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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1143797
審判番号 不服2003-20546  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-04-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-23 
確定日 2006-09-13 
事件の表示 平成 6年特許願第109902号「加熱滅菌用易酸化性物品二重包装物及び二重包装された易酸化性物品のレトルト処理方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 4月11日出願公開、特開平 7- 96977〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成6年5月24日(優先日:平成5年6月8日、出願番号:特願平5-163246号)の出願であって、その請求項1乃至4に係る発明は、平成18年3月31日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】易酸化性物品を充填し密封した一個または複数個のプラスチック容器を外装袋で包み密封した加熱滅菌用二重包装物において、該外装袋を構成する積層体が少なくとも内側からヒートシール性を有するプラスチック層/接着剤層/無機酸化物層/プラスチック層が順に積層され、かつ該外装袋内部が脱酸素剤を含まず、不活性ガスで充填されていることを特徴とする加熱滅菌用易酸化性物品二重包装物。」

2.引用例の記載事項
(a)当審の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された「特開昭62-221352号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(a-1)「また、耐熱性を有する柔軟なプラスチック材料で形成された少なくとも一つ以上の排出口を有する容器に酸素によって変質しやすい成分を含む薬液を入れ、前記容器を脱酸化剤とともに少なくとも前記脱酸化剤の周囲に空間が存在するように、耐熱性と高い酸素ガス非透過性を有する包装材料で包装し、しかる後、高圧蒸気殺菌するという製造方法の採用により前記問題点を解決した。」(公報第3頁左下欄第20行から同右下欄第8行)
(a-2) 「この薬液バッグを、二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ20μm)を外層としエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(厚さ20μm)を中間層とし未延伸ポリプロピレンフィルムを内層とする三層ラミネートフィルムで包装した。このとき、脱酸素剤(商品名:エージレス 三菱瓦斯化学(株)製)を同封し、窒素ガスを充填して」(公報第7頁右下欄第15行から同第8頁左上欄第1行)

上記(a-1)、(a-2)および第1図より、引用例1には、
「『酸素によって変質しやすい成分を含む薬液』を充填し密封した『耐熱性を有する柔軟なプラスチック材料で形成された容器』を包装材料で包み密封した高圧蒸気殺菌用二重包装物において、該包装材料を構成する積層体が、例えば内側から未延伸ポリプロピレンフィルム/エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム/二軸延伸ナイロンフィルムが順に積層され、かつ該外装袋内部が脱酸素剤を含み、該包装材料内部が窒素ガスで充填されていることを特徴とする高圧蒸気殺菌用『酸素によって変質しやすい成分を含む薬液』二重包装物。」が開示されている。

(b)同「特開昭63-186652号公報」(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
(b-1)「内側からポリオレフィン層,酸化ケイ素層,プラスチック層が順に積層されてなる透明で且つ柔軟なバッグ内に薬液が封入され、該封入状態で加熱滅菌処理が施されることを特徴とするバッグ入り医療用液剤。」(請求項1)
(b-2)「第1図はかかる積層体の一例の断面図である。ポリエチレン,ポリプロピレンあるいはこれらの共重合体からなるポリオレフィン層1と、酸化ケイ素層2と、プラスチック層3とが順に積層されている。ポリオレフィン層1と酸化ケイ素層2とは接着剤で接着されて重合されている。」(公報第2頁右下欄第6から11行)
(b-3)「以上のように積層された積層体は全体として透明性を有し、しかも柔軟性を有しており、一対が重合された状態で周辺部が熱シール等されて袋状に形成される。そして、内部に薬液が封入される。この場合、ポリオレフィン層1が内側、A側、に位置するように袋状に形成される。」(公報第3頁右上欄第14から19行)。
(b-4)「これらの医薬用薬液はいずれも酸化され易い物質を含んでおり」(公報第2頁左下欄末行から同右下欄第1行)
(b-5)「このため近年・・・(中略)・・・ガラスビンやプラスチックボトルに代えてプラスチックバッグに薬液を封入したものが使用されている。このようなバッグは薬液の減少による圧力減に追随して外形が変化する柔軟性を有すると共に、異物の検出が容易なように透明性が必要とされ、さらに高圧蒸気滅菌などの薬液の加熱滅菌処理に耐え得る耐熱性や内部に酸素の侵入を防止する酸素ガスバリヤ性、薬液の臭い洩出を防止する香気バリヤ性が必要となっている。」(公報第2頁左上欄第10から同末行)

上記(b-1)乃至(b-5)より、引用例2には、
「加熱滅菌用『酸化され易い物質を含む薬液』バッグにおいて、積層体としてのバックを『内側から熱シール性を有するポリオレフィン層1/接着剤層/酸化ケイ素層/プラスチック層3が順に積層されたもの』にすること」が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。
○後者の「酸素によって変質しやすい成分を含む薬液」、「耐熱性を有する柔軟なプラスチック材料で形成された容器」、「包装材料」、「高圧蒸気殺菌」、「窒素ガス」は、前者の「易酸化性物品」、「プラスチック容器」、「外装袋」、「加熱滅菌」、「不活性ガス」のそれぞれに相当している。
○後者の「積層体が、例えば内側から未延伸ポリプロピレンフィルム/エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム/二軸延伸ナイロンフィルムが順に積層され」と前者の「積層体が少なくとも内側からヒートシール性を有するプラスチック層/接着剤層/無機酸化物層/プラスチック層が順に積層され」とは、「積層体が各層が順に積層され」という点で軌を一にしているものと認める。

上記より、両者は、
「易酸化性物品を充填し密封した一個または複数個のプラスチック容器を外装袋で包み密封した加熱滅菌用二重包装物において、該外装袋を構成する積層体が各層が順に積層され、かつ該外装袋内部が不活性ガスで充填されていることを特徴とする加熱滅菌用易酸化性物品二重包装物。」という点で一致し、以下の点で相違しているものと認める。

◇前者では、加熱滅菌用易酸化性物品二重包装物において、積層体としての外装袋を「少なくとも内側からヒートシール性を有するプラスチック層/接着剤層/無機酸化物層/プラスチック層が順に積層されたもの」にしているのに対して、後者では、「例えば内側から未延伸ポリプロピレンフィルム/エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム/二軸延伸ナイロンフィルムが順に積層されたもの」であって、前者のように特定されていない点。(以下、「相違点1」という。)
◇前者では、加熱滅菌用易酸化性物品二重包装物において、不活性ガスが充填された外装袋内部が「脱酸化剤を含まない」のに対して、後者では、「脱酸化剤を含む」点。(以下、「相違点2」という。)

上記各相違点について検討する。
◆相違点1について
上記2.(b)で示したように、引用例2には、
「加熱滅菌用『酸化され易い物質を含む薬液』バッグにおいて、積層体としてのバッグを『内側から熱シール性を有するポリオレフィン層1/接着剤層/酸化ケイ素層/プラスチック層3が順に積層されたもの』にすること」が開示されており、
これは、「加熱滅菌用易酸化性物品包装物において、積層体としての包装物を『内側からヒートシール性を有するプラスチック層/接着剤層/無機酸化物層/プラスチック層が順に積層されたもの』にすること」に相当しているものと認める。
そして、相違点1で示した本願発明の事項における「積層体としての外装袋(包装物)」と引用例2記載の発明の「積層体としての包装物」のいずれも、耐熱性、酸素ガス非透過性を有するとともに、外気に接するもの(外装袋)であるという点で同じであり、かつ、積層体の具体的構成において差異がない。
上記より、相違点1で示した本願発明の事項は、本願出願前公知の事項にすぎないので、この事項を構成とすることに格別の困難性があるとは云えない。

◆相違点2について
引用例1には、「窒素ガスを充填して脱酸化剤が薬液入りバックと包装材料に密着しないように封入した。」(公報第8頁左上欄第1から3行)との記載があり、これは、包装材料(外装袋)内部に脱酸化剤を含まない場合には、不活性ガスを充填させない(「外装袋内部に不活性ガスを充填しないと共に『脱酸化剤を含まない』」)を意味するものであるとの把握もできるものである。
ところで、高い酸素ガス非透過性を有する外装袋において、外装袋内部の易酸化性物質と外装袋外部の酸素ガスとの接触を防止するために、外装袋内部に不活性ガスを充填すること自体、本願出願前周知の事項(例えば、特開平4-295368号公報参照)であり、これは、外装袋内部に透過する酸素ガスの量が極めて少なければ、外装袋内部に脱酸素剤を含ませるまでもなく、不活性ガスを充填させるだけで十分である、つまり、「外装袋内部に不活性ガスを充填するものの『脱酸化剤を含まない』」を示すものであるといわざるをえず、
また、上記2.(a-1)で示したように、引用例1記載の発明の外装袋(包装材料)は、高い酸素ガス非透過性を有するものである。
上記より、引用例1記載の発明の「高い酸素ガス非透過性を有する外装袋」においても、上記把握されるような「外装袋内部に不活性ガスを充填しないと共に『脱酸化剤を含まない』」の他に、「外装袋内部に不活性ガスを充填するものの『脱酸化剤を含まない』」も選択肢の一つとし、必要に応じてこれを採用する、即ち、相違点2で示した本願発明の事項を構成することに格別の困難性があるとはいえない。

しかも、本願発明の効果は、引用例1、2記載の発明および本願出願前周知の事項より予測し得る程度のものであり、格別のものとは認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2記載の発明および本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、特許請求の範囲の請求項2乃至4に係る発明について、検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-29 
結審通知日 2006-06-20 
審決日 2006-07-04 
出願番号 特願平6-109902
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 石田 宏之
豊永 茂弘
発明の名称 加熱滅菌用易酸化性物品二重包装物及び二重包装された易酸化性物品のレトルト処理方法。  
代理人 金谷 宥  

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