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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1145348
審判番号 不服2004-17710  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-26 
確定日 2006-10-13 
事件の表示 特願2002- 43238「画像入力装置及び指紋認識装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月29日出願公開,特開2003-242489〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成14年2月20日の出願であって,平成16年7月21日付けで拒絶査定がされ,これに対し同年8月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年9月27日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年9月27日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年9月27日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1) 補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。
「【請求項1】光電変換素子と,アンプと,前記光電変換素子からの信号を前記アンプに転送する転送スイッチとを各々が有する複数の画素が行列状に配されたセンサを有し,被写体が前記センサに対して移動することにより,各々の画像の一部が重複するように分割して前記被写体の画像を取得する画像入力装置であって,
前記センサから出力される複数の画像における重複部を補正して,前記複数の画像を合成する画像合成手段と,
前記被写体に光を照射する光照射手段と,
前記複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す手段とを有し,
前記複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送するまでの期間である露光期間中に,前記光照射手段を点灯し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す期間に前記光照射手段を消灯するようにして,前記複数の画像を取得している期間中に点灯と消灯とを繰り返すことを特徴とする画像入力装置。」

(2) 補正の適否について
前記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画素を読み出す」ことに関して,「前記複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す手段」を有するものとし,同じく「光照射手段」の動作に関して,「前記複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送するまでの期間である露光期間中に,前記光照射手段を点灯し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す期間に前記光照射手段を消灯するようにして,前記複数の画像を取得している期間中に点灯と消灯とを繰り返す」との限定を付加するものであって,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-91769号公報(以下「引用例1」という。)には,図面と共に,次のアないしオの記載がある。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,特に個人を認証するための装置に用いられる指紋の読み取り用システムに関する。
【0002】
【従来の技術】指紋分析に基づいて個人を認証するために用いられる多くのシステムは、識別すべき個人の指紋のイメージを得るために用いられる少なくとも1つのセンサを備えている。本システムにおいては、指のサイズの大きさ順のサイズを必ず有しなければならないセンサの読み取り表面上におかれる。該センサは、それが提供する指紋のイメージを、例えばチップカードのような十分な媒体内に格納された参照指紋のイメージと比較するために用いられる分析システムに係合している。
【0003】多くの場合、センサはアナログ型の情報要素を提供しており、分析システムはアナログ-デジタルコンバータを用いて該センサの出力でデジタル化されなければならない指紋のイメージのデジタル処理用の演算を利用する。特定の実施形態において、該センサは直接デジタル化されたイメージを送信する。
【0004】指紋読み取りシステムは,しばしば指のイメージを抽出するビデオカメラのような光学デバイスの使用に基づいている。しかし,同じ指の単なる写真は,カメラの出力において同一イメージを得るために用いることができ,従ってシステムがだまし取られてしまう。この欠点を克服するために,特定のシステムは,センサの前におかれているものが写真ではなく本当に本物の指であることを確認するためにプリズム又はマイクロプリズムを用いており,光は指紋の線がプリズムに触れない位置でのみ反射される。それにより写真では動作しない。しかし,該光学システムは,センサの前におかれている指が本当に生きた指であり,例えばモールドでないことを確認するために用いることはできない。該光学システムは,例えば非常に大きい大きさで且つ高い製造コストのような他の欠点を有する。」
イ 「【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は,指と読み取り手段に付属するセンサとが接触し且つ該センサ及び該指が互いにスライドする相対的運動を行う際に指紋を読み取る前記読み取り手段と,この運動中に得られた部分イメージから指紋のイメージを再構成する手段とを備えている指紋読み取りシステムを提案することによって従来技術の欠点を克服することを目的とする。」
ウ 「【0021】一実施形態において,集積回路は,上部電極と下部電極の行列配列との間に配置された圧電/焦電材料の活性層からなる。下部電極は,配列の各電極上に圧電/焦電層によって発生させられた電荷を処理することが可能な集積電子回路がその中に形成されている半導体基板上に置かれる。この集積電子回路は,活性層上に及ぼされた圧力のパターンのイメージの全てを表す電気信号を伝送できる外部接続ピンに接続されている。行列配列の形態における下部電極の構成は,たとえ圧電/焦電層が連続していても,個々の圧電/焦電感応要素の配列の構成を有効にする。感応要素の行列配列は,複数行及び複数列で構成されている。」
エ 「【0050】図5に表された指53とその指紋52とを検討していく。指53は,方向Vで,センサの感応要素の行列の行に垂直にセンサ上をスライドする。指53に対するその相対的移動中のセンサの活性窓の瞬間t0,t1,t2,・・・,tnにおける異なる位置が書き表されている。センサは,それぞれの瞬間t0,t1,t2,・・・,tnにおける連続イメージI0,I1,I2,・・・,Inを発生し,センサ上の指の相対的移動の速度は,少なくとも1つのイメージが次のイメージと部分的に重複するようになる。例えばI0はI1と部分的に重複し,I1はI2と部分的に重複する等々のようになる。
【0051】図5のセンサ50に対する指53の相対的運動の明らかな視界を与えるために,指53は静止しているように表されており,センサ50は指に対して移動しているように表されている。システムの働きは,移動する指及び静止しているセンサ,又はより通常は移動するセンサ上をスライドする移動する指の場合と同様になる。検討すべきパラメータは,センサの幅に実質的に垂直の方向における指及びセンサの互いの相対的運動である。
【0052】最初の瞬間t0は,指紋52の第1の部分イメージI0の読み取りの瞬間として得られる。図6は,瞬間t0においてセンサによって与えられた指紋52の第1の部分イメージI0を表しており,図7はその瞬間に続くt1においてセンサによって与えられたこの指紋52の第2の部分イメージI0を表している。
【0053】イメージI0,I1,I2,・・・,Inは,マイクロプロセッサ60の処理入力55に伝送され,ランダムアクセスメモリ61内に格納される。リードオンリーメモリ63内に格納されたアルゴリズムは,ランダムアクセスメモリ61内に格納されたイメージの処理のための演算を実行する。これらの演算は,イメージI0及びI1の間で重複する全ての可能な場合を連続して十分にためし,各試みに相関係数を割り当てることからなる。最高の相関係数は2つのイメージI0及びI1の重複の最適位置のシステムを通知し,演算は,指紋が完全に再構成されるまで,マイクロプロセッサ60にセンサ50によって与えられた次のイメージI2等と次々に確認されることになる。
【0054】相関の種々の方法は,この同じ指紋の連続する部分イメージから指紋の完全イメージを再構成するために用いられてもよい。例えば,1つの相関方法は,2つのイメージの重複の可能性のある各場合に対して,第1の2つの連続するイメージI0及びI1の各々の全ての感応要素のレベルと比較してなる。」
オ 「【0057】センサ50の出力での瞬間t2において,図11に示される次のイメージI2は,マイクロプロセッサ60に伝送される。このイメージI2は,それらの最適の重複位置において,I0,I1及びI2のスーパーインポーズに起因して,図11に表されているように,イメージIr2を得ることを有効にする前述と同様に結果イメージIr1と交互に比較される。該処理は,図12に表されるように,得られる指紋52の完全イメージIrnが得られるまで同じ方法で繰り返される。」

これらの記載及び図面によれば,引用例1には,次の発明が記載されているものと認められる(以下「引用例1発明」という。)。
「指と読み取り手段に付属するセンサとが接触し且つ該センサ及び該指が互いにスライドする相対的運動を行う際に指紋を読み取る読み取り手段と,この運動中に得られた部分イメージを,マイクロプロセッサ60がそれらの最適の重複位置においてスーパーインポーズし,指紋の完全イメージを得る指紋読み取りシステム。」

同じく,原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-217803号公報(以下「引用例2」という。)には,図面と共に次の記載がある。
カ 「【0005】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成するために,本発明による指紋入力装置は,2次元配列された多数の受光素子からなり,指紋入力時に指紋がこれら受光素子の受光面に近接配置される2次元イメージセンサを設け,これら受光素子のうち,受光面が指紋稜線部と近接している受光素子により,その指紋稜線部を介して指先内部からの散乱光が良好に届く明部領域を指紋稜線部として検出するとともに,受光面が指紋谷間部と近接している受光素子により,指先内部からの散乱光があまり届かない暗部領域を指紋谷間部として検出するようにしたものである。
【0006】また,指紋を入力する指先の腹部下側に光源を配置し,下方から上方の指先腹部に光を照射することにより,指先内部に散乱光を発生させるようにしたものである。また,指紋を入力する指先の前方下側に光源を配置し,前方下方から斜め上方の指先先端に光を照射することにより,指先内部に散乱光を発生させるようにしたものである。また,光源として近赤外光を照射するものを設けるとともに,2次元イメージセンサの表面に薄膜のフィルタを設け,光源からの近赤外光を透過させ他の外乱光を減衰させるようにしたものである。」

同じく,原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-144915号公報(以下「引用例3」という。)には,図面と共に,次のキ及びクの記載がある。
キ 「【0004】
【課題を解決するための手段】光学的ナビゲーション・システムは,必要なときだけ光を提供するように表面照明の光源をパルス化することによって電力を節約する。光のレベルは,相関データと平均照度の程度を監視し,必要とされかつ安全になすことができる場合に制御されたレベルを変化させるサーボ機構によって制御することができる。様々なレベルの照明を作成する場合と同じように,これは,(1)光をパルス化し,パルスの間のある期間だけ電子式シャッタを開き(光をゲート制御し),(2)シャッタを開き,次に光のパルス幅を変化させ(LEDをゲート制御し),(3)シャッタを開き,次にLEDを様々な輝度でパルス化し,(4)(2)と(3)を組み合わせることによって達成することができる。」
ク 「【0014】以上は,予測サンプル及び露光コントローラ14がどのように「絞りを移動する」かを決定した場合に,パルス光環境において光の量を「絞る」方法である。光のパルス化により,サンプル間の必要ないときにLEDを発光させる電力を消費しないため電力が節約される。サンプルをとる頻度を決定する既存の方式を変更する必要がないことに注意されたい。
【0015】そのような節約を達成するために使用することができ,サンプルを取得する割合を制御するさらに別の技術がある。これは,以上説明した露光制御技術の1つと別または一緒に実施することができる。図5と図6にその技術を示す。そのような技術は,サンプル・フレームを取得し対応付けを行うためにある長さの時間を必要とし,予想することができる加速ならびにナビゲーション回路と表面の間の相対速度に上限があるという知識に基づく。この知識を使用して,相対速度が低いかまたはゼロのときにサンプリング・レートを小さくすることができる。
【0016】たとえば,相対速度がゼロであると仮定する。また,使用している基準フレームが,完全な状態のままで移動される能力のほとんどまたはすべてを有すると仮定する。その場合,初期移動中にサンプリングしない場合でも,次のデータ・フレームが,その基準フレームと相関することを保証する最低サンプリング・レートを確実に決定することができる。サンプリング・レートをその値まで下げることによって,照明LED3の無駄な使用を回避することにより電力が節約される。また,相対速度を追跡する場合は,必要に応じてその最小サンプリング・レートを高く調整して同じ特長を維持することができるが,電力の節約が少なくなる可能性がある。基準フレームが移動された回数を考慮して,サンプリング・レートを下げるのを少なくしなければならないこともある。」

(4) 対比
ア そこで,本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1には,【産業上の利用分野】の項に,「特に個人を認証するための装置に用いられる指紋の読み取り用システムに関する」とあり,被写体である指紋の画像を取得するシステムであることから,引用例1発明は画像入力装置という本願補正発明と同じ技術分野に属するものである。
また,引用例1の段落【0021】に,センサの「感応要素の行列配列は,複数行及び複数列で構成されている」と記載されていることから,複数の画素が行列状に配されたセンサを有している本願補正発明と差違はない。
さらに,引用例1の段落【0050】ないし【0054】には,「指53は,方向Vで,センサの感応要素の行列の行に垂直にセンサ上をスライドする。」,「センサは,それぞれの瞬間t0,t1,t2,・・・,tnにおける連続イメージI0,I1,I2,・・・,Inを発生し,センサ上の指の相対的移動の速度は,少なくとも1つのイメージが次のイメージと部分的に重複するようになる。」,「イメージI0,I1,I2,・・・,Inは,マイクロプロセッサ60の処理入力55に伝送され,ランダムアクセスメモリ61内に格納される。」,「相関の種々の方法は,この同じ指紋の連続する部分イメージから指紋の完全イメージを再構成するために用いられてもよい。」との記載があり,指が本願補正発明の被写体に相当することから,本願補正発明の「被写体がセンサに対して移動することにより,各々の画像の一部が重複するように分割して被写体の画像を取得し,センサから出力される複数の画像における重複部を補正して,複数の画像を合成する画像合成手段」は,引用例1発明と相違しない。

したがって,両者は,次の一致点及び相違点が認められる。
イ 一致点
複数の画素が行列状に配されたセンサを有し,被写体が前記センサに対して移動することにより,各々の画像の一部が重複するように分割して前記被写体の画像を取得する画像入力装置であって,前記センサから出力される複数の画像における重複部を補正して,前記複数の画像を合成する画像合成手段を有する画像入力装置

ウ 相違点1
本願補正発明では,センサが光電変換素子からなる光学式センサであり,被写体に光を照射する光照射手段を有しているものであるのに対して,引用例1発明では,圧電/焦電材料からなる半導体センサである点。

エ 相違点2
本願補正発明では,センサが光電変換素子と,アンプと,前記光電変換素子からの信号を前記アンプに転送する転送スイッチで構成され,複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す手段を有しているのに対して,引用例1発明では,アンプ,転送スイッチ,読み出す手段を有していない点。

オ 相違点3
本願補正発明では,複数の画素内の光電変換素子及びアンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送するまでの期間である露光期間中に,光照射手段を点灯し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す期間に前記光照射手段を消灯するようにして,前記複数の画像を取得している期間中に点灯と消灯とを繰り返すものであるのに対して,引用例1発明では点灯と消灯動作を行っていない点。

(5) 当審の判断
ア 相違点1について
引用例1の【従来の技術】の項に,「指紋読み取りシステムは,しばしば指のイメージを抽出するビデオカメラのような光学デバイスの使用に基づいている」と記載されているように,画像入力装置のセンサとして光学式センサを用いることは従来から普通に行われていることである。また,光学式センサを採用する際に,被写体に光を照射する光照射手段を設けることも,光学式センサの通常の使用方法であり,加えて前記引用例2(前掲カ)に示されるように常套手段といえる。
したがって,引用例1発明におけるセンサとして光学式センサを採用し,これに付随する光照射手段を設けることは,当業者であれば適宜実施し得る程度の事項である。

イ 相違点2について
画像入力装置において,センサを光電変換素子とアンプと転送スイッチで構成し,前記光電変換素子と前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送し,複数の画素の各行毎に信号を読み出すことは,光信号を電気信号に変換する光電変換素子に必須の本来の機能であり,本願出願時点において種々の具体的手段が当業者に自明であり,例えば,原審で示された特開2001-238132号公報に開示された技術においても,当該手段が示されており,当業者に慣用されていることが理解できる。
すなわち,当該特開2001-238132号公報をみるに,図2に記載されている「受光素子PD」,「MOSトランジスタM3」,「MOSトランジスタM2」は,それぞれ本願補正発明の「光電変換素子」,「アンプ」,「転送スイッチ」に相当するものであり,同公報の段落【0025】には「本実施例における画素10からの信号処理について説明する。まず,画素部2の全画素10のRGを高電位にしてM1をオンし,全画素10のノードSFをVDDの電位にセットする。次にRGを低電位にしてM1をオフした後,全画素10のTGを高電位にしてM2をオンする。これにより,全画素10の受光素子PDから受光素子PDの電位に比例した電圧がSFに伝達される。その後,TGを低電位にしM2をオフした後,全画素10のRPDを高電位にしてM8をオンする。この結果,全画素10の受光素子PDがVDDの電位にセットされる。」と記載されており,さらに段落【0029】には,「第1行の画素の信号読出しが終了したら,同様な方法で,第2行の画素の信号を読出し,これを繰り返し1フィールドの信号読出しを行う。以上説明したように,本実施例では全画素10とも同一の時間に受光した光信号蓄積を開始し,同一の時間に,蓄積された光信号を一括してノードSFに転送し,その後,一行づつの画素から信号を読み出す」と記載されている。
同公報におけるこれらの記載は,本願補正発明の「複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す手段」を有した構成に相当するものであることは,当業者には容易に理解できる事項である。
したがって,当該相違点は光電変換素子を使用する当然の手段であり,当業者であれば容易に想到し得る事項である。

ウ 相違点3について
消費電力を低減するために,光照射手段をパルス化して点灯して露光に必要な期間だけ光を照射することは,原審で引用された引用例3(前掲キ,ク)に開示されている技術である。
引用例1発明のセンサを光学式とした際に,消費電力を低減するために露光に必要な期間のみ点灯する上記技術手段を採用することは,当業者であれば容易になし得るものである。
なお,露光に必要な期間とは,光電変換素子とアンプの入力部をリセットしてから転送スイッチによりアンプに信号を転送するまでの期間であり,複数の画素の各行ごとに信号を読み出す期間は露光の必要がないことは極めて自明なことであるから,引用例3に示される露光に必要な期間だけ光を照射する光照射方法を採用する際に,リセットしてからアンプに信号を転送するまでの間に点灯し,複数の画素の各行ごとに信号を読み出す期間には消灯すると設定することは,当業者であれば普通に想到し得ることである。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が当然に予測できる範囲のもので格別顕著なものは認められない。

エ したがって,本願補正発明は,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6) むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法17条の2第5項で準用する126条5項の規定に違反するものであり,同法159条1項で準用する53条1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年9月27日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成16年3月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「光電変換素子と,アンプと,前記光電変換素子からの信号を前記アンプに転送する転送スイッチとを各々が有する複数の画素が行列状に配されたセンサを有し,被写体が前記センサに対して移動することにより,各々の画像の一部が重複するように分割して前記被写体の画像を取得する画像入力装置であって,
前記センサから出力される複数の画像における重複部を補正して,前記複数の画像を合成する画像合成手段と,
前記被写体に光を照射する光照射手段とを有し,
前記複数の画素において前記転送スイッチにより前記アンプに信号が転送された後,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す期間に前記光照射手段を消灯していることを特徴とする画像入力装置。」

(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,前記「2.(3)」に記載したとおりである。

(2) 対比・判断
本願発明は,前記2.で検討した本願補正発明から「画素を読み出す」ことの限定事項である「複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す」との構成を省き,「光照射手段」に関する限定事項である「複数の画素内の前記光電変換素子及び前記アンプの入力部を一括してリセットした後,前記複数の画素内の前記アンプに前記転送スイッチにより一括して信号を転送するまでの期間である露光期間中に,前記光照射手段を点灯し,前記複数の画素の各行毎に前記複数の画素から信号を読み出す期間に前記光照射手段を消灯するようにして,前記複数の画像を取得している期間中に点灯と消灯とを繰り返す」との構成を省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記2.(5)に記載したとおり,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができた
ものである。

(3) むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項記載の発明について検討するまでもなく本願は特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-18 
結審通知日 2006-08-21 
審決日 2006-09-04 
出願番号 特願2002-43238(P2002-43238)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 杉 山 務
特許庁審判官 田中 幸雄
伊知地和之
発明の名称 画像入力装置及び指紋認識装置  
代理人 山下 穣平  

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