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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200520720 審決 特許
不服200517420 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1144566
審判番号 不服2004-21127  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-12 
確定日 2006-10-30 
事件の表示 平成 7年特許願第 55362号「画像形成装置及びその階調特性補正方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月27日出願公開、特開平 8-251412、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年3月15日の出願であって、平成16年9月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し同年10月12日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の発明は、平成15年7月7日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 複数の濃度のパッチを形成するための画像データを用いて、パッチを記録媒体上に形成し、該形成されたパッチを読み取り、階調特性を補正する画像形成装置であって、
前記画像形成装置周辺の環境の状態を判断する判断手段と、
前記環境ごとに複数の濃度のパッチを形成するための画像データを有し、前記判断手段による判断結果に基づき、高温多湿の場合、低温低湿に比べて低濃度に密なパッチを形成する画像データを選択する選択手段と、
前記選択手段で選択された画像データを用いて形成したパッチに基づいて階調特性を補正するデータを作成する作成手段とを有することを特徴とする画像形成装置。」

2 原査定の理由
本願発明は、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-125338号公報(以下「引用例1」という。)、特開平2-122960号公報(以下「引用例2」という。)、及び特開平5-188770号公報(以下「引用例3」という。)に記載された発明に基づいて周知技術(特開平5-53398号公報(以下「引用例4」という。))を勘案することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用例
(1)引用例1には次の事項が図面と共に記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
(1)デジタル画像信号を他のデジタル画像信号に変換するD/D変換手段と、前記D/D変換手段が変換したデジタル画像信号により出力画像を形成するプリンタ手段と、前記プリンタ手段に対してテスト画像信号を発生するテスト信号発生手段と、前記テスト信号発生手段が発生するテスト画像信号により前記プリンタ手段にサンプル画像を形成せしめるサンプル画像形成手段と、前記サンプル画像形成手段が形成したサンプル画像の濃度を検出する検出手段と、前記検出手段が検出したサンプル濃度信号に基づいて前記D/D変換手段の変換特性を変える補正手段を備えることを特徴とする像形成装置。」(特許請求の範囲第1項)

イ 「プリンタ部特性をテストするには、まずパターン発生器12によりテスト画像信号を発生し、これを通常の画像信号の代りにD/A変換器13に人力する。本実施例においては、パターン発生器12は00H〜FFH(Hは16進表示)までの256レベルのテスト画像信号を発生可能である。しかし実際のテスト時には16レベル毎のテスト画像信号を出力する様にしてある。即ち、濃度レベルを00Hの白レベルからFFHの黒レベルとしたときは、テスト画像信号としては00H,10H,20H,30H,…、E0H,F0Hの16レベルと、最後のFFHレベルの合計17レベルを発生する様にした。次に、このテスト画像信号による濃度パターンを通常のプリント動作時と全く同様にして転写紙27上に転写する。
第3図は転写紙上に形成したテストパターンの一例を示す図である。」(第4ページ右上欄第9行〜左下欄第10行)

(2)引用例2には次の事項が記載されている。
ア 「特許請求の範囲
入力多値情報に応じて、ドットパターンに展開するための展開手段と、記録媒体上にプリントするためのプリンタとより成る画像記録装置において、
前記展開手段にプリント特性条件に応じてあらかじめ設定された複数のドットパターン列を具備すると共に、該ドットパターン列を選択切換可能に構成したことを特徴とする画像記録装置。」(特許請求の範囲)

イ 「本発明は、以上のような従来例の問題点にかんがみてなされたもので、この種の装置におけるプリント特性条件が変化しても、常に実質的に一定の出カプリント品質が得られる画像記録装置の提供を目的としている。
〔課題を解決するための手段〕
このため、本発明においては、プリント特性を左右するようなプリント特性条件(例えば紙、環境条件、インク特性等)に変化が生してもその変化に応じた様々な複数のドットパターン列を具備することにより、これらのドットパターン列を選択的に切換えてドット展開を行い、プリントアウトを行うよう構成することにより、前記目的を達成しようとするものである。」(第2ページ右上欄第17行〜左下欄第10行)

ウ 「実際の動作は、操作者のキーボード3からのキー入力により、まずコントローラ2におけるテストパターン印字モードを指定する。ここでのテストパターンは、基準ドットパターンの、ある階調におけるものであり、印字大きさは5.6×5.6mm(8×8ドット)である。ここで、印字したい階調番号をキーボード3から指定すると、それに対応するテストパターンが印字させたいプリント用紙5の左端に印字される。
次にキー入力により、テストパターン読取モートを指定する。すると…読取りが行われる。読取りが終了した後、そこで得られた濃度データは、コントローラ2内のRAMに記憶されている各プリント特性条件の濃度特性との比較に用いられ、その結果、プリント特性条件が確定され、そのプリント特性条件に対応したドットパターン列が選択される。」(第3ページ右下欄第2行〜第4ページ左上欄第4行)

エ 「また、前記実施例においては、プリント特性条件の変化の度合を検知するために、テストパターンのある1つの階調のみを用いたが、具備するドットパターンの数が増加することを考慮すると、複数の階調において行うことにより、その効果はより確実なものとなる。」(第4ページ右下欄第3〜8行)

(3)引用例3には次の事項が図面と共に記載されている。
ア 「【請求項3】 像担持体上に形成された潜像を帯電した現像剤によって可視像化して画像を形成する画像形成装置において、前記現像剤を帯電させる現像剤帯電手段と、前記現像剤の周辺の環境を検出する環境検出手段とを具備し、前記環境検出手段による検出結果に基づいて前記現像剤帯電手段を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】 前記環境検出手段が前記現像剤の周辺の温湿度を検出する温湿度センサであり、該温湿度センサにより検出した温湿度から絶対湿度を算出し、該算出した絶対湿度に基づいて前記現像剤帯電手段を制御することを特徴とする請求項3の画像形成装置。」
イ 「【0038】本実施例では、現像器周辺の温湿度を検出する温湿度センサ61を設置し、この温湿度センサ61からの出力値に応じてトナー帯電手段の電源58からトナー帯電電極57に印加する電圧を制御するようにしたものである。以下、本実施例の制御態様について説明する。
【0039】温度、湿度より絶対湿度(又は混合比)が分かり、ある温湿度に十分調湿したとき、トナーの吸収水分量は一定値になり、トナーの帯電特性は安定する。図8に絶対湿度がA、B、Cと変化したときのトナー帯電特性の変化を示す。この場合の変化量は、横軸が図7の電源58からトナー帯電電極57に印加する電圧であり、縦軸がトナー帯電量である。図示するように、絶対湿度が一定であるときにはトナー帯電電極57に印加する電圧とトナー帯電量との間に一定の関係がある。なお、絶対湿度Aは低湿の場合であり、絶対湿度Bは常湿の場合であり、絶対湿度Cは高湿の場合である。」

ウ 「【0041】このように、本実施例では温湿度センサ61により現像剤近傍の温湿度(周囲環境状態)を常時検出し、この検出結果に基づいてトナー帯電手段を制御し、トナーの帯電量を所定の目標値に保持するようにしたので、連続コピー時や環境の変化等によって生じるトナー帯電量の変動が抑制され、常時ほぼ一定の帯電量となるから、濃度変化のない安定した画質の画像を常に得ることができるという利点がある。
【0042】なお、トナーを帯電する方法として現像器内にコロナ放電器を設け、このコロナ放電器から放出されるコロナ量を制御してトナー帯電量を制御するようにしても良く、その他任意のトナー帯電手段が使用できることは勿論である。…」

エ 「【図4】トナー像の光学濃度値と現像剤のトナー濃度とからトナー帯電量を求める本発明の第2の実施例を説明するための光学濃度値とトナー帯電量との関係を示す特性図である。」(【図面の簡単な説明】)

オ 「【図8】本発明の第4の実施例を説明するためのトナー帯電量とトナー帯電電極に印加する電圧との関係を示す特性図である。」(【図面の簡単な説明】)

(4)引用例4には次の事項が記載されている。
ア 「【請求項1】 帯電チャージャのグリッド電位と現像機のバイアス電位とをそれぞれ所定の基準値に設定した状態で感光体上に形成した基準トナー像の付着量を検出し、その検出値に基づいて決定された感光体の未露光時の表面電位、上記バイアス電位およびγ補正用変換テーブルにより入力された画像の再現を行うデジタル画像形成装置において、空気中の水分量を検出する水分量検出手段と、この水分量検出手段により検出された空気中の水分量に対応して感光体の未露光時の上記表面電位および上記バイアス電位の少なくとも一方をシフトさせるための補正項を求め、この補正項に基づいて上記表面電位もしくはバイアス電位に補正を加える補正手段とを備え、この補正手段で補正された表面電位もしくはバイアス電位と上記γ補正用変換テーブルを用いて画像の再現を行うことを特徴とするデジタル画像形成装置。」

イ 「【0007】ところで、画像濃度に影響を与える他の要因として感光体およびトナーの特性から、温度や湿度等の外部環境の変化によって、現像の際に感光体の静電潜像へのトナー付着量及び静電潜像のトナー像が複写紙に転写されるトナー量が変化する、すなわち転写効率が変化するという現象がある。一般的には、高温高湿の環境ではトナーの付着量が増え、低濃度部から中間濃度部までのγ特性の傾きが大きくなって再現画像が濃くなり、また、低温低湿の環境ではトナーの付着量が減り、低濃度部から中間濃度部までのγ特性の傾きが小さくなって再現画像が薄くなることが知られている。
【0008】そこで、温度や湿度の変化によるこのような転写効率の変化による画像再現特性の変化を補償するため、絶対湿度あるいは温度及び湿度を検出し、その検出結果に基づいて、現像機により現像された感光体の静電潜像のトナー像を複写紙に転写する転写チャージャの転写電流を制御して転写効率を制御し、一定の再現画像を得るようにしたものが提案されている(例えば、米国特許第4,912,515号参照)。」

1 対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1「イ」の箇所に記載された事項及び第3図を参照すると引用例1記載の発明における「テスト画像信号」は、「複数の濃度のパッチ」を形成するための画像データであることが明らかである。
また、引用例1記載の「サンプル画像形成手段」、「検出手段」、「補正手段」における処理が、本願発明の「パッチを記録媒体上に形成し」、「該形成されたパッチを読み取り」、「階調特性を補正する」という処理に相当することは当業者に明らかである。
以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。

(1)一致点
複数の濃度のパッチを形成するための画像データを用いて、パッチを記録媒体上に形成し、該形成されたパッチを読み取り、階調特性を補正する画像形成装置

(2)相違点
本願発明が
ア 「画像形成装置周辺の環境の状態を判断する判断手段」(以下「相違点ア」という。)
イ 「前記環境ごとに複数の濃度のパッチを形成するための画像データを有し、前記判断手段による判断結果に基づき、高温多湿の場合、低温低湿に比べて低濃度に密なパッチを形成する画像データを選択する選択手段」(以下「相違点イ」という。)
ウ 「前記選択手段で選択された画像データを用いて形成したパッチに基づいて階調特性を補正するデータを作成する作成手段」(以下「相違点ウ」という。)
という構成を備えているのに対し、引用例1には、これらの構成について記載がない点。

5 相違点についての当審の判断
(1)相違点イについて
本願の発明の詳細な説明には、「【0056】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、中間調制御において環境の変化に応じて作成するパッチの画像信号の組を変えることにより、いかなる環境においても常に正確な階調特性を持つ画像を得ることができる。」と記載されていることから、引用例2ないし4に記載された発明と、環境条件が変化しても安定した画像出力を得るという点で共通の目的を有している。
しかし、相違点イにおける「高温多湿の場合、低温低湿に比べて低濃度に密なパッチを形成する画像データ」を階調補正処理のパッチ形成時に利用して課題を解決するという本願発明の具体的な特徴点については、引用例2ないし4のいずれにも記載されていない。

引用例1ないし4を総合的にみると、温度湿度の異なる環境下においてテストパターンを用いて環境に適した濃度補正を行うことは、示唆されているとみることができるが、その具体的様態までは、示されているとはいえず、特に、パッチを形成する画像データを選択する選択手段として、高温多湿の場合、低温低湿に比べて低濃度に密なパッチを形成するものに想到することは、当業者にとって困難を伴うものと認められ、係る構成には十分な進歩性が認められる。
原査定が述べるように、引用例1記載の発明に引用例2,3及び周知技術として引用例4に記載された事項を適用し、上記相違点イに係る構成に当業者が容易に想到し得るものとすることはできない。
そして、本願発明は、画像形成装置が高温高湿環境下にある場合に高濃度のパッチばかりが作成され中間調の部分のパッチが抜けてしまうため、補正が正しく行われないという欠点を解消するという格別の作用効果を奏することが認められる。
したがって、上記相違点イに係る構成は、引用例1ないし4に記載された事項を組み合わせても当業者が容易に想到し得るものとはできない。

(2)相違点ア、ウについて
相違点イに十分な進歩性が認められる以上、相違点ア及び相違点ウについて論ずるまでもなく、本願発明は、引用例1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

6 他の請求項について
本願請求項4は本願発明を「方法」のカテゴリーで表現したもので、実質的に内容を同一とするものである。そして、本願請求項2及び3は、本願発明を引用し、また、本願請求項5及び6は請求項4を引用してさらに限定を加えたものである。
したがって、本願請求項2ないし6に係る発明はいずれも上記相違点イを必須要件とするものであるから、本願発明と同様の理由により、拒絶することはできない。

7 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原審の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-10-17 
出願番号 特願平7-55362
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金田 孝之田中 純一  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 伊知地 和之
松永 稔
発明の名称 画像形成装置及びその階調特性補正方法  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  

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