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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1144231 |
審判番号 | 不服2004-23650 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-07-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-11-18 |
確定日 | 2006-09-21 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第342816号「モールド整流子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月11日出願公開、特開平 9-182383〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 出願の経緯・本願発明 本件出願は、平成7年12月28日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年2月6日付けの手続補正書により補正がされた明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「ブラシ摺動面側となる所定の位置に切欠きを形成するとともに、その一端側に巻線を結線するための接続部を形成するように銅または銅化合物などの導電材を打ち抜き整流子子片を形成する第一の工程と、前記整流子子片の一方を前記切欠きを支点として、前記接続部がブラシ摺動面側に直角または鈍角に折り曲げライザー部を形成する第二の工程と、前記第二の工程により折り曲げられたライザー部を有する整流子子片を円周上に複数かつ均等に配置した後、前記整流子子片とともに整流子ボスをモールドする第三の工程からなることを特徴とするモールド整流子の製造方法。」(この発明を以下「本願発明」という。) なお、本件出願については、平成16年6月7日付けにて手続補正がされたが、この補正は平成16年10月7日付けの補正の却下の決定により却下がなされた。 2. 引用刊行物 刊行物1:特開昭57-43541号公報 刊行物2:特開昭56-136477号公報 (1) 原査定の拒絶の理由(平成16年3月30日付け拒絶理由通知書)に引用された、上記刊行物1には、発明の名称を「整流子片の製造方法」と題して、図面とともに次の記載がある。 「整流子片と同形の断面形状を有する帯状導体を引抜成形し、この帯状導体から整流子片とライザー成形片とを一体に打抜き、このライザー成形片を所定の方向に折り曲げて、厚さ方向に押圧し、導体状のライザーを構成させることを特徴とする整流子片の製造方法。」(特許請求の範囲) 「これを図に示す実施例について説明すると、第3図ないし第7図において、4は整流子片と同じ断面に引抜成形した帯状導体で、この帯状導体から第3図に斜線を付したように整流子片1とこの整流子片1に連続したライザー成形片5とを一体に打抜き、第5図に示すようにライザー成形片5を所定のライザー取付方向に折り曲げたのち、このライザー成形片を厚さ方向にプレスで押圧して第6図、第7図のように所要形状の薄板状のライザー6を構成させる。必要があればライザー成形片を薄く押圧したのち所要形状にプレス打抜きによって形状を整えるようにしてもよい。7は緊締環用の切り欠き、8は折り曲げを容易にするための切り欠きである。」(公報第1頁右下欄第14行から第2頁左上欄第7行)。 ここで、第3図ないし第5図によれば、整流子片1は、公報紙面の上側の稜がブラシ摺動面側となるのであって、ライザー成形片5は、切り欠き8の位置において、ブラシ摺動面側にほぼ直角に折り曲げられている。この折り曲げられた状態にて整流子片とすることができることは明らかである。 そうすると、刊行物1には次の発明が開示されているということができる。 「所定の位置に切り欠きを形成するとともに、帯状導体を打ち抜き整流子片を形成する第一の工程と、前記整流子片の一方を前記切り欠きの位置において、ブラシ摺動面側にほぼ直角に折り曲げライザーを形成する第二の工程とからなる整流子片の製造方法。」(この発明を以下「引用発明」という。) (2) 同じく拒絶の理由に引用された、上記刊行物2には、「電気接続子の裏打ち方法」と題する発明に関するが、その従来技術として、図面とともに次の記載がある。 「従来、電気接続子を製造するには、薄い板金を打ち抜いて所定の形状の素材とし、この素材を折曲げ加工して製品としていた。この折曲げの際に加工を容易にするために、折曲げ部分に沿って予め裏打ちが行われていた。従来の裏打ちの方法を第1図により示すと、素材1の折曲げられる面で、折曲げ部分Aに沿って浅く溝状のたたき2a、2b、2cが一直線に連続して打ち込まれていた。」(公報第1頁右下欄第2行から第9行)。 3. 対比 (1) 本願発明と引用発明とを比較すると、次のことが明らかである。 ・後者の「帯状導体」は、前者の「導電材」に相当し、同様に、「整流子片」は「整流子子片」に、「切り欠き」は「切欠き」に、「ほぼ直角」は「直角または鈍角」に、「ライザー」は「ライザー部」にそれぞれ相当する。 ・後者のものは、第1工程と第2工程とからなる「整流子片の製造方法」であって、前者のものは、第1工程ないし第3工程からなる「整流子の製造方法」であるが、前者において、第3工程を除く第2工程までの段階のものは、後者のものと同様の「整流子子片の製造方法」といい得る。 そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 (2) 一致点 「所定の位置に切欠きを形成するとともに、導電材を打ち抜き整流子子片を形成する第一の工程と、前記整流子子片の一方を前記切欠きの位置において、ブラシ摺動面側に直角または鈍角に折り曲げライザー部を形成する第二の工程とからなる整流子子片の製造方法。」 (3) 相違点 (ア) 折り曲げ加工に関し、本願発明が、「ブラシ摺動面側となる所定の位置に切欠きを形成」し、「切欠きを支点」として、加工を行うものであるのに対して、引用発明のものは、切り欠きがブラシ摺動面側ではなく、これを支点とするものでもない点。 (イ) 巻線の結線に関し、本願発明のものが「一端側に巻線を結線するための接続部を形成」したのに対して、引用発明のものは接続部に相当する構成が明確ではない点。 (ウ) 導電材に関し、本願発明のものが「銅または銅化合物など」からなるのに対して、引用発明のものは、その材質が明らかではない点。 (エ) 本願発明が、第二の工程の後に「第二の工程により折り曲げられたライザー部を有する整流子子片を円周上に複数かつ均等に配置した後、前記整流子子片とともに整流子ボスをモールドする第三の工程」を有するのに対して、引用発明は、そのような工程を有しない点。 4. 相違点についての判断 (1) 相違点(ア)について 一般に、折曲げ加工の際に、その折曲げを容易とするために、折り曲げるべき位置の内側または外側に切欠きを設けことは、通常行われる技術である。刊行物2のものは、折り曲げるべき位置の内側に設け、これを支点として折曲げを行う例である。 引用発明において、折曲げを容易とするための切欠きを、刊行物2などの一般的技術を参照して、ブラシ摺動面側となる所定の位置であって、折曲げの際に支点となるべき位置に形成することは、当業者にとって容易想到の範囲である。 なお、刊行物1には、ライザーの径寸法を整流子片の摺動部寸法より大きくするように折り曲げる点について明確な記載はない。しかし、一般にこのような寸法関係とすることは、原審の最初の拒絶の理由において挙げた、特開昭49-127103号公報、特開平1-311847号公報、実願昭57-6936号(実開昭58-112073号)のマイクロフィルム、実願昭60-183927号(実開昭62-95477号)のマイクロフィルム、実願昭60-151997号(実開昭62-61164号)のマイクロフィルムなどにもあるように周知の技術である。刊行物1のものにおいて、そのような寸法関係とするべく、折曲げ加工を行うようにすることは格別のことではない。 (2) 相違点(イ)について 巻線を結線するために、本願発明にいう「接続部」を形成する技術は、例えば、前掲の特開昭49-127103号公報、特開平1-311847号公報、実願昭57-6936号(実開昭58-112073号)のマイクロフィルム、実願昭60-183927号(実開昭62-95477号)のマイクロフィルム、実願昭60-151997号(実開昭62-61164号)のマイクロフィルムなどにも記載されているように周知である。 引用発明において、整流子片の一端側に接続部を形成することは当業者に容易である。 (3) 相違点に(ウ)ついて 整流子片を銅製とすることは周知の技術(例えば、特開平7-336953号公報、特開昭59-14284号公報などを参照)である。引用発明のものにおいて、銅または銅化合物などとすることは、設計的事項である。 (4) 相違点に(エ)ついて 整流子の製造方法として、整流子片を円周上に複数かつ均等に配置し、整流子片とともにボスをモールドするようにすることは、例えば、特開昭59-14284号公報、特開昭51-108210号公報、実願昭61-164679号(実開昭63-70269号)のマイクロフィルムなどにあるように周知の技術である。 ここにおいて、引用発明の整流子片が整流子の製造に使用されるものであることは明らかであるから、この整流子片に対して、さらに、整流子を製造するべく、その整流子片を円周上に複数かつ均等に配置し、整流子片とともにボスをモールドする工程を付加して、これをモールド整流子の製造方法とすることは、当業者が容易に想到できたものというべきである。 (5) そして、本願発明の作用効果も、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術から当業者が予測できた範囲のものである。 したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5. むすび 以上、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論とおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-12 |
結審通知日 | 2006-07-18 |
審決日 | 2006-07-31 |
出願番号 | 特願平7-342816 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 櫻田 正紀、安池 一貴 |
特許庁審判長 |
高木 進 |
特許庁審判官 |
田中 秀夫 渋谷 善弘 |
発明の名称 | モールド整流子の製造方法 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 永野 大介 |