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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1143787 |
審判番号 | 不服2002-12393 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-07-04 |
確定日 | 2006-09-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第360727号「ビデオゲーム装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-176166〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年12月18日の出願であって、平成14年3月4日付で拒絶理由通知がなされ、同年5月13日付で手続補正がなされ、同年5月23日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 2.平成14年7月4日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年7月4日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「所定の日付と時刻のデータを取得する手段(S1)と、 日付および/または時刻と対応させた気象データ(図5)を読み出す手段(S2)と、 前記気象データ(図5)に応じた表示を行う手段(S7、S12)と、を具備することを特徴とするビデオゲーム装置。」 と補正された。 上記補正は、平成14年5月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「現在の日付と時刻」を「所定の日付と時刻」と限定し、同じく「環境データ」を「気象データ」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-216359号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、 「・・・カレンダークロック回路から現在の日時のデータを得るステップと、ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータ及び上記日時のデータに基づき、当該場所の当該日時における太陽の方位及び高度を演算するステップと、上記ステップにより得られた太陽の方位及び高度のデータに基づき、ゲーム画面に対する仮想光源位置を設定するステップと、上記ステップにより設定されたゲーム画面の仮想光源位置に応じて、ゲーム画面の表示に用いる画像信号に光源変換処理を施すステップと、光源変換処理された画像信号によりビデオディスプレイ画像を表示するステップと、を順次実行する・・・ビデオゲームにおける画像表示方法。」(特許請求の範囲、請求項1)、 「・・・ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度を、画面上のゲームの展開場所の緯度及び経度として設定した請求項1に記載のビデオゲームにおける画像表示方法。」(特許請求の範囲、請求項3)、 「現在の日時のデータを出力するカレンダークロック回路(4)と、ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータを記録した位置メモリ(3)と、上記カレンダークロック回路(4)から読み出された現在の日時のデータと、上記位置メモリ(3)から読み出されたゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータとに基づき、ゲームの行なわれている場所の現在の日時における太陽の方位及び高度を演算し、その演算結果に基づきゲーム画面の仮想光源位置を設定する演算装置(1)と、上記演算装置で設定した仮想光源位置に応じて、ゲーム画面の表示に用いる画像信号に光源変換処理を施し、当該光源変換処理された画像信号によりビデオディスプレイ画像を編成する3次元画像処理装置(5)と、を備えた・・・ビデオゲームの画像表示装置。」(特許請求の範囲、請求項4)、 「【発明の属する技術分野】 本発明は、・・・、特にビデオゲームにおけるゲーム空間内の時間の進行を現実の日付や時刻と同期させることにより、従来に比べて一層リアルなゲーム空間を創成することのできる画像表示方法及びこれを実施するための装置に関する。」(段落【0001】)、 「・・・ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度としては、通常のゲームにおいては、当該ゲーム機の設置されている場所の緯度及び経度として設定されるが、例えば世界各地を舞台とするゲームにおいては、画面上のゲームの展開場所の緯度及び経度として設定することも可能である。」(段落【0005】)、 「・・・、例えば昼間にプレイすると、画面には強い日光の射す明るい昼間の情景が表示され、夜にプレイすると、暗い夜の映像が表示され、また、夕刻にプレイすると明るさがやゝ抑えられて、物の影の長い情景が表示される。しかも、ゲームの行なわれている場所の緯度と経度に基づきその時刻の太陽の位置を演算により求めて、ゲーム画面の仮想光源位置を設定するようにしてあるので、季節変化に応じて現実の昼と夜の移行状態と完全に一致した画面表示を行なうことができる。」(段落【0007】)、 「・・・、例えば、冒険ゲームや戦争ゲームのように、情景が世界各地に移り変わるようなゲームにおいては、舞台となっている世界各地域の現在の太陽の位置に対応した画面表示を行なうことができ、舞台が変わるつど昼や夜に変化するので、プレイヤーはリアルな臨場感を味わうことができ、ゲームへの感情移入度が格段に高まるものである。」(段落【0008】)、 「【実施例】 図1中、1はビデオゲーム機全体を統括制御するCPUであり、ゲーム進行のため必要な主要な演算処理を行なうと共に、本発明方法において必要な太陽の方位及び高度の演算及びゲーム画面の仮想光源位置の演算、設定もこのCPUで行なわれるようになっている。 2は、CPU1の作動に必要なデータの授受を行なうRAMである。 3は、ゲームに必要なすべてのデータを記録したROMであり、通常のビデオゲームに必要なプログラムや画像要素のデータ等のほか、本発明方法において必要なゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータや、太陽の方位及び高度を演算するためのプログラムデータもこのROMに記録されている。 4は、現在の日時のデータを出力するカレンダークロック回路である。 5は、ROM3に記録された画像データをもとにCPU1から指定された仮想光源位置に応じてゲーム画面の映像を編成する3次元画像処理装置である。 6は、プレイヤーが操作するスイッチ等や各種表示ランプ等に接続されるI/Oポートであり、7は、ゲーム画面のディスプレイを行なうモニター、・・・である。」(段落【0010】)、 「・・・プレイヤーがゲームを開始すると、CPU1の指令によりカレンダークロック回路4から現在の日時のデータが読み出され、同時に、ROM3から、ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータが読み出される。この緯度及び経度としては、通常はそのゲーム機が設置されている場所(プレイヤーがプレイしている場所)、例えば東京とか、京都、札幌、沖縄などの緯度及び経度が予めROM3に登録されており、これを読み出すものである。しかし、ゲーム内容が前記の如く様々な地域に舞台を変えながら進行するものである場合には、ゲームの進行に応じて、最初は東京、次いでニューヨーク、以下順次、ベニス、南極、モスクワ等々の如く、ゲームプログラムに基づいて逐次異なった場所の緯度及び経度がそれぞれ読み出される。」(段落【0011】)、 「・・・、CPU1において、・・・読み出された現在の日時のデータ及びゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータに基づき、ROM3から読み出した所定の演算プログラムを用いて当該場所の当該日時における太陽の方位及び高度が演算される。そして更に、この太陽の方位及び高度のデータに基づき、ゲーム画面の仮想光源位置が演算される。」(段落【0012】)、 「・・・得られたゲーム画面の仮想光源位置のデータは、3次元画像処理装置5に送られ、これにより、ディスプレイにゲーム画面を表示するため編成されている画像信号の色彩が変換され、これにより画面は昼又は夜の情景として表示される。そして更に高度の処理をするときは、朝夕の物の影の長い情景としたり、空に星の見える夜の情景としたり、街灯や車などのライト、室内の照明灯などの点滅を行なう、などの画像の光源変換処理を行ない、その処理された画像をモニター7に表示する・・・。」(段落【0013】)、 「・・・、本発明に係るビデオゲームの構成は叙上の実施例に限定されるものでなく、例えば図1に示したCPU1、RAM2、ROM3、カレンダークロック回路4、3次元画像処理装置5、I/O6、モニター7及びサウンド回路8その他の構成及び相互接続関係はゲームの内容などに合わせて随時設計変更できるものであ・・・る。」(段落【0014】)、 「【発明の効果】 本発明は上記の如く構成されるから、本発明によるときは、ゲーム画面の情景を、その場所のその日時における太陽の位置と完全に一致させて極めてリアルに表現できるから、プレイヤーのゲームに対する感情移入が容易となり、ゲームの興趣が格段に向上するものである。」(段落【0015】) との記載が認められる。 また、上記摘記事項より、CPU1の指令によりカレンダークロック回路4から現在の日時のデータが読み出されることは、CPU1は、「現在の日時のデータを読み出す手段」を具備するものと認められ、 また、上記摘記事項より、ゲームに必要なすべてのデータを記録したROM3が、通常のビデオゲームに必要なプログラムや画像要素のデータ等のほか、必要なゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータや、太陽の方位及び高度を演算するためのプログラムデータも記録し、プレイヤーがゲームを開始すると、CPU1の指令により、ROM3から、ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータが読み出され、この緯度及び経度としては、ゲーム内容が様々な地域に舞台を変えながら進行するものである場合には、ゲームの進行に応じて、最初は東京、次いでニューヨーク、以下順次、ベニス、南極、モスクワ等々の如く、ゲームプログラムに基づいて逐次異なった場所の緯度及び経度がそれぞれ読み出され、CPU1において、読み出された現在の日時のデータ及びゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータに基づき、ROM3から読み出した所定の演算プログラムを用いて当該場所の当該日時における太陽の方位及び高度が演算され、この太陽の方位及び高度のデータに基づき、ゲーム画面の仮想光源位置が演算されることから、CPU1は、「現在の日時と関係させた東京、ニューヨーク、ベニス、南極、モスクワ等々の異なった場所の緯度及び経度のデータを読み出す手段」を具備するものと認められ、 また、上記摘記事項より、プレイヤーがゲームを開始すると、CPU1の指令によりカレンダークロック回路4から現在の日時のデータが読み出され、同時に、ROM3から、ゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータが読み出され、この緯度及び経度としては、通常はそのゲーム機が設置されている場所(プレイヤーがプレイしている場所)、例えば東京とか、京都、札幌、沖縄などの緯度及び経度が予めROM3に登録されており、これを読み出すものであるが、ゲーム内容が様々な地域に舞台を変えながら進行するものである場合には、ゲームの進行に応じて、最初は東京、次いでニューヨーク、以下順次、ベニス、南極、モスクワ等々の如く、ゲームプログラムに基づいて逐次異なった場所の緯度及び経度がそれぞれ読み出されること、および、CPU1において読み出された現在の日時のデータ及びゲームの行なわれている場所の緯度及び経度のデータに基づき、ROM3から読み出した所定の演算プログラムを用いて当該場所の当該日時における太陽の方位及び高度が演算され、この太陽の方位及び高度のデータに基づき、ゲーム画面の仮想光源位置が演算され、得られたゲーム画面の仮想光源位置のデータは、3次元画像処理装置5に送られ、これにより、ディスプレイにゲーム画面を表示するため編成されている画像信号の色彩が変換され、これにより画面は昼又は夜の情景として表示される。そして更に高度の処理をするときは、朝夕の物の影の長い情景としたり、空に星の見える夜の情景としたり、街灯や車などのライト、室内の照明灯などの点滅を行なう、などの画像の光源変換処理を行ない、その処理された画像をモニター7に表示することから、ビデオゲームの画像表示装置は、「異なった場所の緯度及び経度のデータに応じた表示を行うモニター7」を具備するものと認められる。 これらの記載によれば、引用例1には、 「現在の日時のデータを読み出す手段と、 現在の日時と関係させた東京、ニューヨーク、ベニス、南極、モスクワ等々の異なった場所の緯度及び経度のデータを読み出す手段と、 前記異なった場所の緯度及び経度のデータに応じた表示を行うモニター7と、を具備するビデオゲームの画像表示装置。」 との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「現在の日時のデータ」、「読み出す」、「表示を行うモニター7」および「ビデオゲームの画像表示装置」は、本願補正発明の「所定の日付と時刻のデータ」、「取得する」、「表示を行う手段」および「ビデオゲーム装置」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「現在の日時と関係させた東京、ニューヨーク、ベニス、南極、モスクワ等々の異なった場所の緯度及び経度のデータ」と、本願発明の「時刻と対応させた気象データ」は、「時間と関連させた事象データ」で共通する。したがって、両者は、 「所定の日付と時刻のデータを取得する手段と、 時間と関連させた事象データを読み出す手段と、 前記事象データに応じた表示を行う手段と、を具備するビデオゲーム装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 相違点、読み出すべき時間と関連させた事象データが、本願補正発明では、「時刻と対応させた気象データ」であるのに対して、引用例1発明では「現在の日時と関係させた東京、ニューヨーク、ベニス、南極、モスクワ等々の異なった場所の緯度及び経度のデータ」であり、引用例1発明は、読み出すデータの対象が、本願補正発明のような時刻と対応させた気象データと異なっている点、 (4)判断 上記相違点について検討すると、一般的に電子機器の分野において、日付データに対応する気候データを読み出すことが従来周知{例えば、実願平1-92089号(実開平3-30836号)のマイクロフィルム(第4頁第19行〜第5頁第18行、第15頁第1行〜8行等)、実願平2-8793号(実開平3-101487号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲、第23頁第12行〜13行等)参照。}であり、読み出したデータに関連する画像をモニターに表示する過程において、読み出し手段が、引用例1発明の「現在の日時と関係させた異なった場所の緯度及び経度のデータ」を読み出すか、本願補正発明のように、「時刻と対応させた気象データ」を読み出すかは、目的とする表示内容によってどのようなデータ要素を必要とするかの違いであって、特定の記憶データの読み出しに関して、引用例1発明の現在の日時と関係させた異なった場所の緯度及び経度のデータに代えて、前記周知の日付データに対応する気候データを採用して、本願補正発明のように時刻と対応させた気象データとすることに、格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得るものである。 そして、本願補正発明が奏する効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年7月4日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年5月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「現在の日付と時刻のデータを取得する手段(S1)と、 日付および/または時刻と対応させた環境データを読み出す手段(S2)と、 前記環境データに応じた表示を行う手段(S7、S12)と、を具備することを特徴とするビデオゲーム装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-04 |
結審通知日 | 2006-07-11 |
審決日 | 2006-07-24 |
出願番号 | 特願平10-360727 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植野 孝郎 |
特許庁審判長 |
中村 和夫 |
特許庁審判官 |
辻野 安人 林 晴男 |
発明の名称 | ビデオゲーム装置 |
代理人 | 山田 武樹 |