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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1144439
審判番号 不服2003-21478  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-05 
確定日 2006-09-29 
事件の表示 特願2000-566922号「回路担体における電気的構成部材の接続のための接続装置並びにその製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 2日国際公開、WO00/11755、平成14年 7月30日国内公表、特表2002-523881号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、1999年8月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年8月17日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成15年8月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年11月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年11月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)手続補正の内容
平成15年11月5日付けの手続補正(以下、「手続補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1を、
「工程(I)で誘電体からなる層の上面及び下面に、それぞれ1つの金属層を施与し、前記誘電体層をパターン化させ、誘電体を貫通する複数の導電性の接続部を形成して、前記上面及び下面の上の複数の接点を互いに接続させ、更に工程(II)で誘電体からなる少なくとも1つの別の層の上面および下面に、同様に1つのパターン化された金属層を施与し、貫通接続部を設け、上層の上面の接点と下層の下面の接点が導電的に接続するように、誘電体からなる層を互いに接続させ、予め処理された誘電体層を垂直に接続した後に、最も上側の層の上面の接触点と最も下側の層の下面の接触点との垂直な接続部が形成されることを特徴とする、構成部材の電気的接続のための接続装置の製造法。」
と補正することを含むものである。
即ち、手続補正は、「予め処理された誘電体層を垂直に接続した後に、最も上側の層の上面の接触点と最も下側の層の下面の接触点との垂直な接続部が形成される」という補正事項を含むものである。

(2)補正の適否の検討
そこで、手続補正によって補正された「予め処理された誘電体層を垂直に接続した後に、最も上側の層の上面の接触点と最も下側の層の下面の接触点との垂直な接続部が形成される」という補正事項が、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものか(特許法第17条の2第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2-1)当初明細書等の記載事項
当初明細書等には、「接続部」に関して、次のような事項が記載されている。
(a)「接触圧結合器(21)中に形成された複数の導電性の接続部(22)」「接点(25)は、接続部(22)を介して接続している」(特許請求の範囲の請求項1)
(b)「導電性の接続装置の(21)の上面(23)及び下面(24)の上にそれぞれ対応配置されている個々の接点(25)が、接続部(22)を介して接続している」(特許請求の範囲の請求項5)
(c)「導電性の圧縮接続装置(21)の上面(23)及び/又は下面(24)の上にそれぞれ並んで対応配置されている個々の接点(25)が、接続部(22)を介して互いに接続している」(特許請求の範囲の請求項6)
(d)「 導電性の接続装置(21)中の接続部(22)が、立体的回路系を有する」(特許請求の範囲の請求項7)
(e)「解消可能な接点おける少なくとも若干の接続部(22)が、導電性の圧縮接続装置(21)中の別の接続部(22)に対して対応配置されている」(特許請求の範囲の請求項9)
(f)「接続部(22)が、誘電体又は誘電体層のパターン化により、導電性層(26、27)の選択及びフォトシートの選択に応じて形成されている」(特許請求の範囲の請求項15)
(g)「接続部(22)が電気的メッキにより製造されている」(特許請求の範囲の請求項16)
(h)「b)電気的圧縮接続器中の複数の導電性の接続部の形成のための誘電体及び導電性層のパターン化」「各接点は、接続部を介して互いに接続されている」(特許請求の範囲の請求項17)
(i)「電気的接触圧結合器中に形成された複数の導電性の接続部」「接点は、接続部を介して接続している」(段落【0005】)
(j)「弾性の電気的接触圧結合器の内部の接続部は、例えばいわゆる「マイクロ-バイア技術」を用いて、例えばレーザーパターン化等によって製造することができる。」(段落【0009】)
(k)「弾性の電気的接触圧結合器の内部の個々の接続部の態様の種類及び方法、互いに重なる接続部の可能な結合並びに接続部と個々の接点との結合は、使用分野及び必要に応じて実施することができる。」(段落【0010】)
(l)「本発明によれば、それぞれ、電気的接触圧結合器の上面及び下面の上に対応配置されている個々の接点は、接続部を介して互いに接続されていてもよい。」「電気的接触圧結合器の上面及び下面の上の互いに向かい合っている位置で直接対応配置されているそれぞれの接点は、接続部を介して互いに接続されている。」「それぞれ、上面及び下面の上に位置を変えて互いに存在する接点を接続部を介して互いに接続することに意義があることもある。」(段落【0015】)
(m)「電気的接触圧結合器の上面及び/又は下面の上に、それぞれ並んで対応配置されている個々の接点は、接続部を介して互いに接続されていてもよい。」(段落【0016】)
(n)「有利に、電気的接触圧結合器中の各接続部は、立体的回路系を形成することができる。」(段落【0017】)
(o)「少なくとも若干の接続部が、解消可能な接続において、電気的接触圧結合器中の別の接続部に対して対応配置されていてもよい。これによって、導電性の接続部の結合は、弾性の電気的接触圧結合器の内部で、主要な接触力に応じて変動することができる。」(段落【0019】)
(p)「電気的接触圧結合器中に対応配置されている接続部は、誘電体層のパターン化を介して、導電性層が存在する限り及びフォトシートが存在する限り形成されていてもよい。従って、該接続部は、例えば「マイクロ-バイア技術」において、例えばレーザーパターン化を用いて、現代の導体プレートの仕上げの際と同様に製造することができる。」(段落【0025】)
(q)「電気的接触圧結合器の内部の該接続部を、電気メッキにより製造することもできる。」(段落【0026】)
(r)「個々の接点の必要とされる接触力並びに必要とされる接触法は、誘電体の弾性及び接続部からなる回路系の形態、及びこれらにより、例えば存在するトランスレーター位置の数によって調節でき、主要な状況に適合させることができる。」(段落【0027】)
(s)「b)電気的接触圧結合器中の複数の導電性の接続部の形成のための誘電体及び導電性層のパターン化」「各接点は、接続部を介して互いに接続されている」(段落【0029】)
(t)「この後、接続部のパターン化を行うことができる。」(段落【0031】)
(u)「電気的接触圧結合器21は、複数の導電性接続部22を有している。接続部22は、それぞれ、電気的接触圧結合器21の上面23及び下面24の上に対応配置されている複数の接点25を接続している。」(段落【0042】)
(v)「図1中に記載された実施態様の場合と同様に図2においても、それぞれ、接点25が、接続部22を介して互いに接続されている。」(段落【0043】)
(w)「図1とは異なって、接続部22は、別の形で形成されているので、電気的接触圧結合器21の内部で、接続部22によって形成された別の立体的回路系が生じている。」(段落【0044】)
(x)「個々の金属層26及び27並びに誘電体層は、パターン化されており、個々の接続部22からなる立体的回路系を形成している。接続部22から形成された回路系を介して、電気的接触かつ結合器21のそれぞれ互いに向かい合った上面23及び下面24の上に対応配置されている接点25並びに、上面23又は下面24の上にそれぞれ並んで対応配置されている接点25が上下に重なって接続させられている。」(段落【0047】)
(y)「電気的接触圧結合器21の圧縮によって、立体的回路系を形成する接続部22は変形する。この結果、立体的回路系が生じるが、その際、接続している状態で、電気的接触圧結合器21の上面23及び下面24の上のそれぞれ、直接互いに向かい合っている接点25が、接続部22を介して電気的に互いに接続されている。」(段落【0048】)
(z)「隣接したか又は順次も受けられた対応配置された接点25も接続部22を介して互いに接続されている。これによって、電気的接触圧結合器21中の接続部22によって形成された立体回路系の構造を、誘電体、湯宇蓮は電気的接触圧結合器21の弾性並びに作用している接触力の強さにより、必要に応じて調節及び場合により変化させることができる。」(段落【0049】)
(aa)「この後、第一の貫通接触平面の製造のために、レーザーパターン化、例えばレーザー穿孔によって、マイクロ-バイアとも呼ばれる接続部22を銅シート26、27及び誘電体の中へ導入する。」(段落【0050】)
(ab)「このフォトシート及び必要に応じて誘電体層に、接続部22の形成のためにレーザーパターン化を施す。」(段落【0051】)
(ac)図1〜図4には、上面23の接点25と下面24の接点25とを接続する接続部22であって、誘電体の層に対して平行は部分と垂直な部分とからなる接続部22が図示されている。特に、図3には、上面23から下面24にかけて接続部22の垂直な部分が層に対して互いに横方向にずれて配置されている点が図示されている。
(2-2)当審の判断
上記(a)〜(ab)に摘記した事項からも明らかなように、「接続部」に関して、「垂直」という用語は、当初明細書等に全く記載されていない。しかも、「垂直」という用語自体、当初明細書等には全く記載されておらず、「垂直な接続部」がどのようなものを意味するのか、必ずしも明確でない。
ところで、上記補正事項の中に「予め処理された誘電体層を垂直に接続した後に」という記載があり、また、審判請求書には「本願発明の方法においてはそれぞれの誘電体層に別々に上面および下面の金属層を設け、それぞれの層のための貫通接続部を個々に、例えばレーザー光線により製造します。金属層をパターン化した後で誘電体層がすでに存在する貫通接続部により垂直に積層され、互いに導電性に接続されます。このようにして多層金属被覆構造体および互いに横方向にずれた垂直な導電性接続部が実現されます。」(下線は当審で付加した。)と記載されている。これらの記載からみると、「垂直」とは、層に対して「垂直」を意味するものと解される。
また、「接続部」とは、上記(b)(c)(l)(m)(u)(x)(y)に摘記したように、上面23の接点25と下面24の接点25とを電気的に接続する部分を意味するものと解され、具体的には、上記(ac)に摘記したように、層に対して「垂直な部分」と「平行な部分」とから構成されたものを意味していたものと解される。そして、それ以外のものは当初明細書等には何も記載されていない。
しかしながら、「垂直な接続部」という用語は、「垂直な部分」と「平行な部分」とから構成された接続部だけでなく、例えば、「垂直な部分のみ」からなる接続部(具体例として後記引用例の図3(e)に図示された「スルー孔39」を参照)も含むものと解される。そして、このような形態の接続部が当初明細書等に記載されていないことは、上記のとおりであり、しかも、そのような形態の接続部が当初明細書等の記載からみて自明な事項ということもできない。そうすると、上記補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。
(3)むすび
したがって、手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜4に係る発明は、平成15年7月14日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「第一工程で、誘電体からなる層の上面及び/又は下面に、それぞれ1つの金属層(26、27)を施与し、第二工程で、誘電体をパターン化させ、第三工程で、誘電体を貫通する複数の導電性の接続部(22)を製造し、これにより、上面及び下面の上の複数の接点(25)を互いに接続させる、構成部材の電気的接続のための接続装置の製造法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-283865号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(a)「【産業上の利用分野】本発明は、コンピュータや通信機器等の各種電子機器の可動部への配線、ケーブル、コネクター機能を付与した複合部品や、LSI実装用の回路モジュール等に使用される多層配線板、特に多層フレキシブルプリント配線板に関するものである。」(段落【0001】)
(b)「図1(a)に示すように銅箔1をポリイミドの基材フイルム2の両面に積層した銅積層基板3の一方の銅箔に、内層の電気回路となる銅箔と表層の銅箔とを導通するためのバイア孔を設けるために、バイア孔用に銅箔に孔4をエッチングによって形成する。図1(b)のように、銅箔をマスクとして、基材フイルム2に、バイア孔用の孔5を形成する。エッチング液には、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を含有したアルコール溶液を用いることができる。図1(c)に示すように、内層導体と裏層導体とを導通させるために、塩化パラジウム、塩化第1錫等によって基材フイルムの表面の活性化を行った後に、無電解めっきを行い、次いで無電解めっきで得られた銅の薄膜上に銅を電気めっきして、バイア孔6を完成させる。」(段落【0011】)
(c)図1には、多層フレキシブルプリント配線板の製造工程が図示されており、図1(a)に示す第一工程で、基材フィルム2の両面にそれぞれ1つの銅箔1を積層し、図1(b)に示す第二の工程で、基材フィルム2にバイア孔用の孔5を形成し、図1(c)に示す第三工程で、基材フィルム2を貫通する複数の導電性のバイア孔6を完成させる点が図示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、
「第一工程で、基材フィルム2の両面に、それぞれ1つの銅箔1を積層し、第二工程で、基材フィルム2にバイア孔用の孔5を形成し、第三工程で、基材フィルム2を貫通する複数の導電性のバイア孔6を完成させ、これにより、両面を互いに接続させる、多層フレキシブルプリント配線板の製造方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、後者における「基材フィルム2」は、その構造又は機能からみて、前者における「誘電体からなる層」に相当し、以下同様に、「両面」が「上面及び下面」に、「銅箔1」が「金属層(26、27)」に、「積層し」が「施与し」に、「基材フィルム2にバイア孔用の孔5を形成し」が「誘電体をパターン化させ」に、「バイア孔6」が「接続部(22)」に、「完成させ」が「製造し」に、「製造方法」が「製造法」に、それぞれ相当する。また、後者における「多層フレキシブルプリント配線板」と前者における「構成部材の電気的接続のための接続装置」は、どちらも「電気的積層構造部材」である点で共通する。

してみると、両者は、
「第一工程で、誘電体からなる層の上面及び下面に、それぞれ1つの金属層(26、27)を施与し、第二工程で、誘電体をパターン化させ、第三工程で、誘電体を貫通する複数の導電性の接続部(22)を製造し、これにより、上面及び下面を互いに接続させる、電気的積層構造部材の製造法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
相違点:本願発明は、「上面及び下面の上の複数の接点(25)を互いに接続させる、構成部材の電気的接続のための接続装置の製造法」であるのに対して、引用発明は、「上面及び下面を互いに接続させる、多層フレキシブルプリント配線板の製造方法」である点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
「構成部材の電気的接続のための接続装置」として、誘電体からなる層の上面及び下面に金属層を施与し、誘電体を貫通する導電性の接続部を形成したものであって、上面及び下面の上の複数の接点を相互に接続させた構造のものは、例えば、特開平7-183333号公報、特開平6-291165号公報、特開平4-154136号公報などに見られるように、従来周知である。そして、この周知構造を備えた「接続装置」は、引用発明における「多層フレキシブルプリント配線板」のような「構成部材」を電気的に接続するために用いられるものであるから、周知構造の「接続装置」と引用発明における「多層フレキシブルプリント配線板」とは、技術分野が共通しているといえる。しかも、両者は、誘電体からなる層の上面及び下面に金属層を施与し、誘電体を貫通する導電性の接続部を形成したものであって、上面及び下面を相互に接続させた構造を備えている点で、構成が共通している。そうすると、上記周知構造の接続装置を製造するに当たり、引用発明の製造法を適用して、相違点に係る本願発明の特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことであるということができる。

そして、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別なものとはいえない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-08 
結審通知日 2006-05-10 
審決日 2006-05-23 
出願番号 特願2000-566922(P2000-566922)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 川本 真裕
一色 貞好
発明の名称 回路担体における電気的構成部材の接続のための接続装置並びにその製造法  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 久野 琢也  
代理人 山崎 利臣  
代理人 ラインハルト・アインゼル  

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