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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60G |
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管理番号 | 1144335 |
審判番号 | 不服2003-13899 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-11-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-18 |
確定日 | 2006-09-07 |
事件の表示 | 平成11年特許願第556036号「車両のリジッドアクスルのためのアクスルサスペンション」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月18日国際公開、WO99/58354、平成12年11月21日国内公表、特表2000-515460〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1998年5月7日を国際出願日とする出願であって、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成14年8月9日付けの手続補正書により補正された明細書と出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次のとおりのものと認める。 「1. 車両のリジッドアクスルのためのアクスルサスペンションであって、車両アクスルを案内するために各車両側にて、それぞれほぼ同じ高さに車両縦方向に延びる、車両アクスル(1)を垂直運動可能に車両車体に結合する少なくとも1つの縦リンク(2,3)が配置されかつ車両アクスル(1)の上側にて、一方では車両アクスル(1)にかつ他方では車両車体にヒンジ結合された4点リンク機構(4)が配置されており、該4点リンク機構(4)がねじれ可能な十字体として、車両横方向で相互に間隔を有するそれぞれ2つのジョイント(5,6),(7,8)を介して、一方では車両アクスルにかつ他方では車両車体に結合されている形式のものにおいて、全体として一体構造の鍛造品として形成された前記4点リンク機構(4)のアーム(9,10)がほぼ方形の横断面を有する曲げ支持体でありかつ前記アーム(9,10)の1つ(9又は10)が目標破断個所(12)を有していることを特徴とする、車両のリジッドアクスルのためのアクスルサスペンション。 2. 前記ジョイント(5,6),(7,8)がジョイントケースとボールとの間に配置されたエラストマを備えたボールジョイント又はピボットジョイントであることを特徴とする、請求項1記載のアクスルサスペンション。 3. 前記ジョイント(5,6),(7,8)と、該ジョイント(5,6),(7,8)を受容する前記4点リンク機構(4)とが、それらに作用することが見込まれる負荷に相応して交換可能な部品から成る組本ブロックシステムを形成している、請求項2記載のアクスルサスペンション。 4. 前記4点リンク機構(4)がローリング又はロッキングモーションに対し、10kNmと60kNmとの間の安定化モーメントを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載のアクスルサスペンション。 5. 前記4点リンク機構(4)の車両車体側の前記ジョイント(5,6)の間隔寸法が300mmと700mmとの間である、請求項1から4までのいずれか1項記載のアクスルサスペンション。 6. 前記4点リンク機構(4)の車両アクスル側の前記ジョイント(7,8)の間隔寸法が300mmと700mmとの間である、請求項5記載のアクスルサスペンション。 7. 前記4点リンク機構(4)の車両車体側の前記ヒンジと車両アクスル側の前記ジョイントとの間隔寸法が300mmと1000mmとの間である、請求項5記載のアクスルサスペンション。」 2.引用例とその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特表平10-503989号公報(公表日 平成10年(1998)4月14日; 以下、「第1引用例」という。)、実願昭63-104003号(実開平2-25304号)のマイクロフィルム(以下、「第2引用例」という。)には、次の発明及び技術事項が記載されている。 (1)第1引用例 イ)「本発明は,請求項1の上位概念に記載した車両特に商用車の剛性車軸の懸架装置に関する。」(第4頁第3行〜同頁第4行) ロ)「車両車軸1は,両方の車両側で車両縦中心から著しい間隔をおいて縦揺れ止め2及び3によって,かつ車両中心のところで縦揺れ止めに対して高さ位置をずらせて配置されている4点揺れ止め4によって,車両上構と結合されている。車両上構は図1〜図3においては,その一部を概略的に示されている。図1〜図3においては,図面を見やすくするために,4点揺れ止めは単に一方の側でシャシー12に結合されている。縦揺れ止め2及び3の枢着結合部は車両車軸1の下方に存在するのに対し,4点揺れ止め4は車両車軸1の上方で縦揺れ止め2及び3とは異なった高さ水準に配置されている。すべての枢着結合部はカルダン継ぎ手状に可動に構成されていて,有利には玉継ぎ手から成っている。図1〜図3の実施例における4点揺れ止め4は2つの頑丈な枢着アーム9及び10から成り,これらの枢着アームは,ねじれ可能に構成されている面状支持部材11によって互いに固く結合されており,この場合面状支持部のねじれは規定された特性曲線に従って行われる。面状支持部材11を有する枢着アーム9及び10から形成されている枠構造体は,枢着アーム9及び10の一方の端部に固定されている枢着部5及び6によって車両シャシーに取り付け可能であり,かつ,枢着アーム9及び10の他方の端部に配置されている枢着部7及び8によって車両車軸1若しくは車両車軸に結合されている支持体1.1に取り付けられる。」(第6頁第7行〜同頁第24行) ハ)「図4〜図10は4点揺れ止め4の種々の構成を示す。」(第7頁第4行) ニ)「同じような結果は,図5に示したような上方から見てX形の4点揺れ止めによっても達成することができる。X形の十字体のアーム端部には,シャシーに取り付けるための枢着部5及び6並びに車両車軸に取り付けるための枢着部7及び8が配置されている。アームの横断面形状はその都度の条件に適合せしめられ,例えば図面に示すような複T字形にしたり,あるいは中空成形体にすることができる。4点揺れ止めのためには種々の材料を使用することができる。」(第7頁第17行〜同頁第23行) 第1引用例に記載のものにおいて、4点揺れ止め4は、上記記載事項ニ及び図5の記載並びに車両シャシーの揺れ止めという機能に照らせば、全体として一体構造の成形体として形成されたものであって、そのアームが曲げ支持体であるものと認められる。 よって、上記記載事項イ〜ニ及び図3,5の記載を総合すると、第1引用例には、 「車両車軸1のための懸架装置であって、車両車軸1を案内するために各車両側にて、それぞれほぼ同じ高さに車両縦方向に延びる、車両車軸1を垂直運動可能にシャシー12に結合する少なくとも1つの縦揺れ止め2,3が配置され、かつ車両車軸1の上側にて、一方では車両車軸1にかつ他方ではシャシー12に枢着結合部により結合された4点揺れ止め4が配置されており、該4点揺れ止め4が、ねじれ可能な十字体として、車両横方向で相互に間隔を有するそれぞれ2つの枢着部5,6;7,8を介して、一方では車両車軸1にかつ他方ではシャシー12に結合されている形式のものにおいて、全体として一体構造の成形体として形成された前記4点揺れ止め4のアームが曲げ支持体である、車両車軸1のための懸架装置。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 (2)第2引用例 ホ)「本考案は、……アーム部の剛性と破壊挙動とをコントロールするようにした自動車のサスペンションアームに関する。」(第1頁第14行〜第2頁第1行) ヘ)「作為的に強度的に他の部分に比較して弱い部分を設けて、アーム部の破壊挙動をコントロールするようにしたものが一般に知られている。」(第3頁第17行〜同頁第20行) ト)「縁石等への衝突の過大な衝撃に対しては、先ずリブが破断し、しかる後、開口部の両側面を座屈させることによって衝撃エネルギを有効に吸収することができる。また、リブの亀裂又は破断は、サスペンションアームの交換を促すウォーニング作用を果たす。」(第6頁第1行〜同頁第6行) チ)第1図には、3点リンク機構のサスペンションアームが記載されているものと認められる。 3.対比 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比するに、引用発明の「車両車軸1」、「懸架装置」、「シャシー12」、「縦揺れ止め2,3」、「枢着結合部により結合された」、「4点揺れ止め4」及び「枢着部5,6;7,8」は、それぞれ本願発明の「車両のリジッドアクスル」又は「車両アクスル(1)」、「アクスルサスペンション」、「車両車体」、「縦リンク(2,3)」、「ヒンジ結合された」、「4点リンク機構(4)」及び「ジョイント(5,6),(7,8)」に相当するとともに、引用発明の「成形体」は、「成形体」である点において、本願発明の「鍛造品」と共通するから、両者は、 「車両のリジッドアクスルのためのアクスルサスペンションであって、車両アクスルを案内するために各車両側にて、それぞれほぼ同じ高さに車両縦方向に延びる、車両アクスルを垂直運動可能に車両車体に結合する少なくとも1つの縦リンクが配置されかつ車両アクスルの上側にて、一方では車両アクスルにかつ他方では車両車体にヒンジ結合された4点リンク機構が配置されており、該4点リンク機構がねじれ可能な十字体として、車両横方向で相互に間隔を有するそれぞれ2つのジョイントを介して、一方では車両アクスルにかつ他方では車両車体に結合されている形式のものにおいて、全体として一体構造の成形体として形成された前記4点リンク機構のアームが曲げ支持体である、車両のリジッドアクスルのためのアクスルサスペンション。」 の点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、4点リンク機構(4)は、鍛造品として形成されたものであって、そのアームがほぼ方形の横断面を有する曲げ支持体であるのに対し、引用発明では、4点揺れ止め4は、成形体であってそのアームが曲げ支持体であるものの、鍛造品として形成され、かつ、そのアームがほぼ方形の横断面を有するのかが明らかではない点。 [相違点2] 本願発明は、4点リンク機構(4)のアームの1つが目標破断個所を有しているのに対し、引用発明では、そのような構成を有していない点。 4.当審の判断 [相違点1について] まず、一般に、サスペンションの分野において、サスペンション部品を全体として一体構造の鍛造品として形成することは、従来周知の技術事項である(例えば、特開昭62-166044号公報、特開平3-216227号公報、特開平6-571号公報、又は、特開平7-214222号公報参照)。また、4点リンク機構(4)のアームの横断面について、その形状を好適化する程度のことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項に過ぎない(本願発明のごとく「ほぼ方形」にしようと、或いは、多角形や円形といった「ほぼ方形」以外の形状にしようと、その形状の相違によって格別の技術的意味を見いだすことはできない。)。 してみれば、引用発明において、4点揺れ止め4を鍛造品として形成するとともに、そのアームの横断面の形状を「ほぼ方形」にするよう構成することは、当業者ならば容易に想到し得たことといえるから、上記相違点1に係る本願発明の構成に格別な困難性を見いだすことはできない。 [相違点2について] 第2引用例には、上記記載事項ホ〜チの記載に照らせば、アームの破壊挙動をコントロールするために、アームに目標破断箇所を有する3点リンク機構のサスペンションアームが記載されているものと認められる。 そして、サスペンションのリンク機構は、その形式(例えば3点リンク機構や4点リンク機構)に関わらず、そのアームに負荷が作用するものである以上、3点リンク機構における破壊挙動をコントロールするための構成を4点リンク機構に適用することに格別の困難性は認められない。 してみれば、引用発明の4点揺れ止め4のアームに、第2引用例に記載の発明を適用して、目標破断箇所を有するように構成することは、当業者ならば容易に想到し得たことといえるから、上記相違点2に係る本願発明の構成に格別な困難性を見いだすことはできない。 なお、審判請求人は、審判請求書において、第2引用例に記載の3点リンク機構は、4点リンク機構のごとく車両の揺動安定化を可能にするものではないことから、本願発明が引用発明と第2引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨主張している。しかしながら、審判請求人の主張する3点リンク機構と4点リンク機構の機能上の差異が、引用発明と第2引用例に記載の発明とを組み合わせる際の阻害要因になり得るものとは認められないから、審判請求人の上記主張は採用できない。 そして、本願発明の効果も、引用発明、第2引用例に記載の発明及び周知技術から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、第2引用例に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-07 |
結審通知日 | 2006-04-13 |
審決日 | 2006-04-25 |
出願番号 | 特願平11-556036 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増岡 亘 |
特許庁審判長 |
鈴木 久雄 |
特許庁審判官 |
平瀬 知明 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 車両のリジッドアクスルのためのアクスルサスペンション |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |