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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1143750
審判番号 不服2004-1482  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-21 
確定日 2006-09-15 
事件の表示 平成10年特許願第 14859号「画像処理方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月30日出願公開、特開平11-201740〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成10年1月9日の出願であって、平成15年12月16日付け(発送日;同月24日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年1月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月16日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年2月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲、
「【請求項1】 電子シャッタにより露光量を調節するようにした複数台の撮像手段をそれぞれその光軸を特定の観測対象領域に向けた状態で特定の位置に固定配備し、各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込んで、前記観測対象領域を移動する対象物の3次元形状を観測するための画像処理を行う方法において、
前記各撮像手段のうちの少なくとも1台の撮像手段により得られた画像において、その画像上の観測対象領域に複数のサンプリング点または所定大きさの画像領域を設定し、設定された複数のサンプリング点または画像領域から輝度に関わる特徴量を抽出し、抽出された特徴量に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】 電子シャッタにより露光量を調節するようにした複数台の撮像手段をそれぞれその光軸を特定の観測対象領域に向けた状態で特定の位置に固定配備し、各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込んで、前記観測対象領域を移動する対象物の3次元形状を観測するための画像処理を行う装置であって、
前記各撮像手段のうちの少なくとも1台の撮像手段により得られた画像において、その画像上の観測対象領域に複数のサンプリング点または所定大きさの画像領域を設定する設定手段と、
前記設定手段により設定された複数のサンプリング点または画像領域から輝度に関わる特徴量を抽出する特徴量抽出手段と、
前記抽出された特徴量に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御するシャッタ速度制御手段とを具備して成る画像処理装置。」
を、
「【請求項1】 電子シャッタにより露光量を調節するようにした2台の撮像手段を、それぞれの光軸を下方の観測位置に向けた状態で所定の高さ位置に設置し、各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込み、前記観測位置を移動する対象物の三次元形状を観測するための画像処理方法であって、
前記の各撮像手段により得られた各画像について、画像上の観測対象位置に複数のサンプリング点または所定の大きさの画像領域を設定し、設定された複数のサンプリング点または画像領域から輝度に関わる特徴量の平均値をそれぞれ算出した後、各算出値の平均値を算出し、前記の各算出値の平均値に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】 電子シャッタにより露光量を調節するようにした2台の撮像手段を、それぞれの光軸を下方の観測位置に向けた状態で所定の高さ位置に設置し、各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込み、前記観測位置を移動する対象物の三次元形状を観測するための画像処理装置であって、
前記の各撮像手段により得られた各画像について、画像上の観測対象位置に複数のサンプリング点または所定の大きさの画像領域を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された複数のサンプリング点または画像領域から輝度に関わる特徴量の平均値をそれぞれ算出した後、各算出値の平均値を算出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により算出された前記の各算出値の平均値に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御するシャッタ速度制御手段とを具備して成る画像処理装置。」
と補正する内容を含むものである。
なお、アンダーラインは、補正個所を示すために付したものである。

(2)補正の目的の適合性
上記補正の目的の適合性について検討する。
補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明について、発明を特定するために必要な事項である「撮像手段」に関して「光軸を下方の観測位置に向けた状態で所定の高さ位置に設置し」との限定を付加し、「電子シャッタ速度の制御」に関し、「特徴量の平均値をそれぞれ算出した後、各算出値の平均値を算出し、前記の各算出値の平均値に応じて」制御するとの限定を付加したものであり、また、補正後の請求項2についても、同様の限定を付加したものである。
したがって、上記手続補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の規定に該当するものである。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1及び2に記載された発明(以下、「本願補正発明1」及び「本願補正発明2」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(3-1)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-120257号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「特許請求の範囲】
【請求項1】 車輌に搭載した撮像系(10)によって車外の対象を撮像し、撮像した画像をデータ処理して画像全体に渡る距離分布を算出する車輌用距離検出装置において、
前記撮像系(10)によって撮像した画像の画素毎のデジタルデータを、感度オーバーを表わす基準データと比較するとともに感度アンダーを表わす基準データと比較し、それぞれの比較結果を所定領域に渡って計数した計数値により、前記撮像系(10)の感度を調整する感度調整手段(15)を備えたことを特徴とする車輌用距離検出装置。
【請求項2】 前記感度調整手段(15)に、
前記デジタルデータを前記感度オーバーを表わす基準データと比較する第1の比較器(16)と、
前記デジタルデータを前記感度アンダーを表わす基準データと比較する第2の比較器(17)と、
前記第1の比較器(16)の出力をアップカウントし、前記第2の比較器(17)の出力をダウンカウントする計数器(18)と、
前記計数器(18)の計数値が正の値のとき感度を下げ、前記計数器(18)の計数値が負の値のとき感度を上げるよう、前記撮像系(10)へ感度調整信号を出力する感度コントローラ(19)とを備えたことを特徴とする請求項1記載の車輌用距離検出装置。」
1b.「【0015】図2において、符号1は自動車などの車輌であり、この車輌1に、車外の設置範囲内の対象を撮像して距離を検出する距離検出装置2が搭載されている。この距離検出装置2は、例えば図示しない道路・障害物認識装置などに接続されて障害物監視装置を構成し、運転者に対する警告、車体の自動衝突回避等の動作を行なうことができるようになっている。
【0016】前記距離検出装置2は、車外の対象を撮像する撮像系としてのステレオ光学系10と、このステレオ光学系10の感度を調整して適正な画像を撮像できるよう制御するための感度調整手段としての感度調整装置15と、前記ステレオ光学系10によって撮像した画像を処理し、画像全体に渡る距離分布を算出するステレオ画像処理装置20とを備えており、このステレオ画像処理装置20で算出した3次元の距離情報が、例えば道路・障害物認識装置等に取り込まれ、道路形状及び車輌1に対する障害物が認識される。
【0017】前記ステレオ光学系10は、例えば電荷結合素子(CCD)等の固体撮像素子を用いたカメラにより構成され、図3に示すように、遠距離の左右画像用としての2台のCCDカメラ11a,11b(代表してCCDカメラ11と表記する場合もある)が、それぞれ車室内の天井前方に一定の間隔をもって取り付けられるとともに、近距離の左右画像用としての2台のCCDカメラ12a,12b(代表してCCDカメラ12と表記する場合もある)が、それぞれ、遠距離用のCCDカメラ11a,11bの内側に一定の間隔をもって取り付けられている。」
1c.「【0031】この場合、前記CCDカメラ11a,11bには、感度調整装置15が接続されており、前記画像メモリ33a,33bに記録される画像を適正なものとして常に正確なシティブロック距離Hを算出することができるようになっている。
【0032】前記感度調整装置15には、左画像用のA/Dコンバータ31aに接続されるコンパレータ16a,17a、これらのコンパレータ16a,17aからの出力をアップカウントあるいはダウンカウントするアップダウンカウンタ18a、右画像用のA/Dコンバータ31bに接続されるコンパレータ16b,17b、これらのコンパレータ16b,17bからの出力をアップカウントあるいはダウンカウントするアップダウンカウンタ18bが備えられている。
【0033】前記各コンパレータ16a,16b(代表してコンパレータ16と表記する場合もある)は、各A/Dコンバータ31a,31bからの画素毎の各デジタルデータと、感度オーバーを表わす基準データDOVRとを比較する第1の比較器であり、各デジタルデータがこの基準データDOVRを越えると、各コンパレータ16a,16bの各出力がオンとなって計数器としての各アップダウンカウンタ18a,18b(代表してアップダウンカウンタ18と表記する場合もある)でアップカウントされる。
【0034】また、前記各コンパレータ17a,17b(代表してコンパレータ17と表記する場合もある)は、各A/Dコンバータ31a,31bからの画素毎の各デジタルデータと、感度アンダーを表わす基準データDUDRとを比較する第2の比較器であり、各デジタルデータがこの基準データDUDRより小さくなると、各コンパレータ17a,17bの各出力がオンとなって前記アップダウンカウンタ18a,18bでダウンカウントされる。
【0035】さらに、前記感度調整装置15には、前記各アップダウンカウンタ18a,18bの計数値に基づいて前記CCDカメラ11a,11bの感度を調整する感度コントローラ19が備えられ、前記各アップダウンカウンタ18a,18bの計数値の、例えば合計値が正の値のとき感度を上げ、負の値のとき感度を上げるよう、各CCDカメラ11a,11bに感度調整信号を出力する。
【0036】すなわち、逆光や真昼の非常に照度の高い状態からトンネル内に進入したときのように急激に照度が変化する場合にも、輝度平均処理等による従来の感度調整に対し、簡単な回路構成で高速に処理することができ、広いダイナミックレンジを得ることができる。」
1d.「【0056】次に、距離検出装置2の動作について説明する。
【0057】図7は、ステレオ画像処理装置20における距離検出処理のフローチャートであり、まず、ステップS101で左右のCCDカメラ11a,11bによって撮像した画像を入力すると、ステップS102へ進み、入力したアナログ画像をA/Dコンバータ31a,31bでデジタル量に変換する。このA/D変換された画像データは、感度調整装置15の各コンパレータ16,17に入力される。
【0058】前記感度調整装置15では、前記各A/Dコンバータ31a,31bからのデジタルデータを、コンパレータ16で感度オーバーを表わす基準データDOVRと比較するとともに、コンパレータ17で感度アンダーを表わす基準データDUDRと比較し、比較結果をアップダウンカウンタ18でカウントする。
【0059】例えば、前記各A/Dコンバータ31a,31bからのデジタルデータが8ビットの場合、感度オーバーを示す基準データDOVRを”255”、感度アンダーを示す基準データDUDRを”0”とし、前記各A/Dコンバータ31a,31bからのデジタルデータを各基準データDOVR,DUDRと画素毎に比較し、感度オーバーあるいは感度アンダーのデータが表れる毎にオンとなるコンパレータ16,17の出力をアップダウンカウンタ18でアップカウントあるいはダウンカウントする。
【0060】そして、所定領域に渡って計数した結果、例えば1画面分に対する計数結果が正の値で感度オーバーのときには、PID制御等によりCCDカメラの絞りを絞るか、あるいはシャッタースピードを上げ、感度を下げるよう制御し、計数結果が負の値で感度アンダーのときには、絞りを開けるか、あるいはシャッタースピードを下げ、感度を上げるよう制御する。尚、CCDカメラの絞りとシャッタースピードとを同時に制御するようにして良い。
【0061】これにより、走行状態における外界照度が大きく変化した場合においても、左右のCCDカメラ11a,11bの感度が適切に調整される。この場合、感度オーバー、感度アンダーの領域をなくすように動作するため、より本質的、より確実な感度調整を行なうことができる。」
1e.図面の図1の記載から、感度コントローラ19の出力が、2台のCCDカメラ11a,11bに共通に与えられることから、2台のCCDカメラ11a,11bは、感度コントローラ19から共通の感度調整信号を受け取るものと解される。また、図3の記載から、2台のCCDカメラ11a,11bは、車輌の所定の高さ位置に設置されていることが読み取れる。

(3-2)対比・判断
引用刊行物についての上記(3-1)の「1a.」乃至「1d.」の記載から、以下の事項が読み取れる。
・「1b.」の記載から、左画像用及び右画像用の2台のCCDカメラ11a,11bにより、ステレオ光学系が構成されていること。
・「1c.」及び「1a.」の記載から、2台のCCDカメラ11a,11bには、感度調整装置15が接続されており、感度調整装置15は、撮像により得られた左右の画像の画素毎のデジタルデータを、感度オーバー、アンダーを表わす各基準データと比較し、それぞれの比較結果を所定領域に渡って計数した計数値に基づいて、各CCDカメラ11a,11bに感度調整信号を出力する感度コントローラ19を有していること。
・「1d.」の記載から、各CCDカメラ11a,11bは、感度コントローラ19の出力を受けて、シャッタースピードの制御により感度調整を行うこと。
したがって、上記(3-1)の「1a.」乃至「1e.」の記載から、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「シャッタースピードの制御により感度調整が行われる左画像用及び右画像用の2台のCCDカメラ11a,11bを、車輌の所定の高さ位置に設置し、前記2台のCCDカメラ11a,11bにより撮像した左右の画像をデータ処理して画像全体に渡る距離分布を算出する車輌用距離検出装置であって、撮像により得られた左右の画像の画素毎のデジタルデータを、感度オーバー、アンダーを表わす各基準データと比較し、それぞれの比較結果を所定領域に渡って計数した計数値に基づいて、各CCDカメラ11a,11bに感度調整信号を出力する感度コントローラ19を設け、前記感度調整信号を受けて各CCDカメラ11a,11bのシャッタースピードの制御を行う車輌用距離検出装置。」

本願補正発明2(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「シャッタースピードの制御により感度調整が行われる左画像用及び右画像用の2台のCCDカメラ11a,11b」は、前者の「電子シャッタにより露光量を調節するようにした2台の撮像手段」に相当する。
・後者の「2台のCCDカメラ11a,11bにより撮像した左右の画像をデータ処理して画像全体に渡る距離分布を算出する車輌用距離検出装置」と、前者の「各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込み、前記観測位置を移動する対象物の三次元形状を観測するための画像処理装置」とは、上記相当関係も勘案すれば、ともに、「各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込み、対象物の三次元情報を得るための処理装置」である点で共通する。また、後者の「2台のCCDカメラ11a,11b」と前者の「2台の撮像手段」は、ともに、所定の高さ位置に設置されるものである。
・後者の「撮像により得られた左右の画像の画素毎のデジタルデータを、感度オーバー、アンダーを表わす各基準データと比較し、それぞれの比較結果を所定領域に渡って計数した計数値に基づいて、各CCDカメラ11a,11bに感度調整信号を出力する感度コントローラ19を設け、前記感度調整信号を受けて各CCDカメラ11a,11bのシャッタースピードの制御を行う」点の構成と、前者の「各撮像手段により得られた各画像について、画像上の観測対象位置に複数のサンプリング点または所定の大きさの画像領域を設定する設定手段と、前記設定手段により設定された複数のサンプリング点または画像領域から輝度に関わる特徴量の平均値をそれぞれ算出した後、各算出値の平均値を算出する特徴量抽出手段と、前記特徴量抽出手段により算出された前記の各算出値の平均値に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御するシャッタ速度制御手段とを具備して成る」構成とを対比すると、後者の「それぞれの比較結果を所定領域に渡って計数した計数値」は、左右の画像のそれぞれについて算出された輝度に関わる特徴量といえること、後者もシャッタースピードの制御を行っていることから、前者の「シャッタ速度制御手段」に相当する構成を具備しているものと解されること、及び、後者の「感度調整信号」と前者の「各算出値の平均値」とは、ともに適正露光を達成するための「適正露光情報」であること、を勘案すれば、ともに、「各撮像手段により得られた各画像について、輝度に関わる特徴量をそれぞれ算出した後、各算出値から適正露光情報を算出する手段と、前記適正露光情報に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御するシャッタ速度制御手段とを具備して成る」構成である点で共通する。
したがって、両者は、
「電子シャッタにより露光量を調節するようにした2台の撮像手段を、所定の高さ位置に設置し、各撮像手段を同時に駆動して得られた画像を取り込み、対象物の三次元情報を得るための処理装置であって、前記の各撮像手段により得られた各画像について、輝度に関わる特徴量をそれぞれ算出した後、各算出値から適正露光情報を算出する手段と、前記適正露光情報に応じて各撮像手段の電子シャッタ速度を制御するシャッタ速度制御手段とを具備して成る処理装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
前者が、2台の撮像手段を、それぞれの光軸を下方の観測位置に向けた状態で所定の高さ位置に設置し、前記観測位置を移動する対象物の三次元形状を観測するための画像処理装置であり、前記の各撮像手段により得られた各画像について、画像上の観測対象位置に複数のサンプリング点または所定の大きさの画像領域を設定する設定手段を有し、複数のサンプリング点または画像領域から輝度に関わる特徴量の平均値をそれぞれ算出しているのに対し、後者はこのような構成を有していない点。
[相違点2]
前者が、各撮像手段により得られた各画像についての各算出値の平均値を算出しているのに対し、後者は、左右の画像のそれぞれの比較結果を所定領域に渡って計数した計数値に基づいて、各CCDカメラ11a,11bに感度調整信号を出力してはいるものの、平均値を算出する点については記載されていない点。

そこで、上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
2台の撮像手段を、それぞれの光軸を下方の観測位置に向けた状態で所定の高さ位置に設置して前記観測位置を移動する対象物の三次元形状を観測するための画像処理装置は、従来周知(例えば、特開平9-84056号公報参照。)であり、また、画像上の観測対象位置に複数のサンプリング点を設定し、複数のサンプリング点から輝度の平均値を算出することも、従来周知(例えば、上記の特開平9-84056号公報、特開平4-336514号公報[段落【0005】に、従来の技術として、「その他の露光量決定方式としては、画面の中心付近の限られた領域の明るさで露光量を決定する方式や、画面の代表的な数点をサンプリングし、その明るさの平均値により露光量を決める方式などがあった。」との記載がある。]参照。)であるから、このような従来周知の事項を引用発明に適用して相違点1に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。
[相違点2]について
ステレオ撮影のときに同一の露出値により露出制御を行う複数のカメラを備えたステレオカメラにおいて、上記同一の露出値を各カメラの測光値の平均値から得ることは従来周知(例えば、特開平3-102339号公報には、「以上の実施例では、ステレオモードのとき、主導権を持っている方のカメラの測光値・・・に基づいて、露出制御・・・を行なっていたが、両カメラの測定値の平均値・・・を・・・演算し、演算結果を各カメラに出力して露出制御・・・を行なうようにしてもよい。」(7頁左下欄15行〜右下欄3行)等記載されている。)であるから、このような従来周知の事項を引用発明に適用して相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。

そして、本願補正発明2による効果も、引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明2は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
また、本願補正発明1は、本願補正発明2とカテゴリーが相違するのみで、実質的に同一のものであるから、本願補正発明2と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年2月16日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成15年9月24日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び2に係る発明は、「2.(1)」の補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものである。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「2.(3-1)」に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
本願の請求項1及び2に係る発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明1及び2から、発明を特定するために必要な事項についての上記限定を省いたものである。
そうすると、請求項1及び2に係る発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1及び2が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-12 
結審通知日 2006-07-18 
審決日 2006-07-31 
出願番号 特願平10-14859
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01B)
P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 後藤 時男
下中 義之
発明の名称 画像処理方法およびその装置  
代理人 鈴木 由充  

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