• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1144351
審判番号 不服2003-21518  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-04-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-06 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 平成 7年特許願第273538号「追記型CD作成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 4月 4日出願公開、特開平 9- 91706〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成7年9月28日に出願されたものであって、平成15年10月1日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされ、平成15年11月6日付けで特許法第121条第1項の審判が請求され、平成15年11月26日付けで手続補正書(以下「本件補正」という。)が提出されたものである。


II.平成15年11月26日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成15年11月26日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の内容
本件補正による補正内容は、特許請求の範囲において、本件補正前、
「【請求項1】 CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを複数選択するデバイス選択手段と、
前記デバイス選択手段によって選択された複数のデバイスから書き込むデータを選択するデータ選択手段と、
前記データ選択手段によって選択されたデータに基づいて前記CD-Rのフォーマット情報を作成するフォーマット情報作成手段と、
前記フォーマット情報に基づいて前記選択されたデータをフォーマットしてCDイメージを作成するCDイメージ作成手段と、
前記CD-Rに、前記CDイメージを書き込むデータ書き込み手段と、
データの書き込み中のシステムトラブル情報を記録する記録手段、とを備えたことを特徴とする追記型CD作成システム。
【請求項2】 ・・・(省略)・・・
【請求項3】 ・・・(省略)・・・
【請求項4】 ・・・(省略)・・・」
としていたものを、
「【請求項1】 CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを一度に複数選択するデバイス選択手段と、
前記デバイス選択手段によって選択された複数のデバイスから書き込むデータを選択するデータ選択手段と、
前記データ選択手段によって選択されたデータに基づいて前記CD-Rのフォーマット情報を作成するフォーマット情報作成手段と、
前記フォーマット情報に基づいて前記選択されたデータをフォーマットしてCDイメージを作成するCDイメージ作成手段と、
前記CD-Rに、前記CDイメージを書き込むデータ書き込み手段と、
データの書き込み中のシステムトラブル情報を記録する記録手段、とを備えたことを特徴とする追記型CD作成システム。
【請求項2】 ・・・(省略)・・・
【請求項3】 ・・・(省略)・・・
【請求項4】 ・・・(省略)・・・」
と、デバイス選択手段について『一度に』との構成要件を付加するものである。また、発明の詳細な説明は、段落番号【0025】において、上記【請求項1】の補正内容に整合させる内容のものである。

2.補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、CD-Rに書き込むデータを格納している、デバイスを複数選択するデバイス選択手段について、『一度に』との構成を付加するもので、形式的には一応のデバイス選択の仕方の限定であるから、特許法17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲を減縮するものに該当する。

3.独立特許要件
次に、本件補正後の発明が、一応の減縮と判断して、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。
(3-1)本願補正後発明
本件補正の各請求項に係る発明は、その特許請求の範囲の各請求項に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は上記1.で記載した以下のとおりのものである。
「CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを一度に複数選択するデバイス選択手段と、
前記デバイス選択手段によって選択された複数のデバイスから書き込むデータを選択するデータ選択手段と、
前記データ選択手段によって選択されたデータに基づいて前記CD-Rのフォーマット情報を作成するフォーマット情報作成手段と、
前記フォーマット情報に基づいて前記選択されたデータをフォーマットしてCDイメージを作成するCDイメージ作成手段と、
前記CD-Rに、前記CDイメージを書き込むデータ書き込み手段と、
データの書き込み中のシステムトラブル情報を記録する記録手段、とを備えたことを特徴とする追記型CD作成システム。」(以下「本願補正後発明」という。)

(3-2)刊行物について
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された刊行物である、Ash Pahwa,「CD-Recordableバイブル」,ソフトバンク株式会社,1994年9月10日,p.163-169(以下「刊行物」という。)には、PC用プレマスタリングとCD-WOソフトウエア―インハウスパブリッシングソフトの評価について、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)
(i)「本シリーズの記事ではPC用の5つのディスクトップ・プレマスタリングソフトパッケージの特徴と機能について述べています。・・・(中略)・・・。また,新しいCD Write-Once(CD-WO)レコーダに関連して,これらプレマスタリングソフトの機能や,PC,・・・(中略)・・・等に使用するためのマルチプラットフォームのCD作成のような特別な機能についても指針を与えています。」(第163頁下から第11行目〜下から第2行目)
(ii)「第3の要素はCD-ROMに含まれるデータの集まりです。これらはローカルハードディスク,CD-ROM,またはリモートディスク上に配置されているかもしれません。理論的には,ランダムアクセスファイルのデバイスとしてコンピュータシステムから認識されるどのデバイスにもアクセスは可能です。プレマスタリングシステムを評価するときに行う標準的な操作手順を考えておくことは重要なことです。もし,さまざまなデバイスからファイルを集めてくるなら,CD-WOレコーダに直接書き込むことができないかもしれません。」(第167頁第3行〜第10行目)
(iii)Fig.1には「『・プレマスタリング,・シミュレート,・検証』部と、『特別な指示』部と、『ボリューム特性(ID,ディレクトリ数等)』『CD-ROM上に含められるファイルのリスト』『データファイル(磁気ディスク,CD,ネットワーク上のディスク)』の各部と、『ログエラー,統計,エラー』部と、『CD-WO』の記録媒体部と、上記『・プレマスタリング,・シミュレート,・検証』部での処理である『物理イメージ』『仮想イメージ』等からなるCD-ROMプレマスタリング構成」(第166頁)の構成がある。
(iv)「標準的な出力形態は,ディスク(disk)やテープあるいはCD-WOレコーダに書き込める物理イメージです。「物理イメージ」という語は,CD-ROMやCD-WOのデータの中身を(バイト単位で)含む大きなファイルのことです。プログラムの中には,ディスクやテーブルにイメージファイルを生成するだけで,イメージファイルをCD-WOにコピーするためには,他のプログラムを必要とするものであります。これではローカルにCDを作成するのに2倍の時間がかかります。評価パッケージの中には仮想パブリッシングという,とても役に立つ機能がありました。これはデータをバイト単位でコピーする代わりに,データファイルへのポインタを持った「仮想イメージを」を生成するものである。これはディスクレイアウトのテストを始めるまでの時間を大幅に短縮します。「仮想イメージ」はCDをシミュレートするのに使うことができ、データファイルを実際に再コピーすることなくディスク構成を変更することができます。
シミューレートでは,CD-WOやマスターディスクを制作する前にアプリケーションをテストすることができます。CD-WOレコーダにアクセスしないのなら,これは重要な機能です。我々の経験では,最高の「シミュレーション」とは,実際のユーザから彼ら自身のコンピュータを使用してテストするためにCD-WOのコピーを作ることです。これにより,必要なメモリ容量,機器の依存性,そしてディスクレイアウトを直接テストできます。しかし,いくつかのプレマスタリングソフトパッケージはワンオフ(One-Off)のCD-WOのユーザテストでは利用できないシミュレーション機能を提供するものもあります。CD-ROM装置のパフォーマンスはソフトウエアでシミュレートすることができ,ファイル使用の統計が保存されます。いくつかのプログラムでは,シミュレーション中に集めた利用統計をもとにCDディレクトリ構造を最適化するものもあります。」(第168頁下から第5行〜第169頁第20行目)

以上の記載を、特に、Fig.1 を参照して総合整理すると、刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
「ローカルハードディスク(磁気ディスク),CD-ROM,またはリモートディスク上に配置されている、データの集まり(データファイル)と、
上記さまざまなデバイスからファイルを集めてきて、特別な指示により仮想イメージを作成してCD-WOに書き込むCD-WOレコーダとともに、
ログファイル,エラーを出力する、
CD-ROMプレマスタリング構成」(以下「刊行物発明」という。)
が記載されている。

(3-3)対比・判断
[対比]
(a)刊行物発明における「ローカルハードディスク(磁気ディスク),CD-ROM,またはリモートディスク」については、Fig.1でデータファイル(磁気ディスク,CD,ネットワーク上のディスク)としての記載があり(上記(iii)参照)、CD-WOレコーダを介してCD-WOにデータを書き込むフローからデータを格納しているデバイスと解されるもので、本願補正後発明の「データを格納しているデバイス」に、また、Fig.1の上記「CD-WO」は追記型CDのことで「CD-R」に相当するものであるから、Fig.1を参酌しての上記刊行物発明の構成は、本願補正後発明の「CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイス」に相当する。
(b)刊行物発明における「さまざまなデバイスからファイルを集めてきて、特別な指示により仮想イメージを作成してCD-WOに書き込むCD-WOレコーダ」であるが、Fig.1を参照すると『・プレマスタリング,・シミュレート,・検証』部を含んでのCD-ROMプレマスタリング全体構成はコンピュータシステムである(上記(ii)参照)。そして、上記記載の構成は、さまざまなデバイスからファイルを集めてくるもので、その際に適宜デバイスを選択する手段とデバイスの中からファイルを選択して集める手段、つまりデータの選択手段をもっていることは自明と理解されるから、これは本願補正後発明の「デバイスを選択するデバイス選択手段」及び「選択されたデバイスから書き込むデータを選択するデータ選択手段」に対応する。
(c)刊行物発明は、「ローカルハードディスク(磁気ディスク),CD-ROM,またはリモートディスク」等のデバイスから、CD-WOの媒体に利用できるファイルシステムに整合させるようにフォーマットした仮想イメージ(CDイメージ)を作成し、この仮想イメージをCD-WOに書き込みを行うものであり(上記(iv)参照)、「フォーマット情報作成手段」及び「CDイメージを作成していく手段」を備えることは当然のことである。したがって、刊行物発明には、本願補正後発明の「選択されたデータに基づいてCD-Rのフォーマット情報を作成するフォーマット情報作成手段」及び「フォーマット情報に基づいて選択されたデータをフォーマットしてCDイメージを作成するCDイメージ作成手段」を実質的に包含していると認められる。
(d)刊行物発明の「ログファイル,エラーを出力する」ことについては、ログファイルはデータ書き込み中のCD-ROMプレマスタリングのシステムトラブル情報を少なくとも内在することは明らかであるし、当該情報を記録していくことも後で検証していく必要性を考えれば記憶手段の存在は自明程度のものであるから、これは本願補正後発明の「データの書き込み中のシステムトラブル情報を記録する記録手段」に実質的に相当する。
(e)刊行物発明の「CD-ROMプレマスタリング構成」は本願補正後発明の「追記型CD作成システム」に相当する。

結局、本願補正後発明と刊行物発明との[一致点]と[相違点]は以下のようになる。

[一致点]
「CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを選択するデバイス選択手段と、
前記デバイス選択手段によって選択されたデバイスから書き込むデータを選択するデータ選択手段と、
前記データ選択手段によって選択されたデータに基づいて前記CD-Rのフォーマット情報を作成するフォーマット情報作成手段と、
前記フォーマット情報に基づいて前記選択されたデータをフォーマットしてCDイメージを作成するCDイメージ作成手段と、
前記CD-Rに、前記CDイメージを書き込むデータ書き込み手段と、
データの書き込み中のシステムトラブル情報を記録する記録手段、とを備えたことを特徴とする追記型CD作成システム。」

[相違点]
イ.デバイスの選択手段であるが、本願補正後発明のものは「(デバイスを)一度に複数(選択)」というものであるが、刊行物発明のものにはデバイスを一度に複数選択の構成について明確な言及がされてない点。
ロ.データの選択手段であるが、本願補正後発明のものは「(選択された)複数の(デバイスから書き込むデータを選択)」という上記イ.に関連してのものであるが、刊行物発明にそこまでの開示がない点。

[判断]
上記、相違点イ.ロ.について、
(a)先ず、上記相違点イ.は補正で追加された事項である。この『一度に』の補正の根拠等について、請求人は審判請求の理由において「(b)補正の根拠の明示 本手続補正書と同時に提出の明細書の手続補正書においては、「CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを一度に複数選択するデバイス選択手段と、」と「一度に」という語句を加入する補正を行ったが、その補正の根拠は、[0002]、[0003]、[0019]、[0021]、[0022]、[0034]、[0039]、[0040]、[図2]等の記載である。」(審判請求書:(3)(b)参照)と主張する。
しかしながら、上記各段落のうちで【0021】までは従来例、【0022】は関連発明の提示、【0034】【0039】【0040】は本件補正後発明の追記型CDのものであるが、「複数個の選択が可能である」「書き込みデータ格納デバイス4a〜4cが選択された」等までで、「一度に複数(選択)」との『一度に』なる文言の直接的な記載は見当たらない。
さらに、上記従来の追記型CDの構成としてある上記主張の段落である「【0002】従来から、追記型CD作成システムは知られている。この追記型CD作成システムを使用する場合に、一般的に、書き込みたいデータは、フロッピーディスクや光磁気ディスク、ハードディスク等のデータ格納デバイスに分散していることが多いが、CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを1つ選択する手段しか設けられていない。
【0003】しかも、CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスの1つを選択すると、その後は、そのCD-Rへのデータの書き込みが終了するまで、別のデータ格納デバイスを選択することができない。そのため、1つのCD-Rに書き込みたいデータを複数のデバイスから対話形式で選択することは不可能であった。」と、本願補正後発明の特徴を従来例の視点から比較しての記載がある。しかし、デバイスの1つを選択する手段について『デバイスを複数選択する手段を設けることにより』等までは可能であっても『一度に』の構成(文言)まで導きだすことはできない。さらに、記載されているといえる程度の示唆事項も見当たらない。
また、『一度に』なる構成要件が複数選択するデバイス選択手段に加えて特段の意義ある技術思想を内在させるものであれば、上記2.で一応の限定と認定したが、新規事項追加の疑義が生ずる。
(b)次に、上記(a)の指摘事項を含め、上記課題を解消する『デバイスを複数選択する手段』の構成要件に対応する実施形態の開示であるが、本願明細書を総合的に参酌しても明確な把握はできない。
即ち、従来技術の課題として「【0002】【従来の技術】従来から、追記型CD作成システムは知られている。・・・CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを1つ選択する手段しか設けられていない。
【0003】しかも、CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスの1つを選択すると、その後は、そのCD-Rへのデータの書き込みが終了するまで、別のデータ格納デバイスを選択することができない。そのため、1つのCD-Rに書き込みたいデータを複数のデバイスから対話形式で選択することは不可能であった。」としていたものを、「【0022】このような不都合を解決するために、この発明の発明者は、先に、データの書き込み操作の簡略化、迅速化のために、CD-Rに書き込むデータが格納されているデバイスを複数選択する手段を備えた追記型CD作成システムを提案している(特願平6-311245号、発明の名称「追記型CD作成システム」)。このCD-Rに書き込むデータが格納されているデバイスを複数選択する手段を設ければ、データの書き込み操作の簡略化、迅速化が可能になる。」及び「【0034】この図1では、3個の書き込みデータ格納デバイス4a〜4cを備えている場合を示しており、・・・これらの各書き込みデータ格納デバイス4a〜4cは、先に述べたキーボード7あるいはマウス8からの指示によって、複数個の選択が可能である。」と記載する。しかし、上記前提とする特願平6-311245号(発明の名称「追記型CD作成システム」)のものにおいても具体的な実施の開示はないし、【0034】は本願補正後発明の内容を繰り返すものであって、複数選択する手段について何ら具体的な実施手段の開示はない。また、「一度に」との構成に関しても「複数(選択)」の段階でどのような形態で関係するものかも開示がない。

(c)要するに、相違点の構成である『(デバイスを)一度に複数(選択)』は、上記(a)(b)の疑義を含むもので、『一度に』の直接的記載はなく、『複数(選択)』も従来自明の構成のものから如何なる手法をもってデバイスを複数選択する手段を具現化可能にしているのか、容易に理解できない。追記型CD作成システムに如何に採用できるものかも含め不明で、従来課題を解消していく具体的な手段の記載はないというべきものである。したがって、単に願望的な事項を記載しているものと解釈し、特段意義ある構成要件とみることはできない。
仮に、上記事項が願望的ではないとするものであれば、その実施可能を裏付ける程度の開示は当然必要である。

(d)上記(c)に関連して、面接記録、及び、応対記録がある。これをみると、Windows95以降で登場したファイルやフォルダの管理ツールであるエクスプローラを意識することで実施可能な記録があるものの、係る構成の記載は本願明細書には全くないもので、実施可能性を担保するものでもなく採用できない。

(e)ところで、刊行物発明であるが、CD-WOへ書き込むデータを、データファイル(磁気ディスク,CD,ネットワーク上のディスク)からデータを集めて仮想イメージを作成し、CD-WOに書き込むものである。したがって、デバイスを一度に複数選択する手段が技術的に効果的であることの着想は容易に想到できる。
そして、異なる複数のディスクを複数選択すること自体は、例えば、ディスクアレイ等の技術で周知であるから、上記相違点イ.ロ.の構成は、上記(a)〜(d)に記載のとおり、具体的開示のない願望的な事項であることも併せて参酌すると、当業者が適宜容易に想到できるものと言わざるを得ない。

なお、上記各相違点で『一度に』の文言の直接的記載はないこと、『(デバイスを)複数(選択する手段)』が従来例との比較で、複数選択が可能になったことの技術的な実施の開示がないことは上記した通りである。さらに、請求人は審判請求の理由で「(6)本願発明は上記の構成により、・・・(中略)・・・。さらに、複数のデバイスを一度に選択するので、一つのデバイスに書き込みデータの全てを一旦保存することなくCDイメージを作成することができる。したがって、本発明によれば各デバイスから集めた書き込みデータを格納するためのデバイスがなくても複数のデバイスに保存されているデータを(CD-Rの記録容量を無駄にすることなしに)CD-Rに書き込むことができる。」と『一旦保持することなく』実施できる記載内容であるが、これは本願明細書の【0033】【0035】等の記載内容と相違した作用効果を達成しようとするもので、仮にこのとおりであるとすれば、上記『一度に』についての補正はさらに新規事項追加の疑義が想定されるもので、採用できない。

結局、本願補正後発明は、刊行物に記載された発明及び周知ないし自明の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.本件補正についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III.本願発明
1.本願発明
平成15年11月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項に係る各発明は、平成15年5月15日付け手続補正で補正された特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「CD-Rに書き込むデータを格納しているデバイスを複数選択するデバイス選択手段と、
前記デバイス選択手段によって選択された複数のデバイスから書き込むデータを選択するデータ選択手段と、
前記データ選択手段によって選択されたデータに基づいて前記CD-Rのフォーマット情報を作成するフォーマット情報作成手段と、
前記フォーマット情報に基づいて前記選択されたデータをフォーマットしてCDイメージを作成するCDイメージ作成手段と、
前記CD-Rに、前記CDイメージを書き込むデータ書き込み手段と、
データの書き込み中のシステムトラブル情報を記録する記録手段、とを備えたことを特徴とする追記型CD作成システム。」(以下「本願発明」という。)

2.刊行物
これに対して、原査定で引用された刊行物及び記載された事項は、上記したとおりである(上記II.〔理由〕3.(3-2)刊行物について)。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.で検討した本願補正後発明から、デバイス選択手段について『一度に』との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正後発明が、前記「II.〔理由〕3.(3-3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明も、同様の理由により刊行物に記載された発明及び周知ないし自明の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に記載された発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができないとしてした原査定は妥当なものであり、本願はその余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-04 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2006-08-11 
出願番号 特願平7-273538
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 片岡 栄一
吉村 伊佐雄
発明の名称 追記型CD作成システム  
代理人 伊東 忠彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ