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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01P |
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管理番号 | 1145748 |
審判番号 | 不服2003-23098 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-11-27 |
確定日 | 2006-10-19 |
事件の表示 | 特願2000-207460「フィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月25日出願公開、特開2002- 26611〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願発明 本願は、平成12年7月7日の出願であって、平成15年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年12月17日付けで手続補正がなされ、その後平成17年11月24日付けで審尋がなされ、平成18年1月30日に回答書が提出され、その後平成18年5月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月7日付けで手続補正がなされたものであり、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記平成18年8月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 (本願発明) 「誘電体が充填された矩形導波管構造内に少なくとも1つの共振器が形成されたフィルタにおいて、 前記共振器を構成する前記導波管構造の長辺導体面における前記共振器上部の導体に少なくとも1つ以上のスリットが形成され、 前記導波管構造を構成する導体面にコプレーナ線路が形成され、 前記コプレーナ線路が前記スリットと接続されていることを特徴とするフィルタ。」 2.引用発明および周知技術 (1)これに対して、当審の拒絶理由に引用された特開平10-93311号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0055】図24は第22の実施形態に係る誘電体導波管型フィルタの斜視図、図25はその断面図である。両図に示すように、誘電体ブロックは略直方体形状を成し、その外面に導電体膜2を形成している。誘電体ブロック1の長手方向の途中には、その長手方向を区分する節となる溝20を形成している。この溝20の内面には導電体膜2を形成している。溝20で区分される領域はそれぞれ共振器として作用する。この共振器領域に、誘電体ブロックの短軸方向に貫通する貫通孔12a,12bを設けている。この貫通孔12a,12bの内面には導電体膜を形成していない。誘電体ブロックの図における側面には端子電極3a,3bを形成していて、誘電体ブロック1の側面の端子電極3a,3bから誘電体ブロック1の底面の導電体膜2にかけて、内部に貫通孔5a,5bを形成していて、その貫通孔5a,5bの内面に結合用電極4a,4bを設けている。この構造により、2つの端子電極3a,3bを入出力部とする2段の共振器からなる帯域通過特性を有する誘電体導波管型フィルタを得る。フィルタ特性は、2段の共振器の共振周波数によって定め、この2段の共振器の共振周波数は貫通孔12a,12bの内径によって定める。たとえば設計段階で貫通孔12a,12bの位置および寸法を決定しておくか、調整段階で貫通孔12a,12bの内面を必要量部分削除する。」(8頁14欄〜9頁15欄、段落55) 上記引用例1の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「外面に導電体膜2を形成」した「略直方体形状」の「誘電体ブロック」は「誘電体が充填された矩形導波管構造」を構成している。したがって、上記「誘電体導波管型フィルタ」は「誘電体が充填された矩形導波管構造内に2個(即ち、少なくとも1つ)の共振器が形成されたフィルタ」であって、「前記共振器を構成する前記導波管構造」には「2個(即ち、少なくとも1つ以上)の端子電極3a,3b」が形成されており、該「端子電極」をフィルタの「入出力部とする」ものである。 したがって、上記引用例1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 (引用発明) 「誘電体が充填された矩形導波管構造内に少なくとも1つの共振器が形成されたフィルタにおいて、 前記共振器を構成する前記導波管構造に少なくとも1つ以上の端子電極が形成され、 前記端子電極を入出力部としたことを特徴とするフィルタ。」 (2)同じく当審の拒絶理由に引用された特開平10-107518号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0026】また、図5は、導波管線路とコプレーナ線路とのLSEモードによる結合構造を示すもので(a)は平面図、(b)は、そのY-Y’断面図である。図5によれば、主導体層2には、長孔からなるスロット孔9が、長手方向が導波管線路5の線路方向と垂直な方向に形成されている。また、コプレーナ線路10は、スロッ孔9が形成された主導体層2に形成されており、主導体層2に形成されたスロット孔9と直交するように連結されている。 【0027】図4および図5に示した構造によって、誘電体導波管線路5とコプレーナ線路10とは電磁的に結合され、両線路間の信号の伝達が可能となる。そして、配線基板として、例えば、上記のコプレーナ線路をIC素子や高周波素子と電気的に接続し、前記コプレーナ線路との接合構造によって、高周波導波管線路はコプレーナ線路を介して信号の伝達が可能となるのである。」(4頁5欄〜6欄、段落26〜27) 即ち、上記引用例2には「誘電体導波管線路の主導体層にスロットを形成し、前記誘電体導波管線路と前記誘電体導波管線路の主導体層に形成されたコプレーナ線路を前記スロットを介して結合させ、両線路間の信号の伝達を可能とした接合構造」が開示されている。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明の「前記共振器を構成する前記導波管構造の長辺導体面における前記共振器上部の導体に少なくとも1つ以上のスリットが形成され、前記導波管構造を構成する導体面にコプレーナ線路が形成され、前記コプレーナ線路が前記スリットと接続されている」という構成と引用発明の「前記共振器を構成する前記導波管構造に少なくとも1つ以上の端子電極が形成され、前記端子電極を入出力部とした」構成はいずれも「前記導波管構造に入出力部が形成されている」という構成である点で一致している。 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 <一致点> 「誘電体が充填された矩形導波管構造内に少なくとも1つの共振器が形成されたフィルタにおいて、 前記導波管構造に入出力部が形成されていることを特徴とするフィルタ。」 <相違点> 「前記導波管構造に入出力部が形成されている」という構成に関し、本願発明の入出力部は「前記共振器を構成する前記導波管構造の長辺導体面における前記共振器上部の導体に少なくとも1つ以上のスリットが形成され、前記導波管構造を構成する導体面にコプレーナ線路が形成され、前記コプレーナ線路が前記スリットと接続されている」構成であるのに対し、引用発明の入出力は「前記共振器を構成する前記導波管構造に少なくとも1つ以上の端子電極が形成され、前記端子電極を入出力部とした」構成である点。 4.判断 そこで、上記相違点の「前記導波管構造に入出力部が形成されている」という構成について検討するに、例えば上記引用例2に開示されているように「誘電体導波管線路の主導体層にスロットを形成し、前記誘電体導波管線路と前記誘電体導波管線路の主導体層に形成されたコプレーナ線路を前記スロットを介して結合させ、両線路間の信号の伝達を可能とした接合構造」は公知であるところ、当該公知技術における「スロット」はその形状から「スリット」であり、当該公知技術の結合構造を引用発明の導波管型誘電体フィルタの入出力部に適用する上での阻害要因は何も見あたらないから、当該引用例2に開示された技術手段に基づいて、引用発明の「前記共振器を構成する前記導波管構造に少なくとも1つ以上の端子電極が形成され、前記端子電極を入出力部とした」構成を、本願発明のような「前記共振器を構成する前記導波管構造の長辺導体面における前記共振器上部の導体に少なくとも1つ以上のスリットが形成され、前記導波管構造を構成する導体面にコプレーナ線路が形成され、前記コプレーナ線路が前記スリットと接続されている」構成とする程度のことは当業者であれば適宜成し得ることである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び引用例2に記載された技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-08-17 |
結審通知日 | 2006-08-22 |
審決日 | 2006-09-04 |
出願番号 | 特願2000-207460(P2000-207460) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01P)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 新川 圭二 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
畑中 博幸 浜野 友茂 |
発明の名称 | フィルタ |
代理人 | 机 昌彦 |
代理人 | 谷澤 靖久 |
代理人 | 工藤 雅司 |