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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27B
管理番号 1145624
審判番号 不服2004-11235  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-28 
確定日 2006-10-16 
事件の表示 平成 6年特許願第280089号「加工材搬入装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月14日出願公開、特開平 8-118304〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成6年10月19日の特許出願であって、同16年1月16日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同16年3月16日に明細書について手続補正がされたが、同16年4月15日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同16年5月28日に本件審判の請求がされ、同日付けで明細書について再度手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲について補正するものであって、その請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前の請求項1
【請求項1】 所定の間隔を開けて複数条のベルトが設けられ、該ベルトの送り出し端部に間欠シリンダと回動腕によって多数の加工材を1本づつ送る手段を設けた横送りコンベアと、該横送りコンベアに所定の間隔を開けて、該横送りコンベアと直交方向に装着された支持台の上端に複数の縦送りローラと片側に定規を設けた縦送りコンベアと、該縦送りコンベアの上端に間隔を開けて2つの作動軸の端部が固着され、前記縦送りコンベアの下方に装着された昇降台に本体が固着された2つの昇降シリンダと、前記縦送りコンベアの前記縦送りローラの間に所定の間隔を開けて、前記横送りコンベアと所定の間隔を開けてほぼ平行に前記昇降台に装着された移動台と、該移動台の上に装着されたレール上を移動され、前記横送りコンベアの前記1本づつ送る手段によって送られた加工材をクランプ部材でクランプするクランプ装置とからなり、前記横送りコンベアによって送られた加工材をクランプ装置のクランプ部材でクランプし、クランプ装置を縦送りコンベアの前面に来ると、前記2つの昇降シリンダで前記昇降台及び移動台を上昇させて、前記加工材を前記縦送りコンベア上に移動することを特徴とする加工材搬入装置。

(2)補正後の請求項1
【請求項1】 所定の間隔を開けて複数条のベルトが設けられ、該ベルトの送り出し端部に間欠シリンダと回動腕によって多数の加工材を1本づつ長さ方向と直角方向に送る手段を設けた横送りコンベアと、該横送りコンベアに所定の間隔を開けて、該横送りコンベアと直交方向に装着された支持台の上端に複数の縦送りローラと片側に定規を設け、前記加工材を長さ方向に送る縦送りコンベアと、該縦送りコンベアの上端に間隔を開けて2つの作動軸の端部が固着され、前記縦送りコンベアの下方に装着された昇降台に本体が固着された2つの昇降シリンダと、前記縦送りコンベアの前記縦送りローラの間に所定の間隔を開けて、前記横送りコンベアと所定の間隔を開けてほぼ平行に前記昇降台に装着された移動台と、該移動台の上に装着されたレール上を移動され、前記横送りコンベアの前記加工材を1本づつ送る手段によって送られた加工材をクランプ部材でクランプするクランプ装置と、該クランプ装置でクランプされた加工材を前記縦送りコンベアの前記定規に当たるまで移動するモータとからなり、前記横送りコンベアによって送られた加工材をクランプ装置のクランプ部材でクランプし、クランプ装置が縦送りコンベアの前面に来ると、前記2つの昇降シリンダで前記昇降台及び移動台を上昇させて、前記モータで前記加工材を前記縦送りコンベア上に移動し、前記加工材を前記縦送りコンベアの定規に接触して位置決めすることを特徴とする加工材搬入装置。

2.補正の適否
上記特許請求の範囲についての補正は、多数の加工材を1本づつ送る手段について「長さ方向と直角方向に」送ることを限定し、縦送りコンベアについて「前記加工材を長さ方向に送る」ことを限定し、加工材を縦送りコンベア上に移動することについて「該クランプ装置でクランプされた加工材を前記縦送りコンベアの前記定規に当たるまで移動するモータ」を備えるとともに、「前記加工材を前記縦送りコンベアの定規に接触して位置決めする」ことを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかである。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められる。

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-80240号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明はアルミニューム合金製のカーテンウォール方立材、木製の梁・柱等のの長尺なワークを加工ラインの移送装置に搬送する長尺ワークの搬送装置に関するものである。」

イ.段落【0007】〜【0008】
「【実施例】・・・(中略)・・・図において、1は加工ラインのワーク移送装置であり、X軸方向(図1において左右方向)に延長させて設置したフレーム2の上面に多数のローラ3をX軸方向に所定ピッチで配列し、このローラ3によりX軸方向に細長いアルミニューム合金製のワ-クWを支持する(図3)。上記ローラ3上に載置されたワークWはチャック4に挾持されて図1において左部から右方に向けて間欠的に移送される。
上記ワーク移送装置1の図1において右部にはワークWの端面、上下面等を加工する多種類の加工機(図示省略)がX軸方向に配列され、ワーク移送装置1によって移送されるワークWを上記加工機で順次加工する。上記ワーク移送装置1の移送始端部(図2において左部)の側部に、コンベヤ支持フレーム5を設け、このコンベヤ支持フレーム5にY軸(前後)方向に移送機能を有する主コンベヤ10、早送りコンベヤ20および送り出しコンベヤ35を設ける。」

ウ.段落【0012】
「また、上記各主コンベヤ10の前部(移送終端部)の側部に送り出しコンベヤ35を設ける。この送り出しコンベヤ35は、図3に示すように、各主コンベヤ10の前部からワーク移送装置1に向けて突出させたレール36にワーク支持部37を前後(Y軸)方向に摺動可能に取付け、該各ワーク支持部37を第3駆動装置38によって前後方向(図3において左右方向)に移動させる。・・・」

エ.段落【0013】
「上記送り出しコンベヤ35は第2昇降装置45によって昇降させる。この第2昇降装置45は、図3に示すように、コンベヤ支持フレーム5の前部に一対のスタンド7をX軸方向に離間させて起立固定し、このスタンド7にX軸方向に延長する伝導軸Cおよび支持軸Dを上下に配置して回転可能に取付け、該伝導軸Cおよび支持軸Dに支持アーム46a、47を各レール36と対応させて図3において右方に突出固定し、該支持アーム46a、47の揺動端部(右端)に昇降ロッド48をピン連結するとともに該昇降ロッド48の上端部に前述した各レール36を固定する。また上記伝導軸Cに1個の駆動アーム46bを下方に突出固定し、該駆動アーム46bの下端部を支柱6に取り付けた第2昇降シリンダ49に連結し、この第2昇降シリンダ49を伸縮作動させて上記各レール36を同時に昇降させる。」

オ.段落【0016】〜【0017】
「上記主コンベヤ10に載置されたワークWは、第1駆動装置14つまり第1モータ18の駆動によりキャタピラチェーン12を図3において右回転させ、終端部のワークW(W2)が所定の移送終端部に達すると、終端部の近接スイッチ50の作動により上記第1モータ18を停止させる。
次に第2昇降装置45を上昇、つまり第2昇降シリンダ49を伸長作動させて送り出しコンベヤ35を上昇させると、そのワーク支持部37が上記主コンベヤ10の移送終端部に到来したワークW(W2)を持上げ、主コンベヤ10のワーク載置部12aから上方に離脱させる。この状態で第3駆動装置38つまり移送シリンダ41を短縮作動させると、上記ワーク支持部37がレール36上を図3において右方に摺動し、ワークWをワーク移送装置1の上方に移動させる。次いで第2昇降シリンダ49が短縮作動されて上記送り出しコンベヤ35が降下し、上記ワークWがワーク支持装置1のローラ3上に載置される。降下した送り出しコンベヤ35はその後移送シリンダ41が伸長作動されてそのワーク支持部37が再び移送始端部に移動され、次のワークWを待機する。そして、ワーク支持装置1のローラ3上に載置されたワークW(W3)は、チャック4に挾持されてローラ3上を図1において右方に移送され、その端面、上下面等が加工機(図示省略)によって順次加工する。」

カ.図1及び図4の記載によれば、送り出しコンベヤ35が、ワーク移送装置1の前記ローラ3の間に所定の間隔を開けて、前記主コンベア10と所定の間隔を開けてほぼ平行に設けられることが看取できる。

これらの記載事項を本件補正発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「所定の間隔を開けて複数条のキャタピラチェーン12が設けられ、多数のワークWを長さ方向と直角方向に送る主コンベア10と、
該主コンベア10に所定の間隔を開けて、該主コンベア10と直交方向に装着されたフレーム2の上端に複数のローラ3を設け、前記ワークWを長さ方向に送るワーク移送装置1と、
前記ワーク移送装置1の前記ローラ3の間に所定の間隔を開けて、前記主コンベア10と所定の間隔を開けてほぼ平行に送り出しコンベヤ35を設け、
該送り出しコンベヤ35は、昇降シリンダ49により昇降される昇降ロッド48と、該昇降ロッド48の上端部に固定されたレール36上を移動され、前記主コンベアによって送られた前記ワークWを支持するワーク支持部37と、該ワーク支持部37で支持されたワークWを前記ワーク移送装置1の上方に移動させるシリンダ41とからなり、
前記主コンベア10の移送終端部に到来したワークWを、前記昇降シリンダ49で送り出しコンベヤ35を上昇させることによりワーク支持部37で持ち上げ、前記シリンダ41でワーク支持部37をレール36上で摺動させることによりワークWをワーク移送装置1の上方へ移動させ、次いで送り出しコンベヤ35を降下させることによりワークWを前記ワーク移送装置1のローラ3上に載置するワークの搬送装置。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「ワークW」は、本件補正発明における「加工材」に相当し、以下同様に「主コンベア10」は「横送りコンベア」に、「フレーム2」は「支持台」に、「ローラ3」は「縦送りローラ」に、「ワーク移送装置1」は「縦送りコンベア」に、それぞれ相当する。
ここで、引用発明における複数条の「キャタピラチェーン12」は、複数条の無端条帯という限りで本件補正発明における「ベルト」と共通し、引用発明における「シリンダ41」は、駆動手段という限りで本件補正発明における「モータ」と共通する。
そして、引用発明において、送り出しコンベヤ35は、昇降シリンダ49により昇降される昇降ロッド48と、該昇降ロッド48の上端部に固定されたレール36上を移動され、前記主コンベアによって送られた前記ワークWを支持するワーク支持部37と、該ワーク支持部37で支持されたワークWを前記ワーク移送装置の上方に移動させるシリンダ41とからなるものであるから、昇降ロッド48の上端部は昇降台ということができ、レール36が固定される部分は、昇降台に装着された移動台ということができるとともに、前記昇降シリンダ49は前記昇降台を昇降させる昇降シリンダということができる。また、摘記事項カによれば、前記レール36が固定される部分(移動台)は、ワーク移送装置1のローラ3の間に所定の間隔を開けて、主コンベア10と所定の間隔を開けてほぼ平行に設けられるものである。
さらに、引用発明における「ワーク支持部37」は、移動台の上に装着されたレール上を移動され、前記横送りコンベアによって送られた加工材を支持して縦送りコンベア上に移動する支持手段という限りで、本件補正発明における「クランプ装置」と共通しており、引用発明において、「主コンベア10の移送終端部に到来したワークWを、前記シリンダ49で送り出しコンベヤ35を上昇させることによりワーク支持部37で持ち上げ、前記シリンダ41でワーク支持部37をレール36上で摺動させることによりワークWをワーク移送装置1の上方へ移動させ、次いで送り出しコンベヤ35を降下させることによりワークWを前記ワーク移送装置1のローラ3上に載置する」ことは、横送りコンベアによって送られた加工材を支持手段で支持し、該支持手段の昇降及び縦送りコンベア方向への移動により縦送りコンベア上に載置するという限りにおいて、本件補正発明において「横送りコンベアによって送られた加工材をクランプ装置のクランプ部材でクランプし、クランプ装置が縦送りコンベアの前面に来ると、前記2つの昇降シリンダで前記昇降台及び移動台を上昇させて、前記モータで前記加工材を前記縦送りコンベア上に移動し、前記加工材を前記縦送りコンベアの定規に接触して位置決めする」ことと共通する。
また、引用発明における「ワークの搬送装置」は、加工材搬入装置と表現することもできるものである。
そうすると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。
[一致点]
「所定の間隔を開けて複数条の無端条帯が設けられた横送りコンベアと、該横送りコンベアに所定の間隔を開けて、該横送りコンベアと直交方向に装着された支持台の上端に複数の縦送りローラを設け、前記加工材を長さ方向に送る縦送りコンベアと、昇降台を昇降させる昇降シリンダと、前記縦送りコンベアの前記縦送りローラの間に所定の間隔を開けて、前記横送りコンベアと所定の間隔を開けてほぼ平行に前記昇降台に装着された移動台と、該移動台の上に装着されたレール上を移動され、前記横送りコンベアによって送られた加工材を支持する支持手段と、該支持手段で支持された加工材を前記縦送りコンベア上に移動する駆動手段とからなり、前記横送りコンベアによって送られた加工材を支持手段で支持し、該支持手段の昇降及び縦送りコンベア方向への移動により縦送りコンベア上に載置する、加工材搬入装置。」である点。
[相違点1]
横送りコンベアに関して、本件補正発明では、複数条の無端条帯がベルトであって、該ベルトの送り出し端部に間欠シリンダと回動腕によって多数の加工材を1本づつ長さ方向と直角方向に送る手段が設けられるのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
[相違点2]
本件補正発明では、縦送りコンベアの上端に間隔を開けて2つの作動軸の端部が固着され、前記縦送りコンベアの下方に装着された昇降台に本体が固着された2つの昇降シリンダを有するのに対して、引用発明では、昇降シリンダを有するが、取付方法がそのようなものではない点。
[相違点3]
加工材を支持する支持手段が、本件補正発明では、横送りコンベアの前記加工材を1本づつ送る手段によって送られた加工材をクランプ部材でクランプするクランプ装置であるのに対し、引用発明では、主コンベアによって送られたワークWを支持するワーク支持台であって、クランプするものとはされていない点。
[相違点4]
本件補正発明では、縦送りコンベアには片側に定規を設けており、該クランプ装置でクランプされた加工材を前記縦送りコンベアの前記定規に当たるまで移動するモータを備え、前記横送りコンベアによって送られた加工材をクランプ装置のクランプ部材でクランプし、クランプ装置が縦送りコンベアの前面に来ると、前記2つの昇降シリンダで前記昇降台及び移動台を上昇させて、加工材を縦送りコンベアの前記定規に当たるまで移動するモータで前記加工材を前記縦送りコンベア上に移動し、前記加工材を前記縦送りコンベアの定規に接触して位置決めするのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。

(4)相違点についての検討
ア.相違点1について
コンベアにおいて複数条のベルトからなるものは例示するまでもなく周知である。また、コンベアの送り出し端部に多数のワークを1個ずつ送る手段を設けることも周知の技術手段(必要であれば、実願平1-71314号(実開平3-12815号)のマイクロフィルムにおける第2図の「ストッパ機構2」、特開平5-237805号公報における「押圧体3c」等を参照)であるとともに、これを間欠シリンダと回動腕によって構成することも当業者が普通に採用する事項にすぎない。
してみると、引用発明において上記周知の技術手段を適用して相違点1に係る本件補正発明の構成とすることに困難性は見当たらない。

イ.相違点2について
昇降台を昇降させる昇降シリンダの本体と作動軸を装置のどの部位に取付けるか、また、何ヶ所に設けるかは、当業者が設置箇所等必要に応じて適宜設定することのできる事項にすぎず、引用発明において昇降シリンダの取付方法を上記相違点2に係る本件補正発明のようにすることは当業者が容易になし得たことである。

ウ.相違点3について
コンベアによって送られるワークを支持して移載する手段としてクランプ部材でクランプするクランプ装置を用いることは、例えば、実願昭61-33691号(実開昭62-144828号)のマイクロフィルムの第1図(「クランプ爪72,80」参照)、上記特開平5-237805号公報の図1〜6(「ハンド部7」参照)等に記載されているように従来周知の技術手段であり、また、加工材を1本づつ送る手段についても上述のとおりであるから、引用発明における横送りコンベアによって送られる加工材を支持する支持手段としてクランプ装置を用いる点に格別困難性は見出せない。

エ.相違点4について
加工材の送りコンベヤにおいて、片側に定規を設けて加工材を該定規に当接させることは従来周知の技術手段である(必要であれば、実公昭46-19912号公報における「定木11」、特開平4-62104号公報における定規「G4」、上記特開平5-237805号公報における「定規13」等を参照)。
引用発明において、縦送りコンベア(ワーク移送装置)には定規は設けられていないが、加工材はローラ上を搬送されて加工が行われることから、引用発明におけるローラの片側に定規を設けて加工材を該定規に当接させることは当業者が容易に想到しうる事項であるとともに、横送りから縦送りに移送方向を変更する際にストッパに当接させ位置決めすることも周知の技術手段(必要であれば、特開平6-278846号公報の図1,5及び段落【0003】、【0010】、特開平8-73332号公報の図1,3及び段落【0005】等の記載を参照)であるから、加工材を横送りコンベアから縦送りコンベアに移動する際に、定規に接触して位置決めするよう移送することに困難性は見出せない。
また、引用発明において加工材を横送りコンベアから縦送りコンベアに移送するに当たり、水平方向の移動と垂直方向の移動をどのように組み合わせて行うかは当業者が適宜設定し得る事項にすぎない。
さらに、クランプ装置を移動させる駆動手段としてモータを用いることも当業者が普通に採用する事項である。
してみると、引用発明に上記周知の技術手段を適用して上記相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本件補正発明によってもたらされる効果も、引用発明及び上記従来周知の技術手段から当業者であれば十分予測できる範囲内のものであって格別顕著なものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、請求人は審判請求書において、概略、「まず、引用文献1(特開平6-80240号公報)には、フレーム2の上面に多数のローラ3を設けた加工ラインのワーク移送装置1によって移送されるワークWは、ワーク移送装置1の側部に装着された加工機で順次加工され、このワーク移送装置と直角方向にコンベア支持フレーム5が装着され、このコンベア支持フレーム5に主コンベア10、早送りコンベア20及び送り出しコンベア35が設けられ、早送りコンベア20はワーク支持部29が移送始端に位置した状態で第1シリンダ33を動作すると、第1昇降装置30が駆動されて、早送りコンベア20は主コンベア10のワーク載置部12aよりも高位置になる。
つまり、引用文献1では、加工材は、縦コンベアであるワーク移送上で1から横コンベアである主コンベア10又は第1昇降装置30でコンベア10より高位置の状態に置かれる早送りコンベア20に送られて搬出されるものである。
これに対して、本願発明では、縦送りコンベアで搬送された加工材は、間欠シリンダ8によって回動される回動軸10によって腕11が加工材を1本ずつクランプ部材18に取り込み、クランプ装置16を移動し、縦送りコンベア26の前に来ると、昇降シリンダ31を作動させて、昇降台14及び移動台13をクランプ装置16とともに上昇させ、クランプ部材18でクランプした加工材が縦送りコンベア26の上部にくると、モータ24を駆動してクランプ装置16を移動し、加工材が定規29に当たると、クランプシリンダ17を作動して、クランプ部材18のクランプを解除し、加工材を縦送りコンベア1の上に位置決めする。
つまり、引用文献1では、縦送りコンベアであるワーク移送装置1の上を移動して加工されたワークを横送りコンベアである主コンベア10及び早送りコンベア20で搬出するものであるのに対して、本願発明では、横送りコンベアで搬送された加工材を縦送りコンベアの定規に位置決めするもので、引用文献の構成と本願発明の構成とは全く異なるものであり、作用及び効果も全く異なるものである。」として、本件補正発明が引用文献1から容易に発明されるものでもなく、又引用文献1から本願発明が容易に示唆されるものでもない旨を主張している。
しかしながら、刊行物1(引用文献1)には、上記2に示したとおりの事項が記載されており、引用発明は、主コンベア10により送られるワークを、送り出しコンベア35によってワーク移送装置1のローラ3上に載置するものであって、請求人が主張するような、縦送りコンベアであるワーク移送装置1の上を移動して加工されたワークを横送りコンベアである主コンベア10及び早送りコンベア20で搬出するものではなく、引用文献1の構成、作用及び効果が本願発明と全く異なるものであるとすることはできない。
よって、請求人の上記主張は採用することができない。

3.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないから、その余の補正の要件について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1.本件発明
平成16年5月28日付けの補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成16年3月16日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであると認められる。

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2(2)に示したとおりである。

3.対比・検討
本件発明は、本件補正発明から前記第2の2に示した限定事項を削除したものである。
そうすると、本件発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の2(4)で示したとおり、引用発明及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-03 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-08-28 
出願番号 特願平6-280089
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B27B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就堀川 一郎  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
中島 昭浩
発明の名称 加工材搬入装置  
代理人 鈴木 和夫  

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