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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1144532
審判番号 不服2005-10311  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-03 
確定日 2006-10-05 
事件の表示 平成 7年特許願第210336号「有機エレクトロルミネッセンス素子」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 3月 7日出願公開、特開平 9- 63767〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年8月18日の出願であって、平成17年4月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年6月3日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年4月4日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「少なくとも一方が透明又は半透明である一対の陽極及び陰極からなる電極間に、少なくとも発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該一対の陽極及び陰極からなる電極の外側に、かつ発光が放射される側に、高低差が0.1μm以上0.2mm以下で凹凸を表面に有する透明又は半透明な基材を有し、凹凸の断面が半円形のストライプ状であり、ストライプの繰り返し周期が0.1μm以上0.2mm以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。」

3.引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された実願平4-41440号(実開平5-94994号)のCD-ROM(以下「引用刊行物1」という。)には、「平面状発光装置」の発明に関して以下の事項が記載されている。
<記載事項1>
「【請求項1】 EL素子よりなる平面状発光装置において、該発光装置の発光面側に、凹凸面が発光方向に向くようレンズフィルムを設置することを特徴とした発光装置。」
<記載事項2>
「【0004】
【課題を解決するための手段】
本考案者らは、前述の課題に鑑み、検討した結果、本発明に至ったものである。即ち、本考案は、EL素子よりなる平面状発光装置において、該発光装置の発光面側に、凹凸面が発光方向に向くようレンズフィルムを設置することを特徴とした発光装置である。本考案に用いるレンズフィルムは、三角柱型(図1参照)四角錐型半球型などの限定はない。ピッチ(山と山の間隙)は、0.01mmから1mmのものが用いられる。0.01mm未満では、光の屈折・反射が複雑となり光は拡散され本考案による効果がなくなり、逆に1mmを超えると光のむらが生じ面発光の特徴を失うものである。従って、0.1mmから0.5mmのものが最も好ましく用いられる。このようなレンズフィルムを平面状発光装置の発光面側に凸凹面を上に向けるように設置することで光を集め光の方向性を制御することで従来の発光効率に関する問題を解決することができた。尚、レンズフィルムを平面状発光装置の発光面側に直接設置することで上記効果を得ることができる。以下、実施例により本考案を説明するが本発明はこれらに限定されるのではない。」
<記載事項3>
「【0006】
【実施例】
実施例1
BaTiO3 微粒子15重量部、シアノエチルポリビニルアルコール6重量部、N,N-ジメチルホルムアミド10重量部からなるペーストを厚さ0.1mmのアルミニウム箔(対向電極)上に乾燥後の膜厚が20μmになるようにして絶縁層を形成し、さらに該絶縁層上にZnS;Cu,Cl蛍光体粉末30重量部、シアノエチルポリビニルアルコール8重量部、N,N-ジメチルホルムアミド12重量部からなるペーストを乾燥後の膜厚が45μmとなるようにして発光層を形成した。厚さ75μmの透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたITO被覆透明ポリエチレンテレフタレートフィルムのITO層表面に銀ペーストを乾燥後の膜厚が10μmになるように、集電体を形成し、さらに各集電帯にリン青銅からなる厚さ100μmのリード端子を電気接続した。
次に、前記アルミニウム箔上に絶縁層を介して形成した発光層の発光面側と、前記ITO被覆ポリエチレンテレフタレートフィルムのITO層を対向させて、熱ロールラミネーターにより加熱圧着を行った後、アルミニウム箔に前記同様のリード端子を電気接続して分散型EL素子本体を作製した。次に、該多連体の両面に、片面に厚さ20μmのポリアミド系シーラントを有する厚さ80μmのポリアミドフィルムからなる捕水層をシーラント面を内側にして熱ロールラミネーターにより加熱圧着を行い、素子本体と捕水層を積層させた。
素子本体を片面に厚さ50μmのポリオレフィン系シーラントを有する厚さ100μmのポリクロロテトラフルオロエチレンフィルムからなる防湿フィルム2枚のシーラント層の互いに対面するように合わせた間に配置し、熱ロールラミネーターにより加熱圧着を行い、分散型EL素子を作製した。
この様にして得られたEL素子の発光面上にレンズフィルムを図2の様に設置した。結果を表1に示した。」

引用刊行物1記載の「EL素子」は、ZnS;Cu,Cl蛍光体の発光を利用するから、無機エレクトロルミネッセンス素子である。
また、図2からみて、引用刊行物1記載の「凹凸面を上に向けた三角柱のレンズフィルム」において、上記凹凸の断面が三角形のストライプ状であることは明らかである。

したがって、上記記載事項1乃至3及びそこで参照している図1,2に基づけば、引用刊行物1には、
「アルミニウム箔(対向電極)上に絶縁層を形成し、該絶縁層上にZnS;Cu,Cl蛍光体を含む発光層を形成し、該発光層の発光面側に対向させてITO被覆ポリエチレンテレフタレートフィルムのITO層を加熱圧着した無機エレクトロルミネッセンス素子よりなる平面状発光装置において、平面状発光装置の発光面側に凹凸面を上に向けるように三角柱のレンズフィルムを形成し、凹凸の断面が三角形のストライプ状であり、そのレンズフィルムのピッチ(山と山の間隙)が、0.01mmから1mmである平面状発光装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-5368号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、「有機エレクトロルミネッセンス素子」の発明に関して以下の事項が記載されている。
<記載事項4>
「【請求項1】 透明基板上に少なくとも透明電極と有機層と上部電極を設けてなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、透明基板の有機エレクトロルミネッセンス素子を設置した側と反対側の表面を平均粗さ0.1〜100μmの範囲に表面加工を施すことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。」

4.対比
本願発明と引用発明とを比較する。
(1)
引用発明の「ITO層」は、「ITO層表面に銀ペーストを乾燥後の膜厚が10μmになるように、集電体を形成し、さらに各集電帯にリン青銅からなる厚さ100μmのリード端子を電気接続した。」(記載事項3)との記載からみて、対向電極であるアルミニウム箔と共に、分散型EL素子本体の対向電極を形成していることは明らかであるので、引用発明の対向電極である「アルミニウム箔及びITO層」は、本願発明の「一対の陽極及び陰極からなる電極」に相当する。
(2)
引用発明の「無機エレクトロルミネッセンス素子」及び「無機エレクトロルミネッセンス素子よりなる平面状発光装置」と本願発明の「有機エレクトロルミネッセンス素子」とは、エレクトロルミネッセンス素子という点で一致する。
(3)
引用発明の「凹凸面を上に向けた三角柱のレンズフィルム」は、本願発明の「凹凸を表面に有する透明又は半透明な基材」に相当する。
(4)
引用発明の「凹凸面を上に向けた三角柱のレンズフィルム」は、本願発明の「一対の陽極及び陰極からなる電極」に相当する「アルミニウム箔及びITO層」の外側に設けられることは明らかであるので、引用発明の「凹凸面を上に向けた三角柱のレンズフィルム」の設置位置である、引用発明の「平面状発光装置の発光面側」は、本願発明の「一対の陽極及び陰極からなる電極の外側に、かつ発光が放射される側に」に相当する。
(5)
引用発明の「凹凸の断面が三角形のストライプ状」と本願発明の「凹凸の断面が半円形のストライプ状」とは、凹凸がストライプ状という点で一致する
(6)
引用発明のレンズフィルムは、凹凸の断面が三角形のストライプ状であるので、引用発明の「レンズフィルムのピッチ(山と山の間隙)が、0.01mmから1mm」と本願発明の「ストライプの繰り返し周期が0.1μm以上0.2mm以下である」とは、ストライプの繰り返し周期が所定の範囲のものである点で一致する。

したがって、両者は、
「一対の陽極及び陰極からなる電極間に、少なくとも発光層を有するエレクトロルミネッセンス素子において、該一対の陽極及び陰極からなる電極の外側に、かつ発光が放射される側に、凹凸を表面に有する透明又は半透明な基材を有し、凹凸がストライプ状であり、ストライプの繰り返し周期が所定の範囲のものであることを特徴とするエレクトロルミネッセンス素子。」の点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
一対の陽極及び陰極からなる電極が、本願発明は、少なくとも一方が透明又は半透明であるのに対して、引用発明は、そのように限定されていない点。
[相違点2]
エレクトロルミネッセンス素子が、本願発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子であるのに対して、引用発明は、無機エレクトロルミネッセンス素子である点。
[相違点3]
透明又は半透明な基材の表面の凹凸の高さが、本願発明は、高低差が0.1μm以上0.2mm以下であるのに対して、引用発明は、そのように限定されていない点。
[相違点4]
透明又は半透明な基材の表面の凹凸の断面が、本願発明は、半円形であるのに対して、引用発明は、三角形である点。
[相違点5]
ストライプの繰り返し周期が、本願発明は、0.1μm以上0.2mm以下であるのに対して、引用発明は、0.01mmから1mmである点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1
引用刊行物1の「実施例1
BaTiO3 微粒子15重量部〜アルミニウム箔(対向電極)〜発光層を形成した。〜ITO被覆透明ポリエチレンテレフタレートフィルムのITO層表面に銀ペーストを乾燥後の膜厚が10μmになるように、集電体を形成し、さらに各集電帯にリン青銅からなる厚さ100μmのリード端子を電気接続した。」(記載事項3)との記載、及び「本考案は、EL素子よりなる平面状発光装置において、該発光装置の発光面側に、凹凸面が発光方向に向くようレンズフィルムを設置することを特徴とした発光装置である。」(記載事項2)との記載からみて、アルミニウム箔、発光層、ITO層、レンズフィルムの順に積層されており、ITO層は発光装置の発光面側にあることも明らかである。
してみると、ITO層、即ち、本願発明の「陽極」又は「陰極」に相当する電極は、発光層からの光を上記電極を透過してレンズフィルムに導くため、透明又は半透明とすることは当然のことといえる。
したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、格別なものとはいえない。

(2)相違点2
引用刊行物2に記載された有機エレクトロルミネッセンス素子は、引用発明の無機エレクトロルミネッセンス素子と自発光素子である点で共通するので、引用発明の平面状発光装置における無機エレクトロルミネッセンス素子を引用刊行物2の有機エレクトロルミネッセンス素子に置き換えることは当業者が容易に想到し得たことである。

(3)相違点4
引用刊行物1には、「本考案に用いるレンズフィルムは、三角柱型(図1参照)四角錐型半球型などの限定はない。」(記載事項2)と記載されているが、該「半球型」は、本願発明の「半円形のストライプ状」とは、その断面が半円形である点で共通するレンズ形状といえる。
また、発光層において発生した光が等方的に散ってしまい、表示面側へ出射される光量が少なくなるという欠点を解消するために、発光が放射される側に、断面が半円形のストライプ状である凹凸を表面に有する透明な基材を設けることは、本願出願前の周知技術であるので(例えば、特開平3-2850号公報参照)、基材表面の凹凸を、引用発明の「断面が三角形のストライプ状」から周知の「断面が半円形のストライプ状」とすることは、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点3及び相違点5
まず、相違点5について検討する。
ストライプの繰り返し周期の長さについて、引用発明の「0.01mmから1mm」は本願発明の「0.1μm以上0.2mm以下」と相当程度重複する。また、引用刊行物1には、ストライプの繰り返し周期(ピッチ)について、「0.01mm未満では、光の屈折・反射が複雑となり光は拡散され本考案による効果がなくなり、逆に1mmを超えると光のむらが生じ面発光の特徴を失うものである。」(記載事項2)と記載されているように、ストライプの繰り返し周期の長さを限定した理由が記載されている。
したがって、ストライプの繰り返し周期の長さについて、引用発明の「0.01mmから1mm」を本願発明の「0.1μm以上0.2mm以下」と規定することは必要に応じて適宜に為し得る設計事項である。

次に、相違点3について検討する。
相違点3に係る本願発明の特定事項である「高低差が0.1μm以上0.2mm以下で凹凸を表面に有する透明又は半透明な基材」に関連して、本願明細書には、「また、ストライプ状では、ストライプの長さはシートやフィルムの長さであり、特に制限はないが、繰り返しの周期が、0.1μm以上0.2mm以下であり、好ましくは1μm以上0.1mm以下である。このとき凹凸の高さについては、凹凸の大きさや周期により決定されるが、通常、大きさや周期の値以下が好ましい。」(段落【0014】)と記載されている。
そして、相違点5について検討したように、ストライプの繰り返し周期の長さを、本願発明の「0.1μm以上0.2mm以下」と規定することは必要に応じて適宜に為し得る設計事項であるから、基材の表面の凹凸の高さを、本願発明のように、高低差が0.1μm以上0.2mm以下と規定することも必要に応じて適宜に為し得る設計事項である。

したがって、相違点3及び5に係る本願発明の発明特定事項は、いずれも必要に応じて適宜に為し得る設計事項である。
また、本願発明の効果は、引用刊行物1及び2の記載及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-27 
結審通知日 2006-08-01 
審決日 2006-08-18 
出願番号 特願平7-210336
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東松 修太郎  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 瀬川 勝久
青木 和夫
発明の名称 有機エレクトロルミネッセンス素子  
代理人 中山 亨  
代理人 榎本 雅之  
代理人 久保山 隆  
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