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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 補正却下を取り消さない。原査定の理由により拒絶すべきものである。 A63F
管理番号 1144637
審判番号 不服2002-11853  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-27 
確定日 2006-10-05 
事件の表示 平成11年特許願第372760号「ゲームシステムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月10日出願公開、特開2001-187270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年12月28日の出願であって、平成13年8月16日付で拒絶理由が通知され、平成13年10月29日付で手続補正がなされたが、平成13年11月29日付で最後の拒絶理由が通知され、これに対し、平成14年2月4日付で手続補正がなされた。そして、前記平成14年2月4日付の手続補正は、独立特許要件違反を理由に平成14年5月16日付けで補正却下されると共に、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年6月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

そして、審判請求の理由の概要は、平成14年2月4日付け手続補正書に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第53条第1項の規定により、その補正が却下される理由はない。したがって、本願には、平成13年11月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由及び平成14年5月16日付け拒絶査定の備考欄に記載した理由によって拒絶されるべき理由はない、というものである。

2.原審における平成14年5月16日付補正却下の妥当性如何についての判断
(1)補正後の本願発明
平成14年2月4日付の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、

「ゲーム画面の表示装置と、
プレイヤーによる操作が可能な操作部材と、
ゲーム中における前記操作部材の操作タイミングを定義したデータを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置が記憶するデータに基づいて、ゲーム中の前記操作部材の操作タイミングを指示するための画像を前記表示装置の画面上に表示する操作指示手段と、
前記プレイヤーの前記操作部材に対する操作タイミングを評価する評価手段と、
を備え、
前記操作指示手段は、前記操作タイミングを指示するための画像として、前記操作部材の操作を指示するためのタイミングマークを前記表示装置の画面上に表示させるとともに、前記タイミングマークが前記表示装置の画面上の所定位置に達したときに前記操作部材の操作タイミングが到来するように前記タイミングマークをゲームの進行に応じて前記表示装置の画面上で移動させるものであり、
ゲーム中には所定のBGMの曲が再生されるとともに、前記BGMに応じた手順で前記操作部材を操作するように前記操作指示手段が前記タイミングマークを利用してプレイヤーに前記操作タイミングの指示を出し、
各タイミングマークには曲全体から評価した重要度が設定され、
前記評価手段は、前記タイミングマークにて指示されたタイミングで操作部材の操作が行われた場合に、前記タイミングマークの重要度に見合ったスコアをプレイヤーが獲得するように前記操作タイミングを評価し、
前記操作指示手段は前記重要度が高いタイミングを他のタイミングマークと区別されたオブジェとして表示させることを特徴とするゲームシステム。」
と補正された(以下、「本願補正発明」という。)。

上記補正は、当該補正前(平成13年10月29日付手続補正書により補正された特許請求の範囲)の請求項2に記載された発明を特定する事項である「操作指示手段」に、さらに「ゲーム中には所定のBGMの曲が再生されるとともに、前記BGMに応じた手順で前記操作部材を操作するように前記操作指示手段が前記タイミングマークを利用してプレイヤーに前記操作タイミングの指示を出」す事項を付加すると共に、当該補正前の請求項2に記載された発明を特定する事項である「重要度」を、「曲全体から評価した重要度」に限定するものであるから、上記補正事項は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
したがって、前記補正事項は、実質的に特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本願補正発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)引用例の記載内容
原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-151380号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】筐体と、
前記筐体の前面で、かつその前面と向かい合ったプレイヤーからみて手元となる位置に設置された複数の演出操作手段と、
音楽およびその音楽に対する演出手順に関するデータをそれぞれ記憶する記憶手段と、
前記記憶手段の記憶内容に基づいて前記音楽を演奏する演奏手段と、
前記演奏手段による演奏の進行に連動して、前記演出操作手段を用いた演出操作を前記記憶手段の記憶内容に従って前記プレイヤーに視覚的に指示する演出操作指示手段と、
前記プレイヤーによる前記演出操作に応じた演出効果を発生させる演出効果発生手段と、
前記記憶手段が記憶する前記演出手順と前記プレイヤーによる前記演出操作との相関関係に基づいて当該演出操作を評価する評価手段と、
前記評価手段の評価結果に対応した情報をプレイヤーに対して表示する評価表示手段と、
を備えたことを特徴とする音楽演出ゲーム機。」、
「【請求項4】 前記筐体の前記前面に配置され、所定方向に延びる少なくとも一つのトラックが設けられたインジケータと、
前記演出操作手段の操作時期を示すための指示標識を、その指示標識に対応する演出操作手段の操作時期が到来したときに当該指示標識が前記トラックの一定個所に固定して設定された演出操作位置に到達するように、前記トラックに沿って移動させつつ表示する標識表示手段と、
を前記演出操作指示手段が備えていることを特徴とする請求項1記載の音楽演出ゲーム機。」、
「【請求項13】 前記評価手段は前記演出操作の優劣に応じた点数を演算し、前記評価表示手段はその演算された点数を表示することを特徴とする請求項1記載の音楽演出ゲーム機。」、
「【請求項19】 前記評価手段は、前記演出手順に関するデータによって特定される演出操作の時期と前記プレイヤーによる演出操作の時期との差に基づいて前記演出操作を評価することを特徴とする請求項1記載の音楽演出ゲーム機。」、
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音楽に合わせて演出操作を楽しむゲーム機およびそれに用いて好適な演出操作指示システムに関する。」、
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は音楽に対する演出操作を楽しむことができるゲーム機およびその演出操作を円滑に行わせるための演出操作指示システム・・・を提供することを目的とする。」、
「【0005】
請求項1の発明は、筐体(2)と、前記筐体の前面で、かつその前面と向かい合ったプレイヤーからみて手元となる位置に設置された複数の演出操作手段(15A〜15E,23)と、音楽およびその音楽に対する演出手順に関するデータをそれぞれ記憶する記憶手段(56)と、前記記憶手段の記憶内容に基づいて音楽を演奏する演奏手段(50,52,8A〜8C)と、前記演奏手段による演奏の進行に連動して、前記演出操作手段を用いた演出操作を前記記憶手段の記憶内容に従ってプレイヤーに視覚的に指示する演出操作指示手段(50,51,65)と、プレイヤーによる演出操作に応じた演出効果を発生させる演出効果発生手段(50,52,53,8A,8B,8C,7A,7B)と、前記記憶手段が記憶する演出手順とプレイヤーによる演出操作との相関関係に基づいて当該演出操作を評価する評価手段(50)と、前記評価手段の評価結果に対応した情報をプレイヤーに対して表示する評価表示手段(50,51,61,62A,62B)とを備えた音楽演出ゲーム機により、上述した課題を解決する。
【0006】
この発明によれば、演奏の進行に応じてプレイヤーが演出操作手段を操作すると、その操作に対応した演出効果が音楽に重畳される。これによりプレイヤーは音楽を演出する楽しみを味わうことができる。演奏される音楽に合わせた演出手順を予めデータとして記憶し、そのデータに基づいて適正な演出操作時期をプレイヤーに視覚的に指示するので、プレイヤーはゲーム機からの指示に合わせて演出操作手段を操作すればよく、音楽の演出に長けたプレイヤーに限らず、そのような経験を有しないプレイヤーであっても気軽にゲームを楽しめる。そして、ゲーム機が記憶する演出手順とプレイヤーとの相関関係に基づいて演出操作が評価されて評価結果に応じた情報がプレイヤーに表示されるので、演出手順に種々の難易度を設定する等してゲームの競技性を高めることもできる。」、
「【0011】
請求項4の発明は、請求項1の音楽演出ゲーム機において、前記筐体(2)の前面に配置され、所定方向に延びる少なくとも一つのトラック(例えば66Aまたは67)が設けられたインジケータ(65)と、前記演出操作手段(例えば15Aまたは23)の操作時期を示すための指示標識(68または69)を、その指示標識に対応する演出操作手段の操作時期が到来したときに当該指示標識が前記トラックの一定個所に固定して設定された演出操作位置(PP)に到達するように、前記トラックに沿って移動させつつ表示する標識表示手段(50,51)とを演出操作指示手段が備えていることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、トラック内の演出操作位置に指示標識が達したときに演出操作手段を操作するという単純な操作系を実現でき、ゲーム機の操作に比較的簡単に馴染むことができる。しかも、演出操作位置がトラック内の一定個所に固定されているので、プレイヤーはその演出操作位置に視線を固定してプレイに専念すればよく、指示標識に追従して絶えず視線を動かしながらプレイする必要がない。」、
「【0029】
請求項13の発明は、請求項1記載の音楽演出ゲーム機において、前記評価手段は前記演出操作の優劣に応じた点数を演算し、前記評価表示手段はその演算された点数を表示することを特徴とする。従って、プレイヤーがその操作の優劣を点数によって簡単に判断できるようになる。」、
「【0035】
請求項19の発明は、請求項1記載の音楽演出ゲーム機において、前記評価手段は、前記演出手順に関するデータによって特定される演出操作の時期と前記プレイヤーによる演出操作の時期との差に基づいて前記演出操作を評価することを特徴とする。従って、予め定められた時期から実際の操作の時期がずれるほど評価を厳しくする等、操作の指示とそれに対するプレイヤーの反応との時間的関係に基づいてプレイ内容が評価される。」、
「【0070】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の一実施形態に係る音楽演出ゲーム機の外観を示し、図2はその内部構造を示している。このゲーム機1は筐体2の内外に各種部品を装着して構成される。筐体2は、本体3と、その上部に取り付けられるトップボックス4とを有している。本体3の上部には画面表示部5が設けられている。画面表示部5にはCRTを利用したモニタ6が設置され、そのモニタ6の両側には縦長の装飾灯7A,7Aが設けられている。画面表示部5の下方にはスピーカ8Aが設置される。スピーカ8Aの下方には前方への突出部9が設けられ、その突出部9の前面にもスピーカ8Bが設置される。
【0071】
突出部9の上面にはコントロールパネル10が設けられている。・・・その左方には一人目のプレイヤー用の演出操作部12Aが、右方には二人目のプレイヤー用の演出操作部12Bがそれぞれ設けられている。演出操作部12A,12Bには、鍵盤入力装置13およびターンテーブル入力装置14がそれぞれ設けられる。」、
「【0081】
図6はゲーム機1の制御系の構成を示す図である。この図から明らかなように、ゲーム機1は、マイクロプロセッサを主体として構成され、ゲームの進行に必要な各種の演算や動作制御を行うCPU50と、CPU50からの命令に従って所望の画像をモニタ6に描画する画面描画制御装置51と、CPU50からの命令に従って所望のサウンドをスピーカ8A,8B,8Cから出力させるサウンド制御装置52と、CPU50からの命令に従って装飾灯7A,7Bを明滅させるイルミネーション制御装置53と、記憶手段としてのRAM54、ROM55および補助記憶装置56とを備えている。補助記憶装置56の記憶媒体には磁気記憶媒体を備えたいわゆるハードディスク記憶装置が用いられ、その記憶容量はRAM54、ROM55のそれに比して遙かに大きく設定される。サウンド制御装置52は補助記憶装置56に記録されたPCMデータやADPCMデータをCPU50からの指示に従って受け取ってそれらのデータに対応する音をスピーカ8A,8B,8Cから出力させる機能を有する。
【0082】
上記の各制御装置51〜53、RAM54、ROM55および補助記憶装置56はバス57を介してCPU50と接続されている。また、CPU50には、バス57を介して上述した鍵盤入力装置13、ターンテーブル入力装置14、補助入力装置30および硬貨管理装置35も接続される。
【0083】
ROM55にはゲーム機1の起動時の基本動作等を制御するために必要なプログラムやデータが書き込まれる。補助記憶装置56には、ゲーム機1で使用するBGM(Back Ground Music)としての各種の曲の演奏データおよびその演奏に対応して行うべき演出の手順を指定したデータが書き込まれ、それらのデータはCPU50からの指令に応じてRAM54の所定領域にロードされる。演奏データは例えばPCMデータやADPCMデータとして作成される。
【0084】
補助記憶装置56に書き込まれた演奏データとそれに対応する演出手順との対応関係を図7および図8に例示する。・・・」、
「【0085】
図7(a)に示したように、曲Xのデータは複数のフレーズF1,F2,F3…から構成されている。そして、例えばフレーズF1における鍵盤キーA〜Eおよびターンテーブルの演出操作は図7(b)のタイムチャートの如く定められる。図中の矩形部分(ハッチング部分)が演出操作を行う時期を示しており、矩形部分の左端が操作開始時刻、右端が操作終了時刻、長さが操作継続時間である。補助記憶装置56には、図7(b)のタイムチャートに従って、鍵盤キーA〜Eおよびターンテーブル毎の操作開始時刻および操作終了時刻が数値化されて記憶される。」、
「【0088】
本ゲーム機1は二組の演出操作部12A,12Bを有するため、演出手順に関するデータはそれら演出操作部12A,12B毎に作成されて補助記憶装置56に書き込まれる。演出操作部12A,12B毎に異なる演出手順を設定することにより、交互に掛け合うようなプレイを実現したり、プレイヤー毎に異なる効果音を発生させることができる。このため、一人でプレイする場合よりも多彩な演出が可能となり、ゲームの楽しさが増す。
【0089】
図9は、ゲームのプレイ中に、画面描画制御装置51を介してモニタ6に表示されるゲーム画面を示すものである。このゲーム画面の中央には主表示部60が設けられ、その主表示部60の上方にはグルーヴゲージ表示部61が、下方には一対のスコア表示部62A,62Bが設けられる。・・・」、
「【0090】
・・・スコア表示部62Aには演出操作部12Aの演出操作に対応したゲームのスコア(点数)が表示され、スコア表示部62Bには演出操作部12Bの演出操作に対応したゲームのスコアが表示される。
【0091】
主表示部60の左右には、演出操作の時期をプレイヤーに指示するためのインジケータ65A,65Bが表示される。各インジケータ65A,65Bの内容は同一であり、これらを区別する必要のないときはインジケータ65と表記する。インジケータ65には、上下方向に延びる5本の鍵盤トラック66A,66B,66C,66Dおよび66Eと、1本のターンテーブルトラック67とが設けられている。鍵盤トラック66A〜66Eはそれぞれ鍵盤キー15A〜15Eの操作時期を個別に示すために設けられ、ターンテーブルトラック67はスライドディスク23の操作時期を示すために設けられている。
【0092】
鍵盤トラック66A〜66Eには鍵盤キー15A〜15Eにそれぞれ対応したアイコン68…が表示され、ターンテーブルトラック67にはスライドディスク23に対応したアイコン69が表示される。これらのアイコン68,69は演奏の進行に伴って鍵盤トラック66A〜66Eまたはトラック67を矢印Vで示したように下方に移動する(トラック66Bに表示された想像線参照)。
【0093】
そして、アイコン68,69が各トラック66A〜66E,67の下端に設定された演出操作位置PPに達したとき、そのトラック66A〜66Eまたは67に対応する鍵盤キー15A〜15Eまたはスライドディスク23の操作時期が到来する。演出操作位置PPには、鍵盤キー15A〜15Eをそれぞれ模した鍵盤状アイコン70A〜70Eと、ターンテーブル入力装置14のスライドディスク23を模したターンテーブル状アイコン71とがトラック66A〜66Eおよび67に対応させて表示される。
【0094】
図10では左端の鍵盤トラック66Aに表示されたアイコン68が演出操作位置PPに達しており、この時点を基準としてアイコン68がトラック66Aの下方に消え去るまで鍵盤キー15Aを操作することがプレイヤーに指示される。アイコン68,69の長さL1,L2は鍵盤キー15またはスライドディスク23の操作継続時間に応じて伸縮され、それにより、プレイヤーに対して操作開始時刻のみならず操作継続時間までも指示することができる。
【0095】
このようなアイコン68,69の移動表示を行うには、例えば図7(b)に示したタイムチャートにおいて、トラック66A〜66Eおよび67の全長に対応したインジケータ表示範囲を設定し、その表示範囲を演奏の進行に伴って右方に移動させつつ、表示範囲の左端をトラック66A〜66E,67の下端に、表示範囲の右端をトラック66A〜66E,67の上端に、タイムチャート内の演出操作時期をアイコン68,69にそれぞれ置き換えてインジケータ65の表示を随時書き換えればよい。」、
「【0099】
図12は一つのステージにおけるCPU50の処理手順を示すフローチャートである。この処理では、まず現在のステージに対応する演奏データおよびその演出手順に関するデータの一部または全部を補助記憶装置56からRAM54にロードし(ステップS1)、そのデータに基づいてステージ内容をプレイヤーに紹介する(ステップS2)。・・・」、
「【0100】
ステージ紹介後、所定の合図をプレイヤーに表示または音声で知らせた上で、RAM54または補助記憶装置56が記憶する演奏データに基づいた曲の演奏をサウンド制御装置52に命令する(ステップS3)。これにより所定の音楽の演奏が開始される。演奏開始後はインジケータ65に表示されたアイコン68,69の位置を現在の演奏位置に合わせて更新する(ステップS4)。この更新を周期的に繰り返すことにより、アイコン68,69が演奏の進行に連動してインジケータ65内を下方へと逐次移動する。
【0101】
次いで、現在の演奏位置と演出手順データとに従って鍵盤キー15またはスライドディスク23の操作時期が到来したか否かを判別し(ステップS5)、時期が到来していれば所定のタイミング表示を行う(ステップS6)。このタイミング表示は、インジケータ65内の演出操作位置PPに達したアイコン68または69の表示色を変化させて行う。また、鍵盤キー15A〜15Eのいずれかの操作時期が到来しているときは、操作すべき鍵盤キー15の表示灯17を点灯または点滅させてどのキーを操作すべきかプレイヤーに指示する。
【0102】
タイミング表示後は鍵盤キー15A〜15E、スライドディスク23、押釦スイッチ31A〜31Cのいずれかが操作されたか否かを判別し(ステップS7)、操作ありと判断したときはその操作に対応した演出効果を発生させる(ステップS8)。このときの演出効果には、操作された部材に対応する効果音をスピーカ8A,8B,8Cから出力させる処理、および装飾灯7A,7Bを操作内容に応じて明滅させる処理が含まれる。鍵盤キー15A〜15Eまたは押釦スイッチ31A〜31Cの操作に対する効果音は図8に例示した通りであり、スライドディスク23の操作に対する効果音は上述したスクラッチ効果音である。
【0103】
演出効果を発生させた後は、プレイヤーの操作内容と演出手順データにて指定された演出操作時期との一致度、この場合は操作開始時期のずれおよび操作継続時間のずれを所定の計算式に従って演算する(ステップS9)。計算式は、操作開始時期または操作継続時間がずれるほど一致度が小さくなるよう設定される。操作すべき鍵盤キー15またはスライドディスク23とは異なるものが操作されたときには一致度が評価されないか、または負の値として演算される。
【0104】
ステップS5において操作時期が到来していないと判断したときは、上述したステップS6のタイミング表示を行うことなく、鍵盤キー15A〜15E、スライドディスク23、押釦スイッチ31A〜31Cのいずれかが操作されたか否かを判別する(ステップS10)。操作ありと判別したときは、その操作に対応した演出効果を発生させる(ステップS11)。このときの演出効果にも、操作された部材に対応する効果音をスピーカ8A,8B,8Cから出力させる処理、および装飾灯7A,7Bを操作内容に応じて明滅させる処理が含まれる。」、
「【0106】
ステップS9またはステップS12の演算後は、それらの演算結果に基づいてモニタ6のグルーヴゲージ表示部61のゲージ量(ゲージバー61bの長さ)およびスコア表示部62A,62Bに表示されるスコア(点数)を演算する(ステップS13)。ゲージ量はプレイの優劣に応じて増減するように計算され、例えば一致度やアドリブ効果値が基準値以上であればその基準値との差に応じてゲージ量を増加させ、基準値以下であれば基準値との差に応じてゲージ量を減少させる。・・・」、
「【0111】
本実施形態では、上述した実施形態と同様にゲームに使用するBGMとして予め複数の曲が用意される。そして、各曲毎に図13(a)に示すデータが作成されて補助記憶装置56に記録される。曲Xのデータは波形データ、波形テーブルデータおよび演奏データを含んでいる。
【0112】
図13(b)に示すように、波形データはBGMデータおよび効果音データを含んでいる。BGMデータは曲Xを再生するためのデータであり、効果音データは鍵盤キー15やターンテーブル入力装置14のスライドディスク23を操作したときに発生させる音のデータである。これらのデータは例えばPCMデータやADPCMデータとして作成されて記録される。曲毎のデータに効果音データを含めたのは、BGMの種類に応じて適切な効果音を発生させるためである。」、
「【0114】
図14に示すように、演奏データは、操作タイミングデータ、自動演奏タイミングデータ、割り当て波形番号データ、テンポデータを含んでいる。・・・」、
「【0115】
操作タイミングデータは、曲Xに対する鍵盤キー15やスライドディスク23の操作タイミングを曲Xの演奏開始からの経過時間に対応付けて指定したデータである。換言すれば、操作タイミングデータは、曲Xの演奏開始からどれだけ経過した時点でどの鍵盤キー15またはスライドディスク23が操作されるべきかを定義したデータであり、上述した図7に示すタイミングチャートを演奏開始からの経過時間に対応付けて数値化したデータに相当する。図7にて説明したように、操作タイミングデータは5つの鍵盤キーA〜Eと1つのターンテーブルのそれぞれに分けて作成される。この操作タイミングデータがインジケータ65の表示や鍵盤キー15,スライドディスク23の操作に対する判定の基礎となる。なお、曲Xが複数のフレーズを有している場合、そのフレーズの区切り時刻を示す情報も操作タイミングデータに含まれる。」、
「【0138】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の音楽演出ゲーム機によれば、ゲーム機が演奏する音楽とプレイヤーの演出操作に応じた演出効果とを重畳することにより、プレイヤーに対して音楽を演出するという従来にない新鮮なプレイを体験させることができる。音楽に合わせた適正な演出操作時期をプレイヤーに視覚的に指示するので、音楽の演出に長けたプレイヤーに限らず、そのような経験を有しないプレイヤーであっても気軽にゲームを楽しむことができ、その一方で演出操作のタイミングだけでなく、その操作の継続時間を指定したり、複数の操作を同時に要求するなどしてゲームの難易度を広範に変化させることができ、さらにはスクラッチ効果音の発生や電飾の変化により高い演出効果を発生させることもできるので、馴染みやすくかつ奥の深い音楽演出ゲームを提供できる。プレイヤーに対して指示された演出操作とプレイヤーの操作との関係に基づいて演出操作が評価されてその結果がプレイヤーにフィードバックされるので、単なる演出を楽しむだけでなく、より高い評価を求めてゲームを行うという競技性も十分に確保できる。
【0139】
また、本発明の演出操作指示システムによれば、インジケータの一定位置に指示標識が達したときに演出操作手段を操作するという単純で馴染みやすい操作系を実現でき、演出操作の指示を確認する際のプレイヤーの視線移動を抑えて指示内容の把握を容易なものとすることができる。従って、プレイヤーに音楽の演出を存分に楽しませることができる。」。

上記記載事項を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「ゲーム画面が表示される画面表示部と、
プレイヤー用の演出操作手段と、
曲Xの演奏開始からどれだけ経過した時点でどの鍵盤キー15が操作されるべきかを定義した操作タイミングデータ等、音楽およびその音楽に対する演奏手順に関するデータを記憶する記憶手段と、
前記演出操作手段を用いた演出操作を前記記憶手段の記憶内容に従って前記プレイヤーに視覚的に指示する演出操作指示手段と、
前記演出手順に関するデータによって特定される演出操作の時期と前記プレイヤーによる演出操作の時期との差に基づいて前記演出操作を評価する評価手段と、
前記演出操作指示手段は、所定方向に延びる少なくとも一つのトラックが設けられたインジケータと、前記演出操作手段の操作時期を示すための指示標識を、その指示標識に対応する演出操作手段の操作時期が到来したときに当該指示標識が前記トラックの一定個所に固定して設定された演出操作位置に到達するように、前記トラックに沿って移動させつつ表示する標識表示手段とを備え、演奏手段による演奏の進行に連動して、前記演出操作手段を用いた演出操作を前記記憶手段の記憶内容に従って前記プレイヤーに視覚的に指示し、
前記評価手段は、前記演出手順に関するデータによって特定される演出操作の時期と前記プレイヤーによる演出操作の時期との差に基づいて前記演出操作を評価し、前記演出操作の優劣に応じた点数を演算する、
音楽演出ゲーム機。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明における「画面表示部」、「演出操作手段」、「操作タイミングデータ」、「記憶手段」、「指示標識」、「点数」、「音楽演出ゲーム機」は、それぞれ本願補正発明における「表示装置」、「操作部材」、「操作タイミングを定義したデータ」、「記憶装置」、「タイミングマーク」、「スコア」、「ゲームシステム」に相当し、
引用例記載の発明における「前記演出手順に関するデータによって特定される演出操作の時期と前記プレイヤーによる演出操作の時期との差に基づいて前記演出操作を評価する」事項は、記憶されている演出操作の時期とプレイヤーによる演出操作の時期との差を評価することを意味するもので、基準となる操作データとプレイヤーの操作タイミングとのずれを評価することにほかならないことから、本願補正発明における「前記プレイヤーの前記操作部材に対する操作タイミングを評価する」事項に相当し、
引用例記載の発明における「演奏手段による演奏の進行に連動して、前記演出操作手段を用いた演出操作を前記記憶手段の記憶内容に従って前記プレイヤーに視覚的に指示」する事項は、指示標識を用いてプレイヤーに演出操作時期が到来したことを指示しているのは明らかであるから、本願補正発明における「ゲーム中には所定のBGMの曲が再生されるとともに、前記BGMに応じた手順で前記操作部材を操作するように前記操作指示手段が前記タイミングマークを利用してプレイヤーに前記操作タイミングの指示を出」す事項に相当する。
そうすると、両者は、

「ゲーム画面の表示装置と、
プレイヤーによる操作が可能な操作部材と、
ゲーム中における前記操作部材の操作タイミングを定義したデータを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置が記憶するデータに基づいて、ゲーム中の前記操作部材の操作タイミングを指示するための画像を前記表示装置の画面上に表示する操作指示手段と、
前記プレイヤーの前記操作部材に対する操作タイミングを評価する評価手段と、
を備え、
前記操作指示手段は、前記操作タイミングを指示するための画像として、前記操作部材の操作を指示するためのタイミングマークを前記表示装置の画面上に表示させるとともに、前記タイミングマークが前記表示装置の画面上の所定位置に達したときに前記操作部材の操作タイミングが到来するように前記タイミングマークをゲームの進行に応じて前記表示装置の画面上で移動させるものであり、
ゲーム中には所定のBGMの曲が再生されるとともに、前記BGMに応じた手順で前記操作部材を操作するように前記操作指示手段が前記タイミングマークを利用してプレイヤーに前記操作タイミングの指示を出し、
前記評価手段は、前記タイミングマークにて指示されたタイミングで操作部材の操作が行われた場合に、スコアをプレイヤーが獲得するように前記操作タイミングを評価するゲームシステム」

である点で一致し、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で相違する。

(相違点)
本願補正発明は、各タイミングマークに対して曲全体から評価した重要度を設定するとともに、評価手段がタイミングマークの重要度に見合ったスコアとなるよう評価し、かつ操作指示手段が重要度の高いタイミングを他のタイミングマークと区別されたオブジェとして表示するのに対し、引用例にはそのような事項が記載されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
本願補正発明に記載の「タイミングマークには曲全体から評価した重要度が設定され」および「タイミングマークの重要度に見合ったスコア」における「重要度」とは如何なるものか具体的な指標が本願の請求項1に明示されていないものの、本願明細書における発明の詳細な説明には、主旋律、伴奏等の演出操作を異なるゲーム操作対象として得点を競う音楽演出ゲームにおいて、主旋律の演出操作タイミングを指示するタイミングマークのスコアと、伴奏の演出操作タイミングを指示するタイミングマークのスコアとを変えて設定する点が記載されていることを参酌すると、本願補正発明における、「タイミングマークには曲全体から評価した重要度が設定され」、「タイミングマークの重要度に見合ったスコア」(をプレイヤーが獲得する)とは、異なる複数のゲーム操作対象からなる音楽演出ゲームにおいて、タイミングマークに設定されたスコアをある観点に基づいて相違させることを意味するものと認められる。
一方、音楽演出ゲームにおいて、ゲーム画面上に流れる複数の音符を、主旋律と伴奏というゲーム操作対象に分け、それぞれ別個に演出操作することは、周知・慣用の事項(例えば、「ビートマニア プレス ミックス 初版」(以下、「周知例1」という。)1999年1月31日発行、コナミ株式会社、p.5,7,11,42参照)にすぎず、また、得点を競い合うTVゲームにおいて、ゲーム操作対象として、表示態様の異なる複数種類のキャラクタ(例えば、ボスキャラや敵本体と、その他のキャラクタ等)を設定し、各キャラクタの種類毎に異なる点数を設定して、それらキャラクタを撃破すると同キャラクタに設定された点数を獲得できることは、本願出願前周知・慣用の技術事項(例えば、「ナムコミュージアム vol.2 超研究所 初版」(以下、「周知例2」という。)1996年4月25日発行、株式会社メディアファクトリー、p.12-15等参照)である。
そうすると、引用例記載の発明において、演出操作時期を指示する指示標識を、前記周知例1に示すような主旋律用指示標識と伴奏用指示標識という異なるゲーム操作対象の演出操作指示標識に分けることは、容易に想到し得たものと認められ、さらに、前記異なるゲーム操作対象の演出操作指示標識の種類毎に表示態様や点数を相違させることも、前記周知例2に示されるように当業者が適宜採用できる単なる設計的事項である。

そして、本願補正発明によって奏する効果も、引用例記載の発明及び周知技術事項から普通に予測できる範囲のものである。

よって、本願補正発明は、上記引用例記載の発明及び周知技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるとした原審における補正却下の決定は妥当なものである。

3.本願発明について
平成14年2月4日付の手続補正を却下した決定は、上記「2.」のとおり妥当なものであるので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年10月29日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりものである。

「ゲーム画面の表示装置と、
プレイヤーによる操作が可能な操作部材と、
ゲーム中における前記操作部材の操作タイミングを定義したデータを記憶する記憶装置と、
前記記憶装置が記憶するデータに基づいて、ゲーム中の前記操作部材の操作タイミングを指示するための画像を前記表示装置の画面上に表示する操作指示手段と、
前記プレイヤーの前記操作部材に対する操作タイミングを評価する評価手段と、
を備え、
前記操作指示手段は、前記操作タイミングを指示するための画像として、前記操作部材の操作を指示するためのタイミングマークを前記表示装置の画面上に表示させるとともに、前記タイミングマークが前記表示装置の画面上の所定位置に達したときに前記操作部材の操作タイミングが到来するように前記タイミングマークをゲームの進行に応じて前記表示装置の画面上で移動させるものであり、
各タイミングマークに重要度が設定され、
前記評価手段は、前記タイミングマークにて指示されたタイミングで操作部材の操作が行われた場合に、前記タイミングマークの重要度に見合ったスコアをプレイヤーが獲得するように前記操作タイミングを評価し、
前記操作指示手段は前記重要度が高いタイミングを他のタイミングマークと区別されたオブジェとして表示させることを特徴とするゲームシステム。」

(1)引用例の記載内容
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物である引用例、及び、その記載内容は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の「操作指示手段」から「ゲーム中には所定のBGMの曲が再生されるとともに、前記BGMに応じた手順で前記操作部材を操作するように前記操作指示手段が前記タイミングマークを利用してプレイヤーに前記操作タイミングの指示を出」す事項を削除すると共に、本願補正発明の「曲全体から評価した重要度」から「曲全体から評価」する限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び周知技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-01 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-24 
出願番号 特願平11-372760
審決分類 P 1 8・ 121- ZB (A63F)
P 1 8・ 575- ZB (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
小田倉 直人
発明の名称 ゲームシステムおよびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体  
代理人 山本 晃司  
代理人 中村 聡延  
代理人 星野 哲郎  

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