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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1144676
審判番号 不服2004-2683  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-10-09 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-12 
確定日 2006-10-05 
事件の表示 平成 9年特許願第 72200号「LED表示ユニット及びそれを用いた信号灯」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月 9日出願公開、特開平10-268814〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯及び当審拒絶理由通知の概要
1.手続の経緯
本願は、平成9年3月25日の出願であって(以下、平成9年3月25日を「本願出願日」という。)、その出願からの主だった経緯を箇条書きにすると以下のとおりである。
・平成 9年 3月25日 本願出願
・平成15年 9月26日付け 原審にて拒絶理由の通知
・平成15年11月25日付け 意見書・手続補正書の提出
・平成16年 1月 6日付け 原審にて拒絶査定の通知
・平成16年 2月12日付け 本件審判請求
・平成16年 3月15日付け 審判請求書に係る手続補正書及び明細書に係る手続補正(平成14年改正前特許法第17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正)書の提出
・平成18年 7月 7日付け 当審にて補正の却下の決定及び拒絶理由の通知
・平成18年 7月14日付け 意見書・手続補正書の提出

2.当審拒絶理由通知の概要
1)本件出願の請求項1〜4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1及び2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2)本件出願の請求項1〜4に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1〜10に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物1:特開平5-94140号公報(後述「補正却下決定の理由」参照。)
刊行物2:特開平6-214511号公報(【請求項2】、【0003】〜【0006】、【0016」〜【0019】参照。)
刊行物3:実願昭58-188126号(実開昭60-96831号)のマイクロフィルム
刊行物4:特開平1-260843号公報
刊行物5:特開平8-241056号公報
刊行物6:実用新案登録第3001975号公報
刊行物7:特開平7-287043号公報
刊行物8:特開平7-296294号公報
刊行物9:特開平8-87696号公報
刊行物10:実願平4-63371号(実開平6-26112号)のCD-ROM

第2 本願発明
本願の【請求項1】に係る発明は、平成18年7月14日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。また、新規事項の追加に該当するものではない。
「複数の発光ダイオードと、発光観測面側から見て前記発光ダイオードが所望の形状に配置されるケースと、を備えたLED表示ユニットであって、
前記ケースは、前記発光観測面の反対側となる裏面側に、前記LED表示ユニットの取っ手となる保持手段を有しており、その保持手段は、前記ケースの裏面における一対の開口部により設けられてなることを特徴とするLED表示ユニット。」

第3 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
本願出願日前である平成5年4月16日に頒布された特開平5-94140号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 複数個の表示素子からなる表示ユニットが複数列、複数段に隣接して配設された表示装置において、隣接する表示ユニットの間から表示ユニットを表示面側に押し出した後に回転させる回転支持手段を表示ユニットの背面側に設けたことを特徴とする表示装置。」(【特許請求の範囲】参照。)」
(イ)「【従来の技術】近年、各種競技場やイベント会場などにおいては、競技結果の情報や種々の映像などを表示するために、大型の電光表示装置の設置が盛んに行われている。この表示装置は、LED等の複数の表示素子からなる表示ユニットと、この表示ユニットが収納される表示ユニット収納枠体と、複数台の表示ユニット収納枠体を支持する支柱15とからなっている。
表示素子等が破損して表示ユニットを表示ユニット収納枠体から取り外す場合には、支柱等により表示ユニットをそのまま背面側に引き出すことが出来ないので、隣接する表示ユニット間から、一台の表示ユニットを表示面側に押し出した後に、表示ユニットの方向を変えて、背面側に引き出している。このとき、表示ユニットの背面側に取り付けられている取っ手を持って、表示面側に押し出した後に、表示ユニットを腕を伸ばした状態で支えて方向を変える。」(【0002】〜【0003】参照。)
(ウ)「第1実施例
図2に示す如く、本実施例の表示装置1は、LED等からなる複数個の表示素子が縦横に配列された表示ユニット3と、この表示ユニット3が載置される表示ユニット収納枠体5と、この表示ユニット収納枠体5を支持する支柱7と、図示しない表示面パネルとからなっている。
上記表示ユニット3は、図1に示す如く背面側に回転支持手段であるU字状の一対の取手9が、回転支持部材11により間隔を開けた状態すなわち表示ユニット3の背面側の側部にそれぞれ段違いにそれぞれ回転自在に支持されている。
図2(a)に示す如く、隣接して複数台の表示ユニット3が配列されている状態から、一台の表示ユニット3を取り出す場合には、図2(b)に示す如く取手9を持って表示面側に押し出す。
このとき取手9が表示ユニット3の背面側に設けられているので、従来のようの腕を伸ばして押し出すことがない。この状態から図2(c)に示す如く一方の取手9を前方に押し出し、他方の取手9を手間に引けば、表示ユニット9は容易に回転し、方向を変化させることが出来る。
そして、図2(d)に示す如く方向を略90°変化させた状態で、背面側に引き込む。これにより、一台の表示ユニット3を隣接する表示ユニット間から容易に取り外すことが出来る。この作業において、作業者は腕を伸ばした状態で、表示ユニット3を回転させる作業がなくなり、取手9を操作することにより、表示ユニット3を容易に回転させることが出来、しかもその作業は手先作業ではなくなるので、表示ユニット3を落下させることがない。
なお、図3に示す如く、取手9の一方を手前側が上下に凸部13突出した形状の取手15とし、取手15の長さL1を表示ユニット3の厚さL2より長くすることにより、表示ユニット3を表示面側に押し出した場合により確実に脱落を防止することが出来る。」(【0011】〜【0016】参照。)
(エ)図1より、表示ユニットは略直方体形状の筐体からなることが明らかである。

2.引用刊行物に記載の発明の認定
上記記載事項(イ)より、引用例1の表示素子にLEDが包含されることは明らかである。
上記記載事項(ウ)より、表示ユニットにおける表示素子は表示面側に縦横に配列されていることが明らかである。
したがって、上記各記載事項を含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数個のLEDが表示面側に縦横に配列され略直方体形状の筐体からなる表示ユニットにおいて、表示ユニット背面側にU字状の一対の取手を設けたことを特徴とする表示ユニット。」

3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「複数個のLED」、「表示面側に縦横に配列され」、「略直方体形状の筐体からなる表示ユニット」、「背面側」及び「取手」はそれぞれ本願発明の「複数の発光ダイオード」、「発光観測面側から見て所望の形状に配置され」、「ケースとを有するLED表示ユニット」、「発光観測面側と反対側」及び「取っ手となる保持手段」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「複数の発光ダイオードと、発光観測面側から見て前記発光ダイオードが所望の形状に配置されるケースと、を備えたLED表示ユニットであって、
前記ケースは、前記発光観測面の反対側となる裏面側に、前記LED表示ユニットの取っ手となる保持手段を有しているLED表示ユニット。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
取っ手となる保持手段が、本願発明では、ケースの裏面における一対の開口部により設けられてなるものであるのに対して、引用発明では、一対のU字状のものである点。

4.相違点についての判断
本願発明の「一対の開口部により設けられてなる」取っ手となる保持手段については、前述のように本願明細書の段落【0029】及び【図3】(c)に詳述されている(以下、「【図3】(c)の実施例」という。)が、取っ手となる保持手段の実施例としてのネジにより固定する保持手段(以下、「【図3】(A)の実施例」という。)及び突起部からなる保持手段(以下、「【図3】(B)の実施例」という。)と等価で例示されていたものである。
すると、当該【図3】(A)の実施例や【図3】(B)の実施例のようにケースの裏面から突出して設けられてなる取っ手となる保持手段も、【図3】(C)の実施例のようにケースの裏面の一対の開口部により設けられてなる取っ手となる保持手段も、取っ手となる保持手段としての機能に差異はないものと解される。
ここで、一般的に、取っ手となる保持手段を凸状のものとするか一対の開口部により設けられてなるものとするかは、用途やデザイン等の要請に応じて適宜選択し得るものであるから、取っ手となる保持手段を、【図3】(A)の実施例や【図3】(B)の実施例のようにケースの裏面から突出して設けられてなるものとするか、【図3】(C)の実施例のようにケースの裏面の一対の開口部により残された一対の開口部の間の部分からなるものとするかは、当業者が設計に際し適宜選択し得る事項というべきである。
そして、ケースの裏面の一対の開口部により設けられてなる取っ手となる保持手段は、従来より慣用されてきた手段である(例えば、実願昭50-116828号(実開昭52-31623号)のマイクロフィルム、実願昭63-59247号(実開平1-161414号)のマイクロフィルム及び特開平7-187176号公報等参照。以下、「慣用技術」という。)。
よって、引用発明において、取っ手となる保持手段を、一対のU字状のものに替えて、慣用技術であるケースの裏面における一対の開口部により設けられてなるものとすること、すなわち、相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは当業者にとって容易想到である。
なお、発熱する機器のケースに開口を設ければ熱が外部に放出されることは自明であるし、開口部自体が取っ手となるものではあるが、取っ手となる開口部を放熱用の開口として兼用することも従来より慣用されてきた手段である(例えば、実願昭51-141333号(実開昭53-59328号)のマイクロフィルム、実公昭47-12888号公報及び実公昭42-17452号公報等参照。)。

5.本願発明の進歩性の判断
以上によれば、相違点に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明及び慣用技術から当業者が容易に想到し得るものであり、これら相違点に係る発明特定事項を採用したことによる格別な作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-09 
結審通知日 2006-08-10 
審決日 2006-08-22 
出願番号 特願平9-72200
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松川 直樹  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 藤井 勲
藤本 義仁
発明の名称 LED表示ユニット及びそれを用いた信号灯  

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