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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21V
管理番号 1143767
審判番号 不服2002-1026  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-18 
確定日 2006-09-12 
事件の表示 平成11年特許願第118292号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月10日出願公開、特開平11-339523号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は,平成2年10月29日に出願した特願平2-291680号(パリ条約による優先権主張平成元年10月30日,米国)の一部を平成11年4月26日に新たな特許出願としたものであって,平成13年10月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成14年1月18日付けで審判請求がなされたものである。
その請求項1に係る発明は,平成14年2月12日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。(以下,「本願発明」とい
う。)
「光源,光ガイド及び光ガイドから光を受けるための光学的に透明なフィルムを持つ照明装置であって,前記光ガイドは,光源から発せられた光を全反射させる手段を有し,前記フィルムが第1の表面及び第2の表面を有し,前記第1の表面が構造を有し,その構造が複数の三角プリズムの形態であ
り,前記全反射した光が第1の表面に当たって前記フィルムを伝播し,前記第2の表面を通って出ていく光のビームによって照らされた領域の形を変化させる手段を第2の表面は含んでいて,上記第1の表面は上記第2の表面よりも光源に近い,照明装置。」

2.引用例
(1)当審の拒絶の理由に引用された特開昭62-165603号公報(以下,「引用例1」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア.「(1)光を伝送かつまたは分配する中空管状の光誘導管であつて,該光誘導管は透明材料でつくられた壁部材を含み,該壁部材の一方の側は構造面であり該構造面と対面している他方の側は平滑面になつており,該構造面は実質的に直角二等辺三角形の形をしたプリズムの直線アレイが隣り合つて並んでおり,その結果,許容角度範囲内で該光誘導管に入射した光が光誘導管の長さ方向に沿つて進むときに,該光のあらかじめ決まつている部分が全内部反射を起こすようになつている光誘導管において,
該壁部材(11)の少なくとも一部の断面は平滑な弓状曲線をなしていることと,該曲線と向きあつている該プリズムの垂直辺(20)が該曲線の接線と約45°の角度をなしていることとを特徴とする,光誘導管。」(特許請求の範囲第1項)
イ.「(6)特許請求の範囲第(1)項記載の装置において,更に前記壁部材に性能を操作する手段が具備され,光の一部が全内部反射せずに前記壁部材を通り抜けて前記光誘導管から出ていくようになつていることを特徴とする,光誘導管。」(特許請求の範囲第6項)
ウ.「本発明の光誘導管の利点は種々の断面形状のものが得られるということであり,光の一部が全内部反射せずに光導管の壁を通つて出ていくことができるよう操作することにより,照明器具や光の伝送分配を行う光システムに使用できることである。すなわち,本光誘導管は特殊な設備や器具の再設計の必要なく現存する照明器具の中に容易にはめ込むことができるのであ
る。
本発明による照明器具は,一般的に不透明な容器が光誘導管を収容した形をしており,容器の少なくとも一方の側には光学的窓があいていて,そこから光が出ていくことにより照明または二次光源として使用することができる。拡散器を光学的窓に設けることにより,例えば光をもつと平均的に散乱させたり,和らげたり,広げたりしてもよい。」(第3ページ左下欄第12行-同ページ右下欄第7行)
エ.「第1図に示されている本発明の中空管状の光誘導管10は,光誘導管内のあらかじめ定められた部分の光を伝送かつ又は分配するのに用いられ
る。この光誘導管の壁11は透明な材料でつくられており,一方の面12は凹凸のある構造をしており,この面12と向きあつている他方の面14は平滑になつていて,壁の断面の少くとも一部は平滑な弓形曲線をなしている。光源15から発した入射光は面12又は14のいずれかに許容角度範囲内で当たると,第2図又は第3図に示すように他方の面で内部全反射する。第1の面で屈折した光が法線に関して臨界角よりも大きいある角度で第2の面に当たると,光は内部全反射する。」(第4ページ左上欄第2-14行)
オ.「光誘導管10の壁に使用される材料は種々あるが,殆んどの場合概して柔軟であることが要求される。また材料は透明であつて好ましくは均質かつ等方性であることが必須であり,例えば重合体材料又はガラスが適している。・・・(中略)・・・しかし壁は薄くて柔軟性のあるフイルムにするのが好ましい。」(第4ページ右上欄第10行-同ページ左下欄第17行)
カ.「例えば最適の光伝送が要求されるときには,光誘導管10は円形の断面を有し,外側の凸側に光誘導管の軸に平行にプリズムを有し,平滑面14は光沢仕上げにしてもよい。・・・(中略)・・・光導管10を光の伝送と分配に使用するために,光誘導管の性能を操作してもよい。それには拡散性粒子または反射性粒子を加えたり,非光学的な平滑プリズム面や非光学的なとがつた角のような欠陥を混ぜたり,平滑面14を凹凸をつけたりすることを単独または組合せにより行えばよい。こうして第11図に示すように,光誘導管10を照明器具として,または照明器具40の中の照明または二次光源として使用することができる。第11図では操作された光導管10が内面42を有する容器41の中に納められている。容器41はアリミニウムのような適当な材料を成型,曲げまたは押出しによりつくられ,効率を高めるために内面42に鏡面被覆または拡散反射被覆を施してもよい。内面42に複数個の反射性要素(図示せず)を含ませることにより,伝送または照明の目的のためにその要素に当たつた光を所望の方向に向けるようにしてもよい。第12,13,14図に示すように,照明または二次光源として使用するために,光を照明器具に入射して容器の開口のような少なくとも1個の光学的窓44から光を出すようにしてもよい。また,第12図に示すように窓44の中に拡散器46を設けることにより,光を所望の形に再分配すなわち散らすこともできる。」(第6頁左下欄第16行-第7頁左上欄第13行)
キ.第1図及び第14図には,光導管10は全体に渡って内側の平滑面14と外側の構造面12を有し,該内側の平滑面13は該外側の構造面12よりも光源15に近い照明装置が図示されている。
上記記載事項ア.ないしカ.及び上記図示事項キ.から,引用例1には,以下の発明が記載されているといえる。
「光源15,光が全内部反射する透明なフィルムとこの全内部反射した光が通り抜ける透明なフィルムを持つ照明器具であって,前記光が全内部反射する透明なフィルムは,光源15から発した光を全内部反射し,前記光が通り抜ける透明なフィルムは,内側の平滑面14と外側の構造面12を有し,該内側の平滑面14には凹凸がつけられ,前記全内部反射した光がこの凹凸により該透明なフィルムを通り抜けて出て行き,さらに,該外側の構造面12を通り抜けて出て行く光を所望の形に再分配する拡散器46を備え,前記内側の平滑面14は前記外側の構造面12よりも光源15に近い,照明装置。」(以下,「引用発明1」という。)

(2)当審の拒絶の理由に引用された実願昭58-152491号(実開昭60-59406号)のマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には,以下の事項が記載されている。
ア.「この考案は,上記の光パターンの変化を容易に行うことができるスポツトライト装置を提供することを目的としている。」(第2ページ第3-5行)
イ.「第1図はこの考案にかかるスポツトライト装置の1例をあらわす断面図で,このスポツトライト装置1は,暗箱2の前面部に設けられたレンズ枠4に,レンズ5が回転可能に取り付けられている。」(第2ページ第16-19行)
ウ.「レンズ5としては第2図のフレネルレンズや第3図の平凸レンズ等を使用することができるが,いずれの場合にもレンズのフラット面7に縞状の凸条9が形成されている。」(第3ページ第1-4行)
エ.「次に,このスポツトライト装置1の機能について述べれば,第4図のようにレンズ5の凸条9の向きをフイラメント15の長手方向と合致させた場合は,フイラメント15の光が凸条9のプリズム作用で凸条と直角方向(水平方向)に屈曲させられ,縦長のフイラメントを光源とするスポツトライト装置1から照射される光パターン19は円形になる。次に,レンズ5を90度回転させて,第5図のように凸条9がフイラメント15の長手方向と直角になつた場合は,縦長のフイラメントの光がさらに凸条9によつて上下に引き伸ばされ,光パターン19’は縦に細長いビーム状になる。第4図と第5図の中間の位置,すなわち凸条9とフイラメント15が斜めに交差しているときは,光パターンは凸条9の直角方向に引き伸ばされた歪んだ楕円になる。」(第3ページ第16行-第4ページ第11行)
オ.「なお,凸条はレンズのいずれの面に設けておいてもよく,またランプのフイラメントを横向きに設けておいてもよい。」(第5ページ第3-5
行)
上記記載事項ア.ないしオ.から,引用例2には,以下の発明が記載されているといえる。
「フイラメント15(光源)の前面部にレンズを設け,該フィラメント15(光源)の光がレンズ表面の凸条9のプリズム作用で屈曲させられ,該光と該凸条9のなす角度に応じて光パターン19の形状が変化するスポットライト装置。」(以下,「引用発明2」という。)

3.対比
本願発明と引用発明1とを対比すると,両者の文言をその意味,機能又は作用等からみて,後者の「光源」は前者の「光源15」に相当し,以下同様に,後者の「光が全内部反射する透明なフィルム」は前者の「光ガイド」
に,後者の「この全内部反射した光が通り抜ける透明なフィルム」は前者の「光ガイドから光を受けるための光学的に透明なフィルム」に,後者の「全内部反射」は前者の「全反射」に,後者の「内側の平滑面14」は前者の「第1の表面」に,後者の「外側の構造面12」は前者の「第2の表面」に,それぞれ相当する。
また,前者の「前記第1の表面が構造を有し,その構造が複数の三角プリズムの形態であり」と後者の「該内側の平滑面14には凹凸がつけられ」
は,第1の表面が構造を有する点で共通する。
そして,前者の「前記全反射した光が第1の表面に当たって前記フィルムを伝播し」と後者の「前記全内部反射した光がこの凹凸により該透明なフィルムを通り抜けて出て行き」について,後者の「凹凸」に光が当たらなければ該透明なフィルムを通り抜けるようにすることは光学的に不可能であること,この「凹凸」は「内側の平滑面14」に設けられていること,前者の「伝播し」と後者の「通り抜けて出て行き」は光学的に同義であることから,両者に相違点は存在しない。
さらに,前者の「前記第2の表面を通って出て行く光のビームによって照らされた領域の形を変化させる手段を第2の表面は含んでいて」と後者の「該外側の構造面12を通り抜けて出て行く光を所望の形に再分配する拡散器を備え」について,後者の「光を所望の形に再分配する」とは光を所望の形に変化させるということであり,光の光路(ビーム)を変化させれば,それにより照らされた領域の形も変化するわけであるから,両者は,前記第2の表面を通って出て行く光のビームによって照らされた領域の形を変化させる手段を備える点で共通する。
してみれば,本願発明と引用発明1とは,「光源,光ガイド及び光ガイドから光を受けるための光学的に透明なフィルムを持つ照明装置であって,前記光ガイドは,光源から発せられた光を全反射させる手段を有し,前記フィルムが第1の表面及び第2の表面を有し,前記第1の表面が構造を有し,前記全反射した光が第1の表面に当たって前記フィルムを伝播し,前記第2の表面を通って出て行く光のビームによって照らされた領域の形を変化させる手段を備え,上記第1の表面は上記第2の表面よりも光源に近い,照明装
置」である点で一致し,以下の各点で相違する。
(相違点1)「第1の表面」の「構造」について,本願発明においては「複数の三角プリズムの形態」であるのに対し,引用発明1においては「凹凸」である点。
(相違点2)「第2の表面を通って出て行く光のビームによって照らされた領域の形を変化させる手段」について,本願発明においては「第2の表面は含んでいる」のに対し,引用発明1においては「拡散器46」を別途備える点。

4.判断
(1)相違点1について
光路を屈曲・反射させる手段として三角プリズムはよく知られており,照明装置において,光源から出た光(光路)を所望の方向に屈曲し整える手段として複数の三角プリズムを用いることは,従来周知の事項(引用例2,実願昭59-74529号(実開昭60-187406号)のマイクロフィルム,特開昭60-70603号公報,特開昭61-158367号公報を参照)である。
引用発明1の「凹凸」は,全内部反射している光を屈曲・反射させることにより,この光の一部を透明なフィルムを通り抜けて出て行くようにするものであることは明白であるから,この「凹凸」として複数の三角プリズムを用いることは,当業者が容易に想到し得るものである。
よって,引用発明1及び従来周知の事項に基づき,本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について
引用発明1と引用発明2は,光源の光の透過する部材により該光を所望の形に変化させる点で共通するため,引用発明1の「外側の構造面12を通り抜けて出て行く光」を,別途備えられた「拡散器12」で所望の形に変化させるのではなく,「外側の構造面12」を,引用発明2のように「凸条9」とし,該光と該凸条9の角度で変化するように,すなわち,外側の構造面自体により変化させる構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
よって,引用発明1及び引用発明2に基づいて,本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。

また,本願発明の構成によってもたらされる効果をみても,引用発明
1,引用発明2及び従来周知の事項から当業者が予測し得る範囲のものであって,格別なものとはいえない。

4.むすび
以上のように,本願発明は,引用発明1,引用発明2及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2006-03-13 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-18 
出願番号 特願平11-118292
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21V)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩澤 克利仁木 浩  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 一色 貞好
芦原 康裕
発明の名称 照明装置  
代理人 小林 純子  
代理人 片山 英二  

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