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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N |
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管理番号 | 1144411 |
審判番号 | 不服2001-4201 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-11-01 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-03-19 |
確定日 | 2006-09-26 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第 38810号「嚢胞性線維症膜内外調節剤を含む新規な診断および治療方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年11月 1日出願公開、特開平 6-303978〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年3月5日を出願日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1990年3月5日、米国、1990年9月27日、米国、1990年11月15日、米国)とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年4月18日付手続補正書の、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「宿主細胞生存度を高めた嚢胞性線維症膜内外コンダクタンス調節剤(CFTR)にコーディングした核酸配列を含むDNA分子。」(以下、「本願発明」という。) 2.引用例 原査定の拒絶の理由に刊行物1として引用された本願優先日前に頒布された刊行物であるScience(1989)Vol.245p.1066-1073(以下、「引用例1」という。)には、第1068頁〜第1069頁の図面第2図とともに、 「重複するcDNAクローン(図2)の配列解析は、分子量が168,138ダルトンの1,480アミノ酸からなるポリペプチドを予測した。予測されたタンパク質の最も特徴的なことは、2つの繰り返しモチーフの存在であり、その各々は、膜を数回貫通する領域とATPと結合する折り畳み構造のコンセンサス配列に似た配列からなっている(図5、図6)。これらの特徴は、哺乳類多剤抵抗性P-糖タンパク質及び他の膜関連タンパク質(後述する)の特徴と驚くほど似ており、予測されたCF遺伝子産物は、膜を通しての物質(イオン)の輸送に関係しているとみられ、おそらく膜タンパク質スーパーファミリーの一員であると考えられる。」(第1070頁右欄第20行〜第32行)、と記載されている。 そして、第1068頁〜第1069頁の図面第2図には、CFTR遺伝子のコード領域以外の5´-、3´-フランキング配列を含めた全長のcDNA配列が、推定されるアミノ酸配列とともに記載され、24個のエクソン同士の結合位置が記載されている。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用例1に記載された事項を比較すると、引用例1には、CFTRにコーディングした核酸配列を含むDNA分子が記載されている点で本願発明と共通しているが、本願発明は、該核酸配列を含むDNA分子が宿主細胞生存度を高めたものであるのに対して、引用例1には、該核酸配列を含むDNA分子が宿主細胞生存度を高めたものであることは記載されていない点で、相違する。 以下、上記相違点について検討する。 本願明細書において、宿主細胞生存度を高めたDNA分子として具体的に記載されているのは実施例2であって、宿主細胞1個あたりのコピー数の少ないクローニングベクターにCFTR遺伝子を挿入したものであり、「宿主細胞生存率の別の増加は1個の宿主細胞当たりのコピー数をさらに減少させることにより達せられた。これはCFTRcDNAをプラスミドベクターであるpSC-3Zに変換させることにより得られる。pSC-3Zは低いコピー番号のプラスミドであるpLG338並びにアンピシリン抵抗性遺伝子およびpGEM-3Zのポリリンカーを用いて構成された。」と記載されている。 一方、ある種の遺伝子は、それらが存在すると宿主細胞である大腸菌の正常な生理状態が著しく損なわれるためコピー数の多いプラスミドにクローニングできないことが知られており、そのような遺伝子の例として、表面構造タンパク質たとえばompAや細胞の基本的代謝を制御するタンパク質たとえばpolAをコードする遺伝子がある。このような遺伝子をクローニングする1つの方法としてコピー数の少ないクローニングベクターを使用すること、及びプラスミドpSC101由来のプラスミドが低コピー数ベクターの1つであることは、本願優先日前既に周知の事柄であった(例えば、T.Hashimoto-Gotoh et al.Specific-purpose plasmid cloning vectors I.Low copy number,temperature-sensitive,mobolization-defective pSC101-derived containment vectors,Gene(1981)Vol.16,p.227-235、Neil G.Stoker,Versatile low-copy-number plasmid vectors for cloning in Escherichia coli,Gene(1982)Vol.18,p.335-341 参照。)。 してみると、CFTRタンパク質が表面構造タンパク質の一つである膜タンパク質であることが引用例1に記載されているから、その遺伝子であるCFTR遺伝子をクローニングする際、常用の宿主細胞である大腸菌にとって毒性があることを予測して、あるいは大腸菌を宿主細胞として通常のコピー数のクローニングベクターを用いて実際にクローニングしてみて、その結果毒性であったことを確認した場合に、上記周知の手法を適用して、クローニングベクターとして低コピー数のプラスミドベクターを用いてCFTR遺伝子を複製することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 そして、本願発明において奏せられる効果も、引用例1の記載及び上記周知の事柄から充分に予想できる程度のものである。 したがって、本願発明は引用例1に記載された事項及び本願優先日前の技術常識に基づいて、当業者が容易になし得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.付記 当合議体は、平成17年9月5日付審尋書により審判請求人に対して、上記の点について審尋すると共に、明細書の記載不備(特許法第36条第4項、第5項第2号及び第6項)についても指摘したが、請求人からは指定期間を過ぎても何らの応答もない。 5.むすび 以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-19 |
結審通知日 | 2006-04-25 |
審決日 | 2006-05-09 |
出願番号 | 特願平3-38810 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高堀 栄二 |
特許庁審判長 |
種村 慈樹 |
特許庁審判官 |
鵜飼 健 鈴木 恵理子 |
発明の名称 | 嚢胞性線維症膜内外調節剤を含む新規な診断および治療方法 |
代理人 | 松原 伸之 |
代理人 | 村木 清司 |