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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1145745
審判番号 不服2003-19229  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-02 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 平成7年特許願第168827号「電子部品自動装着装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年1月21日出願公開、特開平9-23100〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年7月4日の出願であって、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成14年8月9日付け、平成15年8月8日付け及び平成15年10月31日付けの各手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 電子部品を供給部より取出ノズルで取出し、該ノズルを鉛直軸線まわりにパルスモータにより回動させて該部品の角度位置決めを行いプリント基板上に装着する電子部品自動装着装置において、電源回路より電流が供給されパルスモータを駆動する駆動回路と、該駆動回路にパルスモータを回動させるための指令信号が加えられなくなってから残留振動が減衰される所定の時間後に前記電源回路から前記駆動回路への供給電流の値を前記指令信号が前記駆動回路に加えられている場合に比較して減少させるよう制御する制御手段を設けたことを特徴とする電子部品自動装着装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された
(1)特開平6-334391号公報(以下、「刊行物1」という。)
(2)特開昭60-66696号公報(以下、「刊行物2」という。)
(3)特開昭61-73595号公報(以下、「刊行物3」という。)
(4)特開昭64-85599号公報(以下、「刊行物4」という。)
には、それぞれ、次の事項が記載されている。

(1)刊行物1(特開平6-334391号公報)の記載事項
刊行物1には、「電子部品自動装着装置」に関して、図1〜5とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 吸着ノズルで部品供給装置からチップ状電子部品を取り出した後該部品を吸着ノズルの回転により角度位置決めしプリント基板上に装着する電子部品自動装着装置において、前記吸着ノズルを角度位置決め用のモータのロータに取り付けたことを特徴とする電子部品自動装着装置。」(第2頁第1欄第2〜7行)
(イ)「(28)は後述するパルスモータ(31)を駆動するための後述する駆動回路(57)からの電流を伝達する駆動電源コードであり、各装着ヘッド(15)に接続されている。」(第3頁第3欄第10〜13行)
(ウ)「(30)はシャフト(18)の下部に取り付けられた材質がアルミニウムの取り付け板であり、該取り付け板(30)にはパルスモータ(31)が形成されている。」(第3頁第3欄第17〜20行)
(エ)「ロータ(32)の回動により部品(5)を吸着する吸着ノズル(14)は任意の角度位置にロータリテーブル(13)の回転中及び停止中を問わず位置決めされることができる。」(第3頁第4欄第22〜25行)
(オ)「該CPU(53)にはインターフェース(56)を介して認識装置(16)、駆動回路(57)等が接続されている。駆動回路(57)には前記供給台駆動モータ(9)及び各ヘッド(15)のパルスモータ(31)等が接続されいる。」(第3頁第4欄第34〜38行)

上記記載事項(ア)〜(オ)及び図1〜5の記載を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「チップ状電子部品(5)を部品供給装置より吸着ノズル(14)で取出し、該ノズル(14)を鉛直軸線まわりにパルスモータ(31)により回動させて該部品(5)の角度位置決めを行いプリント基板上に装着する電子部品自動装着装置において、電源回路より電流が供給されパルスモータ(31)を駆動する駆動回路(57)を設けた電子部品自動装着装置。」(以下、「引用発明」という。)

(2)刊行物2(特開昭60-66696号公報)の記載事項
刊行物2には、「ステッピングモータの制御方式」に関して、第1図〜第4図とともに次の事項が記載されている。
(カ)「ところで、第1図に示す従来のステッピングモータの駆動回路においては、クロックパルスCPがなくなってモータが停止した場合、例えば励磁コイル3aおよびこれに直列に接続されているスイッチングトランジスタ4aを通って電流が継続的に流れる。このため、励磁コイル3aおよびスイッチングトランジスタ4aの一方または双方が発熱するという問題を生じる。この発熱を防止するために、従来においては、モータの停止と同時に、例えば電源を遮断することにより、すべての励磁コイルに電流が流れないようにしていた。
しかしながら、モータが停止した場合に励磁電流を遮断すると、モータのロータが外力によって動いてしまう弊害を生じる。例えばこのステッピングモータをファクシミリ装置等の紙送りに用いて起動・停止を反復するような場合、モータの停止期間中に励磁電流をすべて遮断すると、機構駆動系のバックラッシュ、ベルトのゆるみ等により紙が動き、したがって正確な読取り記録が困難になるという問題を生じた。」(第2頁右上欄第13行〜左下欄第12行)
(キ)「そこでこの発明は、モータが停止した場合、特定の励磁コイルに、動作時よりは小さい値の電流を励磁保持用電流を流すことにより、励磁コイルおよびスイッチング素子の発熱を防止し、かつこの励磁保持用電流によって上述した紙の不必要な動きを抑止しうる新規なステッピングモータの制御方式を提供することを目的とする。」(第2頁左下欄第14〜20行)
(ク)「切換回路12はクロックパルス検出回路13によって制御されるようになされており、入力端子11にクロックパルスCPが供給されているときには基準直流電圧源8を選択し、入力端子11に対するクロックパルスCPの供給が断たれてから所定時間Tの経過後に基準直流電圧源8’を選択するように制御される。」(第2頁右下欄第16行〜第3頁左上欄第2行)
(ケ)「クロックパルス検出回路13が、時点t4以降にクロックパルスCPがなくなったことを検知してから所定の期間Tの経過後の時点t5において、切換回路12を直流基準電圧源8’側に切換えるため、電圧検出器7に加えられる基準電圧Vrefは、第4図Cに示すように、直流基準電圧源8の電圧vよりも低い直流電圧v’に三角波が重畳されたVref’に切換えられ、したがって、励磁コイル4aおよびスイッチングトランジスタ4aに流れる電流Iaは、第4図Dに示すように、時点t5において値iからそれより小さい電流値i’となる。」(第3頁左上欄第13行〜右上欄第4行)
(コ)「なお、時点t4〜t5間の期間Tは、クロックパルスCPの最も長い周期より長い期間に選定される。」(第3頁右上欄第10〜12行)

(3)刊行物3(特開昭61-73595号公報)の記載事項
刊行物3には、「モータ駆動回路」に関して、第1図〜第3図とともに次の事項が記載されている。
(サ)「ステッピングモータ27が停止している間は、4相のうち、いずれか2相を高レベル電圧に保ち且つ他の2相を低レベル電圧に保つことにより、ステッピングモータ27に保持トルクをかけている。これによって、ステッピングモータ27を停止保持することができるが、高レベル電圧を印加している2相に、機械的に必要な保持トルクを発生させるための電流以上の電流が流れ、無駄な電力を消費するということが往々にしてあった。また、最悪の場合、ステッピングモータ27、FET23,24,25,26が熱的に破壊するという欠点があった。」(第1頁右下欄第4〜16行)
(シ)「本発明は、ステッピングモータが停止しているときの消費電力の無駄を無くすことを目的とする。」(第1頁右下欄第18〜19行)
(ス)「次に、ステッピングモータを停止保持するために時刻t1においてクロック入力信号の印加を停止し、パルス変換回路14の出力端子φ1,φ4から低レベル信号を、出力端子φ2,φ3からは高レベル信号を出力する状態に維持する。……端子電圧V2は前記時定数で上昇する。α時間後の時刻t2において、端子電圧V2が基準電圧VRと等しくなり、その後演算増幅器4の出力電圧V3は高レベルとなる。すると、インバータ6〜9の出力電圧は低レベルとなり、抵抗器19〜22に各々可変抵抗器10〜13が並列接続された状態となる。これにより高レベルに維持されているはずのFET24および25のゲート端子は可変抵抗器11,12が抵抗器20,21に並列に入った分だけ電圧が低くなり中間レベル(M)となる。そして、ステッピングモータ27に供給される電流は低下する。また可変抵抗器11,12の抵抗値を変え中間レベル(M)の値をかえることにより、ステッピングモータを停止保持するに必要最小限の電流を供給するように制御できる。」(第2頁左下欄第18行〜右下欄第18行)
(セ)「本発明のモータ駆動回路によれば、モータの回転時には、必要に応じた大電流をモータに供給し、モータの停止保持時には、必要最小限の電流をモータに供給しているので、無駄な電力を消費しない。
又、保持トルクを与える必要がない場合でも、クロック入力信号の供給を停止した後一定時間後にモータへの供給電流は停止するので制動が働き、ブレーキになる力が働かずにモータが回り過ぎることは無い。」(第3頁左上欄第2〜11行)

(4)刊行物4(特開昭64-85599号公報)の記載事項
刊行物4には、「プリンタ用モータの駆動制御方式」に関して、第1図〜第3図とともに次の事項が記載されている。
(ソ)「上記従来例におけるモータホールド方式においては、ホールド抵抗の値によって制動力が固定化される。このため、プリンタの電流オン時には、常時、このホールド電流がホールド抵抗を介して流れ続ける。しかも、モータの高速化と相伴って、当該モータの起動直前および停止時、更にはその後においても停止位置を保持する関係上比較的大きいホールド力を必要とする。このため、モータ停止中も比較的大きいホールド電流の通電を必要とすることから省エネルギ化を図り得ないばかりか、モータのコイルの耐久性が損なわれるという不都合があった。」(第1頁右下欄第14行〜第2頁左上欄第5行)
(タ)「本発明の目的は、かかる従来例の有する不都合を改善し、モータ停止時のホールド電流を小さく設定するとともに、モータの高速化に対応して比較的大きいホールド電流を通電することができ、これによって全体的な消費電力を少なくせしめたプリンタ用モータの駆動制御方式を提供することにある。」(第2頁左上欄第7〜13行)
(チ)「本発明では、プリンタ用モータの励磁コイルの一又は二以上に、ホールド抵抗を介して一定の大きさのホールド電流を通電する制動回路を備え、各相に印加される駆動電流の印加直前および回転停止が成された直後の一定時間の間、ホールド電流に加えて所定レベルのホールド強化電流を励磁コイルに通電する、という構成を採っている。これによって前述した目的を達成しようとするものである。」(第2頁左上欄第15行〜右上欄第3行)
(ツ)「界磁コイルの一又は二以上には、制動回路から比較的小さいホールド電流が通電され、これによってプリンタ用モータは、その停止位置に正確に留められる。……プリンタ用モータの停止直後(停止制御は、起動制御と一体的に別の制御回路にて行われる)にも、同じく位置制御を高精度に維持するため、一時的に比較的大きい値のホールド強化電流が前述したホールド電流に加算して通電される。
この結果、従来より常時通電していたホールド電流を著しく小さい値とすることができる。」(第2頁右上欄第5〜19行)
(テ)「このステッピングモータは、実際には、「オン」、「オフ」の連続で断続的に回転するものであり、これがためパルス信号が入力しなくなった時点で回転が停止する。この回転停止直後に、前述した駆動用相信号P3が前述した起動時と同一の条件のもとに界磁コイルL3に印加される。これによってステッピングモータがその停止位置に有効に固定される。以下、入力信号に応じて同様のことが繰り返される。」(第3頁左上欄第15行〜右上欄第3行)

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「チップ状電子部品(5)」、「部品供給装置」、「吸着ノズル(14)」は、それぞれ、本願発明の「電子部品」、「供給部」、「取出ノズル」に相当するから、本願発明と引用発明とは、
[一致点]
「電子部品を供給部より取出ノズルで取出し、該ノズルを鉛直軸線まわりにパルスモータにより回動させて該部品の角度位置決めを行いプリント基板上に装着する電子部品自動装着装置において、電源回路より電流が供給されパルスモータを駆動する駆動回路を設けた電子部品自動装着装置」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点]
本願発明は、「駆動回路にパルスモータを回動させるための指令信号が加えられなくなってから残留振動が減衰される所定の時間後に電源回路から前記駆動回路への供給電流の値を前記指令信号が前記駆動回路に加えられている場合に比較して減少させるよう制御する制御手段を設けた」ものであるのに対して、引用発明は、そのような制御手段を設けることについての限定を有さないものである点。

4.当審の判断
そこで、前記相違点について以下で検討する。
刊行物2ないし4の記載にみられるように、各種の技術分野において用いられるステッピングモータ(パルスモータともいう)を停止する場合の制御に関し、上記相違点でいう本願発明の構成事項のうちの「駆動回路にパルスモータを回動させるための指令信号が加えられなくなってから所定の時間後に電源回路から前記駆動回路への供給電流の値を前記指令信号が前記駆動回路に加えられている場合に比較して減少させるよう制御する制御手段を設けた」ことは、従来周知の技術である。また、刊行物2の記載事項(カ)(コ)、刊行物3の記載事項(セ)及び刊行物4の記載事項(ツ)(テ)からみて、当該周知の技術における「所定の時間」は、各種の技術分野における必要性(例えば停止位置の精度等)に応じて、当業者であれば適宜設定しうるものと認められる。
そして、引用発明のようにパルスモータにより回動させるものにおいて、停止してからしばらくの間はモータの残留振動が発生することは当業者であれば容易に予測しうるところであるから、引用発明に上記周知の技術を適用するにあたって、上記「所定の時間」を「残留振動が減衰される所定の時間」とすることは、当業者にとって格別困難な事項であるとはいえない。
そうすると、引用発明に上記周知の技術を適用して、上記相違点でいう本願発明と同様な構成事項とすることは、当業者であれば容易に想到することができたものである。
また、本願発明により得られる効果も、刊行物1ないし4に記載された発明から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、刊行物1ないし4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-18 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-04 
出願番号 特願平7-168827
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深澤 幹朗永安 真  
特許庁審判長 鈴木 久雄
特許庁審判官 柴沼 雅樹
平瀬 知明
発明の名称 電子部品自動装着装置  
代理人 相澤 清隆  

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