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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1144172 |
審判番号 | 不服2003-24475 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-18 |
確定日 | 2006-09-21 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 30276号「搬送用ローラおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月18日出願公開、特開平10-218418〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年2月14日に特許出願されたものであって、平成15年11月11日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月18日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成16年1月19日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年1月19日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下決定の結論] 平成16年1月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 上記補正は、特許請求の範囲の請求項1を以下のとおりに補正することを含むものである。 「【請求項1】シャフトと、このシャフトに装着されるローラ本体とからなる搬送用ローラにおいて、上記ローラ本体は、上記シャフトの外周面に積層される内側環状積層部と、この内側環状積層部の外周面に積層される外側環状積層部とから構成され、上記内側環状積層部は、所定の収縮率を有する熱可塑性合成樹脂が用いられ、上記外側環状積層部は、上記熱可塑性合成樹脂の融点と略同一の融点または硬化点を有するエラストマーが用いられていることを特徴とする搬送用ローラ。」 (2)判断 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「外側環状積層部のエラストマー」について、「熱可塑性合成樹脂の融点と略同一の温度で成形可能温度に到達する」から「熱可塑性合成樹脂の融点と略同一の融点または硬化点を有する」と補正するものである。 しかし、上記補正のうちの「または硬化点を有する」を付加した点は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明のいずれにも該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本補正は、特許法17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年1月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は出願時の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 (1)「【請求項1】シャフトと、このシャフトに装着されるローラ本体とからなる搬送用ローラにおいて、上記ローラ本体は、上記シャフトの外周面に積層される内側環状積層部と、この内側環状積層部の外周面に積層される外側環状積層部とから構成され、上記内側環状積層部は、所定の収縮率を有する熱可塑性合成樹脂が用いられ、上記外側環状積層部は、上記熱可塑性合成樹脂の融点と略同一の温度で成形可能温度に到達するエラストマーが用いられていることを特徴とする搬送用ローラ。」 (2)刊行物について 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願平4-349796号(実開平6-175439号)のCDロム(以下、「引用例1」という)、特開平6-175439号公報(以下、「引用例2」という)には、以下の事項が記載されている。 1)引用例1の記載事項 a:「【請求項1】所定の外径を有するシャフトの外周に複数の円筒部材を配置して構成されるゴムローラにおいて、 前記円筒部材は、前記シャフトが挿入される内層部材と、当該内層部材の外周に同心円状に配置される外層部材より構成され、 前記内層部材は、前記外層部材より所定の硬度差だけ大なる硬度を有することを特徴とするゴムローラ。」(【特許請求の範囲】 ) b:「【産業上の利用分野】本発明は紙葉類搬送用ゴムローラ,紙葉類分離用ゴムローラ,プラテン用ゴムローラ等に適用されるゴムローラに関し、特に、製品品質を良好にすると共に製造を容易にしたゴムローラに関する。」(【0001】欄) 図1および上記記載事項「a,b」より、 引用例1には、「所定の外径を有するシャフトの外周に複数の円筒部材を配置して構成されるゴムローラにおいて、前記円筒部材は、前記シャフトが挿入される内層部材と、当該内層部材の外周に同心円状に配置される外層部材より構成され、前記内層部材は、前記外層部材より所定の硬度差だけ大なる硬度を有することを特徴とする紙葉類搬送用ゴムローラ。」(以下、「引用発明1」という)が記載されている。 2)引用例2の記載事項 c:「 即ち、この考案の耐薬品ローラーは耐薬品性の素材よりなる軸端部と素材を特に限定しない軸間部より構成される軸部と、射出成形によりこの軸間部を芯としてそれを包みこむ形状に構成される熱可塑性プラスチックよりなる中間被覆層と、更に射出成形によりこの中間被覆層を芯としてそれを包みこむ形状に構成されるオレフィン系エラストマーによりなるローラー表層からなることを特徴とする。」(【0007】) d:「 第3に中間被覆層に対しそれを芯として射出成形によりそれを包みこむ形状にオレフィン系エラストマーによるローラー表層が設けられるので、射出成形時の高温雰囲気により溶融した中間被覆層の表面と溶融したローラー表層の樹脂相が結合する作用が期待でき接着剤を要しなくとも両者は堅固に接合される。」(【0010】) 図1〜5および上記記載事項「c,d」より、 「軸部と、射出成形によりこの軸間部を芯としてそれを包みこむ形状に構成される熱可塑性プラスチックよりなる中間被覆層と、更に射出成形によりこの中間被覆層を芯としてそれを包みこむ形状に構成されるオレフィン系エラストマーによりなるローラー表層からなり、中間被覆層に対しそれを芯として射出成形によりそれを包みこむ形状にオレフィン系エラストマーによるローラー表層が設けられるので、射出成形時の高温雰囲気により溶融した中間被覆層の表面と溶融したローラー表層の樹脂相が結合する作用が期待でき接着剤を要しなくとも両者は堅固に接合される耐薬品ローラ。」以下、「引用発明2」という)が記載されている。 (3)対比・判断 ゴムが、エラストマーであることは自明である。 そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、 引用発明1の、「シャフト」、「ゴムローラ」、「紙葉類搬送用ゴムローラ」、「内層部材」、「外層部材」は、本願発明の、「シャフト」、「ローラ本体」、「搬送用ローラ」、「内側環状積層部」、「外側環状積層部」に相当するから、 両者は、「シャフトと、このシャフトに装着されるローラ本体とからなる搬送用ローラにおいて、上記ローラ本体は、上記シャフトの外周面に積層される内側環状積層部と、この内側環状積層部の外周面に積層される外側環状積層部とから構成されたエラストマーが用いられていることを特徴とする搬送用ローラ。」で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1]本願発明では、「内側環状積層部」が、「所定の収縮率を有する熱可塑性合成樹脂」が用いられるのに対して、引用発明1には、この点の記載がない点。 [相違点2]本願発明では、外側環状積層部として用いられる「エラストマー」が「熱可塑性合成樹脂の融点と略同一の温度で成形可能温度に到達する」のに対して、引用発明1には、この点の記載がない点。 〈判断〉 そこで上記相違点について検討する。 [相違点1]について、 熱可塑性がそれぞれ所定の収縮率を持つことは、当業者にとって自明の事項であるから、この点に相違はない。 [相違点2]について、 引用発明2には、「中間被覆層に対しそれを芯として射出成形によりそれを包みこむ形状にオレフィン系エラストマーによるローラー表層が設けられるので、射出成形時の高温雰囲気により溶融した中間被覆層の表面と溶融したローラー表層の樹脂相が結合する作用が期待できる」旨の記載があり、この点と、相違点2との間に実質的な相違はないから、引用発明1に、これらの技術を適用して相違点2を構成することは、当業者が容易になし得たことである。 しかも、上記相違点1,2を特定事項として備えることによる効果も当業者が当然予測しうる程度のものである。 してみると、本願発明は、その出願前に頒布された引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項2〜10に係る発明について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-24 |
結審通知日 | 2006-07-25 |
審決日 | 2006-08-07 |
出願番号 | 特願平9-30276 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳 五三、杉野 裕幸 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
中西 一友 石田 宏之 |
発明の名称 | 搬送用ローラおよびその製造方法 |
代理人 | 伊藤 孝夫 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 植木 久一 |