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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1144121
審判番号 不服2004-9943  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-10-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-13 
確定日 2006-09-19 
事件の表示 平成 7年特許願第 96306号「偏光形成装置及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年10月18日出願公開、特開平 8-271892〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年3月28日の出願であって、平成16年4月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年6月10日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同日付で特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。

2.平成16年6月10日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年6月10日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を下記のように補正することを含むものである。
「【請求項1】板状発光層の片側に所定状態の偏光は透過し所定状態以外の偏光は反射する偏光分離手段を有し、前記板状発光層の他方側に反射手段を有すると共に、前記の偏光分離手段と反射手段との間に偏光状態を変化させる偏光変換手段を有してなり、前記の板状発光層が導光板の側面に光源を有して前記導光板の一方の面側に光を出射するものからなると共に、前記の偏光分離手段が同じ偏光方向の円偏光を反射するコレステリック液晶ポリマーの複数を選択反射の中心波長が異なる組合せで重畳したものからなり、かつその重畳層を形成する各コレステリック液晶ポリマー層がアクリル系の主鎖を有する側鎖型コレステリック液晶ポリマーの平坦な連続膜よりなることを特徴とする偏光形成装置。」

上記補正は、補正前の請求項1の「コレステリック液晶ポリマー層」の材料をさらに限定しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本件補正後の請求項1(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(2)引用例記載の発明
原審の拒絶理由に引用例2として引用した特開平7-36025号公報(以下、「刊行物1」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【0020】高分子CH液晶層の材料としては、ポリグルタメート等の液晶性ポリエステルを使用する。これらの材料のモノドメイン薄膜を基板上に形成する方法としては、配向膜が形成された透光性基板上に、スピンコート,ロールコート,スクリーン印刷等の方法で高分子CH液晶材料薄膜を一旦形成し、次いでガラス転移温度以上にまで加熱してモノドメイン化し、急冷して配向を凍結させる(特開平3-291601号公報参照)。
・・・
【0025】CH液晶層の選択反射幅Δλは、上記したように70nm程度であるので、1つのCH液晶層で可視光全域を網羅するのは困難である。そのため、選択波長域の異なる複数のCH液晶層を重ねてCH液晶層40を形成して可視光全域を網羅する必要がある。この場合において、透光性基板上に形成した高分子CH液晶層は一つの基板上に形成可能であるので、2枚の基板で挟んだ構造の低分子液晶の液晶セルより、光源の薄型軽量化を図る上で好ましい。
・・・
【0035】図3は本発明の他の実施例を示し、端面導光型バックライト光源に本発明を適用したものである。前記端面導光型バックライト光源は、端面側より光を入射可能とした導光板20と、該導光板20の端面側に配置した発光体10と、前記導光板20の一方の面に光学的に密着して設けた光散乱性を有する拡散反射板21と、導光板20の他方の面側に配置されプレーナ配向したコレステリック液晶層40と、導光板20と液晶層40との間に配置した透光性拡散板22と、前記液晶層40の光透過側に配置した1/4波長板50と、から構成されている。蛍光管から成る発光体10、透光性拡散板22、CH液晶層40、1/4波長板50の構造は、図1の実施例と同様である。
・・・
【0040】図3の実施例のバックライト光源によれば、端面側より光を入射可能とした導光板20を使用し、導光板20の一側面に光学的に密着するように光散乱性を有する拡散反射板21を設けたので、発光体10から導光板20に導かれた光は拡散反射板21により内部で拡散し、導光板20の外部に出射し、透光性拡散板22を透過する際に拡散した透過光100はCH液晶層40に導かれ、このCH液晶層40では右(又は左)円偏光成分101が透過する。一方、CH液晶層40で反射された左(又は右)円偏光成分102は、拡散反射板21を光散乱性としたので、拡散反射板21で反射する際に乱反射するとともに一部偏光を解消する。拡散反射板21で乱反射した反射光103’は部分偏光であるが、その右(又は左)円偏光成分104がCH液晶層40を透過可能となる。
そして、CH液晶層40を透過した光は、1/4波長板50により直線偏光105に変換され、液晶表示装置の液晶セル70に導かれる。従って、拡散反射板21での反射により完全に偏光解消するならば、反射光の半分がCH液晶層40を透過可能となり、CH液晶層40で反射することなくCH液晶層40を透過する光を考慮すると、発光体10を発した光の75%がCH液晶層40を透過して液晶セル70に導かれることになり、図5の従来例(発光体10を発した光の50%が液晶セル70に導かれる)に比較して輝度の向上を図ることができる。」

上記刊行物1の記載から、引用発明は、
「端面側より光を入射可能とした導光板20と、該導光板20の端面側に配置した発光体10と、前記導光板20の一方の面に光学的に密着して設けた光散乱性を有する拡散反射板21と、導光板20の他方の面側にポリグルタメート等の液晶性ポリエステルをスピンコート法で形成した、選択波長域の異なる高分子コレステリック液晶層を複数層重ねて構成したコレステリック液晶層40からなり、該コレステリック液晶層40では右(又は左)円偏光成分101が透過する一方、コレステリック液晶層40で反射された左(又は右)円偏光成分102は、前記拡散反射板21で反射する際に乱反射するとともに一部偏光を解消し、その右(又は左)円偏光成分104がコレステリック液晶層40を透過可能となるバックライト光源」であると認める。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「導光板20」および「発光体10」は、本願補正発明の「板状発光層」を形成している「導光板」および「光源」にそれぞれ相当する。
(イ)本願明細書の【0027】には、「本発明においては、反射手段と偏光変換手段とを一体化することもできるし、反射手段が偏光変換手段を兼ねる同体物とすることもできる。その同体物としては、例えば拡散反射層や鏡面反射層などがあげられる。」と記載されている。
よって、引用発明の「導光板20の一方の面に光学的に密着して設けた光散乱性を有する拡散反射板21」は、本願補正発明の「前記板状発光層の他方側に反射手段を有すると共に、前記の偏光分離手段と反射手段との間に偏光状態を変化させる偏光変換手段を有する」ものに相当する。
(ウ)引用発明の「コレステリック液晶層40」は、「導光板20の他方の面側にスピンコート法で形成した、選択波長域の異なる高分子コレステリック液晶層を複数層重ねて構成され」、「該コレステリック液晶層40では右(又は左)円偏光成分101が透過する一方、コレステリック液晶層40で反射された左(又は右)円偏光成分102は、前記拡散反射板21で反射する際に乱反射するとともに一部偏光を解消し、その右(又は左)円偏光成分104がコレステリック液晶層40を透過可能となるものである」から、引用発明には、本願補正発明の「板状発光層の片側に所定状態の偏光は透過し所定状態以外の偏光は反射する偏光分離手段を有し」、「前記の偏光分離手段が同じ偏光方向の円偏光を反射するコレステリック液晶ポリマーの複数を選択反射の中心波長が異なる組合せで重畳したものからなり、かつその重畳層を形成する各コレステリック液晶ポリマー層が平坦な連続膜よりなる」点を実質的に有する。

よって、両者は、
「板状発光層の片側に所定状態の偏光は透過し所定状態以外の偏光は反射する偏光分離手段を有し、前記板状発光層の他方側に反射手段を有すると共に、前記の偏光分離手段と反射手段との間に偏光状態を変化させる偏光変換手段を有してなり、前記の板状発光層が導光板の側面に光源を有して前記導光板の一方の面側に光を出射するものからなると共に、前記の偏光分離手段が同じ偏光方向の円偏光を反射するコレステリック液晶ポリマーの複数を選択反射の中心波長が異なる組合せで重畳したものからなり、かつその重畳層を形成する各コレステリック液晶ポリマー層が平坦な連続膜よりなる偏光形成装置」である点で一致し、下記の点で相違する。

相違点;
コレステリック液晶ポリマー層が、本願補正発明では、「アクリル系の主鎖を有する側鎖型コレステリック液晶ポリマーよりなる」のに対して、引用発明は、ポリグルタメート等の液晶性ポリエステルである点。

(4)判断
上記相違点につき検討するに、特定波長の所定状態の偏光を選択的に反射することのできるコレステリック液晶フィルム等の光学素子を製造するのに、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのアクリル系樹脂を主鎖にした側鎖型液晶ポリマーを用いることが従来周知(例えば、特開平6-186534号公報の【0007】、特開平6-242434号公報の【0022】および特開平5-88209号公報参照。)である。
してみると、引用発明のコレステリック液晶層の材料として、ポリグルタメート等の液晶性ポリエステルに代えて、上記従来周知のポリアクリレート、ポリメタクリレートなどのアクリル系樹脂の主鎖を有する側鎖型液晶ポリマーを用いることは当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものであり、格別とはいえない。

よって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年6月10日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成15年10月22日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のものである。
「【請求項1】板状発光層の片側に所定状態の偏光は透過し所定状態以外の偏光は反射する偏光分離手段を有し、前記板状発光層の他方側に反射手段を有すると共に、前記の偏光分離手段と反射手段との間に偏光状態を変化させる偏光変換手段を有してなり、前記の板状発光層が導光板の側面に光源を有して前記導光板の一方の面側に光を出射するものからなると共に、前記の偏光分離手段が同じ偏光方向の円偏光を反射するコレステリック液晶ポリマーの複数を選択反射の中心波長が異なる組合せで重畳したものからなり、かつその重畳層を形成する各コレステリック液晶ポリマー層が平坦な連続膜よりなることを特徴とする偏光形成装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物1:特開平7-36025号公報には、上記2.(2)刊行物記載の発明で摘記した事項が記載されている。

(3)対比・判断
上記本願補正発明と比べると、本願発明は、「コレステリック液晶ポリマー層がアクリル系の主鎖を有する側鎖型コレステリック液晶ポリマーよりなる」点、すなわち、上記2.(3)対比における相違点の構成を欠くものである。
そうしてみると、本願発明は、上記刊行物1に実質的に全て記載されており、引用発明と同一である。

なお、請求人は、意見書および審判請求書において、上記刊行物1と本願発明の相違点について言及しており、その中で特許法第29条第1項第3号の同一性を含めて検討していることは明らかである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-05 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2006-07-25 
出願番号 特願平7-96306
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02F)
P 1 8・ 575- Z (G02F)
P 1 8・ 113- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 右田 昌士藤田 都志行  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 吉野 三寛
向後 晋一
発明の名称 偏光形成装置及び液晶表示装置  
代理人 藤本 勉  

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