• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F
管理番号 1144672
審判番号 不服2004-384  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-05 
確定日 2006-10-05 
事件の表示 平成10年特許願第353545号「液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月30日出願公開、特開2000-180827〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成10年12月11日の特許出願であって、その請求項1ないし6に係る発明は、平成15年9月26日付けで補正された明細書の特許請求の範囲請求項1ないし6に記載された事項によりそれぞれ特定されるものであるところ、請求項3に係る発明は次のとおりである。
「【請求項3】少なくとも2枚の基板によって形成される空隙内に自発分極を有する液晶物質が封入されており、夫々の画素に対応して前記液晶物質による光透過率を制御すべくオン/オフ駆動されるスイッチング素子を設けた液晶表示装置において、前記スイッチング素子がオンとなっている期間内で前記液晶物質の自発分極の応答がほとんど生じないようにしたことを特徴とする液晶表示装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-160812号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、次の記載がある。
「【0057】【実施例】
〔実施例1〕以下に本発明を利用した液晶電気光学装置の実施例を示し、本発明を実施例に則して説明する。本実施例により作製した液晶電気光学装置の構成を図8に示す。セルの一方の基板11は無アルカリガラス基板上に形成した結晶性シリコンTFTを用いたアクティブマトリクス15を作製した。該アクティブマトリクス基板の回路構成は図4に示すように、補助容量を設けなかった。TFTはシングルゲイトのPMOSを用いたが、これはリーク電流が小さく、ON/OFFが大きくとれるためである。典型的にはリーク電流は1pA以下(ゲイト電圧+15V、ドレイン電圧-10V)以下、ON/OFF比7.5桁以上(ゲイト電圧-15V/+15V、ドレイン電圧-10V)であった。」
「【0058】他方の基板12には全面にITO膜14を形成し、その上にショート防止用の酸化珪素膜21を形成した基板を使用した。」
「【0059】画素13の大きさは20μm×60μmとし、マトリクスの規模は1920×480であった。各画素の電荷保持特性を調べたところ、データ信号として、-10Vを印加した時の最も悪いものは3msec後の電圧で約-9Vであった。」
「【0060】…、本実施例ではマトリクスに印加する走査信号パルスの幅は1μsecとし、パルスの波高は-15V、データ信号は±15Vとした。」
「【0061】…。次に前記基板を間隔1〜7μmの無機製のスペーサーを間に挟んで加圧して挟んだ。これら2枚の基板間に液晶材料17を注入した。」
「【0062】…。本実施例にて使用した液晶材料はチッソ(株)製の強誘電性液晶、CS-1014である。…。液晶セルの厚さは1.6μmとした。液晶の自発分極は5nC/cm2であった。」

以上の記載によれば、引用刊行物には、「一方の基板11と他方の基板12によって形成される空隙内に自発分極を有する強誘電性液晶の液晶材料17が封入されており、夫々の画素に対応してTFTを設けた液晶電気光学装置において、走査信号パルスの幅を1μsecとした液晶電気光学装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明と引用発明を対比するに、引用発明の「液晶電気光学装置」が「液晶表示装置」であることは明らかであり、また、引用発明の「一方の基板11と他方の基板12」が本願発明の「少なくとも2枚の基板」に相当し、引用発明の「自発分極を有する強誘電性液晶の液晶材料17」が本願発明の「自発分極を有する液晶物質」に相当する。
また、引用発明の「TFT」が本願発明の「液晶物質による光透過率を制御すべくオン/オフ駆動されるスイッチング素子」に相当することが明らかであり、引用発明において「走査信号パルスの幅」の期間だけ前記TFTがONされることも明らかである。
したがって、両者は、
「少なくとも2枚の基板によって形成される空隙内に自発分極を有する液晶物質が封入されており、夫々の画素に対応して前記液晶物質による光透過率を制御すべくオン/オフ駆動されるスイッチング素子を設けた液晶表示装置」の発明である点で一致し、前記スイッチング素子がオンとなっている期間について、本願発明では、「前記スイッチング素子がオンとなっている期間内で前記液晶物質の自発分極の応答がほとんど生じない」とされているのに対し、引用発明では、この期間が1μsecとされている点で一応相違する。

この点について検討するに、引用刊行物の段落【0037】には、
「【0037】強誘電性液晶もしくは反強誘電性液晶は応答速度が速いものでも数μsecである。より精細な階調を行うため、例えばパルス幅が1μsでなければならないとするなら、液晶分子の反転はTFTがOFF状態の時に行われることになる。」と記載されている。
この記載によれば、スイッチング素子がオンとなっている期間が1μsの場合、液晶分子の反転はスイッチング素子がオフ状態の時に行われ、オンである1μsの期間内ではほとんど液晶分子の反転は行われないものと認められるから、引用発明においても、TFTがONとなっている期間の1μsecでは、液晶物質の自発分極の応答はほとんど生じないものと認められる。
したがって、スイッチング素子がオンとなっている期間について、引用発明と本願発明に格別の相違を認めることができない。

以上のとおりであって、本願発明と引用発明に格別の相違を認めることができず、本願発明は、引用刊行物に記載されたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
なお、原査定の理由は、本願発明について特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとするものであるが、その内容は、「(本願発明は、)引用文献1(引用刊行物)に記載の発明以上の格別のものとは認められない。」というものであり、審判請求人が意見書及び審判請求書において、本願発明が上記引用刊行物に記載された発明であるかについても検討していることは明らかである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-04 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-22 
出願番号 特願平10-353545
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井口 猶二  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 鈴木 俊光
吉野 三寛
発明の名称 液晶表示装置  
代理人 河野 登夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ