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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1144019
審判番号 不服2003-5412  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-03 
確定日 2006-09-22 
事件の表示 平成11年特許願第275802号「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月21日出願公開、特開2000- 79211〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は平成4年9月29日の出願を、平成11年9月29日に新たに出願したものであって、平成14年3月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成14年6月7日付けで手続補正され、平成15年2月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年4月3日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年5月2日付けで手続補正がなされたものである。

【2】本願発明
本願発明は、平成15年5月2日付けの手続補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)であり、以下のとおりである。
「【請求項1】第1の特定入賞口へのパチンコ球の飛入に基づき第1の可変表示装置を作動させ、第2の特定入賞口へのパチンコ球の飛入に基づき第2の可変表示装置を作動させ、両可変表示装置の表示が各々予め設定された表示態様になると、第1及び第2の可変入賞装置を各々遊技者に不利な第1状態から有利な第2状態に変換するようにしたパチンコ機であって、
前記第1の特定入賞口及び第2の特定入賞口は、パチンコ球の入賞を検出する入賞口と、入賞とはならずにパチンコ球の通過を検出する入賞口とで構成されて一つの基板に設けられ、
前記第1の可変入賞装置と前記第2の可変入賞装置とを上下に隣接させ、前記第1の可変入賞装置には、特別スイッチを備える特別領域を設け、第2の可変入賞装置には検出スイッチを設け、
前記第1の可変入賞装置の開口部は、前記第2の可変入賞装置の開口部よりも横幅が広いことを特徴とするパチンコ機。」

【3】引用例に記載の発明
本願発明の原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平4-231086号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「・・図1には、この発明の第1実施例のパチンコ遊技機の遊技盤1前面の構成例を示す。遊技盤1の前面には、パチンコ遊技機下部の打球発射装置(図外)によって発射された打球を遊技盤1上方部まで案内するガイドレール3が配設され、遊技盤1の前面とガイドレール3とガラス板(透明)とによって囲まれた空間に遊技領域2が設けられている。この遊技盤1の前面の遊技領域2内の中央上部には、補助遊技や特別遊技の権利発生のための補助可変ゲームや本可変表示ゲームを行なうための補助可変表示部21および本可変表示部22を有する可変表示ゲーム装置20が設置されている。この可変表示ゲーム装置20の上部には、天入賞口と呼ばれる一般入賞口23と、後述する始動入賞口に入賞して未だ可変表示ゲームが行なわれていない入賞個数を表示する入賞個数表示部23等が設けられている。」(段落【0008】)
(イ)「この可変表示装置20の下方には該可変表示装置20の作動結果として当りが発生したときに、大入賞口31中に遊技球を受け入れない状態から受け入れ易い状態に変換する開閉扉31を具えた変動入賞装置30設置されている。この変動入賞装置30の場合、その真上部に障害釘12を設置する必要がなく、従来のパチンコ遊技機におけるよりも、遊技領域2最下部のアウト孔9の位置から上方へ離れた位置に設置されている。この変動入賞装置30は大入賞口31を具え、該大入賞口31は上端側が手前側に倒れる向きに回動して開く開閉扉320によって開放されるようになっている。大入賞口31中の中央部には通過型の入賞個数検出器34,35が配されている。そして、前記開閉扉320の裏側には、該開閉扉320が開いて大入賞口31が開放されたときに該大入賞口31の前記継続入賞口上に至った遊技球を一時的に係止して得る係止部(後述)が設けられている。また、前記可変表示装置20と前記変動入賞装置30との間、および前記変動入賞装置30の左右両側位置には、それぞれ、始動入賞検出器4a,7a,5aを有する始動入賞口4,7,5が設置されている。」(段落【0009】)
(ウ)「また、前記可変表示装置30の左方位置には補助役物入賞装置6が、また、前記可変表示装置7,5の真上位置にはそれぞれ通過型の特定入賞検出器8,10が設置されている。また、可変表示装置20の右方位置にはポケット型の一般入賞口11が設置され、遊技領域2内の適宜位置には打球の流下方向をランダムに変化させる障害釘12、および風車と呼ばれる打球方向変換部材13が配置されている。」(段落【0010】)
(エ)「また、遊技盤1前面の始動入賞口4,7,5に流入した入賞球は、それぞれ始動入賞検出器4a,7a,5aに検出された後、貫通孔c,g,fを介して遊技盤1の裏側に至り、該裏側に設けられた流下案内通路(1f,1g)、(1j)、および集合樋1nを介して入賞球処理装置30の方向に流下される。なお、遊技盤1の中央下部位置にはアウト球回収口9と連通する貫通孔9aが設けられている。」(段落【0012】)
(オ)「上記のように概略構成されたパチンコ遊技機はそれに設置されたコンピュータシステム等の制御手段によって概ね次のように制御される。通常時においては、可変表示装置20の本可変表示部22および保持世可変表示部21の表示は通常表示(可変表示ゲームが行なわれていない表示)となり、補助役物入賞装置6の可動片61,61および変動入賞装置30の開閉扉320は閉じた状態となっている。この通常遊技時に、打球発射装置(図外)の作動によって遊技領域2中に打ち込まれた遊技球が始動入賞口4,7,5のいずれかに入賞すると、それらの内部の始動入賞検出器4a,7a,5aのうちの対応するものによってその入賞が検出される。」(段落【0013】)
(カ)「この検出に基づいて、可変表示装置20の本可変表示部22により本可変表示ゲームが行なわれることになる。即ち、可変表示装置20の本可表示部22の3つの可変表示部A,B,Cの表示がそれぞれ独立して高速で一定順序で循環しながら変化する変動を開始する。例えば、本可変表示部22の可変表示、即ち、「0,1,2,3……8,9,F,J,L,P,U」の15通りの記号表示が、順に、それぞれ異なった速度で循環しながら現われる変動表示を開始する。・・」(段落【0014】)
(キ)「・・このようにして行なわれる可変表示ゲーム結果としての停止表示態様が“大当り”の表示態様(例えば、“ゾロ目”の態様)となったときには、“大当り”が発生して特別遊技が行なわれる。ここに、特別遊技(大当りの遊技)とは、遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える遊技態様で、例えば、変動入賞装置30の開閉扉320の所定時間(例えば、22秒間)の開放(サイクルの利益状態)を1サイクル(ただし、その所定時間が経過する前に変動入賞装置30の大入賞口31中に打球が所定個数(例えば、9個)入賞したときにはその時点で閉じるまでを1サイクルとし、各サイクル中に変動入賞装置30の大入賞口31中に入賞した遊技球が該大入賞口31中の継続入賞検出器33中を通過することを継続条件(サイクルの更新条件)として、例えば、最高16サイクルまで継続して行なわれるものである。・・」(段落【0015】)
(ク)「一方、通常遊技中に、打球が特定入賞検出器8中を通過したときには、補助可変表示部21の表示が変化して停止する補助可変表示ゲームが行なわれる。そして、その補助可変表示ゲーム結果としての停止状態が特定の停止表示態様(例えば、「3」又は「7」)になったときには、補助当りとして、補助役物入賞装置6の可動片61,61が所定時間(例えば、7秒間)逆「ハ」の字状に開いてその中に打球が入賞し易い状態に変換する。・・」(段落【0016】)
(ケ)「図18には、この発明の第2実施例のパチンコ遊技機の遊技盤1前面の構成例を示す。この実施例では、変動入賞装置30の配置を第1実施例と同様に上げた配置にして、変動入賞装置30とアウト孔9との間に補助役物入賞装置6を配置し、可変表示装置20の左方にポケット型の一般入賞装置11を配置した。そして、可変表示装置20、変動入賞装置30および補助役物入賞装置6の機構、およびそれらを制御する役物制御装置の制御システムは第1実施例におけると同様とした。・・」(段落【0044】)

以上の(ア)乃至(ケ)の記載事項及び図面の記載から、「引用例」には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「パチンコ遊技機は、遊技盤1の前面の遊技領域2内の中央上部には、補助遊技や特別遊技の権利発生のための補助可変ゲームや本可変表示ゲームを行なうための補助可変表示部21および本可変表示部22を有する可変表示ゲーム装置20が設置され、可変表示装置20の下方には可変表示装置20の作動結果として当りが発生したときに、大入賞口31中に遊技球を受け入れない状態から受け入れ易い状態に変換する開閉扉31を具えた変動入賞装置30が遊技領域2最下部のアウト孔9の位置から上方へ離れた位置に設置され、変動入賞装置30は大入賞口31を具え、大入賞口31は上端側が手前側に倒れる向きに回動して開く開閉扉320によって開放されるようになっており、大入賞口31中に継続入賞検出器33が配され、可変表示装置20と変動入賞装置30との間、および変動入賞装置30の左右両側位置には、それぞれ、始動入賞検出器4a,7a,5aを有する始動入賞口4,7,5が設置され、変動入賞装置30とアウト孔9との間に補助役物入賞装置6を配置し、始動入賞口7,5の真上位置にはそれぞれ通過型の特定入賞検出器8,10が設置されるパチンコ遊技機であって、遊技球が始動入賞口4,7,5のいずれかに入賞すると、それらの内部の始動入賞検出器4a,7a,5aのうちの対応するものによってその入賞が検出され、検出に基づいて、可変表示装置20の本可変表示部22により本可変表示ゲームが行なわれ、可変表示ゲーム結果としての停止表示態様が“大当り”の表示態様となったときには、“大当り”が発生して特別遊技が行なわれ、変動入賞装置30の開閉扉320を所定時間開放し、一方、打球が特定入賞検出器8中を通過したときには、補助可変表示部21の表示が変化して停止する補助可変表示ゲームが行なわれ、補助可変表示ゲーム結果としての停止状態が特定の停止表示態様になったときには、補助当りとして、補助役物入賞装置6の可動片61,61が所定時間開いてその中に打球が入賞し易い状態に変換するパチンコ遊技機。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「始動入賞口4,7,5」が本願発明の「第1の特定入賞口」に相当し、以下同様に、「遊技球が始動入賞口4,7,5のいずれかに入賞すると」が「第1の特定入賞口へのパチンコ球の飛入に基づき」に、「本可変表示部22により本可変表示ゲームが行なわれ」が「第1の可変表示装置を作動させ」に、「特定入賞検出器8,10」が「第2の特定入賞口」に、「打球が特定入賞検出器8中を通過したときには、補助可変表示部21の表示が変化して」が「第2の特定入賞口へのパチンコ球の飛入に基づき第2の可変表示装置を作動させ」に、「変動入賞装置30」が「第1の可変入賞装置」に、「補助役物入賞装置6」が「第2の可変入賞装置」に、「パチンコ遊技機」が「パチンコ機」に夫々相当している。
また、引用発明の「可変表示ゲーム結果としての停止表示態様」及び「補助可変表示ゲーム結果としての停止状態」が、本願発明の「両可変表示装置の表示」に相当し、引用発明の「“大当り”の表示態様となったときには」及び「特定の停止表示態様になったときには」が「予め設定された表示態様になると」に相当している。
そして、引用発明の「第1の可変入賞装置」及び「第2の可変入賞装置」は、引用例の上記記載事項(キ)「・・特別遊技(大当りの遊技)とは、遊技者に多くの賞球獲得のチャンスを与える遊技態様で、例えば、変動入賞装置30の開閉扉320の所定時間・・の開放、・・例えば、最高16サイクルまで継続して行なわれるものである。・・」、同じく記載事項(ク)「・・特定の停止表示態様(例えば、「3」又は「7」)になったときには、補助当りとして、補助役物入賞装置6の可動片61,61が所定時間・・開いてその中に打球が入賞し易い状態に変換する。・・」なる記載に基づけば、開閉扉320及び可動片61,61が閉じた遊技者に不利な第1状態から、開いた遊技者に有利な第2状態に変換することになるから、本願発明と同様に「各々遊技者に不利な第1状態から有利な第2状態に変換する」機能を備えたものといえる。
さらに、引用発明の「第2の特定入賞口」は、引用例の上記載事項(ウ)「通過型の特定入賞検出器8,10が設置されている。」なる記載及び【図1】、【図18】からみて、パチンコ球の通過を検出する入賞口を構成するから、本願発明と「第2の特定入賞口は、パチンコ球の通過を検出する入賞口で構成され」る点で共通の機能を備えている。
また、引用発明の「第1の可変入賞装置」と「第2の可変入賞装置」の配置関係は、引用例の上記記載事項(ケ)「・・変動入賞装置30とアウト孔9との間に補助役物入賞装置6を配置し・・」及び【図18】からみて、本願発明と「第1の可変入賞装置と第2の可変入賞装置とを上下に配置」した点で共通の構成を備えている。
そして、引用発明の「第1の可変入賞装置」は、引用例の上記記載事項(キ)「・・変動入賞装置30の大入賞口31中に入賞した遊技球が該大入賞口31中の継続入賞検出器33中を通過する・・」なる記載に基づけば、本願発明と同様に「特別スイッチを備える特別領域」が設けられている。

してみると、引用発明と本願発明とは

「第1の特定入賞口へのパチンコ球の飛入に基づき第1の可変表示装置を作動させ、第2の特定入賞口へのパチンコ球の飛入に基づき第2の可変表示装置を作動させ、両可変表示装置の表示が各々予め設定された表示態様になると、第1及び第2の可変入賞装置を各々遊技者に不利な第1状態から有利な第2状態に変換するようにしたパチンコ機であって、
前記第2の特定入賞口は、パチンコ球の通過を検出する入賞口で構成され、
前記第1の可変入賞装置と前記第2の可変入賞装置とを上下に配置させ、前記第1の可変入賞装置には、特別スイッチを備える特別領域を設けたパチンコ機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
第1の特定入賞口及び第2の特定入賞口が、本願発明は、パチンコ球の入賞を検出する入賞口と、入賞とはならずにパチンコ球の通過を検出する入賞口とで構成されて、且つ一つの基板に設けられているのに対し、引用発明は、第1の特定入賞口及び第2の特定入賞口が、パチンコ球の入賞を検出する入賞口と、入賞とはならない入賞口とで構成されているか否か明らかでなく、且つ一つの基板には設けられていない点。
<相違点2>
第2の可変入賞装置に、本願発明は、球をカウントする検出スイッチを設けているのに対し、引用発明は、上記機能を有する検出スイッチを備えているか否か明らかでない点。
<相違点3>
第1の可変入賞装置と第2の可変入賞装置とを、本願発明は、上下に隣接させているのに対し、引用発明は、上下の配置が隣接しているか否か明らかでない点。
<相違点4>
本願発明は、第1の可変入賞装置の開口部は、第2の可変入賞装置の開口部より横幅が広いのに対し、引用発明は、第1の可変入賞装置の開口部と第2の可変入賞装置の開口部の横幅の大小関係が不明である点。

4.相違点についての検討
<相違点1について>
パチンコ機分野において、複数の入賞口を一つの基板に設ける点に関して、共通の機能を有する複数の入賞口を一つの基板に設けること(例えば、特開平4-129582号公報、第5頁左上欄第8行〜同頁右上欄第3行、第6頁左下欄第10行〜同頁右下欄第16行、特開平4-102488号公報、第3頁左上欄第9〜19行参照)、或いは、異なる機能を有する複数の入賞口を一つの基板に設けること(例えば、特開平4-58967号公報、第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄第4行、第4頁右上欄第3〜10行、第9,10図、特開平4-109979号公報、第2頁左下欄第10〜16行、第7頁右下欄第14行〜第8頁左上欄第2行、第5,6図参照)等、上記に示すように複数の入賞口がその機能の異同によらず一つの基板に設けらており、入賞口が集まることで遊技球の動きも見やすく遊技に集中でき(例えば、特開平2-134179号公報、右上欄第2〜10行参照)、入賞の狙いが定めやすくなる周知の技術といえる。(例えば、本願明細書、段落【0030】参照)
また、可変表示装置を作動する特定入賞口を、賞球を払い出す入賞口とするか否を適宜定めることも、多用される周知技術(例えば、特開平4-244179号公報、段落【0007】、特開平4-269984号公報、段落【0009】参照)にすぎない。
そして、引用発明の第1・第2の特定入賞口と上記周知技術は、可変表示装置を作動する入賞口として機能が共通すると共に、引用発明と上記多用される周知技術は、パチンコ機の技術分野においてパチンコ球の入賞における入賞球の取り扱いについて関連しているから、引用発明の機能を異にする第1・第2の特定入賞口に、機能の異同によらず複数の入賞口を一つの基板に設ける上記周知技術を適用し、その際に入賞口を、入賞或いは入賞としない入賞口を備える上記多用される周知技術を採用して、第1・第2の特定入賞口を一つの基板に設けるとともに特定入賞口の一つを入賞としない入賞口にすること、すなわち本願発明に係る相違点1を構成することは、当業者であれば適宜に変更し得る設計事項といえる。

<相違点2について>
可変入賞装置を備えたパチンコ機において、可変入賞装置に球をカウントする検出スイッチを設けることは、従来周知の技術(例えば、実願昭61-196691号(実開昭63-102489号)のマイクロフィルム、第8頁第6行〜第9頁第14行、実願昭63-51694号(実開昭64-12583号)のマイクロフィルム、第9頁第3行〜第14頁第20行参照)である。
そして、引用発明と周知技術の入賞装置は、ともにパチンコ機の可変型の入賞装置で機能は同一であるから、引用発明の第2の可変入賞装置に、上記周知技術の検出スイッチを適用し、第2の可変入賞装置に検出スイッチを備えさせること、すなわち本願発明に係る相違点2を構成することは、当業者であれば、適宜に変更し得る設計事項といえる。

<相違点3について>
第1の可変入賞装置と第2の可変入賞装置を上下に隣接させるのは、本願明細書の記載によれば、大入賞口と小入賞口とを1つの取付基板上に構成することができ、遊技盤上のスペースの節約、入賞装置の小型化、入賞態様に変化を持たせること等を目的としている。(段落【0030】参照)
ところで、可変入賞装置を備えるパチンコ機において、複数の可変入賞装置を1つの取付基板上に上下に配置することは、広く行われる周知技術(例えば、特開昭63-158079号公報、第15頁右上欄第1行〜同頁左下欄第15行、第40,41図、特開平3-258276号公報、第3頁右上欄第18行〜第4頁左上欄第4行、第4,5図参照)であり、複数の可変入賞装置を1つの取付基板上に配置することにより、遊技盤面において遊技スペースを確保でき、入賞態様に変化を持たせることも自明(特開昭63-158079号公報、第15頁左下欄第11〜15行参照)である。
そうすると、引用発明と周知技術の入賞装置は、ともにパチンコ機の可変型の入賞装置で機能は同一であるから、引用発明の上下に配置された第1の可変入賞装置と第2の可変入賞装置に、1つの基板上に上下に複数の可変入賞装置を設けた上記周知技術を適用して、複数の可変入賞装置を1つの取付基板上に上下に設け、その際に隣接して配置するようにすること、すなわち本願発明に係る相違点3を構成することは、上記したように遊技盤上におけるスペースを確保する要請からも、当業者であれば適宜に変更し得る設計事項といえる。

<相違点4>について
本願発明において、各可変入賞装置の開口幅は、実質的に球を受け入れる幅を構成するものであるが、パチンコ機分野において、1つの基板上に上下に球を受け入れる入賞装置或いは始動口等を設ける際に、一方の球の受け入れを他方より容易にするために、実質的に球を受け入れる幅を上下で異ならせることは、従来周知の技術(例えば、実願昭56-18494号(実開昭57-130676号)のマイクロフィルム、第6頁第20行〜第7頁第9行、特開昭62-292183号公報、第3頁右上欄第18行〜同頁右下欄第5行、第3図(A)、(B)参照)である。
そして、引用発明と周知技術の入賞装置は、ともにパチンコ機において上下に配置された入賞装置或いは始動口であるから、引用発明の上下に配置される可変入賞装置に、実質的に球を受け入れる幅が上下で異なる上記周知技術を適用し、上下に可変入賞装置を配置する際に、受け入れを容易にする側の開口幅を広くすること、すなわち本願発明に係る相違点4を構成することは、当業者であれば、容易になし得ることである。

5.作用効果・判断
そして、本願発明における作用効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-16 
結審通知日 2006-06-27 
審決日 2006-08-03 
出願番号 特願平11-275802
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩崎 進池谷 香次郎  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
林 晴男
発明の名称 パチンコ機  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 賢三  
代理人 福田 武通  

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