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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1144239
審判番号 不服2005-6071  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-08-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-07 
確定日 2006-09-21 
事件の表示 特願2002-61181「ローヤルゼリーを含有する食品および薬剤」拒絶査定不服審判事件〔平成15年8月5日出願公開、特開2003-219816〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、平成14年1月31日の特許出願であって、その請求項1乃至5に係る発明は、平成16年10月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。(以下、「本件発明1」という。)
「【請求項1】ローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量が生ローヤルゼリー換算で5〜11g(ただし5gを除く)であり、前記摂取量に好適な形態を有するローヤルゼリーを含有する食品。」

2.引用例記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願日前に頒布された刊行物である特開2001-157556号公報(以下、「引用例1」という。)には、(a)「【請求項1】生ローヤルゼリーの乾燥粉末と、イチョウ葉エキスの乾燥粉末との混合物からなることを特徴とする健康食品。【請求項2】前記生ローヤルゼリーの乾燥粉末と前記イチョウ葉エキスの乾燥粉末との重量比が、(3〜5):1である請求項1に記載の健康食品。【請求項3】生ローヤルゼリーを凍結乾燥させることにより粉体に加工するとともに、イチョウ葉エキスの抽出液を凍結乾燥させることにより粉体に加工したのち、両者を混合することを特徴とする健康食品の製造方法。」(【特許請求の範囲】)が記載され、(b)「ローヤルゼリーは、働き蜂の咽頭腺から分泌される乳白色の物質で、タンパク質、脂質、糖質のほか、各種アミノ酸、ビタミン類、ミネラルをバランスよく含んでいる。また、アセチルコリン、デセン酸、類パロチンといった有効成分も含まれている。とくにアセチルコリンは、副交感神経伝達物質で、自律神経のバランスを整えたり血圧を降下させる働きがあるほか、アルツハイマー病はこの物質が不足して起きるといわれている。またデセン酸は、ローヤルゼリーに特有の不飽和脂肪酸で、別名を王乳酸といい、血中コレステロール値の調節作用、抗菌作用、皮脂分泌調節作用等を有する。さらに類パロチンはヒト唾液腺ホルモンに類似した物質で、筋肉、内臓、骨等の組織の新陳代謝を促進し、老化を防止する働きがある。このように、ローヤルゼリーは多彩な栄養素と有効成分を持つため、古くから美容や健康の維持、増進に良い食品として知られ、有用されている。市販されているものには、生ローヤルゼリーを液状のままカプセルに充填したものや、生ローヤルゼリーを乾燥粉末にして錠剤に加工したりカプセルに充填したりしたもの、さらに、他の有用成分を加えて錠剤や飲料に加工したりカプセルに充填したもの、とさまざまな健康食品がある。」(段落【0003】)こと、(c)「本例の健康食品1は胃又は小腸で溶解するハードカプセル7入りの食品で、生ローヤルゼリー2を凍結乾燥したのち、粉砕して得られたローヤルゼリー粉末4と、イチョウ葉エキス3を凍結乾燥したのち、粉砕して得られたイチョウ葉エキス粉末5とを所定の割合で混合したものである。本実施例では、得られた混合物6に乳糖やコーンスターチを添加したのち、ハードカプセル7に充填して製品としている。」(段落【0013】)こと、(d)「ローヤルゼリー粉末4とイチョウ葉エキス粉末5との重量比は、上記のように(3〜5):1とする。どちらか一方のみを多量に摂取しても余剰分が排出されてむだになるだけであるが、上記の割合の範囲内で混合することにより、効率的に有効成分同士による相乗効果が発揮される。また、この割合で混合された混合物6の必要な摂取量は、1カプセルにつき混合物6を300mg充填するので、普通は1日5カプセル(1500mg)でよい。つまり、1日5カプセルずつ摂取することで、適量の有効成分が体内に取り込まれ、それらの成分の相乗効果により細胞の活性化、血管拡張、血流促進などの効果が得られ、その結果、痴呆症の予防や治療、高血圧や心臓病などの予防や治療に役立つ。」(段落【0016】)ことが記載され、同じく特開平11-276075公報(以下、「引用例2」という。)には、(e)「【請求項1】基本飲料がウーロン茶、緑茶及びジャスミン茶から選択されたものであり、ローヤルゼリーを 0.75 - 1.25 重量% の割合で含有していることを特徴とする、健康飲料。・・・」(【特許請求の範囲】)が記載され、(f)「【発明が解決しようとする課題乃至発明の目的】ローヤルゼリーは公的に認められた栄養素でも医薬品でもないために、1 日当りの所要摂取量は格別決められていないが、社団法人全国ローヤルゼリー公正取引協議会では標準摂取量を生ローヤルゼリー換算で 300mg - 3g としており、一方中華人民共和国においては、ローヤルゼリーが充分に効能を発現するためには、1 日当り 2g 以上、好ましくは 3 - 4g 摂取することが必要と称されている。・・・」(段落【0004】)こと、(g)「処で、生ローヤルゼリーは舌にピリッと刺すような刺激を与えるので、ヒトによっては飲用が困難であり、薄めても収斂味 (エグ味) が甚だ強いために、一般には蜂蜜、牛乳、鶏卵等によりマスキングして飲用されているのが実状である。これが原因で、市販のローヤルゼリー入りドリンク剤のローヤルゼリー含有量が低めに設定されているものとも考えられる・・・」(段落【0006】)ことが記載され、同じく特開2000-287633公報(以下、「引用例3」という。)には、(h)「【請求項1】生ローヤルゼリーに、低カロリー甘味料、少糖類が配合されていることを特徴とする低カロリー調製ローヤルゼリー。・・・」(【特許請求の範囲】)が記載され、(i)「ローヤルゼリーは医薬品の認定を未だ受けていないため定かではないが、ローヤルゼリーの効能を得るために必要とされる一日の摂取量は、一般に、生ローヤルゼリーに換算して3g〜5gとされている。ローヤルゼリーは生の状態が最も優れた能力を発揮すると考えられてきたが、生ローヤルゼリーは特有の収斂味(えぐ味)を有するため、生ローヤルゼリー単独での摂取は、多少なりとも負担を伴う。・・・」(段落【0004】〜【0005】)こと、(j)「生ローヤルゼリーは、その量が少なければ一日の必要摂取量(3〜5g/日)を満たすことができず、ローヤルゼリーの効果も期待できない一方、生ローヤルゼリーの含有量が多ければ必然的に生ローヤルゼリーの効果が期待できるが、単にその量を多くすると生ローヤルゼリー特有のえぐ味が強くなり、本発明の目的を達成することができない」(段落【0011】)ことが記載され、同じく特開2001-2583公報(以下、「引用例4」という。)には、(k)「【請求項1】ローヤルゼリーのプロテアーゼによる分解物を有効成分とすることを特徴とする血糖値上昇抑制剤。・・・」(【特許請求の範囲】)が記載され、(l)「ところで、ローヤルゼリーは、ミツバチの分泌腺(下咽頭腺、大腮腺)から分泌される乳白色を帯びた強い酸味のある物質で、女王蜂を育てるための特別な餌となる物質である。ローヤルゼリーの成分についてはまだ不明の点もあるが、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、アセチルコリン、10-ヒドロキシデセン酸、ステロール、ホルモンなどの豊富な栄養分を含有し、更年期障害予防作用、抗貧血作用、老化防止、抗放射線作用、抗ガン作用、血流増加作用、抗動脈硬化作用(コレステロール低下作用、血圧正常化作用)、リウマチ・神経痛予防作用、健康増進作用などの人体に対して好ましい生理活性を持つことが知られている。」(段落【0004】)こと、(m)「例えば、上記トランス-10-ヒドロキシデセン酸は、生ローヤルゼリー中に約2%程度しか含有されておらず、その精製には手間とコストがかかっていた。そして、上記生理効果が期待されるトランス-10-ヒドロキシデセン酸の有効投与量は、通常100〜200mg/人(約60kg)/日であり、これを生ローヤルゼリー(採取された原液)で摂取しようとすると、大量の生ローヤルゼリー(25〜50g/人(約60kg)/日)を摂取しなければならなかった。」(段落【0007】)ことが記載されている。

3.対比・判断

本件発明1は、ローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量が生ローヤルゼリー換算で5〜11g(ただし5gを除く)で、前記摂取量に好適な形態を有するローヤルゼリーを含有する食品であって、安全なローヤルゼリーの摂取量の範囲の食品を提供するものである。
これに対して、引用例1には、ローヤルゼリーとイチョウ葉エキスを混合した健康食品において(上記記載事項(a))、ローヤルゼリーの配合量は一日当たり5カプセル(上記記載事項(d))すなわち生ローヤルゼリー換算約3.4〜3.8gが適量とされ、引用例2には、ローヤルゼリーが充分に効能を発現するためには、1日当り 2g 以上、好ましくは 3-4g 摂取することが必要であることが記載され(上記記載事項(f))、引用例3には、ローヤルゼリーの効能を得るために必要とされる一日の摂取量は、一般に、生ローヤルゼリーに換算して3g〜5gと記載され(上記記載事項(j)ているように、ローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量が生ローヤルゼリー換算で5g以下であり、前記摂取量に好適な形態を有するローヤルゼリーを含有する食品(以下、「引用例発明」という。)は周知のものである。
本件発明1と引用例発明とを対比すると、両者は、「所定量のローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量を含有し、ローヤルゼリーの摂取量に好適な形態を有するローヤルゼリーを含有する食品。」である点で一致し、所定量のローヤルゼリーに関し、前者においては、生ローヤルゼリー換算のローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量が、5〜11g(ただし5gを除く)であるのに対して、後者においては、それが5g以下である点で相違する。
そこで、上記相違点について検討する。
機能性成分を含有する健康食品において、機能性成分の配合量は、その効果、副作用及び食味等を考慮して当業者が適宜決定するものである。
ローヤルゼリーの摂取量については、引用例2の上記記載事項(f)のとおり、ローヤルゼリーは公的に認められた栄養素でも医薬品でもないために、1 日当りの所要摂取量は格別決められておらず、引用例2における生ローヤルゼリー換算で 300mg 〜3gという1 日当りの所要摂取量は、あくまでも標準摂取量にすぎないし、引用例4には、「大量の生ローヤルゼリー(25〜50g/人(約60kg)/日)を摂取しなければならなかった。」(上記記載事項(m))と、生ローヤルゼリー換算のローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量を5g以上とすることが示唆されている。
また、引用例3の上記記載事項(j)のとおり、生ローヤルゼリーの含有量が多ければ必然的に生ローヤルゼリーの効果が期待できるものであるが、他方、引用例2の上記記載事項(g)或いは引用例3の上記記載事項(i)及び(j)のとおり、通常は、生ローヤルゼリーの量を多くすると生ローヤルゼリー特有のえぐ味が強くなるため、生ローヤルゼリーの摂取量が抑えられているものである。
ここで、本件発明1においては、本件明細書の段落【0016】に記載のとおり、ローヤルゼリーとしては、ローヤルゼリー凍結粉末を使用するものであるが、生ローヤルゼリーに代えて、ローヤルゼリー凍結粉末を使用する場合は、生ローヤルゼリー特有のえぐ味が強くなるという問題が生じないことは自明のことであり、引用例1においても、生ローヤルゼリー凍結乾燥粉末が使用されている。(上記記載事項(c))
そうすると、機能性成分を多く配合して食品の機能を増強することは、当業者が通常行うことであることから、引用例発明において、ローヤルゼリーの効果を強めるために、生ローヤルゼリー換算のローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量を、5〜11g(ただし5gを除く)とすることに格別の困難性は見出せず、それを妨げる特段の理由も見出せない。
そして、本件発明1の明細書記載の効果も、引用例1乃至4から当業者が予期しうる効果にすぎない。
したがって、本件発明1は、本件の出願日前に頒布された引用例1乃至4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

審判請求人は、審判請求書において「本願発明は、血圧降下作用だけでなく、本願の実施例1によれば、総コレステロール量及び中性脂肪量の値においても、10.8g摂取では、8週間摂取で優れた低減効果が示されており、これらの効果は、8週間摂取しても値が減少しない5.4g摂取の結果だけからでは予期できないものであるところ、このような多量の摂取により良好な作用を発現する、摂取量又は投与量を決定することは、当業者が容易に発明できたものではない。」旨主張しているので検討する。
本件特許請求の範囲の請求項1には、「血圧降下作用を有する」ことは記載されていないから、審判請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張とはいえない。
また、審判請求人は、「これらの効果は、8週間摂取しても値が減少しない5.4g摂取の結果だけからでは予期できないものである」と主張しているが、本件発明1は、生ローヤルゼリー換算のローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量を、5〜11g(ただし5gを除く)とするものであるから、本件発明1は、効果のない生ローヤルゼリー換算のローヤルゼリーの1日当りの経口摂取量5.4gの場合も包含するものであるところ、本件発明1が予期できない効果を奏するとする審判請求人の主張は採用できない。
なお、上記記載事項(b)或いは(l)のとおり、ローヤルゼリーが、血圧を降下させる働きがあるほか、血中コレステロール値の調節作用等があることは周知のことである。
そして、特定の薬理作用に着目した製剤を製造する際には、その作用が有効に発現し、かつ、重篤な副作用が生じないような投与量を決定することは当業者が当然に行うことであるし、本件発明で決定された摂取量又は投与量が、通常ではあり得ないような量であるとか、その量を用いた場合の血圧降下作用が、予期できないほど優れたものである等、本件発明の摂取量又は投与量を決定することが困難であったとの特段の事情も見あたらないから、審判請求人の主張は採用できない。

4. むすび

以上のとおり、本件発明1は、その出願前日本国内において頒布された上記の引用刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-13 
結審通知日 2006-07-18 
審決日 2006-08-07 
出願番号 特願2002-61181(P2002-61181)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鈴木 恵理子
鵜飼 健
発明の名称 ローヤルゼリーを含有する食品および薬剤  
代理人 三好 秀和  

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