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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1145452
審判番号 不服2003-22691  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-20 
確定日 2006-10-12 
事件の表示 平成 9年特許願第 10618号「回路板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 7日出願公開、特開平10-209607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】手続の経緯
本願は、平成9年1月23日に出願されたもので、原審において通知された拒絶理由に対して、請求人(出願人)は平成15年1月6日付けで意見書の提出と共に手続補正をしたが、上記拒絶理由によって拒絶査定を受けたので、本件審判請求をすると共に、審判請求と同日の平成15年11月20日付け、及び平成15年12月22日付けで、特許法第17条の2第1項第3号(平成14年改正前の特許法であって、以下についても同様である)に規定する手続補正(前置補正)をしたものである。(なお、平成15年12月22日付けの手続補正は、発明の詳細な説明のみを補正するものである。)

【第2】平成15年11月20日付け手続補正の却下について
【補正却下の決定の結論】
平成15年11月20日付けの手続補正を却下する。
【補正却下の決定の理由】
1.平成15年11月20日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という)の趣旨
本件手続補正では、請求項1の発明が次のように補正される。
(1)本件手続補正前の請求項1の発明
「【請求項1】 樹脂製の回路基板の表面にレーザ照射及びめっきの工程を経て回路形成をすることによって回路板を製造するにあたって、めっきの後に、回路基板のレーザ照射部分の表面をエッチングすることを特徴とする回路板の製造方法。」
(2)本件手続補正後の請求項1の発明
「【請求項1】 樹脂製の回路基板の表面にレーザ照射及びめっきの工程を経て回路形成をすることによって回路板を製造するにあたって、めっきの後に、回路基板のレーザ照射部分の表面を物理的処理でエッチングすることを特徴とする回路板の製造方法。」(以下、「本願補正発明」という)

2.独立特許要件の有無
上記1.の手続補正は、下線部の要件「物理的処理で」を付加することによって、特許請求の範囲を減縮しようとしたもので、新規事項を追加するものではなく、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。
2-1.引用例及びその記載事項の概要
原査定の拒絶理由で引用された、本願出願前の頒布に係る刊行物である特開平7-66533号公報(以下、「引用例」という)には、「回路板の製造方法」に関して、次のイ〜ハの事項が記載されている。
イ 「【0016】・・・図1は本発明の一実施例を示すものであり、絶縁性基材1としてはポリイミド、ABS、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、アルミナセラミックス等・・・を用いることができる。」(第3頁第4欄第36〜43行)
ロ 「【0035】図6は本発明の他の実施例を示すものであり、絶縁性基材1としては図1の実施例のものと同じものを用いることができ、・・・絶縁性基材1の表面にめっき下地層2として厚み0.1〜2μm程度の薄いCu,Ni,Pd,Cr,Agなどの金属膜2aを、図6(b)のように設ける。
【0036】次に、・・・レーザ(電磁波)を照射して、レーザを照射した部分の薄い金属膜2aを除去する。・・・図6(c)に示すように、非回路部4の金属膜2aのうち、レーザの照射部である回路部3との境界部分の金属膜2aは除去され、非回路部4のめっき下地層2のうちレーザの非照射部は、回路部3の金属膜2aと共に除去されずに残されることになる。・・・
【0037】上記のようにしてレーザを絶縁性基材1の表面の非回路部4に回路部3との境界線に沿って照射した後、・・・回路部3の金属膜2aに給電電極の陰極を接続して通電しつつ、電気めっき浴に絶縁性基材1を浸漬することによって、回路部3の金属膜2aに銅などの電気めっき層13を10μm程度の厚みで析出させ、パターン形状の回路5を形成する。非回路部4に残留する金属膜2aには通電されていないので、非回路部4に残留する金属膜2aには電気めっき層13は設けられない。」(第6頁第10欄第27行〜第7頁第11欄第15行)
ハ 「【0038】この後に、エッチング溶液に絶縁性基材1を短時間浸漬するなどしてライトエッチングをおこない、非回路部4に残留する薄い金属膜2aを除去する。このとき、回路5は回路部3の金属膜2aの上に電気めっき層13を厚く設けることによって形成してあるので、ライトエッチングで回路5が消えるようなことはない。
【0039】このようにして、回路部3の金属膜2aに電気めっきをすると共にライトエッチングして非回路部4の金属膜2aを除去して回路形成をおこなった後、必要に応じてソルダーレジスト、Niめっき、Auめっきを施すことによって、回路板として仕上げることができる。例えば、上記のように電気めっきをおこなった後、ソルダーレジストを塗布・パターンニングしてNiめっき必要部やあるいはAuめっき必要部を露出させ、無電解めっきでNiめっきやあるいはAuめっきをおこなうようにすればよい。」(第7頁第11欄第16〜32行)

2-2.発明の対比
(1)本願補正発明の構成事項と引用例の記載事項とを対比すると、上記イの記載からみて、上記ロの「絶縁性基材」は、本願補正発明でいう「樹脂製の回路基板」に相当し、また、上記ハの記載も合わせ参酌すれば、引用例にも、「回路基板の表面にレーザ照射及びめっきの工程を経て回路形成をすることによって回路板を製造」する「回路板の製造方法」といえるものが開示されていることは明らかである。
そして、上記ハでは、めっき工程の後におこなう「ライトエッチング」に関して、「エッチング溶液に絶縁性基材1を短時間浸漬する」際に、「回路5は・・・電気めっき層13を厚く設けることによって形成してあるので、ライトエッチングで回路5が消えるようなことはない」としており、この記載からみて、上記のエッチング溶液は、「レーザ照射部分の表面」を含む、絶縁性基材(回路基板)の全面に作用すると解される。
(2)上記の対比から、本願補正発明と引用例記載の発明との間の一致点及び相違点を、次のとおりに認定できる。
[一致点] 「樹脂製の回路基板の表面にレーザ照射及びめっきの工程を経て回路形成をすることによって回路板を製造するにあたって、めっきの後に、回路基板のレーザ照射部分の表面をエッチングする回路板の製造方法」である点。
[相違点] めっき工程後の「エッチング」が、本願補正発明では「物理的処理」で行われるのに対して、引用例記載の発明では「エッチング溶液」による「ライトエッチング」というにとどまり、物理的処理についての言及はない点。

2-3.当審の判断(相違点の検討)
(1)当該技術分野においては、回路パターンの形成後やめっき工程の後に、物理的処理によるエッチングあるいはこれに相当する操作を施すことが各種の目的で行われている(特開昭63-160393号公報記載のプラズマエッチング、特開平6-21611号公報記載の高圧流体の噴射、特開昭64-31495号公報記載の研磨等参照)。
そして、引用例記載の発明において、上記のような物理的処理によるエッチング、あるいはこれに相当する操作を行った場合には、その影響は、上記のライトエッチングの場合と同様に、「レーザ照射部分の表面」にも及ぶことになる。
そうすると、引用例記載の発明におけるめっき後のライトエッチングに代わるものとして、又は当該ライトエッチングに加えて、上記の物理的処理によるエッチングあるいはこれに相当する操作を施し、上記相違点に関して、本願補正発明と同様の構成とすることは、当業者にとって格別想到しがたいこととはいえない。
(2)なお、請求人は、審判請求の理由において、「変質層を除去して絶縁信頼性を高める」という技術課題を示すものがない旨主張しているが、本願補正発明においては「変質層」自体についての明確な言及がない以上、上記の主張にはその根拠となるものがないというべきである。更に、レーザを照射することによって、通常は変質層が発生するというのであれば、引用例記載のものでも同様に発生することになるし、そのような変質層が発生した場合に、これを除去するという技術課題を発見することが、当業者にとって特段の困難を伴うこととも認めがたい。
しかも、上記の技術課題の有無にかかわらず、本願補正発明が、引用例記載の発明から容易に発明することができたといえることは上述のとおりである。

2-4.独立特許要件の欠如に伴う手続補正の却下
上記検討から明らかなように、本願補正発明は、上記引用例記載の発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本願補正発明については特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反することになり、特許法第159条第1項において一部読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の結論のとおり決定する。

【第3】本願の発明について
1.本願の発明
平成15年11月20日付けの本件手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の発明は、平成15年1月6日付け及び平成15年12月22日付けの各手続補正に係る、特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるが、そのうち、請求項1の発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】 樹脂製の回路基板の表面にレーザ照射及びめっきの工程を経て回路形成をすることによって回路板を製造するにあたって、めっきの後に、回路基板のレーザ照射部分の表面をエッチングすることを特徴とする回路板の製造方法。」

2.引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記【第2】2-1.に記載したとおりである。

3.対比・判断
上記の本願請求項1に係る発明は、上記【第2】で検討した、本願補正発明から、「物理的処理で」(エッチングする)という要件を省いたものに相当する。
そうすると、本願請求項1の発明の構成を全て含み、さらに他の構成要件を付加した発明である本願補正発明が、上記【第2】の2-3.に記載したとおり、上記引用例に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願請求項1の発明も本願補正発明と同じく、上記引用例に記載された発明等に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

【第4】むすび
上記のとおり、本願請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願請求項2以下に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-07 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-28 
出願番号 特願平9-10618
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ新海 岳  
特許庁審判長 前田 仁
特許庁審判官 永安 真
柴沼 雅樹
発明の名称 回路板の製造方法  
代理人 西川 惠清  
代理人 森 厚夫  

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