター本体101,102と、駆動手段を構成するモータ103(第2図)と、モータ103の回転駆動をカッター本体101,102の上下動作に変換する平行リンク機構104とで構成される。カッター本体101,102にはそれぞれ対向するようにカッター105,105が設けられるとともに、上下方向に沿ってそれぞれレール107,107がそれぞれ取付けられる。一方、外枠109には、レール107,107を摺動自在に支持するレール受110,110がそれぞれ取付けられて、カッター本体101,102がそれぞれ上下方向に摺動自在となるように構成される。
第2図に示すように、モータ103の回転駆動がベルト112により伝達されるプーリ113は外枠109に回転自在に取付けられる。プーリ113にはその回転動作と連動するように第1リンク114の一端および第2リンク115の一端がそれぞれ取付けられ、第1リンク114の他端に第3リンク116の一端が回転自在に取付けられるとともに、第3リンク116の他端がカッター本体101の上端に回転自在に取付けられる。一方、下方に配置される第4リンク117は軸118を支点として回転するように外枠109に回転自在に取付けられ、その第4リンク117の他端に第5リンク119の一端が回転自在に取付けられるとともに、第5リンク119の他端がカッター本体102の下端に回転自在に取付けられる。更に、上記第4リンク117の一端には、第4リンク117と連動し軸118を支点として回転するように第6リンク120の一端が取付けられ、第6リンク120の他端と上記第2リンク115の他端とが第7リンク121により接続される。そして、モータ103が回転駆動されてプーリ113が反時計方向に回転すると、第1および第2リンク114,115がそれぞれ反時計方向に回転して、第3リンク116が下方へ押下げられてカッター本体101が下降し、同時に第7リンク121が上昇し、それに追随して第6リンク120および第4リンク117が反時計方向に回転し、第5リンク115が上方へ押上げられてカッター本体102が上昇する。逆に、モータ109の回転駆動によりプーリ113が時計方向に回転すると、カッター本体101が上昇し、同時にカッター本体102が下降する。このように、モータ103の回転駆動によりカッター本体101,102が開閉されるように構成している。
また、第5図に示すように、カッター105,105にはそれぞれ2個ずつ刃部131,131,132,132が形成される。そして、被覆電線600a,600bを同図に示すように配置して、カッター105,105が全開状態から全閉状態に移行されると被覆電線600a,600bが芯線とともに切断される一方、カッター105,105が全開状態から少開状態に移行されると被覆電線600a,600bの被覆部が切込まれるように構成している。
A-3.第1の保持・移動手段200
第6図は第1の保持・移動手段200を示す斜視図である。第1図,第2図,第3図および第6図に示すように、第1の保持・移動手段200は、被覆電線600a,600bを保持可能な第1の保持手段201と、その第1の保持手段201を三次元方向に移動自在に支持する第1の移動手段202と、被覆電線600a,600bを保持するための駆動手段を構成するシリンダ203a,203bと、第1の保持手段201を移動させるための駆動手段を構成するモータ205,206(第2図)とで構成される。
第1の移動手段202は、基体207と、その基体207に搭載された水平移動機構208(第2図)と、その水平移動機構208に搭載された進退移動機構209(第2図)と、その進退移動機構209に設けられるとともに上記第1の保持手段201が取付けられる昇降移動機構210とで構成される。すなわち、基体207には矢符R,Sに示す左右方向に沿ってレール211が配設されるとともに、そのレール211に水平移動機構208がレール長手方向に沿って摺動自在に取付けられる。更に、進退移動機構209には矢符P,Qに示す前後方向に沿ってレール213(第2図)が取付けられるとともに、このレール213が水平移動機構208のレール受214に摺動自在に支持されて、進退移動機構209が水平移動機構208に対し前後方向に沿って進退自在となるように取付けられる。更に、昇降移動機構210には矢符T,Uに示す上下方向に沿ってレール215が取付けられるとともに、このレール215が進退移動機構209のベアリング216(第2図)に摺動自在に支持されて、昇降移動機構210が進退移動機構209に対し上下方向に沿って昇降自在となるように取付けられる。そして、水平移動機構208,進退移動機構209および昇降移動機構210がそれぞれ適量に移動することにより第1の保持手段201が三次元方向に移動自在となるように構成される。
また、モータ205の回転軸にプーリ217が取付けられるとともに、プーリ219が基体207に回転自在に取付けられ、これらプーリ217,219間にベルト218が掛け渡される。更に、ベルト218には水平移動機構208に接続片220を介して連結されて、モータ205が回転駆動されてベルト218が回転移動することにより、水平移動機構208が左右方向に移動するように構成している。
モータ206を有する駆動機構212の左右両端にはそれぞれ前後方向に沿って一対のレール221,221が配設されるとともに、その一対のレール221,221にレール受222,222(第2図)を介して進退移動部223がレール長手方向に沿って摺動自在となるように取付けられる。進退移動部223には左右方向に沿ってガイド溝224が形成されるとともに、このガイド溝224内に摺動自在に嵌合されたスライド軸225に上記進退移動機構209の基端が回転自在に取付けられる。一方、モータ206の回転軸に取付けられたプーリ226(第2図)に対応して回転板227が駆動機構212の本体に回転自在に取付けられるとともに、その回転板227とプーリ226との間にベルト228(第2図)が掛け渡される。更に、回転板227の、回転軸227aの左右両端にはそれぞれリンク機構229,229の一端が取付けられるとともに、リンク機構229,229の他端が進退移動部223に連結され、モータ206が回転駆動されて回転軸227aが第2図反時計方向に回転すると、リンク機構229,229を介して進退移動部223が前方(矢符Q方向)へ押込まれ、それに伴い進退移動機構209が前方へ移動するように構成されている。また、回転軸227aを逆回転させるようにすると、進退移動機構209が後方へ引き戻されるように構成している。
進退移動機構209の前端にはばね受片230が突設されるとともに、このばね受片230と昇降移動機構210との間に押上ばね231が取付けられて、昇降移動機構210が上方へ押上付勢されている。
昇降移動機構210に取付けられる第1の保持手段201は、第3図(a)に示すように、被覆電線600a,600bが挿通可能な保持用筒体240a,240bが設けられる。この保持用筒体240a,240bの胴部にはそれぞれ切欠が形成されるとともに、その切欠にそれぞれ対応するように挾着爪242a,242bがシリンダ203a,203bのピストン部に取付けられる。そして、シリンダ203a,203bが駆動して挾着爪242a,242bが閉じると保持用筒体240a.240b内に挿通された被覆電線600a,600bが挾着爪242a,242bと保持用筒体240a,240bの内周面とにより挾着保持されるとともに、挾着爪242a,242bが開くと被覆電線600a,600bの保持が解除されるように構成されている。
また、第1の保持手段201には被覆電線600a,600bが保持用筒体240a,240b内にガイドされるようにガイド部材250が取付けられる。ガイド部材250はガイド用筒体251a,251bと、ガイド用筒体251a,251bにそれぞれ支持部材253a,253bを介して取付けられるガイド用筒体252a,252bとで構成される。そして、ガイド用筒体251a,252a間における被覆電線600aの露出領域およびガイド用筒体251b,252b間における被覆電線600bの露出領域で、被覆電線600a,600bが上記電線送給手段50により上下方向から挾持されるように構成されている。
A-4.第2の保持・移動手段300
第7図は第2の保持・移動手段300を示す斜視図である。第1図,第2図,第3図および第7図に示すように、第2の保持・移動手段300は上記第1の保持移動手段200と同様に、第2の保持手段301と第2の移動手段302とで構成される。第2の移動手段302が上記第1の移動手段202に相違する点は、第2の移動手段302の昇降移動機構308がシリンダ360a,360bにより昇降移動されるように構成している点である。すなわち、シリンダ360a,360bが進退移動機構309に取付けられるとともに、シリンダ360a,360bのそれぞれのピストン部が昇降移動機構310に接続されて、シリンダ360a,360bが駆動されることにより昇降移動機構310が昇降移動されるように構成される。
また、第2の保持手段301には、被覆電線600a.600bと対応するように、保持用突片370a,370bが形成されて、保持用突片370aと挾着爪342aとで上方に向けて開放された保持用溝371aが形成されるとともに、保持用突片370bと挾着爪342bとで同じく上方に向けて開放された保持用溝371bが形成される。そして、被覆電線600a,600bを保持用溝371a,371b内に収容した状態で、シリンダ303a,303bが駆動して挾着爪342a,342bが閉じると被覆電線600a,600bが挾着保持されるとともに、挾着爪342a,342bが開くと被覆電線600a,600bの保持が解除されるように構成されている。更に挾着爪342a,342bを開いた状態で第2の保持手段301をシリンダ360a,360bにより上昇させることにより、被覆電線600a,600bを保持用溝371a,371b内にその上部開口より収容できるように構成されている。その他の構成は上記第1の保持・移動手段200と同様であるため同一部分に相当符号を付してその説明を省略する。
A-5.切断処理および剥取処理
ここで、第1図ないし第3図を用いて、この装置における切断処理と第1および第2の剥取処理について簡単に説明しておく。切断処理というのは、電線送給手段50により被覆電線600a,600bを所定量だけ送給した後、第1および第2の保持手段201,301により被覆電線600a,600bを保持し、カッター105,105で被覆電線600a,600bを挟み込むようにして芯線とともに切断することにより、残留電線と切断電線とに分割する処理である。また、第1の剥取処理というのは、第1の保持手段201により保持された残留電線を電線送給方向Pに少し前進させてカッター105,105で残留電線の被覆部を切込み、その切込状態のまま残留電線を後退させて残留電線の下流側の被覆部を剥取る処理である。一方、第2の剥取処理というのは第1の剥取処理と同様にして切断電線の上流側の被覆部を剥取る処理である。
A-6.第1および第2の端子圧着手段400,500
第8図は第1の端子圧着手段400を示す概略断面図である。第1図,第3図および第8図に示すように、第1の端子圧着手段400の第1の端子圧着部401には、プレス台402と、そのプレス台402と対応して昇降自在に設けられたダイス403とを有する。そして、上記第1の剥取処理が完了した残留電線につき、第1の保持・移動手段200により残留電線601a,601bが移動されて残留電線601a,601bの剥取部603a,603bがプレス台402の上方に配置された際に、図示しない駆動手段が駆動することによりダイス403が降下し剥取端部603a,603bに端子が圧着されるように構成している(第1の端子圧着処理)。
また、ダイス403には、その昇降動作に連動するようにプレス位置調整部材450が取付けられており(第8図)、剥取端部603a,603bに端子を圧着する際に、ダイス403が降下すると、プレス位置調整部材450の先端が第1の保持手段201の上端に係止され、ダイス403の降下にともない第1の保持手段201が押上ばね231の付勢力に抗して下方に押し付けられ、剥取端部603a,603bの圧着時の高さ調整ができるように構成している。
一方、第2の端子圧着手段500も上記第1の端子圧着手段400とほぼ同様な構成をとるため同一部分に相当符号を付してその説明を省略する。
A-7.排出手段550
第9図は排出手段550を示す斜視図である。第1図,第2図,第3図(b)および第9図に示すように、排出手段550は支柱551と、支柱551の上端に矢符R,S方向に沿って配設された円筒状レール部552と、レール部552にレール長手方向に沿って移動自在に取付けられるとともに2本の切断電線を同時に保持可能なクランプ554とで構成される。そして、第2の端子圧着手段500により端子の圧着された切断電線(ハーネス)を排出手段550のクランプ554により保持し、クランプ554を図示しない電線排出部の上方に移動させてからクランプ554の保持を解除することにより、切断電線(ハーネス)を上記電線排出部へ落下させるように構成している。
A-8.周辺装置および第1の制御手段
第1図に示すように、被覆電線600a,600bが巻取られたリール700と電線送給手段50との間には曲り矯正装置800が配置され、被覆電線600a,600bが曲り矯正装置800を通過するようにしている。そして、被覆電線600a,600bの曲りぐせを曲り矯正装置800で矯正した後、電線送給手段50へ送り込むように構成している。
また、第1図ないし第3図に示すように、電線送給手段50のモータ56,開閉シリンダ62,電線切断・切込手段100のモータ103、第1の保持・移動手段200のシリンダ203a,203b,モータ205,206、第2の保持・移動手段300のシリンダ303a,303b,モータ305,306,シリンダ360a,360b、第1および第2の端子圧着手段400,500の図示しない駆動手段および排出手段550の図示しない駆動手段はともに図示しないマイクロコンピュータ等の第1の制御手段に接続される。また、各種指令および情報を入力するための入力手段である操作部900(第1図)が上記第1の制御手段に接続されている。この場合、操作部900より入力される指令および情報としては、例えば、動作開始指令等の指令以外に、被覆電線の切断長さ,被覆部の剥取長さ,圧着される端子の種類および処理数等の各種情報がある。なお、第1の制御手段は、操作部900より入力される動作開始指令に応答して、同じく操作部900より入力された各種情報に基づき、あらかじめ定められたシーケンスに従って、駆動制御信号を上記各駆動手段へ与えるようになっている。
B.動作
第10図はこのハーネス製造装置の動作を説明するタイムチャート、第11図は動作説明図、第12図はフローチャートである。第10図において、電線切断・切込手段100の全閉位置はカッター105,105が全閉した状態、つまり被覆電線600a,600bを切断する状態を示し、少開位置は少開した状態、つまり被覆電線600a,600bの被覆部607a,607bのみを切込む状態を示し、全開位置は全開した状態を示す。
電線送給手段50の送給動作における駆動は送給ローラ65,66が回転している状態を示し、停止はその回転が停止している状態を示す。開閉動作の閉位置は送給ローラ65,66が閉じた状態、つまり被覆電線600a,600bが送給ローラ65,66により挾持された状態を示し、開位置は送給ローラ65,66が開いて挾持解除された状態を示す。
第1の保持・移動手段200の電線保持動作の閉位置は第1の保持手段201の挾着爪242a,242bが閉じている状態、つまり被覆電線600a,600bを保持可能な状態を示し、開位置は挾着爪242a,242bが開いている状態を示す。前後動作および横行動作はそれぞれ第1の保持手段201の位置を示し、元切断位置は切断処理が実行される際の位置を示し、前進切込位置は元切断位置より少し前進した位置を示し、後退剥取位置は元切断位置より少し後退した位置を示す。横行動作の右行端子圧着位置は第1の保持手段201により保持された残留電線601a,601bへ端子の圧着が可能となる位置を示し、左行避位置は送給軸線Xより少し左側へ移動した位置を示す。
第2の保持・移動手段300の上下動作における上昇位置は第2の保持手段301が元切断位置と同高さにある位置を示し、下降位置はそれよりも下降した位置を示す。
排出手段550のクランプ554閉位置はクランプ554が閉じて切断電線602a,602bを保持可能な状態を示し、クランプ554開位置はクランプ554が開いた状態を示す。排出手段550の右行電線受取位置はクランプ554が右側へ移動した位置、つまり第2の保持手段301により保持された切断電線602a,602bをクランプ554により受取りができる位置を示し、左行電線排出位置はクランプ554が左側へ移動して切断電線602a,602bの排出が可能な位置を示す。
このハーネネ製造装置Aにおいて、オペレータが操作部900を介して動作開始指令を与えると、第1および第2の保持手段201,301がそれぞれ元切断位置に移動され、狭着爪242a,242b,342a,342bが開き、被覆電線600a,600bが電線送給手段50により挾持されながら送給される(ステップS1)。次に、第11図(a)に示すように、時刻t1で送給ローラ65,66の回転が停止して被覆電線600a,600bの送給が停止される(ステップS2)。この場合、電線送給手段50による被覆電線600a,600bの送り量は、予め操作部900より入力される被覆電線の切断長さに関する情報に基づいて決定される。つづいて時刻t2で第1および第2の保持手段201,301の挾着爪242a,242b,342a,342bが閉じて被覆電線600a,600bを保持する。次に、第11図(b)に示すように、時刻t3で送給ローラ65,66が開き被覆電線600a,600bの電線送給手段50による挾持が解除される一方、カッター105,105が全閉して被覆電線600a,600bが切断される(切断処理:ステップS3)。
次に、第11図(c)に示すように、時刻t5で第2の保持手段301が左側へ少し移動し、後に行なわれる残留電線601a,601bの前進時に残留電線601a,601bと切断電線602a,602bとが干渉するのを防止するようにしている。
次に、第11(d)に示すように、時刻t6で第1の保持手段201の前進(矢符P方向)により残留電線601a,601bが少し前進し、時刻t7でカッター105,105が切込位置に移動して、残留電線601a,601bの被覆部を切込む。この場合、第1の保持手段201による残留電線601a,601bの前方への送り量は、予め操作部900よりに入力される被覆部の剥取長さに関する情報に基づいて決定される。そして、その切込状態のまま、時刻t8で第1の保持手段201を後退させる。このように残留電線601a,601bの下流側端部の被覆部にカッター105,105を係止させながら残留電線601a,601bを後退させることにより、第11図(e)に示すように残留電線601a,601bの下流側端部の被覆部が剥取られ(第1の剥取処理:ステップS4)、剥取端部603a,603bが形成される。この第1の剥取処理においては、第1の保持手段201により残留電線601a,601bの切断位置近傍を保持しているため、カッター105,106による切込位置から第1の保持手段201までの被覆部の長さが短くなる。これにより、残留電線601a,601bを後退させた際に被覆部の伸びが低減されて剥取部における芯線の露出長さのばらつきが抑制され、剥取精度が高められる。
次に、ステップS5ないしS9に示すように、第1の端子圧着処理(ステップS5)、電線送給開始(ステップS6)が行なわれる一方で、第2の剥取処理(ステップS7)、第2の端子圧着処理(ステップS8)、排出処理(ステップS9)が行なわれる。
すなわち、第11図(f)に示すように、第1の保持手段201が時刻t8からt10にかけて送給軸線元位置から右行端子圧着位置へ移動し、時刻t11で残留電線601aの剥取端部603aに第1の端子圧着手段400により端子604aを圧着し、時刻t14で残留電線601bの剥取端部603bに端子604bを圧着して第1の端子圧着処理が実行される。なお、時刻t12からt13にかけて第1の保持手段201が少量右方向へ移動しているのは2本の残留電線601a,601bに対し端子圧着処理を順番に行なうためである。この場合、圧着端子の種類が異なると、被覆部の剥取長さも異なるため、端子圧着時における第1の保持手段201による残留電線601bの保持位置を、圧着端子の種類に応じて前後方向に移動調整する必要がある。また、2本の残留電線601a,601bの配線ピッチが変化した場合も、端子圧着時における第1の保持手段201による残留電線601a,601bの左右方向の移動量を調整する必要がある。この実施例では、予め操作部900より入力される圧着端子の種類等の情報に基づいて、上記第1の保持手段201の第1の端子圧着手段400に対する前後左右方向の移動量の調整が行なわれる。
一方、ステップS7ないしS9に示すように、第2の保持手段301は時刻t10で送給軸線元位置に戻り、時刻t12で切断電線602a,602bが被覆部剥取長さだけ後退する。この場合の後退量も、予め操作部900より入力される被覆部の剥取長さに関する情報に基づいて決定される。つづいて、時刻t14でカッター105,105により切断電線602a,602bの被覆部が切込まれる。そして、その切込状態のまま、時刻t16で切断電線602a,602bが前進され、切断電線602a,602bの上流側端部の被覆部が剥取られて第2の剥取処理が実行される。この第2の剥取処理においても上記第1の剥取処理と同様で切断電線602a,602bの切断位置近傍を第2の保持手段301により保持しているため、被覆部の伸びが低減されて剥取精度が高められる。
次に、第11図(g)に示すように、第2の保持手段301は時刻t16から時刻t19にかけて送給軸線元位置から左行端子圧着位置まで移動し、切断電線602a,602bの剥取端部603a,603bに第2の端子圧着手段500によりそれぞれ端子を圧着して第2の端子圧着処理が実行される(時刻t20〜t25)。この場合も、予め操作部900より入力される圧着端子の種類等の情報に基づいて、第2の保持手段301の第2の端子圧着手段500に対する前後左右方向の移動量の調整が行なわれる。更に、時刻t26〜t27において、排出手段550のクランプ554により切断電線602a,602b(ハーネス)が保持できるように第2の保持手段301が上昇する一方で、切断電線602a,602bの第2の保持手段301による保持が解除され、その後クランプ554により切断電線602a,602bが保持される。つづいて、時刻t28で第2の保持手段301が降下するとともに、排出手段550のクランプ554が排出位置まで移動し、時刻t29でクランプ554の保持が解除されて切断電線602a,602b(ハーネス)が電線排出部に排出される(排出処理:ステップS9)。
一方、第11図(h)に示すように、第1の保持手段201は、第1の端子圧着処理が完了した後元切断位置に戻り(時刻t15〜t18)、電線送給手段50の送給ローラ65,66により被覆電線600a,600b(残留電線601a,601b)を挾持してから、第1の保持手段201による残留電線601a,601bの保持を解除する(時刻t19〜t23)。つづいて、時刻t30で送給ローラ65,66を回転させて電線送給を開始する。一方、時刻t28で降下した第2の保持手段301は、被覆電線600a,600bに干渉しないように降下した状態で時刻t30から時刻t34にかけて元切断位置の下方位置まで移動する。その後、時刻t34から時刻t35にかけて第2の保持手段301が上昇し、第2の保持手段301の保持用溝371a,371b内にその上部開放側より被覆電線600a,600bが収容される。そして、時刻t35で被覆電線600a,600bの送給が停止され(ステップS10)、ステップS3に戻る。
このような動作が繰り返し行なわれてハーネスが製造されていく。
C.第1の実施例の効果
この第1の実施例のハーネス製造装置Aによれば、第1および第2の保持手段201,301を三次元方向に移動自在に設けてその移動を第1の制御手段により制御するように構成しているため、被覆電線の剥取長さの変更や、圧着端子の変更に対しても容易に対処できる。すなわち、操作部900に新たな剥取長さに関する情報や圧着端子の種類に関する情報等を与えて、その情報に基づき第1および第2の保持手段201,301の移動を第1の制御手段により制御するだけで、剥取長さの変更や異種の端子圧着処理を精度良く行なえる。
また、第1および第2の剥取処理を行なうにあたり、残留電線601a,601bおよび切断電線602a,602bの切断位置近傍を第1および第2の保持手段201,301で保持しているため、電線切断・切込手段100による残留電線601a,601bおよび切断電線602a,602bへの切込位置から第1および第2の保持手段201,301までの被覆部の長さが短くなり、被覆部の伸びに起因する被覆部の剥取長さの変化が少なくなり、剥取精度に優れる。
D.第2の実施例
次に、請求項3記載の発明に基づく第2の実施例であるハーネス製造装置Dの説明をする。ハーネス製造装置Dが上記第1の実施例であるハーネス製造装置Aに相違する点は2点ある。
その第1点目は第13図に示すように電線切断・切込手段100のカッター105,105にそれぞれ4個の刃部、すなわち第1刃部141,141,第2刃部142,142,第3刃部143,143および第4刃部144,144が形成されている点である。
第2点目は上記ハーネス製造装置Aの第1の制御手段に代えて、第2の制御手段が備えられ、以下に説明するような動作が行なわれる点である。
すなわち、第14図のタイムチャート、第15図の動作説明図および第16図のフローチャートに示すように、ステップS101で被覆電線600a,600bが送給され、第15図(a)に示すように、ステップS101で送給が停止される(時刻t1)。次に、第15図(b)に示すように、切断処理が実行される(ステップS103,時刻t2〜t3)。この場合、被覆電線600aはカッター105の第1刃部141により、被覆電線600bは第3刃部143によりそれぞれ切断される。
次に、第15図(c)に示すように、第2の保持手段301が左行避位置に移動し、時刻t7で第1の保持手段201が前進するとともに第2の保持手段301が後退し、時刻t8で第15図(d)に示すように、残留電線601a,601bおよび切断電線602a,602bの双方の被覆部がカッター105,105により切込まれる。この場合、残留電線601a,601bは第1刃部141,第3刃部143により、切断電線601a,602bは第2刃部142,第4刃部144により切込まれる。この切込状態のまま、時刻t9で残留電線601a,602bが後退するとともに切断電線602a,602bが前進し、第15図(e)に示すように第1の剥取処理および第2の剥取処理が同時に行なわれる(ステップS104)。
次に、ステップS105ないしステップS108に示すように、第1の端子圧着処理(ステップS105)、電線送給開始(ステップS106)が行なわれる一方で、第2の端子圧着処理(ステップS107)、排出処理(ステップS108)が行われる。
すなわち、時刻t11ないし時刻t16で残留電線601a,601bが右行端子圧着位置に移動して第1の端子圧着手段400により端子604a,604bが圧着されるとともに(ステップS105)、切断電線602a,602bが左行端子圧着位置に移動して第2の端子圧着手段500により端子が圧着される(ステップS107)。
次に、第15図(f)に示すように、第1の保持手段201が時刻t19で送給軸線元位置に戻り、時刻t22で被覆電線600a,600bの送給が開始される(ステップS106)。一方、時刻t17ないし時刻t22で切断電線602a,602b(ハーネス)の排出処理が実行され、時刻t19から時刻t25にかけて第2の保持手段301が元切断位置に戻る。そして、時刻t26で電線の送給が停止される(ステップS109)。
このハーネス製造装置Dによれば、第1の剥取処理と第2の剥取処理とを同時に行えるため、上記第1のハーネス製造装置Aの効果に加えて処理能力が向上する。
E.第3の実施例
次に、請求項4記載の発明に基づく第3の実施例であるハーネス製造装置Eの説明をする。このハーネス製造装置Eが上記第2の実施例のハーネス製造装置Dに相違する点は、上記ハーネス製造装置Dの第2の制御手段に代えて、第3の制御手段が備えられ、以下に説明するような動作が行なわれる点である。
第17図のタイムチャート、第18図の動作説明図に示すように、動作開始から時刻t16までは上記第2の実施例のハーネス製造装置Dと同じ動作が行なわれる。すなわち、時刻t1から時刻t16において、切断処理,第1および第2の剥取処理,第1および第2の端子圧着処理が実行され、その後、第1の保持手段201は時刻t19で送給軸線元位置に戻らず左行避位置へ移動して、時刻t22で電線が送給される。一方、時刻t17で排出手段550に切断電線602a,602b(ハーネス)を譲り渡した第2の保持手段301は時刻t19から時刻t22にかけて第1の保持手段201に対向するように左行避位置に移動し、時刻t26で電線の送給が停止される。
次に、第18図(b)に示すように、2回目の切断処理が実行される(時刻t27〜t29)。この場合、1回目の切断処理とは違い、被覆電線600aは第2刃部142により、被覆電線600bは第4刃部144により切断される。次に、第18図(c)に示すように、第2の保持手段301が送給軸線元位置に移動し(時刻t30)、つづいて、第18図(d),(e)に示すように第1の保持手段201が前進するとともに第2の保持手段301が後退し、カッター105,105による被覆部の切込みが行なわれ、第1の保持手段201が後退するとともに第2の保持手段301が前進して2回目の第1および第2の剥取処理が実行される(時刻t32〜t34)。
次に、残留電線601a,601bの2回目の第1の端子圧着処理が実行され、第18図(f)に示すように第1の保持手段201が送給軸線元位置に戻り、電線の送給が開始される(時刻t41〜t47)。一方、切断電線602a,602bの2回目の第2の端子圧着処理が実行され、切断電線602a,602bの2回目の排出処理が完了した後、第2の保持手段301が送給軸線元位置に戻り(時刻t41〜t51)、第18図(g)に示すように電線の送給が停止される。以後、上記動作が繰り返される。
以上のように、このハーネス製造装置Eによれば、被覆電線600a,600bの切断を、第1刃部141および第3刃部143と、第2刃部142および第4刃部144とで交互に行なうように構成しているため、被覆電線600a,600bの芯線切断時のカッター105,105への負担が半分に軽減され、耐久性能に優れる。
(発明の効果)
以上のように、請求項1記載の発明によるハーネス製造装置によれば、被覆電線の剥取精度に優れ、しかも異種端子に対し簡単な調整作業で端子圧着を行えるという効果が得られる。
また、請求項2記載の発明によるハーネス製造装置によれば、上記第1の効果に加えてさらに、両端に端子の圧着されたハーネスが製造できるという効果が得られる。
また、請求項3記載の発明によるハーネス製造装置によれば、上記第2の効果に加えてさらに、処理能力が優れるという効果が得られる。
更に、請求項4記載の発明によるハーネス製造装置によれば、上記第3の効果に加えてさらに、カッターの耐久性能に優れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の第1の実施例であるハーネス製造装置を示す斜視図、
第2図はその側面図、
第3図(a),(b)はそれぞれその平面図、
第4図は電線送給手段を示す斜視図、
第5図は電線切断・切込手段を示す要部斜視図、
第6図は第1の保持・移動手段を示す斜視図、
第7図は第2の保持・移動手段を示す斜視図、
第8図は第1の端子圧着手段を示す概略断面図、
第9図は排出手段を示す斜視図、
第10図は第1の実施例の動作を説明するタイムチャート、
第11図(a)ないし(h)はそれぞれ第1の実施例の動作説明図、
第12図は第1の実施例の動作を説明するフローチャート、
第13図はこの発明の第2の実施例に適用された電線切断・切込手段を示す要部斜視図、
第14図は第2の実施例の動作を説明するタイムチャート、
第15図(a)ないし(f)はそれぞれ第2の実施例の動作説明図、
第16図は第2の実施例の動作を説明するフローチャート、
第17図はこの発明の第3の実施例の動作を説明するタイムチャート、
第18図(a)ないし(g)はそれぞれ第3の実施例の動作説明図、
第19図はハーネスを示す斜視図、
第20図はこの発明の基礎となるハーネス製造装置の概略平面図である。
50…電線送給手段、56…モータ、
200…第1の保持・移動手段、
201…第1の保持手段、
202…第1の移動手段、
203a,203b…シリンダ、
205,206…モータ、
300…第2の保持・移動手段、
301…第2の保持手段、
302…第2の移動手段、
303a,303b…シリンダ、
305,306…モータ、
400…第1の端子圧着手段、
401…第1の端子圧着部、
500…第2の端子圧着手段、
501…第2の端子圧着部、550…排出手段、
600a,600b…被覆電線、
601a,601b…残留電線、
602a,602b…切断電線、
603a,603b…剥取端部、
604a,604b…端子、
607a,607b…被覆部、
A…ハーネス製造装置、D…ハーネス製造装置、
E…ハーネス製造装置、P…電線送給方向、
X…電線送給ライン
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-07-19 
結審通知日 2006-07-24 
審決日 2006-08-04 
出願番号 特願昭63-106014
審決分類 P 1 41・ 832- Y (H01B)
P 1 41・ 854- Y (H01B)
P 1 41・ 856- Y (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 辻 徹二  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 高木 康晴
平塚 義三
登録日 1994-08-08 
登録番号 特許第1863604号(P1863604)
発明の名称 ハ―ネス製造装置  
代理人 後藤 高志  
代理人 後藤 高志  

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