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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) A61B
管理番号 1144803
判定請求番号 判定2006-60032  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1999-11-02 
種別 判定 
判定請求日 2006-06-29 
確定日 2006-10-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第3025671号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置」は、特許第3025671号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 I. 請求の趣旨
本件判定請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に記載の、指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置(以下、「イ号物件」という。)が特許第3025671号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めたものである。

II. 本件特許発明
本件特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1乃至3項に記載されたとおりのものであり(以下、それぞれ「本件特許発明1」乃至「本件特許発明3」と言う。)、その構成を、符号を付して分説して記載すると、それぞれ次のとおりである。

1.本件特許発明1
(1-1)指先の爪上皮の毛細血管の血流の動きを拡大して観測する装置において、
(1-2)観測対象物である指先に対応する対物レンズの周囲に、複数の小さな光源である中心波長が420nmである発光ダイオード,中心波長が545nmである発光ダイオード,中心波長が575nmである発光ダイオードを環状に近接して配置し、
(1-3)該光源の光を指先の爪上皮の毛細血管のヘモグロビンに反射させて観測することを特徴とする
(1-4)指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置。

2.本件特許発明2
(2-1)指先の爪上皮の毛細血管の血流の動きを拡大して観測する装置において、
(2-2)観測対象物である指先に対応する対物レンズの周囲に、波長410nmから580nmまでの光を観測対象物に照射するように、複数の小さな光源である発光ダイオードを環状に近接して配置し、
(2-3)前記観測対象物である指先を対物レンズに対応して固定する指固定機構を設け、
(2-4)該指固定機構は指先の巾方向における中心線と対物レンズ中心とが一致するような調整機構を具備するとともに、
(2-5)指の長さ方向の指先の腹と接触する部分には、回動自在な指移動補助部材を設けたことを特徴とする
(2-6)指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置。

3.本件特許発明3
(3-1)前記対物レンズに対応する撮像部には高細密撮像素子を設け、
(3-2)該高細密撮像素子の出力をモニターに入力して、観察対象物の指先の爪上皮の毛細血管を拡大して血流の動きを観測しうるようにしたことを特徴とする
(3-3)請求項1および請求項2に記載の指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置。

4.本件特許発明の目的・効果
本件特許明細書の記載によれば、本件特許発明1に於ける効果は、以下のとおりである。
「請求項1に記載の発明の作用は、血液中のヘモグロビンに最適に反応する波長の光を、指先の爪上皮に照射したから、毛細血管の血流の動きを的確に把握でき、かつ、対物レンズの周囲近傍に配置したから小型で取り扱い簡易な毛細血管血流観測装置となる。」(本件特許明細書【0006】)
また、光源の構成に関し、本件特許明細書には、
「図4には、光学処理部2の下端面28には対物レンズ21が設けられるとともに、対物レンズ21の周囲に光源部3として発光ダイオード31が配置されているが、下端面28には斜行面27(図6の断面参照)が設けられ、その斜行面29には、波長410〜580nmの光を毛細血管Bに照射するように複数の発光ダイオード31を埋め込でいる。
上記発光ダイオード31は、中心波長が420nmである発光ダイオード32A 、中心波長が545nmである発光ダイオード32B 、中心波長が575nmである発光ダイオード32Cの各々4個の計12個を32A,32B,32C の順に並べて配置してあり、図5に示すように、全体として波長420〜570nmの連続する光を照射し、毛細血管Bの血液、特にヘモグロビンに反射して、血流の動きが的確に観測できるものである。」(本件特許明細書【0015】〜【0016】)、
及び
「本発明の特徴を損なうものでなければ、上記の実施例に限定されるものでないことは勿論であり、例えば、小型の光源として波長410〜580nmの大きな光量が得られれば、発光ダイオードでなくても同等の他の光源でもよく、使用する光源の数も12個に限定されることはない。」(本件特許明細書【0019】)
なる記載がある。

III. イ号物件
イ号物件は、請求人であるキャビン工業株式会社が業としての製造・販売を意図する「指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置」であって、その構成は、請求書に添付されたイ号図面及び説明書で示されるものである。
そして、イ号図面の説明書には下記のとおり記載されている。
「観測対象物である指先に対応する対物レンズ1の周囲に、二個の小さな光源である高輝度白色発光ダイオード2、2が該対物レンズ1を挟んで対向配置されている。対物レンズ1は、倍率表示リング6の回動により上下動し得るように鏡筒7に保持されており、高輝度白色発光ダイオード2、2は、鏡筒7の下端部に取付け板を介して取り付けられている。また、鏡筒7の内部の対物レンズ1に対応する撮像部には、高細密撮像素子4が設けられている。鏡筒7は、高細密撮像素子4の出力端をモニターに接続するための接続端子5と、DC入力端子8と、照明スイッチ9を有する筐体10に取り付けられている。・・・基台12には、対物レンズ1の光軸と同心的に嵌着固定された円台3aが設けられ、この円台3a上には、観測対象物である指先を対物レンズ1に対応して固定するためのV字溝を形成したV字溝形成体3bが固着されている。円台3aとV形溝形成体3bは、指固定機構3を構成している。
指先の爪上皮の毛細血管の観測に当たっては、先ず、接続端子5に・・・モニターへの入力端子を・・・それぞれ接続し、照明スイッチをONにして高輝度白色発光ダイオード2、2を点灯する。次に、・・・、指固定機構3のV字溝内に指先を置いて、観測部位がモニター視野の中央に来るように指先を移動調整した後静止し、ハンドル14を回動して支柱11を上下動させ、ピント合わせを行うようになっている。」
また、イ号図面からは、円台3a下方に伸びる突起(図2の543N-20)と基台上面の凹部とが嵌合していることを読み取ることができるが、前記突起と凹部とを固定するネジその他の固定部材の存在を該図面から見出すことはできず、円台3aが基台12に対して如何なる方法で固定されているのか否か、該両者は相互に回転・移動することが可能か否か、については、該図面及び前記説明書の何れからも不明である。
また、該イ号図面(図7)からは、前記V字溝の底部軸線は円台3aの中心を通っていることを読み取ることができる。
また、判定請求書の請求の理由欄に於いて請求人は、イ号物件について、本件特許発明に即して、次のように分説して説明している。

a.指先の爪上皮の毛細血管の血流の動きを拡大して観測する装置において、
b.観測対象物である指先に対応する対物レンズ1の周囲に、二個の小さな光源である高輝度白色発光ダイオード2,2を該対物レンズ1を挟んで対向配置し、
c.観測対象物である指先を対物レンズに対応して固定する指固定機構を設け、
d.対物レンズに対応する撮像部には高細密撮像素子を設け、
e.該光源の光を指先の爪上皮の毛細血管のヘモグロビンに反射させて観測するようにし、
f.高細密撮像素子4の出力をモニターに入力して、観察対象物の指先の爪上皮の毛細血管を拡大して血流の動きを観測しうるようにした
g.指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置。

該説明は、前記イ号図面及び説明書の記載事項と矛盾するものではないから、イ号物件の「指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置」は、前記請求人により分説されたとおりのものと認める。

IV.対比
以下に、本件特許発明1乃至3とイ号物件との対比を、上記II.1.乃至3.に於ける分説された本件特許発明の各構成要件について順次行い、イ号物件の各構成が本件特許発明の各構成要件を充足するかどうかを検討する。
1.本件特許発明1について

(1)構成要件(1-1),(1-3),(1-4)について
イ号物件が構成a,e,gをそれぞれ備えることは、イ号図面及びイ号図面の説明書の記載から明らかである。
そして、該構成a,e,gに於いて、イ号物件が本件特許発明1の構成要件(1-1),(1-3),(1-4)を充足することは明らかである。

(2)の構成要件(1-2)について
本件特許発明1の構成要件(1-2)は「観測対象物である指先に対応する対物レンズの周囲に、複数の小さな光源である中心波長が420nmである発光ダイオード,中心波長が545nmである発光ダイオード,中心波長が575nmである発光ダイオードを環状に近接して配置し」なるものであるのに対し、イ号物件では、関連する構成として、「観測対象物である指先に対応する対物レンズ1の周囲に、二個の小さな光源である高輝度白色発光ダイオード2,2を該対物レンズ1を挟んで対向配置し」なる構成bを備えている。
そして、複数の発光ダイオードが、本件特許発明1では、中心波長が420nm、545nm、575nmの三種からなるのに対し、イ号物件では、共に高輝度白色発光ダイオードであるから、両者が複数の発光ダイオードの種類及び組み合わせに於いて相違していることは明らかである。
そして、前記bの外に、イ号物件に於いて本件特許発明1の構成要件(1-2)に関連する構成は存在しない。
よって、複数の発光ダイオードの配置が本件特許発明1では「環状」であるのに対しイ号物件では「対向配置」である点を論じるまでもなく、イ号物件は、本件特許発明1の構成要件(1-2)を充足しない。

2.本件特許発明2について
(1)構成要件(2-1),(2-3),(2-6)について
イ号物件が構成a,c,gをそれぞれ備えることは、イ号図面及びイ号図面の説明書の記載から明らかである。
そして、該構成a,c,gに於いて、イ号物件が本件特許発明2の構成要件(2-1),(2-3),(2-6)を充足することは明らかである。

(2)構成要件(2-2)について
イ号物件の構成bに於いて、「高輝度白色発光ダイオード」が、具体的に如何なる種類の発光ダイオードであるのかは、イ号図面及びその説明書の記載からは不明であるが、判定請求書に於いて請求人は、「高輝度白色発光ダイオード2の光が、スペクトルがほぼ可視域(波長が400nmから700nm程度までの範囲)全域に拡がって肉眼で白色に見える光」(12頁8-11行)であると述べている。よって、イ号物件の光源の発光波長は、本件特許発明2の光源の発光波長「410nmから580nm」を含む。一方、イ号物件の光源の波長は、本件特許発明2の光源の波長の他に、400から410nm及び580から700nmの波長帯の光を余分に有している。この点に関し、本件特許明細書では、本件特許発明2に於いて限定した光源の波長範囲の効果について、上記のとおり、
「血液中のヘモグロビンに最適に反応する波長の光を、指先の爪上皮に照射したから、毛細血管の血流の動きを的確に把握でき」(本件特許明細書【0006】)
「全体として波長420〜570nmの連続する光を照射し、毛細血管Bの血液、特にヘモグロビンに反射して、血流の動きが的確に観測できるものである。」(本件特許明細書【0016】」)
と記載している。しかし、該波長範囲の上下限値の設定根拠や、その臨界的効果については何ら記載していない。同様に、イ号図面、イ号図面の説明書、及び判定請求書に於いても、前記設定根拠や、その臨界的効果については何ら具体的に記載していない。よって、本件特許明細書、イ号図面、イ号図面の説明書、及び判定請求書の記載からは、本件特許発明2に於ける光源波長範囲の臨界的意義が定かではなく、本件特許発明2の光源の波長範囲が410〜580nmのみに限定され、光源が該範囲以外の波長を含めばただちに本件特許発明2が実施不可能であるとまでは言えない。したがって、イ号物件の高輝度白色発光ダイオードからなる光源が、本件特許発明2に於ける光源の発光波長範囲をすべて含み、さらに該範囲外の波長を含むものであっても、イ号物件の構成bは、その発光波長範囲に於いて、本件特許発明2の構成要件(2-2)を充足する。
また、複数の発光ダイオードの配置に関し、本件特許発明2では「対物レンズの周囲に・・・環状に近接して配置」と限定しているのに対し、イ号物件では「対物レンズ1を挟んで対向配置」するとしている。イ号物件に於いて、対物レンズを挟んで対向配置された二個の光源に対し、これらを通り対物レンズの周囲を囲む円環を定義することが可能であるから、イ号物件の二個の光源は、対物レンズの周囲に環状に配置されていないとは言えない。そして、イ号物件の二光源間の距離は、イ号図面の図3及び4によれば、たかだか対物レンズの直径の数倍程度、図3記載の各部位の寸法値から類推すれば、たかだか数センチであり、これを以て両光源が近接していないとは言えない。
以上のとおりであるから、イ号物件の構成bは、本件特許発明2の構成要件(2-2)を充足する。

(3)構成要件(2-4)について
イ号図面の説明書には、「基台12には、対物レンズ1の光軸と同心的に嵌着固定された円台3aが設けられ、この円台3a上には、観測対象物である指先を対物レンズ1に対応して固定するためのV字溝を形成したV字溝形成体3bが固着されている。」なる記載がある。
このうち、V字溝形成体3bと円台3aとの固着は、イ号図面の図1,7,8,9に於いて、前者が後者にネジ止めされており、両者の取付方向を変更する何らの手段も存在しないと認められることによって、構造的に裏付けられている。
一方、基台12と円台3aとの固定については、イ号図面からは、円台3aの下部の突起が基台12の凹部に挿入されていることは認められるものの(図2の543N/20)、該両台を相互に固定する手段や構造の存在は認められず、前記両者の固定が如何なる構造によるものかは、イ号図面によって明確には裏付けられていない。
この点に関し、被請求人は答弁書の中で、イ号物件に於いて、V字溝を形成したV字溝形成体3bを固着した円台3aが基台12上で回動可能であるという仮定の下に、該円台がV字溝に置いた指先の位置調整機構として機能し、これが本件特許発明2の構成要件(2-4)を充足する旨主張している。
しかし、該主張は、請求人のイ号図面の説明書に於ける上記
「基台12には、対物レンズ1の光軸と同心的に嵌着固定された円台3aが設けられ」
なる説明と矛盾する。また、前記被請求人の主張する仮定が成立し、円台3aが基台12に対し回転することが可能であると考えても、イ号図面の説明書に於ける
「対物レンズ1の光軸と同心的に嵌着固定された円台3a」
なる記載、及び、円台の中心とV字溝の長さ方向の中心線とが一致することを示すイ号図面図7の記載とから、円台に固定されたV字溝上の指先の巾方向の中心線が前記底線と一致していない場合、前記円台の基台に対する回転によっては、前記指先の巾方向の中心線と対物レンズ中心との距離は変化しない、即ち、前記指先の巾方向の中心線を前記V字溝の長さ方向の中心線や対物レンズ中心と一致させることはできない。よって、前記仮定が成立する場合においても、イ号物件の構成は、本件特許発明2に於ける「調整機構」に対応する機能は備えていない。
以上のことから、イ号物件の構成は、本件特許発明2の構成要件(2-4)を充足しない。

(4)構成要件(2-5)について
イ号物件の構成がイ号図面及びその説明書の何れを参照しても、本件特許発明2の「指固定機構」に相当するV字溝上に観測部位である爪を対物レンズに向けて指を置いた場合に、指先の腹と接触する該V字溝の内面に、何らの回動自在な部材も設けられていないことは明らかである。よって、イ号物件は、本件特許発明2に於ける「回動自在な指移動補助部材」に対応する構成を欠いており、イ号物件の構成は、本件特許発明2の構成要件(2-5)を充足しない。

3.まとめ
上記1.及び2.記載のとおり、イ号物件の構成は、本件特許発明1の構成要件(1-2)、ならびに本件特許発明2の構成要件(2-4)及び(2-5)を充足しない。また、本件特許発明3は、本件特許発明1又は2の構成に上記II.3.記載の構成要件(3-1)乃至(3-3)を付加したものであるから、本件特許発明1及び2を何れも充足しないイ号物件の構成が、本件特許発明3の構成要件を充足しないことは、本件特許発明3に於いて付加された構成要件について検討するまでもなく明らかである。

V.均等の主張について
被請求人は、上記IV.に於いて、イ号物件の構成が充足しないとされた本件特許発明の構成要件のうち、(1-2)及び(2-5)に関し、いわゆる均等論の適用を主張しているので、これについて検討する。

最高裁判決平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日判決言渡)は、均等論が適用される場合について、次の五つの条件を付して認める旨の判示をしている。
『積極的要件』
(a)相違部分が、特許発明の本質的な部分でない。
(b)相違部分を対象製品の対応部分と置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏する。
(c)対象製品等の製造時に、異なる部分を置換することを、当業者が容易に想到できる。
『消極的要件』
(d)対象製品等が、出願時に於ける公知技術と同一又は当業者が容易に推考することができたものではない。
(e)対象製品等が特許発明の出願手続に於いて、特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たる等の特段の事情がない。

(1)構成要件(1-2)について
本件特許の出願時の特許請求の範囲に於いては、唯一の独立請求項である請求項1に於いて、「波長410nmから580nmまでの光を観測対象物に照射するように複数の小さな光源を、環状に近接して配置」と限定しており、これは、波長410nmから580nmまでの波長範囲の光を観測対象物に照射する光源であれば、該波長範囲の連続スペクトルを有する光源も含まれるものであったところ、被請求人は、拒絶理由通知に於いて示された拒絶の理由を回避するために、該光源が「複数の小さな光源である中心波長が420nmである発光ダイオード,中心波長が545nmである発光ダイオード,中心波長が575nmである発光ダイオード」からなると限定したものであり、この手続の過程に於いて、前記連続スペクトルを有する光源は請求項1から意識的に除外されたものであるといえる。よって、イ号物件の光源を構成する高輝度白色発光ダイオードは、上記均等論の要件(e)を満たさず、均等論の上記他の要件について検討するまでもなく、本件特許発明1の光源と均等なものとは言えない。

(2)構成要件(2-5)について
イ号物件は、指固定機構であるV字溝形成体に於ける、指の長さ方向の指先の腹と接触する部分に、本件特許発明2に於ける「指移動補助部材」に対応する何らの付加的な部材も備えていないことは、イ号図面及びその説明書の記載事項から明らかである。これに関し被請求人は、イ号物件に於けるV字溝形成体が、該形成体のV字溝上で指を差し入れ方向に移動可能であることから、本件特許発明2の「指移動補助部材」と均等である旨主張している。しかし、単に移動可能であることと、移動を補助することとは、後者が、移動可能である状態下で該移動を容易にする何らかの付加的な機能を有する点で同一ではない。よって、イ号物件の構成は、均等論の適用の前提となる、本件特許発明2に於ける「指移動補助部材」と置換すべき対応する部材をV字溝形成体上に有しておらず、上記均等の要件(b)及び(c)を満たさない。したがって、イ号物件は、均等論の上記他の要件について検討するまでもなく、構成要件(2-5)に関し、本件特許発明2と均等ではない。

VI. むすび
したがって、イ号物件は、本件特許発明1乃至3の何れの技術的範囲にも属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2006-09-21 
出願番号 特願平10-125355
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 山本 春樹  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
樋口 宗彦
登録日 2000-01-21 
登録番号 特許第3025671号(P3025671)
発明の名称 指先の爪上皮の毛細血管血流観測装置  
代理人 小原 英一  
代理人 篠原 泰司  
代理人 藤中 雅之  

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