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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1144383
審判番号 不服2004-21654  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-10-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-20 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 特願2000- 87111「移動テーブル装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 5日出願公開、特開2001-274223〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成12年3月23日の特許出願であって、同15年12月4日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同16年2月6日に意見書の提出とともに明細書について手続補正がされたが、同16年9月15日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同16年10月20日に本件審判の請求がされ、その後、同16年11月15日及び同16年11月17日付けで明細書について再度手続補正(以下、平成16年11月15日及び同16年11月17日付け手続補正を併せて「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正するものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前の請求項1
【請求項1】 固定ベースと、この固定ベースに第1のガイドを介して往復移動自在に載置される中間テーブルと、この中間テーブルに第2のガイドを介し往復移動自在に載置され、かつ往復移動方向が中間テーブルの往復移動方向と交差する方向になっているトップテーブルと、このトップテーブルに設ける計測用ミラーを有する移動テーブルにおいて、
前記トップテーブルは、前記第2のガイドを保持する移動テーブルと、この移動テーブルの上に重なり、かつ試料載置用の試料テーブルを有するとともに移動テーブルと試料テーブルとをボルトで連結し、移動テーブルの弾性係数が該ボルトの弾性係数に比べて大きいことを特徴とする移動テーブル装置。

(2)補正後の請求項1
【請求項1】 固定ベースと、この固定ベースに第1のガイドを介して往復移動自在に載置される中間テーブルと、この中間テーブルに第2のガイドを介し往復移動自在に載置され、かつ往復移動方向が中間テーブルの往復移動方向と交差する方向になっているトップテーブルと、このトップテーブルに設ける計測用ミラーを有する移動テーブルにおいて、
前記トップテーブルは、前記第2のガイドを保持する移動テーブルと、この移動テーブルの上に重なり、かつ試料載置用の試料テーブルを有するとともに移動テーブルと試料テーブルとをボルトで連結し、移動テーブルの弾性係数を該ボルトの弾性係数に比べて大きくするとともに、前記移動テーブルが変形容易なように中央部から離して前記移動テーブルに溝部を設けたことを特徴とする移動テーブル装置。

2.補正の適否
上記特許請求の範囲についての補正は、移動テーブルについて「移動テーブルが変形容易なように中央部から離して前記移動テーブルに溝部を設けた」ことを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかである。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である米国特許第5101301号明細書(以下、「刊行物」という。)には以下の事項が記載されている。

ア.第1欄第26〜40行
「X・Y軸線方向の移動・位置決めを行う移動テーブル部において、FIG.1及2に示す如く、ベース10上にXテーブル14が設けられ、該Xテーブル14はガイドウエイ12を介してX軸線方向に直線的に往復移動できる。このXテーブル14上にYテーブル5が設けられ、ガイドウエイ16を介して該X軸線方向と直交するY軸線方向に往復移動できる。このYテーブル18の上面にホルダーの如きワークピース固定具20が設けられている。そしてこの固定具20にワークピースWを載置したのち、前記Xテーブル14及びYテーブル18が駆動手段(図示せず)により各々ガイドウエイ12,16に沿って定められた方向に移動することで、該固定具20に載置した被処理物WをX-Y両軸線方向に移動できるようになっている。」

イ.第7欄第32〜51行
「FIG.13及び14を参照すれば、本発明の第3実施例が示される。同図において、前述したFIG.1及び2と同一構成をなすものには同一符号を付してこれらの部材の詳細な説明は省略する。Yテーブル18の上面の中央部に円形の溝50を形成する。この溝50によって区画された島部(部分的結合部)52上に取付台56をボルト54のような締結部材で固定し、この取付台56上にL形レーザミラー22とワークピース固定具20を載置する。溝50は、Yテーブル18の上面がテーブルの移動によって変形し伸縮しても、島部52内に伸縮の影響をしゃ断する役目を持っている。Yテーブル18の上面と取付台56の隙間Gは、Yテーブル18が変形しても互に接触しない程度とし、また仕切用の溝50の深さは、締結部材54のネジ込み深さより若干深目とする。」

ウ.第7欄第52行〜第8欄第9行
「ワークピース固定具20とレーザミラー22をX・Y軸線方向に移動せしめる際に、各テーブルのガイドウエイ12,16の加工精度や各テーブル14,18のガイドウエイ取付面の加工精度やテーブル移動による重量バランスの変化やガイドウエイ12,16における摩擦熱等から、プリロード変動等が起る。実施例の装置では、Yテーブル18にZ方向に最大歪0.2μm程度の変化が発生したとすると、その表面にはプリロード変動等の結果として前記(1)式で求められたと同様に±0.1μm程度の伸縮が生じる。しかし該Yテーブル18の島部52内は、溝50によりしゃ断されて伸縮の歪は発生しない。Yテーブル18の上面が伸縮しても、その影響を受けない島部52上に取付台56を介して取付け固定されたレーザミラー22とワークピース固定具20は、伸縮の歪を受けない。したがって、レーザミラー22と被処理物固定具20の相対位置は変動することなく、レーザミラーの平面度は悪化しない。その結果、XおよびY軸方向の移動の位置測定値に誤差を生じることなく、正確な位置決め制御が可能となる。」

エ.FIG.13及び14の記載によれば、溝50が、中央部から離して前記Yテーブル18に設けられることが看取できる。

これらの記載事項を本件補正発明に照らして整理すると、刊行物には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「ベース10と、このベース10にガイドウエイ12を介して往復移動自在に載置されるXテーブル14と、このXテーブル14にガイドウエイ16を介し往復移動自在に載置され、かつ往復移動方向がXテーブル14の往復移動方向と交差する方向になっているYテーブル18と、Yテーブル18上の取付台56に設けるレーザミラー22を有する移動テーブルにおいて、
Yテーブル18はガイドウエイ16を保持しており、前記取付台56は、Yテーブル18の上に重なり、ワークピース固定具20を載置するとともに、Yテーブル18と取付台56とをボルト54で連結し、Yテーブル18には中央部から離して溝50を設けた移動テーブル装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ベース10」は、本件補正発明における「固定ベース」に相当し、以下同様に「ガイドウエイ12」は「第1のガイド」に、「ガイドウエイ16」は「第2のガイド」に、「Xテーブル14」は「中間テーブル」に、「レーザミラー22」は「計測用ミラー」に、「溝50」は「溝部」に、「ワークピース」は「試料」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明においてYテーブル18と取付台56とは、ボルト54で連結され取付台56上にワークピース(試料)が載置されることから、トップテーブルということができ、前記「Yテーブル18」及び「取付台56」はそれぞれ、本件補正発明における「移動テーブル」および「試料テーブル」に相当することが明らかである。
また、引用発明において、Yテーブル18に中央部から離して溝50が設けられることによりYテーブル18の変形が容易となることは明らかである。
したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。
[一致点]
「固定ベースと、この固定ベースに第1のガイドを介して往復移動自在に載置される中間テーブルと、この中間テーブルに第2のガイドを介し往復移動自在に載置され、かつ往復移動方向が中間テーブルの往復移動方向と交差する方向になっているトップテーブルと、このトップテーブルに設ける計測用ミラーを有する移動テーブルにおいて、
前記トップテーブルは、前記第2のガイドを保持する移動テーブルと、この移動テーブルの上に重なり、かつ試料載置用の試料テーブルを有するとともに移動テーブルと試料テーブルとをボルトで連結し、前記移動テーブルが変形容易なように中央部から離して前記移動テーブルに溝部を設けた移動テーブル装置。」である点。
[相違点]
本件補正発明では、「移動テーブルの弾性係数を該ボルトの弾性係数に比べて大きくする」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点についての検討
本件補正発明における「移動テーブルの弾性係数を該ボルトの弾性係数に比べて大きくする」ことについて、本件明細書の第6頁第22〜27行に、
「次ぎに図9に示す他の実施例について説明する。
この実施例は、弾性体として平行板ばねを使用しないものである。
図に示すように、スペーサ65を介してボルト70によりY2テーブル21とY1テーブル20を連結した構成において、Y2テーブル21の弾性係数がボルト70の弾性係数に比べて大きい場合は、ボルト70が弾性体の役割を果たし、Y2テーブル21の変形をボルト70で吸収することが可能である。」と記載されている。
上記記載において、「Y2テーブル21」は、試料及びミラーが搭載される試料テーブルであるから(本件明細書第4頁第16〜17行参照)、本件補正発明における「移動テーブルの弾性係数を該ボルトの弾性係数に比べて大きくする」は、「試料テーブルの弾性係数を該ボルトの弾性係数に比べて大きくする」の誤記と認められる。(なお、移動テーブルには、「移動テーブルが変形容易なように中央部から離して前記移動テーブルに溝部を設けた」ことからみても、ボルトの弾性係数に比べて大きくされるのは移動テーブルでなく試料テーブルであることが明らかである。)
そして、計測ミラーが搭載される試料テーブルをできるだけ変形しにくい剛性の高い材料から構成すべきことは当業者が容易に理解できる事項であるから、試料テーブルの弾性係数をボルトの弾性係数に比べて大きいものとすることに困難性は見出せない。
また、たとえ、前記「移動テーブル」が誤記でなかったとしても、移動テーブルの弾性係数をボルトとの比較において大きなものに設定することも当業者が適宜採用することのできる設計的事項にすぎないものである。

そして、本件補正発明によってもたらされる効果も、引用発明から当業者であれば十分予測できる範囲内のものであって格別顕著なものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、その余の補正の要件について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1.本件発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1乃至3に係る発明は、平成16年2月6日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本件発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から「移動テーブルが変形容易なように中央部から離して前記移動テーブルに溝部を設けた」という事項を削除したものである。
そうすると、本件発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の2(4)で示したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-27 
結審通知日 2006-08-01 
審決日 2006-08-16 
出願番号 特願2000-87111(P2000-87111)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴沼 雅樹  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 豊原 邦雄
佐々木 正章
発明の名称 移動テーブル装置  
代理人 特許業務法人日東国際特許事務所  
代理人 小川 勝男  

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