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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1145413
審判番号 不服2003-16662  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-28 
確定日 2006-10-11 
事件の表示 特願2000-3035「ハードディスクドライブ用のフィルタリング装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月15日出願公開、特開2000-228078〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月11日(パリ条約による優先権主張1999年1月12日、韓国)の出願であって、平成15年4月24日付けで手続補正がなされた。その後、本願は、平成15年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年8月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日に手続補正がなされたものである。

2.平成15年8月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年8月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「内部にハードディスクが回転自在に設けられたハウジングと、
前記ハウジング内の流動空気からパーチクルを濾過するための四角形状のフィルターと、
前記ハウジング内の天井から突設され、前記フィルターの三辺を包んで支持する支持溝を有するメインホルダと、前記メインホルダに対応するように前記ハウジング内の底部に突設され、前記フィルターの残りの一辺を包んで支持する収容溝を有する補助ホルダとよりなり、前記フィルターを包んで支持するホルダとを有して、前記フィルターと前記天井及び底部との間の間隙の発生を抑制するようにしてあり、
更に、前記メインホルダの一側から、前記ハードディスクと対向して前記フィルターの吸気面と鈍角の角度を保つように延設され、前記ハウジング内の流動空気を前記フィルターの吸気面にガイドする第1ガイド部と、前記メインホルダの他側から、前記ハードディスクと対向して前記フィルターの背面と鋭角の角度を保つように延設され、前記フィルターの背面に流動空気が逆流されることを防ぐ第2ガイド部を有する構成としたハードディスクドライブ用のフィルタリング装置。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「フィルター」の形状について、「四角形状」と限定を付加し、さらに、メインホルダの支持溝がフィルターの「三辺」を包むとの限定を付加し、補助ホルダーの収容溝がフィルター「残りの一辺」を包むとの限定を付加し、ホルダーはフィルター「を包」んで支持すると限定するものである。更に、第1ガイド部について、フィルターの吸気面と「鈍角の」角度と、第2ガイド部については、フィルターの背面と「鋭角の」角度との限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するか否か)について以下に検討する。

(2)引用例
(2)-1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-291082号公報(以下、「引用例1」という。)には、磁気ディスク装置について、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、情報処理装置の外部記憶装置として使用される磁気ディスク装置のエアーフィルター取付構造に関するものである。」
「【0004】
【課題を解決するための手段】図1に示してあるように磁気ディスク・磁気ヘッド等を収納し密閉構造とするベース・カバーは一般的にはアルミダイカストにて製作しており、成型時にエアーフィルター取付用溝を一体成型にて製作することにより容易にエアーフィルターを取り付けることができる。」
「【0007】図1において、磁気ディスク装置が停止している時は磁気ヘッド3が磁気ディスク1上に具備されており、磁気ディスク1を必要枚数をスピンドルモータ2に積層してスピンドルモータ22の駆動により所定の速度で回転することにより空気の流れを起こし空気ベアリング効果により磁気ヘッド3を磁気ディスク1上に浮上させる。磁気ヘッド3はアクチュエータ4に必要本数を積層し磁気ディスク1上に位置決めし情報の記録/再生を行なっている。その磁気ディスク面1と磁気ヘッド3との間は高密度化のために狭くなる傾向にあり(0.2μm以下)、微小の塵埃といえども磁気ディスク1上にあると高速回転している磁気ディスク1と磁気ヘッド3との間に入り込み磁気ディスク面に損傷を与え、情報の記録/再生が不可能となる。このため、磁気ディスク1上に塵埃のない空気を送り込むために空気の流れの途中に(b)に示すようにベース6にエアーフィルター取付用溝7を設けエアーフィルター5を差し込む簡単構造となっている。
【0008】図2〜図4は、実施例の詳細を示す。図2はベース6にエアーフィルター取付用溝7を設けエアーフィルター5を差し込み、カバー8にエアーフィルター押さえ9にてエアーフィルター5を固定する。図3はベース6とカバー8にエアーフィルター取付用溝7を設け、ベース6とカバー8とに別々のエアーフィルター5を差し込む構造となっており、(b)はお互いのエアーフィルター5で固定し、(c)はベース6に取り付けられたエアーフィルター5はカバー8のエアーフィルター取付用溝7にて固定し、カバー8に取り付けられたエアーフィルター5はベース6のエアーフィルター取付用溝7にて固定する。図4は図3と同様にベース6とカバー8にエアーフィルター取付用溝7を設けるが、エアーフィルター5をベース6とカバー8で共用として1個のみ使用している構造となっている。」

以上の記載によれば、図2の実施例の磁気ディスク装置のエアーフィルター取付構造について、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。
「磁気ディスクを収納し密閉構造とするベースとカバーにおいて、
前記ベースにエアーフィルター取付用溝を設けエアーフィルターを差し込み、
前記カバーのエアーフィルター押さえにて前記エアーフィルターを固定する磁気ディスク装置のエアーフィルター取付構造。」

(2)-2
同じく原査定の拒絶の理由に、周知例として引用された実願昭62-137064号(実開昭64-42597号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、磁気ディスク装置用フィルタ構造について、図面とともに以下の事項が記載されている。
「しかし、上述のようにフイルタ1が配置されている場合、フイルタ流路抵抗が、複数の磁気デイスク3相互間の流路抵抗に比して大きいために、ほとんどの気流がフイルタ1を通過しないか、あるいは、フイルタ1およびフイルタケース12Aにより形成される凹部のために、フイルタ1の前後で渦7が形成されやすく、この渦7の発生による静圧の上昇により気流フイルタ1へ流入し難くフイルタ1による浄化効果は極めて低い。」(明細書第4頁第5行〜同第13行)
「第1図において、1は塵埃を捕捉するフイルタ、2はシユラウド5内に配置されたフイルタ1を内部に収納するフイルタケースで、同フイルタケース2には、磁気デイスク3の回転に伴う旋回気流6に対向して同旋回気流6を導入する気流入口部2aと、磁気デイスク3の外周に沿う形状のケース壁部2bとが形成されている。さらに、ケース壁部2bには、気流入口部2aから流入しフイルタ1を通過した気流をフイルタケース2外に導出する小径の気流出口部2cが開口形成されており、この気流出口部2cを介して、フイルタ1後流のフイルタケース2内の空間2dと、旋回気流6とが通じている。なお、4は従来と同様の回転体である。」(明細書第7頁第13行〜第8頁第6行)

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、
引用例1発明の「磁気ディスク」と「磁気ディスク装置」は、本願補正発明の「ハードディスク」「ハードディスクドライブ」にそれぞれ相当する。
引用例1発明の「磁気ディスクを収納し密閉構造とするベースとカバー」の構成は、本願補正発明の、「内部にハードディスクが回転自在に設けられたハウジング」の構成に相当する。
引用例1発明の「エアーフィルター」は、形状が四角形状(引用例1の「図1乃至図6のエアーフィルター5参照)であり、塵埃のない空気を送るために空気の流れの途中に設けられたエアーフィルターであるから、本願補正発明の、ハウジング内の流動空気からパーチクルを濾過するための四角形状の「フィルター」に相当する。
引用例1発明の「エアーフィルター取付用溝」は、ベースにフィルターの3辺を支持するように突出して設けられた構成である(引用例1の図2(a)(b)参照)から、本願補正発明の、ハウジング内から突設され、フィルターの三辺を包んで支持する支持溝を有する「メインホルダ」に相当する。
引用例1発明の「エーアフィルター押さえ」は、カバーに突出したもの(引用例1の図2(a)(b)参照)であり、エアーフィルターを押さえて固定するから、本願補正発明の、メインホルダに対応するようにハウジング内に突設され、フィルターの残りの一辺を支持するものである、「補助ホルダ」に相当する。
引用例1発明の「ベースにエアーフィルター取付用溝を設けエアーフィルターを差し込み、カバーのエアーフィルター押さえにてエアーフィルターを固定する磁気ディスク装置のエアーフィルター取付構造」は、エアーフィルターとベース及びカバーの間には間隙を発生させないから、本願補正発明の「フィルターを包んで支持するホルダとを有して、フィルターと天井及び底部との間の間隙の発生を抑制するようにしてある」構成に相当し、引用例1発明の「磁気ディスク装置のエアーフィルター取付構造」は、エアーフィルターを磁気ディスク装置に取り付けた構成において、本願補正発明の「ハードディスクドライブ用のフィルタリング装置」に相当する。

してみると、両者は、以下の一致点と相違点を有する。
〈一致点〉
「内部にハードディスクが回転自在に設けられたハウジングと、
前記ハウジング内の流動空気からパーチクルを濾過するための四角形状のフィルターと、
前記ハウジング内から突設され、前記フィルターの三辺を包んで支持する支持溝を有するメインホルダと、前記メインホルダに対応するように前記ハウジング内に突設され、前記フィルターの残りの一辺を支持する補助ホルダとよりなり、前記フィルターを包んで支持するホルダとを有して、前記フィルターと前記天井及び底部との間の間隙の発生を抑制するようにしてある構成としたハードディスクドライブ用のフィルタリング装置。」

〈相違点〉
(ア)本願発明では、メインホルダが「天井」に、補助ホルダが「底部」に突設されるのに対して、引用例1発明では、それぞれ「ベース」と「カバー」に突設される点。
(イ)補助ホルダに関して、本願補正発明は、フィルターの残りの一辺を「包んで」支持する「収容溝を有する」と特定しているのに対して、引用例1発明では、このように特定していない点。
(ウ)本願補正発明は、メインホルダに関して、「メインホルダの一側から、ハードディスクと対向してフィルターの吸気面と鈍角の角度を保つように延設され、ハウジング内の流動空気を前記フィルターの吸気面にガイドする第1ガイド部と、前記メインホルダの他側から、前記ハードディスクと対向して前記フィルターの背面と鋭角の角度を保つように延設され、前記フィルターの背面に流動空気が逆流されることを防ぐ第2ガイド部を有する」と特定しているのに対して、引用例1発明では、このように特定していない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
相違点(ア)について
メインホルダを天井に補助ホルダを底部に構成することは、設計の必要性に応じて適宜行われていることにすぎないので、引用例1に記載されるエアーフィルターを固定する際に、エアーフィルター取付用溝やエアーフィルター押さえを単にそのように構成する程度のことは、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得たものである。

相違点(イ)
引用例1には、エアーフィルターの取付構造について、図3,4の実施例には、ベースとカバーの双方にエアーフィルター取付用溝を設けて、この溝にエアーフィルターを差し込んで固定する構成((2)-1の【0008】参照)が記載されている。
してみれば、引用例1発明において、エアーフィルターの残りの一片を固定する際に、エアーフィルター押さえに収容溝を設けて、エアーフィルターの残りの一辺を差し込み、エアーフィルターの4辺を包んで支持するように固定する構成とすることは、図3,4の実施例の記載から、当業者が格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得たものである。

相違点(ウ)
引用例2に記載されているように、フィルターを収容するフィルターケースに、気流の逆流を防止する目的で、磁気ディスクの外周に沿う形状のケース壁部を形成することは周知の事項である。また、磁気ディスクの外周に沿うガイドが、エアーフィルターの吸気面との角度が鈍角で、エアーフィルターの背面との角度が鋭角に設定されたフィルタ構造も周知(特開昭56-145573号公報:第2図の翼型ガイドベーン6とフィルタ7参照)である。
してみれば、引用例1発明の「エアーフィルター取付用溝」に、エアーフイルターの通過する気流を案内するように、ガイドを形成することは、当業者であれば、格別の創意工夫を要することなく容易に想到し得ることであり、ガイドを形成する際に、エアーフィルター取付用溝の一側から、磁気ディスクと対向してエアーフィルターの吸気面と鈍角の角度を保つように延設され、ハウジング内の流動空気を前記エアーフィルターの吸気面にガイドする第1ガイド部と、エアーフィルター取付用溝の他側から、前記磁気ディスクと対向して前記エアーフィルターの背面と鋭角の角度を保つように延設され、前記エアーフィルターの背面に流動空気が逆流されることを防ぐ第2ガイド部を有する構成とすることは、当業者が適宜に選択できた設計事項というべきであり、実施に際して考慮された構成の一つと認められる。
そして、本願の明細書の記載をみても、第1ガイド部をエアーフィルターの吸気面と鈍角の角度及び第ガイド部をエアーフィルターの背面と鋭角の角度とすることに、格別優れた効果を見いだすことができない。

結局、前記各相違点は、格別なものではなく、また、前記各相違点を総合的に検討しても奏される効果は、引用例1の記載から当業者が容易に予測できる範囲内のものと認められる。
したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年8月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1,2に係る発明は、平成15年4月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「内部にハードディスクが回転自在に設けられたハウジングと、
前記ハウジング内の流動空気からパーチクルを濾過するためのフィルターと、
前記ハウジング内の天井から突設され、前記フィルターの一端部を包んで支持する支持溝を有するメインホルダと、前記メインホルダに対応するように前記ハウジング内の底部に突設され、前記フィルターの他端部を包んで支持する収容溝を有する補助ホルダとよりなり、前記フィルターの上下端部を包んで支持するホルダとを有して、前記フィルターと前記天井及び底部との間の間隙の発生を抑制するようにしてあり、
更に、前記メインホルダの一側から、前記ハードディスクと対向して前記フィルターの吸気面と所定の角度を保つように延設され、前記ハウジング内の流動空気を前記フィルターの吸気面にガイドする第1ガイド部と、前記メインホルダの他側から、前記ハードディスクと対向して前記フィルターの背面と所定の角度を保つように延設され、前記フィルターの背面に流動空気が逆流されることを防ぐ第2ガイド部を有する構成としたことを特徴とするハードディスクドライブ用のフィルタリング装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から「フィルター」の形状の限定事項である、「四角形状」との構成を省き、メインホルダの支持溝が包むフィルターの「三辺」との構成を省き、補助ホルダーの収容溝が包むフィルターの「残りの一辺」との構成を省き、ホルダーがフィルター「を包」んで支持するとの構成を省くものである。更に、第1ガイド部について、フィルターの吸気面と「鈍角の」角度と、第2ガイド部については、フィルターの背面と「鋭角の」角度との限定を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1の記載及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-28 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-29 
出願番号 特願2000-3035(P2000-3035)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 相馬 多美子
吉村 伊佐雄
発明の名称 ハードディスクドライブ用のフィルタリング装置  
代理人 伊東 忠彦  

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