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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1145727
審判番号 不服2002-22755  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-07-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-25 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 特願2000- 11728「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月24日出願公開、特開2001-198274〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は平成12年1月20日の出願であって、平成14年5月20日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成14年7月3日付けで手続補正され、平成14年7月31日付けで拒絶理由が通知され、再びこれに対し平成14年9月27日付けで手続補正され、平成14年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成14年11月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

【2】補正後の本願発明
平成14年9月27日付けの手続補正により、補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、この発明を「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 夫々独立の制御基板(39,40,42,43,46)上に構成した複数の制御手段(50,60,70,75,76)と、それら制御基板(39,40,42,43,46)に電力を供給する電源手段とを備え、遊技媒体を用いて遊技を行なう遊技機において、
前記電源手段から供給する供給電圧を監視する電源監視手段(83,83A 〜83O)と、前記電源監視手段(83,83A 〜83O)で監視している供給電圧が所定値よりも低下した場合に、予め設定された複数の制御手段(50,60,70,75,76)の遊技制御をリセットする制御リセット手段(85,85A 〜85G)とを備え、
前記制御リセット手段(85,85A 〜85G)は、複数の制御手段(50,60,70,75,76)の遊技制御のリセットに際して、予め設定した順序でリセットすることを特徴とする遊技機。」

【3】引用例に記載の発明
1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平10-216337号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の技術事項が記載されている。
(ア)「パチンコ機を制御する演算処理手段と、前記演算処理手段が演算処理した制御信号を監視し、該制御信号が正常の場合には前記演算処理手段に正否信号を出力する制御信号監視手段と、前記制御信号監視手段からの正否信号に基づき、前記演算処理手段に対する初期化命令を実行させるためのリセット信号を発生するリセット手段と、を設けたことを特徴とするパチンコ機の制御装置。」(【請求項1】)
(イ)「従来、図2に示すように、演算処理手段(CPU)21のリセット端子22に、リセット信号を周期的に発生させるリセット信号発生回路23を接続し、所定時間毎に演算処理手段21を初期化するものが提案された(特開昭61ー259685号公報参照)。」(段落【0006】)
(ウ)「この公報に開示された技術は、クロック発生回路24から出力する基本クロックを、リセット信号発生回路23により分周して上記リセット信号を発生させる。そして、上記リセット信号の発生周期を演算処理手段21の単位当りのプログラム処理に要する時間より長い周期に設定し、前記リセット信号が発生する毎に演算処理手段21を初期化して、前記誤動作の発生に対処するものである。また、前記リセット信号は前記タイマクロックとしても使用していた。なお、前記電圧降下に起因する演算処理手段21の誤動作対策を考慮したものはない。」(段落【0007】)
(エ)「1はパチンコ機(図示省略)の制御装置を構成する要部を示している。本装置1は演算処理手段2と割込信号発生手段3と演算監視手段4と電源電圧監視手段5とを主構成とするもので、ほかには本装置1と前記パチンコ機との整合を図るインターフェイス6、本装置1を作動させるプログラムおよび各種データを格納したROM7およびアドレスデコーダ8をデータバスとアドレスバスとを介して接続し、クロック発生回路9をクロック端子10に接続してある。クロック発生回路9は演算処理手段2の基本クロックを発生させるものである。」(段落【0014】)
(オ)「演算処理手段2は前記パチンコ機を制御するもので、前記パチンコ機は演算処理手段2が演算処理した制御信号により制御され、演算処理手段2と前記パチンコ機とは交信可能に接続してある。演算処理手段2のアドレスポートにはアドレスデコーダ8が接続してある。」(段落【0015】)
(カ)「制御信号監視手段は、アドレスレコーダ8および演算監視手段4とからなり、アドレスデコーダ8はアドレスポートから正しいアドレスデータが出力されたときに、演算処理が正しいことを表わす正否信号を発生させて演算監視手段4に入力する。この正否信号は単位当りのプログラムが実行される度に発生されるもので、前記正否信号の発生間隔は10ms以内である。なお、この発生間隔は任意に変更することができる。また、前記正否信号はアドレスデコーダ8によって発生させること、およびアドレスデータの出力に基いて発生させることに限定されるものではない。」(段落【0016】)
(キ)「演算監視手段4は前記正否信号が10msより長い時間入力されないときのみ、演算処理手段2を初期化させるリセット信号を演算処理手段2のリセット端子11に入力するものである。また、リセット端子11には電源電圧監視手段5が接続してあり、電源電圧監視手段5は演算処理手段2の電源端子12に供給される電源電圧が所定値から外れたときに、前記リセット信号を演算処理手段2のリセット端子11に入力する。」(段落【0017】)
(ク)「また、電源電圧監視手段5は演算処理手段2の電源端子12に供給される電源電圧が所定値から外れたとき、上記同様に前記リセット信号をリセット端子11に入力し、演算処理手段2を初期化させる。」(段落【0026】)
(ケ)「上記実施例はパチンコ機を例にその制御装置の説明をしたが、パチンコ機のみに限定されるものではなく、マイクロコンピュータを制御装置に使用した遊技機器であれば、容易に当該発明を使用することができる。」(段落【0027】)
(コ)「・・本発明は以上のように構成したものなので、電源投入時、演算処理不良および電圧降下に起因する誤動作が発生したときのみ、即座に演算処理手段を初期化して正常状態に復帰する。このため、演算処理手段が正常に動作している場合に初期化されないので、無駄な初期化処理がなくなる。」(段落【0028】)

以上の(ア)乃至(コ)の記載事項及び図面から、「引用例」には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「パチンコ機の制御装置1は、演算処理手段2と割込信号発生手段3と演算監視手段4と電源電圧監視手段5とを主構成とするものであって、パチンコ機は演算処理手段2が演算処理した制御信号により制御され、演算処理手段2とパチンコ機とは交信可能に接続してあり、電源電圧監視手段5は演算処理手段2の電源端子12に供給される電源電圧が所定値から外れたときに、リセット信号を演算処理手段2のリセット端子11に入力し、演算処理手段2を初期化させるパチンコ機。」

【4】対比
1.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「パチンコ機」が本願発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、「パチンコ機の制御装置1」が「制御手段」に、「電源電圧監視手段5」が「電源監視手段」に夫々相当しており、引用発明の「パチンコ機」は本願発明と同様に「遊技媒体を用いて遊技」を行うことは、遊技機における遊技の性質上から明らかである。
また、引用発明のパチンコ機の制御装置1(制御手段)のように、パチンコ機の各種制御を行う制御装置は、通常、制御基板上に構成され、該制御基板に電力を供給する電源回路(電源手段)を備えることも、パチンコ機分野では技術常識(例えば、特開平7-31728号公報(段落【0032】、【0033】)、特開平11-347185号公報(段落【0022】、【0025】)参照)であるから、引用発明と本願発明は、「制御基板上に構成した制御手段と、制御基板に電力を供給する電源手段を備え」る点で共通する構成を備えたものといえる。
そして、引用例の上記記載事項(キ)「・・電源電圧監視手段5は演算処理手段2の電源端子12に供給される電源電圧が所定値から外れたときに、前記リセット信号を演算処理手段2のリセット端子11に入力する。」、同じく記載事項(コ)「・・本発明は以上のように構成したものなので、電源投入時、演算処理不良および電圧降下に起因する誤動作が発生したときのみ、即座に演算処理手段を初期化して・・」なる記載に基づけば、引用発明の電源電圧監視手段5(電源監視手段)は、演算処理手段2の電源端子12に電源手段から供給する供給電圧を監視するから、「電源手段から供給する供給電圧を監視する」点で本願発明と共通する機能を備えており、さらに、電源電圧監視手段5(電源監視手段)は、供給電圧が低下して所定値から外れたときに演算処理手段のリセットを行うことより、供給電圧が所定値よりも低下した場合にリセット信号を発する制御リセット手段の機能も備えるから、引用発明と本願発明は「電源監視手段で監視している供給電圧が所定値よりも低下した場合に、制御手段の遊技制御をリセットする制御リセット手段とを備え」る点で共通する構成を備えたものといえる。
してみると、引用発明と本願発明とは

「制御基板上に構成した制御手段と、制御基板に電力を供給する電源手段とを備え、遊技媒体を用いて遊技を行なう遊技機において、
電源手段から供給する供給電圧を監視する電源監視手段と、
前記電源監視手段で監視している供給電圧が所定値よりも低下した場合に、制御手段の遊技制御をリセットする制御リセット手段とを備えた遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
制御リセット手段が、本願発明は、複数の制御手段を予め設定した順序でリセットするのに対し、引用発明は、1つの制御手段のみをリセットする点。

2.相違点についての検討
<相違点について>
本願発明において、制御リセット手段が複数の制御手段を予め設定した順序でリセットする目的は、供給される電源が異常状態になった場合、払出し制御手段のリセットを主制御手段より遅くして、払出し制御手段による賞球の払出し処理の未了を防止し、遊技者の利益を補償するものと解され(本願発明の明細書の段落【0013】、【0047】、【0065】、【0070】参照)、これは、障害発生時に直ちにリセットを行い制御手段が行う必要な処理を中断するのでなく、その必要な処理の完了後に行うリセットの技術といえる。
ところで、障害発生時に行うリセットの技術に関して、障害発生時に直ちにリセットを行い制御手段が行う必要な処理を中断するのでなく、その必要な処理の完了後に行うことは、制御手段のリセット技術において多用されている周知技術(例えば、特開平3-52015号公報(第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第20行)、特開昭64-7214号公報(第2頁左下欄第15行〜第3頁左上欄第20行)参照、以下、「周知技術A」という。また、制御手段をリセットすることは、制御による機器の動作も停止することになるから、例えば、各デバイスで構成される各種機器において、直ちに停止して中断するのでなくその制御による必要な処理の完了後に停止させることは、通常広く行われている技術常識(例えば、特開平4-18622号公報(「プリンタへの印字中」、「ファイル書込み中」参照)というべきである。)である。
また、複数の制御手段をリセットする際に、複数の制御手段にわたり予め設定した順序で行うことも、複数の制御手段を備える各種機器をリセットする場合に通常行われる周知技術(例えば、特開平2-166505号公報、特開昭63-271512号公報(第2頁右上欄第10行〜同頁右下欄第2行)、特開平9-258852号公報(段落【0001】、【0012】〜【0014】、特表平7-505241号公報参照、以下、「周知技術B」という。)である。
また、パチンコ機分野において、制御手段を独立して複数設けることは、装置全体の制御を複数の制御手段に分担させて作業容量の増加に対処できることから、広く採用されている技術常識(例えば、特開平8-299554号公報(段落【0003】、【0012】)参照)というべきである。
そうすると、引用発明と上記周知技術A,Bは、共に制御手段の個数やリセット時期・条件の如何によらず、制御手段が正常に作動するようにリセットを行う点で技術が共通しており、また、相互に技術の転用を図ることに格別困難性はないから、引用発明の制御手段・制御リセット手段の構成に、リセットの技術として、障害発生時に直ちにリセットを行い制御手段が行う必要な処理を中断するのでなく、その必要な処理の完了後に行う上記周知技術A、及び複数の制御手段をリセットする際に、複数の制御手段にわたり予め設定した順序で行う上記周知技術B、及び制御手段を独立して複数設ける上記技術常識を各々適用し、複数の制御手段を予め設定した順序でリセットすること、即ち、本願発明に係る相違点を構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
なお、本願発明において、「電源監視手段」が監視する「供給電圧」は、実施例の記載からみて、電源手段に供給される供給電圧でも、複数の制御基板上の制御回路のそれぞれに供給される供給電圧でも、また、それら供給電圧の一部でも良いように記載されており、いずれも結局のところ制御リセット手段が予め設定した順序でリセットするための電圧低下の検知を行うものにすぎず、実施例におけるこれらの供給電圧検知箇所の違いに格別の意味はない。(なお、電源回路(電源手段)に供給される交流電圧を監視することも、当該技術分野において従来周知の技術である。(例えば、特開平9-299592号公報、段落【0020】、【0030】、特開平6-71029号公報、段落【0049】、【0120】参照)また、「制御リセット手段」を一箇所か、或いは複数箇所に設けることについても、当該技術分野において周知技術(例えば、特開平11-104312号公報、特開平11-47408号公報参照)である。

3.作用効果・判断
そして、本願発明における作用効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【5】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-23 
結審通知日 2006-08-24 
審決日 2006-09-06 
出願番号 特願2000-11728(P2000-11728)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 塩崎 進
辻野 安人
発明の名称 遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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