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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1145521
審判番号 不服2003-2090  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-07 
確定日 2006-10-20 
事件の表示 特願2000-149699「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月27日出願公開、特開2001-327702〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は、平成12年5月22日の出願であって、平成14年9月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成14年11月26日付けで手続補正がなされ、平成14年12月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年2月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成15年3月4日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年3月4日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年3月4日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年3月4日付けの手続補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されたとりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】図柄の変動中において、前半に図柄の高速スクロール表示を行い、後半にリーチ状態の表示を経て最終停止図柄を表示すると共に、前記高速スクロール状態時において、後半の最終停止図柄付近の図柄表示の一部を予告画面として所定時間表示した後、当該予告画面を消去し、高速スクロールに戻すように制御する図柄表示装置を備えたことを特徴とするパチンコ機。」

2.補正の適否の検討
本願補正発明に係る補正は、平成14年11月26日付けで補正された【請求項1】の図柄の変動表示に関する記載事項について、「前半に図柄の高速スクロール表示を行い」を、「図柄の変動中において、前半に図柄の高速スクロール表示を行い」に、同じく、【請求項1】の予告画面に関する記載事項について、「後半の図柄表示の一部を所定時間表示」を、「後半の最終停止図柄付近の図柄表示の一部を予告画面として所定時間表示した後、当該予告画面を消去し、高速スクロールに戻すように制御する」に限定的に特定する記載であって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例に記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平8-206313号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「しかしながら、かかる構成は、リーチになってから、図柄表示確定に至るまでの演出であるので、その期待感を高揚し得る期間が短く、また発生頻度も少ない。」(段落【0004】)
(イ)「一方、大当たりの前提となるリーチ状態に対する期待感を高め得る構成を備えたパチンコ機は提案されていない。しかるに、リーチ状態は大当たりへのステップとしての意義を有するものであるから、このリーチ状態への期待感を高揚させることにより、パチンコ遊技の興趣を一層高め得ることが期待され得る。」(段落【0005】)
(ウ)「本発明は、上述の図柄表示装置を備えたパチンコ機において、前記図柄制御手段が、各図柄表示部によってリーチ状態発生如何が示される前に、所定条件が充足されると、いずれか若しくは全ての図柄表示部の図柄を、それ以前の表示作動とは区別される特異なリーチ予告表示作動で変動させるようにする図柄制御内容を具備するものであることを特徴とするものである。ここで、リーチ状態の図柄表示態様を構成する図柄表示部とは、後述する実施例において、図柄表示部A,Bに相当するものである。尚、図柄表示部Cも追従してリーチ予告表示作動をする場合を排除するものではない。」(段落【0007】)
(エ)「ここで遊技者に、リーチ予告表示作動が発生すると、リーチ状態となる可能性が高いと感じさせるためには、リーチ状態となる場合、及びリーチ状態とならない場合にあっては、リーチ状態発生如何の最終表示をすることとなる図柄表示部の表示図柄の順位が、図柄順列にあってリーチ状態となる図柄の近隣位置にある図柄である場合に、所定図柄表示部の図柄をリーチ予告表示作動で変動させるようにすればよい。」(段落【0008】)
(オ)「これにより、リーチ状態には必ずリーチ予告表示作動となることから、リーチ予告表示作動となるとリーチ状態を条件反射的に期待することとなる。」(段落【0010】)
(カ)「【発明の実施の形態】添付図面について本発明の一実施例を説明する。図1は、パチンコ機1の遊技領域3の正面図であって、その遊技領域3の盤面中央には、図2で拡大して示すように装着ケース(図示せず)の前部に固定されたセンターケース4が配設され、該センターケース4内に図柄表示装置6が設けられる。この図柄表示装置6は横方向に並ぶ三つの図柄表示部A,B,Cを画面上に備える。この図柄表示部A,B,Cを表示する画面は液晶表示器,ドットマトリックス表示器又はCRTにより構成され得る。」(段落【0014】)
(キ)「前記始動口14又は開放された普通電動役物15の側方から遊技球が流入すると、景品球の供給と共に図柄表示装置6が駆動する。尚、連続的に通過した場合には、上述のように始動記憶数表示装置11が順次点灯し最高四回まで保留される。そして図柄表示装置6が駆動すると、図柄表示部A,B,Cは図4の図柄順列に従って図柄変動を開始し、約5秒程度経過すると、図柄表示部A,B,Cの順番に図柄変動が停止する。」(段落【0022】)
(ク)「図柄表示部A,B,Cは、上述した始動口14又は開放された普通電動役物15への遊技球の流入に起因して、記憶消化とともに夫々図4で示す各図柄順列に従って下方へスクロールする。そして次の経緯により図柄表示部A,B,Cの順次で図柄が確定表示される。」(段落【0024】)
(ケ)「ここで図3で示すように、中央制御装置CPUに接続された記憶装置ROMには、0〜204のコマからなり、例えば「7」を当たりとする当たり特別乱数K(図5イ)と、該当たり特別乱数Kの結果により選定される当たり特別図柄乱数L(図5ロ)と、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 ,M3 (図5ハ)と、リーチ予告乱数N(図5ニ)を格納しておく。ここで、図5ロ,ハの各乱数図表は、上段が乱数値、下段がその乱数値に対応して実際に表出する図柄を示している。」(段落【0025】)
(コ)「そして、始動口14を玉が通過すると、乱数列Kを選定する。そして、この値がK=7の場合には、図柄表示部A,B,Cが変動すると、図5ロで示す特別図柄乱数Lから値を選出して、当たり図柄を決定すると共に、図柄表示部A,Bを順次循環変動して停止させ、同一図柄とする。」(段落【0026】)
(サ)「このときその経過で必ず、リーチ状態となる。そこで、図柄表示部Aが停止した後に、図柄表示部B,Cを上から下へのスクロールであるそれ以前の表示作動とは区別される特異なリーチ予告表示作動で変動させ、リーチ状態に対する遊技者の期待感を高揚させる。このリーチ予告表示作動態様の詳細は後述する。」(段落【0027】)
(シ)「そのリーチ予告表示作動終了後、図柄表示部Bを停止させ、リーチ状態とする。さらには、このリーチ状態の確定後も、図柄表示部Cを上述と同じ予告表示作動を続行させたり、またはこれとも異なった特異な大当たり予告表示作動を生じさせることにより、今度は大当たりへの期待感を高揚させる。そして、図柄表示部Cの停止にともない、所定の大当たり作動を開始させる。」(段落【0028】)
(ス)「一方、K≠7の場合には、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 ,M3 を順次選出し、図柄表示部A,B,Cをハズレ表示する。この時、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 ,M3 を選出して得られた図柄が当たり図柄の場合には、再抽選して図柄表示部A,B,Cが必ずハズレとなるようにする。」(段落【0030】)
(セ)「ここでハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 の選出値が等しい場合には、リーチ状態の図柄表示態様を構成する図柄表示部A,Bが同一図柄となりリーチ状態となる。そこで、この場合には、図柄表示部Aが停止した後に、図柄表示部B,Cをリーチ予告表示作動で変動させ、リーチ状態に対する遊技者の期待感を高揚させる。そして図柄表示部Bの停止により、リーチ状態とし、図柄表示部Cをそのまま予告表示作動させ、今度は大当たりへの期待感を高揚させる。尚、リーチ状態となると、図柄表示部Cを全く異なる作動態様で変動させるようにしても良い。尚、順番に停止する図柄表示部A,B,Cの幅方向配列は、本実施例のほか種々の順序が考えられる。例えば、中央に図柄表示部Aを置いて、まず中央の図柄表示部を変動停止するようにして良い。」(段落【0031】)
(ソ)「また、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 の選出値が等しくない場合には、リーチ予告乱数Nを抽選し、その結果により、通常の作動とする場合と、リーチ予告表示作動とする場合に選択する。この場合には、リーチ予告表示作動があったとしても、図柄表示部A,Bは一致せず、リーチ状態とはならない。このリーチ予告乱数Nのコマ数は適宜に設定されるが、リーチ予告表示作動の発生頻度が、たとえば、20%〜80%等、遊技者にリーチを期待させるに足る適正な割合であることが望まれる。」(段落【0032】)
(タ)「このような、表示過程により、リーチ状態となる前には、必ず図柄表示部B,Cはリーチ予告表示作動により変動する。一方、リーチ予告表示作動があっても、必ずしもリーチ状態とはならない。従って、リーチ予告表示作動があると、不確実ながらも、リーチ状態の可能性が高いと、遊技者は認識することとなり、図柄表示部Bの確定により、一喜一憂することとなる。しかもこのリーチ予告表示作動の発生頻度は、従来のリーチ状態により発生する大当たりへのリーチ予告表示作動の頻度よりも高いから、図柄変動中における遊技者の期待感を高頻度で刺激し得ることとなる。」(段落【0033】)
(チ)「例6;図10イ〜ニで示すように、当たりハズレを決定するための図柄とは異なる「吉」(図10イ),「福」(図10ロ)等の文字図柄からなるリーチ予告図柄x、「花火」(図10ハ),「打出の小づち」(図10ニ)等の絵図柄からなるリーチ予告図柄yを表示するようにしても良い。」(段落【0046】)
(ツ)「この場合に表示態様としては、図11イ,ロ,ハの態様がある。この図では、各図柄表示部A,B,Cに縦方向に3つの図柄を表示して、その組み合わせを三種の横方向、斜め方向で有効とするスロットマシン状の図柄表示態様を示すものであるが、単一の図柄を横一列に表示する表示態様であっても良い。」(段落【0047】)
(テ)「ここで図11イは、図柄表示部Aに、図柄順列に挿入して一回又は繰り返して表示するものである。または図柄順列とは別に、瞬間的に一〜複数回、挿入しても良い。図12イ〜ニは、図10イ〜ニを図柄表示部Aの図柄順列に挿入した態様を詳細に示すものである。」(段落【0048】)
(ト)「また図11ロは、変動中に図柄表示部A,B,Cに瞬間的にリーチ予告図柄x(y)を表示するようにしたものである。」(段落【0049】)
(ナ)「上述した例6の各表示態様にあって、リーチ予告表示作動とはリーチ予告図柄が短時間又は比較的長い時間に表示される一連の表示作動を意味することとなる。そして、この表示後に、再び通常の図柄が変動表示されて、図柄表示部Bの図柄が確定する。」(段落【0055】)
(ニ)「また各例1〜7にあって、図柄表示部Aが確定する前に、図柄表示部A,B,Cの全て、または図柄表示部Cのみに限らず、そのいずれかをリーチ予告表示作動させるようにしても良い。すなわち例1〜6にあっては、図柄表示部Aが変動中であっても、所定のリーチ予告表示作動を実行させればよく、例7にあっては、図柄表示部A,B,Cのいずれかに突如としてリーチ予告図柄が瞬間的に表示されるようにしても良い。」(段落【0057】)
(ヌ)「図柄表示部A,B,Cは、図柄変動前にマイクロコンピュータ内では既に決定されているから、このような制御も容易に行なうことができる。このように最初から全図柄表示部、又はそのいずれかの図柄表示部をリーチ予告表示作動させる態様にあっては、リーチ予告表示作動時間がさらに長くなり、遊技者の緊張感を長く保たせ得ることとなる。」(段落【0058】)
上記記載事項(ア)乃至(ヌ)の記載及び図面からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「パチンコ機1は、遊技領域3の盤面中央に横方向に並ぶ三つの図柄表示部A,B,Cを画面上に備えた図柄表示装置6が設けられ、始動口14又は開放された普通電動役物15の側方から遊技球が流入すると、図柄表示装置6の図柄表示部A,B,Cが図柄変動を開始し、図柄表示部A,B,Cの順次で図柄が確定表示するものであって、中央制御装置CPUに接続された記憶装置ROMには、当たり特別乱数Kと、特別乱数Kの結果により選定される当たり特別図柄乱数Lと、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 ,M3 と、リーチ予告乱数Nを格納しており、始動口14を玉が通過すると、乱数列Kを選定し、この値がK=7の場合には、特別図柄乱数Lから値を選出して、当たり図柄を決定し、図柄表示部A,B,Cが同一図柄となり、一方、K≠7の場合には、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 ,M3 を順次選出し、ハズレ特別図柄乱数M1 ,M2 の選出値が等しい場合には、図柄表示部A,Bが同一図柄となり、これらは、表示過程で必ず、リーチ状態となり、図柄表示部Aが停止した後に、図柄変動のスクロールである表示作動とは区別される特異なリーチ予告表示作動で変動させ、リーチ予告表示作動とは、リーチ予告図柄が短時間又は比較的長い時間に表示される一連の表示作動を意味しており、この表示後に、再び通常の図柄が変動表示されて、図柄表示部Bの図柄を確定するものであり、また、図柄表示部Aが確定する前に、図柄表示部A,B,Cの全てをリーチ予告表示作動させるようにしても良いパチンコ機1。」

4.対比
本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「図柄変動」が「図柄の変動」に相当し、以下同様に「図柄」が「図柄」に、「リーチ状態」が「リーチ状態」に、「図柄表示部A,B,Cの順次で図柄が確定表示」が「最終停止図柄を表示」に、「リーチ予告図柄」が「予告画面」に、「短時間又は比較的長い時間に表示」が「所定時間表示」に、「パチンコ機1」が「パチンコ機」にそれぞれ相当している。
また、引用発明の「図柄の変動」は、引用例の上記記載事項(ク)「図柄表示部A,B,Cは、・・遊技球の流入に起因して、・・下方へスクロールする。」、同じく記載事項(コ)「・・始動口14を玉が通過すると、・・図柄表示部A,B,Cが変動する・・図柄表示部A,Bを順次循環変動して停止させ、同一図柄とする。・・」、同じく記載事項(サ)「このときその経過で必ず、リーチ状態となる。・・」なる記載から、図柄が変動中において、スクロール表示を行い、リーチ状態(リーチ状態)の表示を経て最終停止図柄を表示(図柄表示部A,B,Cの順次で図柄が確定表示)するものであり、また、図柄の変動過程におけるスクロール表示が、前半に高速スクロール表示を行い、後半に図柄がリーチ状態の表示を経ることは、パチンコ機の図柄変動における技術常識(例えば、特開平9-201459号公報、段落【0119】〜【0122】参照)であるから、引用発明の「図柄の変動」は、本願補正発明と同様に「図柄の変動中において、前半に図柄の高速スクロール表示を行い、後半にリーチ状態の表示を経て最終停止図柄を表示する」構成を具備するといえる。
そして、引用発明の「予告画面」は、引用例の上記記載事項(サ)「このときその経過で必ず、リーチ状態となる。そこで、図柄表示部Aが停止した後に、図柄表示部B,Cを上から下へのスクロールであるそれ以前の表示作動とは区別される特異なリーチ予告表示作動で変動させ・・」、同じく記載事項(ト)「・・変動中に図柄表示部A,B,Cに瞬間的にリーチ予告図柄・・を表示するようにした・・」、同じく記載事項(ナ)「上述した例6の各表示態様にあって、リーチ予告表示作動とはリーチ予告図柄が短時間又は比較的長い時間に表示される一連の表示作動を意味することとなる。そして、この表示後に、再び通常の図柄が変動表示されて、図柄表示部Bの図柄が確定する。・・」、同じく記載事項(ニ)「また各例1〜7にあって、図柄表示部Aが確定する前に、図柄表示部A,B,Cの全て、・・をリーチ予告表示作動させるようにしても良い。」なる記載に基づけば、図柄表示部A,B,Cが全て変動している高速スクロール状態時において、予告画面(リーチ予告図柄)を図柄表示部A,B,Cの全ての画面全体を用いて所定時間表示(短時間又は比較的長い時間に表示)した後、再び当該予告画面(リーチ予告図柄)が消去されて、高速スクロールに戻すように制御されることになるから、引用発明の「予告画面」は、本願補正発明と「スクロール状態時において、予告画面として所定時間表示した後、当該予告画面を消去し、高速スクロールに戻すように制御」される点で共通の構成を備えるといえる。

してみると、引用発明と本願補正発明とは、

「図柄の変動中において、前半に図柄のスクロール表示を行い、後半にリーチ状態の表示を経て最終停止図柄を表示すると共に、前記スクロール状態時において、予告画面として所定時間表示した後、当該予告画面を消去し、高速スクロールに戻すように制御する図柄表示装置を備えたパチンコ機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
予告画面の内容が、本願補正発明においては、最終停止図柄付近の図柄表示の一部であるのに対し、引用発明においては、図柄とは異なる絵・文字図柄やスクロール方向を異ならせる表示であって、最終停止図柄付近の図柄表示の一部ではない点。

5.相違点についての検討
<相違点>について
予告画面の内容が、最終停止図柄付近の図柄表示の一部であることとは、本願補正発明の明細書の記載によれば、最終停止図柄付近の画像データ(リーチ態様)がリーチ予告として現れ、該予告画面は動作した状態または停止した状態であり、最終停止図柄は完全には分からない(本願補正発明の明細書、段落【0017】、【0018】参照)ことから、最終停止する前で最終停止図柄の全てを認識できない図柄の表示であると解する。
ところで、予告の表示を行うパチンコ機分野において、特開2000-84182号公報(段落【0167】、【図27】参照)、及び特開平9-313682号公報(段落【0191】〜【0194】参照)に、最終停止図柄全てを、予告する内容として予め予告表示する点が、また、特開平9-28876号公報(段落【0018】〜【0026】参照)に、最終停止図柄全てでなく最終停止図柄の一部を予告表示する点が記載されており、これらから、予告する内容を、最終停止図柄の全て或いは一部とすることは、従来周知の技術といえる。
そして、引用発明及び上記周知技術は、ともに、変動停止する図柄に関連する情報を予告して遊技者に遊技の展開を示唆する点で共通するものであり、また、予告画面の表示内容の制御について、相互に技術の転用を図ることに困難性はないから、引用発明における予告画面の制御に、予告する内容が最終停止図柄の全て或いは一部とする制御を行う上記周知技術を適用し、適用する際に、最終停止図柄付近の図柄表示の一部(最終停止する前で最終停止図柄の全てを認識できない図柄の表示)とすること、即ち、本願補正発明に係る相違点を構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

6.作用効果・判断
そして、本願補正発明における作用効果は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成15年3月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成14年11月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりのものである。
「【請求項1】前半に図柄の高速スクロール表示を行い、後半にリーチ状態
の表示を経て最終停止図柄を表示すると共に、前記高速スクロール状態において、後半の図柄表示の一部を所定時間表示する図柄表示装置を備えたことを特徴とするパチンコ機。」

2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記【2】3.に摘記したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から前記【2】2.で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】5.で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-08 
結審通知日 2006-08-09 
審決日 2006-09-06 
出願番号 特願2000-149699(P2000-149699)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 塩崎 進
辻野 安人
発明の名称 パチンコ機  
代理人 小野塚 薫  
代理人 中村 壽夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 萼 経夫  

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