ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
---|---|
管理番号 | 1144030 |
審判番号 | 不服2004-11161 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-27 |
確定日 | 2006-09-22 |
事件の表示 | 平成8年特許願第239007号「磁気記録媒体及びその製造方法及び磁気記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月31日出願公開、特開平10-83640〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成8年9月10日の出願であって、平成15年8月29日付けで手続補正がなされ、平成16年4月5日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年5月27日付けで拒絶査定不服審判がなされるとともに、同年6月24日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年6月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年6月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の、 ア. 「円板状の基板と、 前記基板の上に形成され且つ複数のトラックにより区分される磁気記録層と、 複数の前記トラックを斜めに横切る直線状又は曲線状のトラッキング用サーボパターンとを有し、 前記トラッキング用サーボパターンは、前記基板の円周方向で互いに左右対称に形成されている第1の群及び第2の群のトラッキング用サーボパターンからなることを特徴とする磁気記録媒体。」を、 イ. 「円板状の基板と、 前記基板の上に形成され且つ複数のトラックにより区分される磁気記録層と、 複数の前記トラックを斜めに横切る連続した直線状又は曲線状のトラッキング用サーボパターンとを有し、 前記トラッキング用サーボパターンは、前記基板の円周方向で互いに左右対称に形成されている第1の群及び第2の群のトラッキング用サーボパターンからなり、 該サーボパターンは、前記基板上の磁性層の膜厚の変化により構成されており、トラック幅方向の位置の相違に応じてトラック信号の位相が変わることを特徴とする磁気記録媒体。」と補正するものである。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「直線状又は曲線状のトラッキング用サーボパターン」について、「連続した」と限定を付加し、さらに、「該サーボパターンは、前記基板上の磁性層の膜厚の変化により構成されており」、との限定を付加し、「前記トラッキング用サーボパターンは、前記基板の円周方向で互いに左右対称に形成されている第1の群及び第2の群のトラッキング用サーボパターン」は、「トラック幅方向の位置の相違に応じてトラック信号の位相が変わる」との限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-65363号公報(以下、「引用例」という。)には、磁気記録媒体について、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 「【0008】目標位置の変動は、磁気記録の特性や誤差などによっても生じる。例えば、磁気ヘッドによって磁性膜に形成される磁気信号領域101aおよび101bのエッジ102aおよび102bは、磁性膜内の粒界構造などに起因して必ずしも直線的にはならず、多少なりとも凹凸が存在する。このため、前述のように、エッジ102aおよび102bを検知して磁気ヘッドが追従する場合、その追従は不正確となりやすい。 【0009】さらに、何らかの原因で磁気信号領域101aまたは101bのエッジ102aおよび102bに、図15のような磁気信号領域の突出部103が形成されることもある。この場合、この突出部103によっても目標位置が変動し、磁気ヘッドの追従が不正確となる。 【0010】以上のように、従来の磁気ディスク装置では、サーボ情報の書き込み精度を現状よりも向上することが困難であるという問題がある。」 「【0036】 【作用】この発明の磁気記録媒体では、サーボ情報が磁気的に記録される領域のエッジが非磁性領域によって形成されるので、その非磁性領域を所望形状に形成すれば、前記エッジをサーボ情報の読み出しに適した形状にすることができ、また前記エッジに磁気的な突起が生じることもない。したがって、前記エッジを用いて前記サーボ情報を読み取って、選択された前記データトラック上にデータ記録/再生用の磁気ヘッドを位置決めするようにすれば、その位置決めおよび追従は極めて正確なものになる。 【0037】また、前記非磁性領域は、例えば、高精度に非磁性領域のパターンを形成したマスクを用いて磁性膜に転写することにより、極めて高精度に形成することができる。その結果、磁気記録装置の機械的精度および特性に依存せずに、極めて高い精度でサーボ情報を書き込むことが可能である。 【0038】この発明の磁気記録装置は、極めて高い精度でサーボ情報が書き込まれた磁気記録媒体を備えているので、所望データトラック上にへの磁気ヘッドの位置決めおよびその追従は極めて正確なものになる。その結果、トラック追従精度を従来よりも大幅に向上させることができる。」 「【0040】 【実施例】以下、添付図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。 【0041】[磁気記録媒体の第1実施例]図1、2および6は、この発明の磁気記録媒体の第1実施例を示す。図6に示すように、この磁気ディスク1のデータ記録用の磁性膜のデータ面には、同心円状に複数のデータトラックが形成されている。このデータ面は、等間隔に形成された複数のデータセクタ2に分割されており、各データセクタ2に隣接してサーボセクタ3が形成されている。すなわち、データ面には、データトラックに沿ってデータセクタ2とサーボセクタ3とが交互に配置されている。各サーボセクタ3には、データトラック毎にサーボ情報領域10が形成されている。」 「【0045】図1(a)に示すように、サーボ情報領域10は、同期用情報が記録される同期用情報領域11と、そのセクタのアドレスを示す情報が記録されるアドレス用情報領域12と、データ記録/再生用磁気ヘッドのデータトラックへの位置決めおよび追従を制御する情報が記録される追従制御用情報領域13とから構成されている。16は、当該サーボ情報領域10に隣接するデータセクタ2のデータトラックの中心線を示す。 【0046】この実施例では、追従制御用情報は、データトラック幅方向(換言すれば、データトラックに直交する方向)に等間隔で磁性膜Fに形成された複数の矩形のピット14と、隣接するピット14の間で磁性膜Fに形成された矩形の磁気信号領域15とにより記録されている。ここでは、ピット14と磁気信号領域15の列はデータトラック幅方向に2列配置されており、第1列13aの各ピット14は第2列13bの各ピット14に対してデータトラック幅方向にずれている。」 「【0052】磁気ヘッドの追従制御用情報は、各データトラックの中心線16に対して千鳥状に配置された、第1列13aの1つの磁気信号領域15と第2列13bの1つの磁気信号領域15との組が提供する。すなわち、図2に示すように、第1列13aの磁気信号領域15の下側エッジ15aと第2列13bの磁気信号領域15の上側エッジ15aとが、当該データトラックのトラック中心線16の位置を規定する。データ記録/再生用の磁気ヘッドは、これら両エッジ15aを基準として当該データトラック上に位置決めされ、当該データトラックに追従する。 【0053】この実施例では、磁気ヘッドの位置誤差信号は図2に示す波形19を持つ。図2より分かるように、磁気ヘッドがデータトラック中心線16上に正確に位置していれば、位置誤差信号は0を示し、磁気ヘッドがデータトラック幅方向(上方または下方)にずれると、それに伴って位置誤差信号は+または-の方向に変化する。よって、位置誤差信号が常に0になるようにフィードバック制御すれば、磁気ヘッドをデータトラック中心線16上に正確に位置決めして追従させることができる。 【0054】この磁気ディスクでは、後述のように、2つの列13aおよび13bに属するピット14が光リソグラフィーおよびエッチング技術により形成されるので、ピット14と同様のパターンを磁気記録で形成する従来の精度に比べて、ピット14の形状ならびに配置の精度は極めて高い。各磁気信号領域15の上下両エッジ15aは、ピット14の上または下のエッジ14aによって形成されるため、極めて正確にトラック中心線16に平行な直線状になっており、しかも、従来のような磁性膜Fの磁化の不規則性に起因する凹凸や磁化領域の突出部が存在する恐れもない。このため、磁気ヘッドはデータトラック中心線16上により正確に位置決めされることが可能となる。」 「【0064】[磁気記録媒体の第3実施例]図4は、この発明の磁気記録媒体の第3実施例を示す。この磁気ディスクでは、追従制御用情報領域43に、第1実施例のピット14および磁気信号領域15と同じパターンを持つ第1列〜第6列のピット44および磁気信号領域45が形成されている。これらのピットの幅PwはトラックピッチTpの(1/2)である。隣接する各列のピットおよび磁気信号領域は、データトラック幅方向にトラックピッチTpの(1/6)だけ互いにずれている。図4では、第1列43a、第2列43b、第3列43cおよび第4列43dのピット44および磁気信号領域45のみが描かれており、第5列および第6列のピット44および磁気信号領域45は省略されている。」 「【0068】この第3実施例の磁気ディスクでは、各列の磁気信号領域45によって、6つの位置誤差信号波形が得られる。図4には、n1番,n2番およびn3番のデータトラックに関する位置誤差信号波形47a,47bおよび47cが描かれているが、n4番,n5番およびn6番のデータトラックに関する位置誤差信号も同様の波形を持つ。磁気ヘッドの位置は、いずれかの位置誤差信号が常に0になるようにフィードバック制御される。 【0069】6列の磁気信号領域45のすべてを使用して磁気ヘッドの位置決めを行なってもよい。この場合、図4のような6つの位置誤差信号波形が同時に得られる。これらの波形は、いずれも第1実施例の位置誤差信号波形17と同じ形状を持つが、波形47a,47bおよび47cで示しているように、トラックピッチTpの(1/6)だけ互いに位相がずれているため、トラック幅方向には位相が60゜だけずれた「6相」の位置誤差信号が得られる。 【0070】前述の第2実施例およびこの第3実施例から分かるように、この発明の磁気記録媒体では、データトラック幅方向に並列されたピットと磁気信号領域からなる列を適当数、データトラック方向に配置することにより、図3のデータトラックnおよびn’、図4のデータトラックn1,n2,n3,・・・のように、トラックピッチTpをピット幅Pwより小さく設定しても、ピット幅Pwより大きい場合と同様の位置誤差信号が得られる。したがって、トラックピッチTpをピットの形成精度の限界まで小さくしても、磁気ヘッドを正確に位置決めおよび追従させることができるという利点がある。」 「【0071】[磁気記録媒体の第4実施例]図5は、この発明の磁気記録媒体の第4実施例を示す。この磁気ディスクは、第3実施例の各データトラックを規定する、データトラック方向(図では左右方向)に並んだ6個のピット44同士および6個の磁気信号領域45同士を、それぞれ互いに連結したものに相当する。 【0072】第3実施例の6列のピットは、トラック方向に沿うピットエッジが直線的になっていれば、トラック幅方向に沿うエッジはいかなる形状でもよい。この磁気ディスクは、この点を考慮し、追従制御用情報領域53に、各列のピット同士をトラック方向に連結して単一のピット54を形成したものである。それに対応して、各列の磁気信号領域もトラック方向に連結され、単一の磁気信号領域55となっている。したがって、磁気信号領域55は、隣接するピット54間の領域全体に分布している。 【0073】この磁気ディスクでは、磁気信号領域55へのバースト信号パターンの書き込みの際に、第1〜第3実施例のように、各列のピットの位置を検知する必要がなく、ピット54とほぼ同じ幅でトラック方向に一様に書き込むことができるため、磁気信号領域55の形成が容易であるという利点がある。 【0074】[磁気記録媒体の第5実施例]図7は、この発明の磁気記録媒体の第5実施例を示す。この磁気ディスクは、追従制御用情報領域63に、データトラックの位置に応じてデータトラック方向の長さが変化するピット64を形成し、その周囲に磁気信号領域65を形成したものである。図7(a)に示すように、ピット64は、平面形状が直角三角形であり、直角を挟む2辺をデータトラック方向およびデータトラック幅方向にそれぞれ平行に形成されている。ピット64は、データトラック幅方向にその1つの頂点を直角の頂点に接触させて複数個、配置されている。磁気信号領域65は、それらピット64の列の周囲に一定の幅でデータトラック幅方向に延びている。」 上記【0071】乃至【0073】の第4実施例には、磁気信号領域を互いに連結した磁気ディスクについて、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。 「基板と、 前記基板上に形成された磁性膜とを備え、 前記磁性膜には、複数のデータトラックが形成され、 前記データトラックは、データセクタとサーボセクタが交互に配置され、 前記サーボセクタには、前記データトラック毎にサーボ情報領域が形成されている磁気ディスクであって、 前記サーボ情報領域は、データ記録/再生用磁気ヘッドのデータトラックへの位置決めおよび追従を制御する情報が記録される追従制御用情報領域を有し、 前記追従制御用情報領域は、データトラック幅方向に等間隔で磁性膜に形成された複数の矩形のピット同士をトラック方向に連結した単一のピットと、前記磁性膜に形成された複数の磁気信号領域をトラック方向に連結した単一の磁気信号領域とで形成された磁気ディスク。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例発明とを比較すると、 引用例発明の「磁気ディスク」は、本願補正発明の「磁気記録媒体」に相当する。 引用例発明の「基板」は、磁気ディスクの基板であるから、本願補正発明の「円板状の基板」に相当する。 引用例発明の「データトラック」は本願補正発明の「トラック」に相当し、引用例発明の「磁性膜」は、基板上に形成されたものであり、複数のデータトラックが形成されるから、本願補正発明の「基板の上に形成され且つ複数のトラックにより区分される磁気記録層」に相当する。 引用例発明の「データ記録/再生用磁気ヘッドのデータトラックへの位置決めおよび追従を制御する情報が記録される追従制御用情報領域」を構成する「磁気信号領域」は、エッチング技術等よりエッジが形成されたパターン(上記【0054】参照)であり、データ記録/再生用磁気ヘッドのデータトラックへの位置決めおよび追従を制御する情報が記録された点において、本願補正発明の「トラッキング用サーボパターン」と共通する。 引用例発明の「磁気信号領域」が、「磁性膜に形成された複数の磁気信号領域をトラック方向に連結した単一の磁気信号領域」であることは、斜め方向に隣接した磁性膜が連結している形状である(引用例の第5図参照)から、本願補正発明の「トラッキング用サーボパターン」が、「基板上の磁性層」により構成され、「トラックを斜めに横切る連続した」ことで共通する。 してみると、両者は、以下の一致点と相違点を有する。 〈一致点〉 「円板状の基板と、 前記基板の上に形成され且つ複数のトラックにより区分される磁気記録層と、 前記トラックを斜めに横切る連続したトラッキング用サーボパターンとを有し、 該サーボパターンは、前記基板上の磁性層により構成される磁気記録媒体。」 〈相違点〉 ア.斜めに横切る連続したトラッキング用サーボパターンは、本願補正発明では、「複数」のトラックを横切り、「直線状または曲線状」で、「基板の円周方向で互いに左右対称に形成されている第1の群及び第2の群のトラッキング用サーボパターンからなり」、「トラック幅方向の位置の相違に応じてトラック信号の位相が変わる」のに対して、引用例発明では、このように構成されていない点。 イ.トラッキング用サーボパターンの磁性層は、本願発明では、「膜厚の変化」により構成されているのに対して、引用例発明では、このように構成されていない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 相違点アについて 複数のトラックを斜めに横切る連続したトラッキング用サーボパターンが、基板の円周方向で互いに左右対称に形成されている第1の群及び第2の群のパターンで構成され、トラック幅方向の位置の相違に応じてトラック信号の位相が変わる磁気ディスクは、原審でも指摘しているように周知(特開昭60-10472号公報、特開平7-230676号公報、特開平6-243574号公報、特開平7-287949号公報)である。 また、引用例の上記【0070】には、磁気信号領域をデータトラック幅に適当数配置すること、上記【0074】には、磁気信号領域を直線にした形状のもの(引用例の図7の磁気信号領域65参照)が記載されている。 してみれば、引用例発明において、上記周知の位相サーボ方式のように、複数のトラックに基板の円周方向で互いに左右対称に形成されている第1の群及び第2の群のトラッキング用サーボパターンを形成し、トラック幅方向の位置の相違に応じてトラック信号の位相が変わるトラッキング用サーボパターンとし、このようなトラッキング用サーボパターンを形成する際に、引用例の上記【0070】や【0074】に記載されているように、データトラックに並べた磁気信号領域を適当数、つまり分割数を極限まで多くした場合と等価の直線状にし、磁気ディスクに形成することは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得るものである。 相違点イについて 引用例発明のピット.パターン付き磁気ディスクは、磁性膜をエッチングして、磁気信号領域のエッジに磁気的な突起が生じないように形成されている。そうすると、エッジを用いてサーボ情報を読み取って、選択されたデータトラック上にデータ記録/再生用の磁気ヘッドを位置決めする際に、磁気信号領域のエッジが検知できる程度に、膜厚の変化をつけて、磁気信号領域のエッジを磁気ディスクに形成することも、当業者であれば格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得るものである。 なお、審判請求書において、「このサーボパターンの構成は、出願当初の明細書の段落番号「0030」〜「0032」に記載されております。また、本願明細書の図3には、磁気記録層54の下の下地層53には局所的に溝56が形成されており、その溝56内に硬質磁性層51aが形成されて磁性層の膜厚の変化によってサーボパターン51が構成されています。第2実施形態には、硬質磁性層51aと磁気記録層54との上下関係を逆にしてもよいことが記載されています(図11)。」と、本願の特許請求の範囲に記載の「膜厚の変化」は、本願の明細書に記載の第1実施形態及び第2実施形態に基づく旨主張している。この点に関しては、上記のとおり、相違点として検討したものであるが、上記「膜厚の変化」は、磁性層の有無や磁性層の凹凸等の構成を含むことは明らかであり、第1実施形態及び第2実施形態を明りょうに特定している記載とは認められない。 結局、前記各相違点は、格別なものではなく、各相違点を総合したとしても奏される効果は、引用例の記載から当業者が容易に予測できる範囲内のものと認められる。 以上のことから、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年6月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成15年8月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、「2.(1)ア.」に記載のとおりのものである。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「直線状又は曲線状のトラッキング用サーボパターン」の限定事項である、「連続した」構成を省き、さらに、「該サーボパターンは、前記基板上の磁性層の膜厚の変化により構成されており」及び「トラック幅方向の位置の相違に応じてトラック信号の位相が変わる」を省くものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-09 |
結審通知日 | 2006-07-04 |
審決日 | 2006-07-18 |
出願番号 | 特願平8-239007 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 船越 亮、山崎 達也、齊藤 健一 |
特許庁審判長 |
片岡 栄一 |
特許庁審判官 |
相馬 多美子 山田 洋一 |
発明の名称 | 磁気記録媒体及びその製造方法及び磁気記録再生装置 |
代理人 | 岡本 啓三 |