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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1144686
審判番号 不服2004-10641  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-20 
確定日 2006-10-05 
事件の表示 平成 5年特許願第302753号「ファクシミリ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月23日出願公開,特開平 7-162622〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は,平成5年12月2日の出願であって,平成16年4月15日付けで拒絶査定がされ,これに対して,同年5月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年6月21日付けで手続補正がなされたものである。
同手続補正は,特許請求の範囲の請求項1ないし5の補正を含むものであるが,その請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。
「【請求項1】 大容量を有する画情報記憶手段を備えたファクシミリ装置であって,スキャナ部で読み取った画情報を前記画情報記憶手段に記憶する場合に,該画情報毎に,少なくともファイル番号および該画情報を前記画情報記憶手段に記憶した蓄積日時を含む複数の管理項目からなる画情報ファイルを記憶する管理情報記憶手段と,前記画情報をコピー出力または送信した後,画面に表示された検索条件となり得る前記複数の管理項目の中から所望の管理項目を選択させ,選択された管理項目に対する更なる詳細データの入力により検索条件を決定し,この検索条件で前記画情報記憶手段から所望の画情報を検索して出力または送信する手段を設けたことを特徴とするファクシミリ装置。 」

2 引用刊行物記載の発明
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,「特開昭63-233668号公報」(以下「引用例1」という。)には,大容量の記憶手段を備えたファクシミリ装置であって,受信した画情報をいったん記憶手段に記憶し,該受信画像を出力した後,再度同じ画像を出力する手段を有するものが記載され,具体的には次の事項が記載されている。
(1) 「〔産業上の利用分野〕
本発明はファクシミリ装置に関し,特に受信画像蓄積用メモリを有するフアクシミリ装置に関する。
〔従来の技術〕
従来のファクシミリは画像蓄積用メモリを持たないものが多かった。近年大容量半導体メモリの普及により,数10から数100頁分の蓄積用メモリを有するファクシミリが開発されてきている。これらのファクシミリはメモリでいったん画像を受信するが,プリンタ出力後は受信文書をメモリから消していた。」(2頁左上欄6〜17行)

(2) 「〔問題点を解決するための手段及び作用〕
本発明は上述の如き問題点に鑑み,受信画像をプリント出力後も画像記憶手段内に記憶せしめておき,指定手段の指定により任意の画像情報をプリントさせることにより受信文書の複写を可能にしたものである。」(2頁右上欄6〜11行)

(3) 「送信時にはリーダー10に原稿をセットし,相手先番号を指定してスタートキー32を押下するとリーダー10は原稿画像の読取を開始し,得られた画像信号はリーダー/プリンタインタフェース14で圧縮符号化されたのち,いったん画像メモリ16に蓄積される。その後,通信制御装置18又は20を介して回線A又はBに送出される。」(2頁左下欄14行〜末行)

(4) 「受信文書再出力時は,第11図に示すように前もって受信文書の検索を行う。キー#,▼と押下すると,表示に古い文書の順に日時,宛先があらわれる。コピーしたい文書があらわれるまでキー▼を押す。コピーしたい文書の表示がでたらセットキーセットを押す。」(3頁右下欄末行〜4頁左上欄5行,なお四角枠で囲われた記号は枠を省略した。)

同じく,原査定の拒絶の理由に引用された,「特開平5-308493号公報」(以下「引用例2」という。)には,画像入力装置で読み取った画情報を記憶部に記憶し,検索して再出力可能とするディジタル複写機が記載され,具体的には,段落【0001】ないし段落【0003】に次の事項が記載されている。

(5) 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明はディジタル複写装置に関し,特に,通常の複写機能と検索機能とを備えたディジタル複写装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から,画像データを画像入力装置で読込み,これを蓄積し,検索できるようにした装置は,多々,開発されている。その一例としては,光ファイル装置がある。
【0003】これらの装置においては,蓄積したデータを検索可能にするために,画像データの入力時あるいは入力後に,識別番号や検索のためのキーワードを,種々の手段で付加するようにしている。例えば,原稿入力時に,キーボード入力により,あるいはマークシート,OCR(光学的文字認識装置)等により,識別番号やキーワードを入力するようにしている。」

3 対比
本願発明と引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)を対比する。
引用発明は,受信画像蓄積用メモリを有するファクシミリ装置に関するもので,受信画像をプリント出力後も画像記憶手段内に記憶しておき,受信文書再出力時は,受信文書の検索を行う際,日時,宛先が表れることから,蓄積日時を含む複数の管理項目が検索のために記憶されていることが把握できる。
そうすると,本願発明と引用発明とは,次の一致点及び相違点が認められる。

(1) 一致点
大容量を有する画情報記憶手段を備えたファクシミリ装置であって,画情報を前記画情報記憶手段に記憶する場合に,該画情報毎に,該画情報を前記画情報記憶手段に記憶した蓄積日時を含む複数の管理項目からなる画情報ファイルを記憶する管理情報記憶手段と,前記画情報をコピー出力又は送信した後,画情報記憶手段から所望の画情報を検索して出力又は送信する手段を設けたことを特徴とするファクシミリ装置。

(2) 相違点1
本願発明では,スキャナ部で読み取った画情報を記憶するのに対し,引用発明では,受信画像を記憶する点。

(3) 相違点2
本願発明では,ファイル番号をも画情報記憶手段に記憶し,画面に表示された検索条件となり得る複数の管理項目の中から所望の管理項目を選択させ,選択された管理項目に対する更なる詳細データの入力により検索条件を決定し,この検索条件で画情報記憶手段から所望の画情報を検索して出力するのに対し,引用発明では検索の内容が異なる点。

4 当審の判断
(1)相違点1について
上記相違点について検討するに,引用例1には,「送信時にはリーダー10に原稿をセットし,相手先番号を指定してスタートキー32を押下するとリーダー10は原稿画像の読取を開始し,得られた画像信号はリーダー/プリンタインタフェース14で圧縮符号化されたのち,いったん画像メモリ16に蓄積される。その後,通信制御装置18又は20を介して回線A又はBに送出される。」(2頁左下欄14行〜末行)との記載があることから,読み取った画像を記憶していることが分かり,この記憶した画像を受信した画像と同様に利用することは当業者が普通に考えることであり,格別の創意工夫を要するものではない。
さらに,この点は,前記引用例2に画像入力装置で読み取った画情報を記憶部に記憶し,検索して再出力可能とすることが示されていることからも,画情報が受信したものか入力したものかは,格別な相違とはいえない。

(2)相違点2について
本願の出願時点である平成5年当時には,既に検索方法として種々のものが知られており,対話型やコマンド型を始め階層型検索もその一つである。
そして,どの検索方式を採用するかは,検索内容に応じ,操作者の熟練度や好みにより決定すべき事項であり,本願発明のように,2段階で絞り込む検索を採用することは当業者であれば通常は行わないということはできず,阻害要因となるものでもない。
そして,審査の段階で周知例として掲げられた特開平5-298367号公報には,データベースの構造や,受信日時の範囲を設定することや,選択された管理項目である受信日時の中で,詳細データとなる範囲を設定することが示唆されており,この他,日時を管理項目内で詳細に条件設定を行うことは,特開平2-232771号公報や特開平4-211565号公報等にも記載されているように当業者に周知な事項である。
また,ファイル番号や日時を画像に関連づけて管理し,この関連情報をキーとして画像検索して出力することは,特開平5-298367号公報,特開平3-16369号公報等に記載されているように,当該技術分野における周知慣用技術であることは,前置報告書において報告がされているとおりである。
この前置報告書について,請求人へ反論の機会を審尋で設けたが請求人からはなんら応答がなかった。
したがって,当該相違点2は当業者が容易に想到できたものである。

(3)相違点全体としても当業者が格別推考力を要した点は認められず,効果にしても引用発明から当業者が当然に予測できる範囲のものにすぎない。

5 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
他の請求項について論ずるまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-08 
結審通知日 2006-08-11 
審決日 2006-08-24 
出願番号 特願平5-302753
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志廣川 浩  
特許庁審判長 杉 山 務
特許庁審判官 伊知地和之
鈴 木 明
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 磯村 雅俊  
代理人 渡邉 昌幸  

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