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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C
管理番号 1144136
審判番号 不服2002-7608  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-01 
確定日 2006-09-21 
事件の表示 平成7年特許願第248480号「熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成9年3月18日出願公開、特開平9-70871号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年9月1日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年5月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「架橋剤と四弗化エチレン樹脂と、熱可塑性ポリエステル系樹脂とを定量供給装置に通して一定の割合で二軸押出機に入れ、ここで混合物を加熱して溶融するとともに混練し、二軸押出機のバレルの一部に設けた開口から20Torr以下に減圧吸引して混合物中の揮発分を除き、次いでこの混合物に発泡剤を圧入し、これを押し出し発泡させて発泡体とすることを特徴とする、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の製造方法。」

2.引用刊行物の記載事項
(2-1)刊行物1
原査定の拒絶理由で引用文献1として引用された特開平7-125039号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2-1-1)
「内径が2.1mmで長さが8.0mmの孔から、340℃の温度で20kg/cm2 の圧力の下で10分間に1.0g以上流出するような粘度を持ったポリ四弗化エチレン樹脂の微粉末0.02〜0.5重量部と、熱可塑性ポリエステル系樹脂100重量部との混合物を押出機に入れ、押出機内で溶融してのちこれに窒素を圧入して発泡性組成物とし、この組成物を押出機の先端に付設した口金から押し出し、発泡させることを特徴とする、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1)
(2-1-2)
「この発明者は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(以下、これをPATという)に色々な発泡剤を加えて押し出し発泡させることを試みた。」(段落【0013】)
(2-1-3)
「この発明では、発泡剤として窒素を用いる。」(段落【0023】)
(2-1-4)
「この発明方法を実施するにあたっては、上記の材料以外に、これまで用いられて来た種々の助剤を用いることができる。例えばPATの溶融特性を改善するために、無水ピロメリット酸のような酸二無水物、周期律表のIa族又はIIa族の金属化合物、炭酸ナトリウム等を単独で又は混合して加えることができる。その量はPAT100重量部に対し0.1-5重量部の範囲内である。」(段落【0024】)
(2-1-5)
「押出機としては、単軸押出機を用いることが好ましい。」(段落【0025】)
(2-1-6)
「【実施例1】この実施例では、PATとしてポリエチレンテレフタレート(帝人社製、商品名 TR8580)を用い、またポリ四沸化エチレン樹脂として旭硝子社製のフルオンL169J(メルトインデックス6.5g/10分、平均粒径13ミクロン、比表面積2.0m2 /g)を用い、下記の混合物を作った。
PAT 100部
フルオンL169J 0.05部
無水ピロメリット酸 0.35部
炭酸ソーダ 0.05部
上記の混合物を口径が65mmの単軸押出機に入れ、押出機供給部の温度を280℃とし、圧縮部の温度を285℃として、溶融部とヘッド部の温度を何れも275℃とし、口金の温度を270℃とした。押出機におけるバレルの途中から、発泡剤として窒素を0.17重量%の割合で圧入して、口金から大気中へ押し出した。」(段落【0028】)
(2-2)刊行物2
原査定の拒絶理由で引用文献2として引用された特開昭56-70923号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2-2-1)
「第1押出機内で加熱され可塑化された樹脂を第2押出機内に導き、第2押出機内で発泡剤を混練し、押出成形を行う発泡体の製造方法において、第1押出機では、シリンダー内で2本のスクリューを互いに噛み合わせ、同方向に回転させることによつて樹脂を混練し、スクリューの側方において開口するシリンダー壁上の貫通孔から揮発成分を除き、その後に樹脂中に発泡剤を圧入し、第2押出機内では単一スクリューによつて樹脂を混練し、その後に大気中に押出し、発泡体とすることを特徴とする、熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1)
(2-2-2)
「熱可塑性樹脂発泡体は、シートの形状に成形され、食品用の容器又は包装材料として使用されることが多い。・・・(中略)・・・ところが、熱可塑性樹脂は、単量体の重合によって得られるものであるから、その中には単量体が或る程度必ず残存することとなる。そこで、食品容器用に使用される熱可塑性樹脂としては、その中から単量体をできるだけ除くことが必要とされ、このために種々の工夫がなされた。」(第1頁右下欄第16行〜第2頁左上欄第9行)
(2-2-3)
「第1押出機aから押出された樹脂は、管8を通つて第2押出機bへ入る。」(第3頁左下欄第16〜17行)
(2-2-4)
「第1押出機の先端側には貫通孔が設けられ、これが2個のスクリューの噛み合う位置に開口しているので、貫通孔から樹脂を流出させずに、揮発性成分だけを揮散させることができる。このために、揮発性成分の少ない良質の製品を作ることができる。」(第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第4行)
(2-2-5)
「第1押出機aでは、樹脂を200〜240℃に加熱し、貫通孔6から約60mmHgの真空で吸引し、・・・(中略)・・・圧入した。」(第6頁右上欄第9〜13行)

3.対比・判断
刊行物1には、上記(2-1-1)ないし(2-1-6)に記載の事項を総合すると、次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

「熱可塑性ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート)を100部、ポリ四弗化エチレン樹脂(フルオンL169J)を0.05部、助剤としての酸二無水物(無水ピロメリット酸)を0.35部及び炭酸ソーダを0.05部を用い混合物を作り、上記混合物を押出機に入れ、上記押出機内で溶融してのち、上記押出機におけるバレルの途中から発泡剤としての窒素を圧入して発泡性組成物とし、上記発泡性組成物を押し出し、発泡させる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の製造方法であって、上記押出機として好ましくは単軸押出機を使用する製造方法。」
そこで、本願発明と刊行物1発明を比較すると、
(ア)後者の「ポリ四弗化エチレン樹脂(フルオンL169J)」は、前者の「四弗化エチレン樹脂」に相当する。
(イ)後者は、「熱可塑性ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート)を100部、ポリ四弗化エチレン樹脂(フルオンL169J)を0.05部、助剤としての酸二無水物(無水ピロメリット酸)を0.35部及び炭酸ソーダを0.05部」を用いるものであるから、後者は、前者の「一定の割合で」「押出機に入れ」る工程を備えているものといえる。
(ウ)後者の助剤としての「酸二無水物(無水ピロメリット酸)」は、例えば本願明細書の段落【0015】ないし【0016】の「PATに架橋剤を加えるが、架橋剤としては・・・(中略)・・・例えば、・・・(中略)・・・酸二無水物を用いることが好ましい。・・・(中略)・・・酸二無水物としては例えば無水ピロメリット酸・・・(中略)・・・を用いることができる。」との記載から、前者の「酸二無水物」である「無水ピロメリット酸」と同様に、架橋剤といえる。
(エ)後者は、押出機内で溶融させる工程を備えており、押出機の機能からみて、該溶融の際の加熱とともに混練が行われていることは当然といえる。
上記のことから、両者は、「架橋剤と四弗化エチレン樹脂と、熱可塑性ポリエステル系樹脂とを一定の割合で押出機に入れ、ここで混合物を加熱して溶融するとともに混練し、次いでこの混合物に発泡剤を圧入し、これを押し出し発泡させて発泡体とする製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

【相違点1】:
本願発明では、原材料(架橋剤と四弗化エチレン樹脂と、熱可塑性ポリエステル系樹脂)を「二軸押出機」に入れ、「二軸押出機のバレルの一部に設けた開口から20Torr以下に減圧吸引して混合物中の揮発分を除」く工程を備えてなるものであるのに対して、刊行物1発明では、原材料を入れる押出機は、バレルを備えるものであるが、好ましくは単軸押出機を使用することとされており、「二軸押出機のバレルの一部に設けた開口から20Torr以下に減圧吸引して混合物中の揮発分を除」く工程は備えていない点。
【相違点2】:本願発明では、原材料を「定量供給装置を通して」「二軸押出機」に入れる工程を備えてなるものであるのに対して、刊行物1発明では、かかる工程を備えていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
先ず、相違点1について検討する。
刊行物2には、上記(2-2-1)ないし(2-2-5)に記載の事項を総合すると、次の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されているものと認められる。

「第1押出機a内で加熱され可塑化された樹脂を第2押出機b内に導き、上記第2押出機内で発泡剤を混練し、押出成形を行う発泡体の製造方法において、上記第1押出機aでは、2軸押出機によりシリンダー内で樹脂を混練し、上記2軸押出機の2個のスクリューの噛み合う位置に開口するシリンダー壁上の貫通孔6から約60mmHgの真空で吸引することにより上記樹脂を流出させずに、揮発性成分だけを除き、その後に上記樹脂中に発泡剤を注入し、上記第2押出機内では単一スクリューによって樹脂を混練し、その後に大気中に押出し、発泡体とする熱可塑性樹脂発泡体の製造方法。」
そこで、本願発明と刊行物2発明を対比する。
後者の「シリンダー」は、前者の「バレル」に、後者の「上記2軸押出機の2個のスクリューの噛み合う位置に開口するシリンダー壁上の貫通孔6」は、前者の「二軸押出機のバレルの一部に設けた開口」に相当する。
また、後者において、「貫通孔6から約60mmHgの真空で吸引」するということは、後者が、前者の「開口」から「減圧吸引」する工程に相当する工程を備えてなるものといえる。
してみると、刊行物2発明は、相違点1に係る本願発明の「二軸押出機のバレルの一部に設けた開口」から「減圧吸引して混合物中の揮発分を除」く工程を備えてなるものといえる。
ここで、本願発明の「減圧吸引」に係る真空度「20Torr以下」について検討する。
減圧吸引の真空度について、刊行物2発明では、約60mmHg、すなわち約60Torrとされているが、揮発分を除く減圧の真空度は、樹脂の性質、発泡体の製造条件で適宜決定すべき設計的事項の範疇のものといえる。
そして、2軸押出機における揮発分を除くための真空度を、「20Torr以下」とすることは、例えば、特開平5-220819号公報の段落【0018】,【0024】、特開昭57-15946号公報の第2頁右上欄第13〜14行,第3頁左上欄第2〜14行に記載されているように周知の技術であり、格別なこととはいえない。
したがって、上記の減圧吸引の真空度の検討を考慮すると、刊行物1発明に刊行物2発明を適用することにより、当該押出機を二軸押出機とし、「二軸押出機のバレルの一部に設けた開口」から「減圧吸引して混合物中の揮発分を除」く工程を加え、その際、減圧吸引の真空度を「20Torr以下」として、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことといえる。
なお、刊行物1発明では、当該押出機として好ましくは単軸押出機を使用することとされているが、刊行物1には、単軸押出機でなければならない趣旨の記載はないから、刊行物1発明の当該押出機を刊行物2発明のように「2軸押出機」とすることに問題はない。
次に、相違点2について検討する。
樹脂材料の製造方法において、原材料を定量供給装置を通して二軸押出機に入れることは、特開平6-64021号公報の段落【0033】,図1、特開平6-285848号公報の段落【0014】,【0019】,図1及び特開平7-80830号公報の段落【0007】,図1に記載されているように周知の技術である。
そして、刊行物1発明の原材料を押出機へ入れる工程に上記周知の技術を適用して、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことといえる。

また、本願発明が奏する作用効果も、刊行物1発明、刊行物2発明並びに上記周知の技術から、当業者が容易に予測しうる範囲のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
上記したとおり、本願発明は、刊行物1発明、刊行物2発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-24 
結審通知日 2006-07-26 
審決日 2006-08-09 
出願番号 特願平7-248480
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 祥吾斎藤 克也堀 洋樹  
特許庁審判長 増山 剛
特許庁審判官 川端 康之
鴨野 研一
発明の名称 熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡体の製造方法  
代理人 酒井 正美  

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