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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1145386
審判番号 不服2004-9273  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-06 
確定日 2006-10-10 
事件の表示 特願2000-378737「袋体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月26日出願公開、特開2002-179076〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月13日の特許出願であって、平成16年4月2日付けで拒絶査定がなされ、同査定を不服として拒絶査定不服審判が請求され、平成16年6月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年6月7日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成16年6月7日付け手続補正を却下する。

[理由]
2-1 補正後の本願発明
本件補正は、【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載を「【請求項1】 袋本体(1) が表裏のシート片(1a),(1b) からなり、且つ該表裏両シート片(1a),(1b) の両側縁が所定幅に溶着され、しかも前記袋本体(1) は、ポリ乳酸からなる生分解性の延伸フィルム、又はポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなる生分解性の延伸フィルムで構成されてなることを特徴とする袋体。」と補正することを含むものであり、この部分の補正は、補正前の請求項1に記載された発明の構成の一部である「生分解性の延伸フィルム」を、同構成に関連する技術的事項として、願書に最初に添付された明細書中に記載される「ポリ乳酸からなる生分解性の延伸フィルム、又はポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなる生分解性の延伸フィルム」なる事項により限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、以下に検討する。

2-2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である「実願平3-68106号(実開平5-24527号)のCD-ROM」(以下、「刊行物1」という。)には、段落番号【0007】に、「【作用】
本考案の封筒においては、分解性を有するプラスチックフィルムにより形成されているため、廃棄物となった後に光照射または微生物により分解される。したがって、この封筒は、・・あるいは土中に埋めて微生物により分解させることによっても地表に散乱することがない。しかも、本考案の封筒は、紙製の封筒に比較して耐水性および耐久性が格段に向上している。」と、段落番号【0011】に、「封筒1を形成する分解性のプラスチックフィルムは、分解性プラスチックからなるフィルムである。ここで、分解性プラスチックとは、光の照射や微生物の作用により分解する性質を有する樹脂を言い、具体的には光分解性プラスチックおよび生分解性プラスチックが挙げられる。」と、生分解性プラスチックのフィルムにより封筒を形成することが記載されている。
さらに、刊行物1の段落番号【0009】に、「図1に示すように、この封筒1は、2枚の分解性プラスチックフィルム2が重ね合わせられて、その周端の3辺がヒートシールにより融着されている。なお、図1および図2において10はシール部である。・・」と記載されるとともに、段落番号【0024】に、「たとえば図1および図2に示した封筒1は、このような分解性プラスチックからなる2枚の分解性プラスチックフィルム2が重ね合わせられ、その周端部の三方がヒートシールにより融着されて形成されている。」と記載され、これら記載と図面の記載を併せみれば、封筒が、表裏2枚の分解性プラスチックフィルム2が重ね合わせられ、周端部の三方がヒートシールにより融着されて形成されることを把握可能であるので、刊行物1には、以下の発明が記載されるものと認める。
封筒が表裏のプラスチックフィルムからなり、且つ該プラスチックフィルムの両側縁がヒートシールにより融着され、しかも前記封筒は、生分解性のフィルムで構成されてなる封筒(以下、「刊行物1発明」という。)

同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である「特開2000-203593号公報(以下、「刊行物2」という。)には、段落番号【0023】に、「本発明で第一のプラスチック製封筒の製造に使用されるプラスチックフィルムは、従来からプラスチック製封筒の製造に使用されている折り線が付けられる程度の腰のある固めのプラスチックフィルムはいずれも使用することができ、特に制限されない。例えば、・・又、ポリ乳酸等の生分解性を有するポリマーフィルムも用いることができる。・・」と記載されているので、刊行物2には、
封筒をポリ乳酸からなるポリマーフィルムで構成すること
が記載されるものと認める。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である「特開平10-36651号公報(以下、「刊行物3」という。)には、段落番号【0001】に、【産業上の利用分野】本発明は、柔軟性、耐クレージング性、熱安定性、貯蔵安定性などに優れ、しかも、・・埋め立てや散乱ゴミになったときには、自然環境下で分解される性質を有し、農業・園芸用資材、食品包装用材料、衛生用材料、日用雑貨品、産業用資材等の、特に柔軟性が要求される用途、即ち、農業用袋、マルチフィルム、トンネルフィルム、植生シート、種紐、養生シート、苗木用ポットなどの農業・園芸用資材、食品用容器、」と記載され、それに続けて、段落番号【0002】に、「・・規格袋、レジ袋、ゴミ袋、・・等に有用な乳酸系ポリマー組成物に関するものである。」と記載されている。
また、刊行物3の段落番号【0005】に、「また、・・最近、生分解性ポリマーの研究が盛んに行われており、注目されている生分解性ポリマーの一つに、ポリ乳酸及びその共重合体がある。」と記載されている。
加えて、刊行物3の段落番号【0013】に、「即ち、本発明は、重合触媒を失活処理した乳酸系ポリエステル(A)と、可塑剤(B)を、その重量比(A)/(B)が99/1部〜40/60部となる範囲で含有して成ることを特徴とする乳酸系ポリエステル組成物である。」と、段落番号【0056】に、「」次に、本発明に用いる乳酸系ポリエステルの構成成分の組成について順に説明する。本発明に用いる乳酸系ポリエステルの乳酸或いは乳酸成分(a)と、ジカルボン酸成分とジオール成分(b)との比率については、特に限定されないが、好ましくは、(a)/(b)が99/1〜10/90重量部であり、用途に応じて、例えば、高い融点を得るためには、(a)/(b)が99/1〜40/60重量部であることが好ましく、高い剛性を得るためには、(a)/(b)が99/1〜70/30重量部であり、また優れた柔軟性を得るためには、(a)/(b)が70/30〜40/60重量部であることが好ましい。」と記載され、さらに、段落番号【0106】に、「本発明の乳酸系ポリエステル組成物は、・・更に真空成形、圧空成形、製袋、印刷などの二次加工性にも優れる。」と、段落番号【0108】に、「また、本発明の乳酸系ポリエステル組成物をシートなどに成形後、延伸により配向させたものは、引張り強度、剛性、耐折強度、衝撃強度などの機械的特性を改良することができる。このときの延伸倍率は高い方が良好な傾向が見られ、好ましい延伸倍率は、一般に1.5〜8倍程度、更に好ましくは2〜5倍である。」と、段落番号【0109】に、「延伸は一軸、もしくは二軸で行うことができるが、二軸延伸されたものの方が、機械的特性の他、耐熱性や耐溶剤性などに対して優れており好ましい。・・このようにして得られたものは延伸工程中に若干結晶化されるが、下記の強制的に結晶化させたもの程、耐熱性、耐溶剤性は向上されない。」と記載されている。
したがって、刊行物3には、
袋を乳酸系ポリエステルの成型品であるシートで構成すること、及び、
シートを延伸をさせて袋に用いること
が記載されるものと認める。

2-3 対比
ここで、補正発明と刊行物1発明とを比較すると、刊行物1発明の「封筒」は、その形状・用途からみて、補正発明の「袋本体(1) 」に相当するものであり、刊行物1発明の「プラスチックフィルム」は、その枚数及び両側縁がヒートシールされて封筒を構成する配置及び構造からみて、補正発明の「シート片(1a),(1b) 」に相当するものと認める。
さらに、刊行物1発明の「生分解性プラスチックフィルム」は、本件発明の「ポリ乳酸からなる生分解性の延伸フィルム、又はポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなる生分解性の延伸フィルム」を包含する概念であるので、両発明は、
袋本体が表裏のシート片からなり、且つ該表裏のシート片の両側縁が溶着され、しかも前記封筒は、生分解性のフィルムで構成されてなる封筒
の発明である点で一致し、以下の点で両発明は相違している。
相違点
補正発明のシート片は、ポリ乳酸からなる生分解性の延伸フィルム、又はポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなる生分解性の延伸フィルムで構成され、溶着が所定幅でなされるものであるのに対して、刊行物1発明のプラスチックフィルムは、生分解性であるもののポリ乳酸からなる生分解性の延伸フィルム、又はポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなる生分解性の延伸フィルムの開示はなく、融着が所定幅でなされることの明記はない点

2-4 判断
以下、相違点について検討する。
袋に用いる素材として、ポリ乳酸からなるシートは、刊行物2,3にもあるように周知であり、シートの機械的特性の改良手段として、延伸を行うことは、特段の例示を待つまでもなく周知であるところ、ポリ乳酸からなるシートにおいても、周知の目的下において延伸を行うことが刊行物3に記載されている。
してみると、刊行物1発明のシートの素材としてポリ乳酸を用いることは、単なる周知の素材からの選定にすぎず、延伸を行うことも、刊行物3に記載される技術に基づいて、当業者が容易になしえたものと認める。
さらに、刊行物1発明においてもヒートシールによる融着がなされており、そのシール幅の設定は、技術思想の具現化にあたり必須の設計事項であるところ、通常、必要とする強度等を勘案して設計者が実験等により設定すべきものであり、その幅が具体的値として示される場合に、通常の設計思想とは別異の格別の技術的意味があることがあり得るとしても、具体的な幅の設定を伴うことなく「所定幅」とすることは、単なる設計上の事項にすぎないものと認める。
したがって、相違点は、周知の技術及び刊行物3に記載される技術に基づいて、当業者が容易になしえたものと認める。
そして、補正発明の奏する作用効果は、刊行物1、3及び周知技術から当業者が予測できる以上の格別のものとは認められない。
したがって、補正発明は、刊行物1、3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年6月7日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、平成15年9月30日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 袋本体(1) が表裏のシート片(1a),(1b) からなり、且つ該表裏両シート片(1a),(1b) の両側縁が所定幅に溶着され、しかも前記袋本体(1) は生分解性の延伸フィルムで構成されてなることを特徴とする袋体。(以下、「本願発明1」という。)
【請求項2】 袋本体(1) が表裏のシート片(1a),(1b) からなり、且つ該表裏両シート片(1a),(1b) の両側縁及び底縁が所定幅に溶着され、しかも前記袋本体(1) は生分解性の延伸フィルムで構成されてなることを特徴とする袋体。
【請求項3】 表裏のシート片(1a),(1b) を構成する生分解性フィルムが、ポリ乳酸からなるフィルムである請求項1又は2記載の袋体。
【請求項4】 表裏のシート片(1a),(1b) を構成する生分解性フィルムが、ポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなるフィルム、デンプン系の生分解性樹脂からなるフィルム、酢酸セルロース系の生分解性樹脂からなるフィルムである請求項1又は2記載の袋体。
【請求項5】 所定幅に溶着される両シート片(1a),(1b) の溶着部の内面側に、接着剤(9) が設けられている請求項1乃至4のいずれかに記載の袋体。
【請求項6】 溶着部の内面側の接着剤(9) が、水溶性接着剤である請求項5記載の袋体。
【請求項7】 袋本体(1) に印刷されるインキが、大豆インキ等の植物性インキである請求項1乃至6のいずれかに記載の袋体。」

4.引用刊行物
前記刊行物1〜3は、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であり、その記載事項は、前記「2-2」に記載したとおりである。

5.対比・判断
前記2.で検討した補正発明が「ポリ乳酸からなる生分解性の延伸フィルム、又はポリ乳酸とエチレン系ポリマーの混合物からなる生分解性の延伸フィルム」なる事項により限定されるものであるところ、単に「生分解性の延伸フィルム」と特定するものであるから、本願発明1は、補正発明中の一部構成を省いたものと言うことができる。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した補正発明が、前記「2-4」に記載したとおり、刊行物1、3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1、3に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は原査定に理由により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-09 
結審通知日 2006-08-11 
審決日 2006-08-25 
出願番号 特願2000-378737(P2000-378737)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 寺本 光生
一ノ瀬 覚
発明の名称 袋体  
代理人 藤本 昇  

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