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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B22C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22C
管理番号 1145755
審判番号 不服2004-632  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-08 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 平成11年特許願第129659号「鋳物の欠陥防止法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-317573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成11年5月11日の出願であって、平成15年7月25日付で拒絶理由通知がなされ、同年9月26日付で意見書が提出され、平成15年7月25日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、同年12月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月6日付で手続補正書が提出されたものである。

[2]平成16年2月6日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成16年2月6日付手続補正を却下する。

<理由>
1.補正後の本願発明
平成16年2月6日付手続補正は、特許請求の範囲を次のとおりに補正するものである。
「【請求項1】 酸硬化性粘結剤と含リン化合物を含有する硬化剤とを用いて造型されたリン原子含有量が0.05重量%以上の鋳型に、耐火性骨材を含有する塗型剤であって鉄酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ニッケル酸化物の少なくとも1種を耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部含有する塗型剤を塗布し鋳造するリンによる鋳物の欠陥防止法。
【請求項2】 鉄酸化物を用いる請求項1の鋳物の欠陥防止法。
【請求項3】 鉄酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ニッケル酸化物の少なくとも1種を耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部含有し、リン原子含有量が0.05重量%以上の鋳型に用いるリンによる鋳物の欠陥防止用塗型剤。」

上記補正は、旧請求項1又は2を引用して記載されていた旧請求項3の発明特定事項である「鋳型が酸硬化性粘結剤と、含リン化合物を含有する硬化剤を用いて造型された」を新請求項1に取り込むとともに、旧請求項1の選択的な発明特定事項の「マグネシウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、マンガン酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物の少なくとも1種」を、選択肢の一部の削除により、「鉄酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、ニッケル酸化物の少なくとも1種」と限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、上記補正後の前記請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本願補正発明1」、「本願補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本出願前に頒布された刊行物である引用文献1、2とその主な記載事項は、次のとおりである。
(1)引用文献1:特開平8-174139号公報
(1a)「酸硬化性粘結剤と酸性硬化剤と耐火性粒状骨材とから得られた鋳型表面に塗布するアルコール性塗型剤組成物であって、溶解パラメーターが6.5〜11.0でありかつ炭素数が3〜10の有機溶剤を2〜80重量%含有することを特徴とする鋳造用塗型剤組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
(1b)「【従来の技術】鋳型の製造方法のひとつに、珪砂などの耐火物に酸硬化性樹脂とその硬化触媒である酸性硬化剤とを添加混練した混練砂を、型枠に充填した後、樹脂を硬化させる方法がある。こうして得られた鋳型を用い鋳物を製造する際、鋳型表面に直接高温の溶湯が接触するため、焼着や目差しを生じ、鋳肌を荒くしたり、砂落ち不良となるので、従来から肌砂の目つぶしを行い、平滑な鋳肌をつくり、肌砂の焼着を防止すべく、鋳型表面に塗型剤を塗布するようにしている。」(段落【0002】)
(1c)「本発明に係るアルコール性塗型剤とは、耐火骨材、粘結剤、炭素数1〜3のアルコール及びその他の物質を含有する。
アルコール性塗型剤に用いられる耐火骨材としては、例えばジルコン、シリカ、シャモット、アルミナシリケート、アルミナ、粘土鉱物、黒鉛等の粉末が挙げられ、通常塗型剤に配合されているものならば何れも使用することができ、特に限定されない。このような耐火骨材は鉱物の焼着防止を主目的として用いられている。
また、浸硫防止効果などを目的に MgO、MnO2、CaO の如き耐火骨材を併用することができる。」(段落【0008】〜【0010】)
(2)引用文献2:特公昭50-27021号公報
(2a)「1 フラン樹脂、フエノールレヂン、・・・、その他乾性油を用いた有機自硬性砂に0.5〜1.5%添加される添加剤として用いるもので酸化鉄を主成分とし、他に有効金属酸化物を含む溶湯浸透防止剤においてPH5.0〜7.10の範囲でFe2O385.0〜99.9%、Fe3O4中のFeOを1.0%以下にすることを特徴とする有機自硬性バインダ中子砂の溶湯浸透防止剤。」(特許請求の範囲)
(2b)「本発明は有機自硬性バインダー中子砂の溶湯浸透防止剤に係る。有機質バインダー例えばアマニ油、桐油等を粘結剤とした鋳物砂を用いて作つた中子は鋳込みの際溶湯が浸透しやすい。
これを防止するため従来から酸化鉄粉末を主成分とし、他に有効金属酸化物粉末を含む溶湯浸透防止剤が用いられており、・・・
これ等の金属酸化物のうちFe2O3は中子砂中で溶湯に対し、ガスクッションとして働き、その浸透を防止するもので、・・・
しかしこれ等をフラン樹脂等、バインダーに配合するとその硬化反応を阻止し硬化しなくなるか或いはきわめて硬化を遅くする欠点が生じる。
これは前記従来の浸透防止剤の中に含まれるFe3O4がフラン樹脂系バインダーの硬化を妨害するからで、又その中に含まれているアルカリ性成分がそのPH値を高め、フラン樹脂の硬化に作用するリン酸を中和させ、その作用を減退させるからである。
このような点を考慮して本発明では前記従来の浸透防止剤に含まれる酸化鉄粉末の製造方法を変更し、Fe3O4を除去してさらに中性にし、Fe2O3の成分を高めるようにしたものである。」(第1頁左欄12〜37行)
(2c)「この浸透防止剤を例えば次のように配合する。
即ち砂100部、フラン樹脂2.0%、フラン樹脂に対し硬化触媒(リン酸)20〜40%、前記浸透防止剤0.5〜1.5%かくて硬化速度が次のように得られる。」(第1頁右欄24〜29行)
(2d)「本発明添加剤はフラン樹脂系バインダーを用いた有機自硬性砂に本浸透防止剤を0.5〜1.5%添加して用いられるが・・・、又塗型剤として用いてもよい。」(第2頁右欄8〜12行)

3.対比・判断
3-1.引用文献2記載の発明
引用文献2の上記(2a)には、「フラン樹脂、フエノールレヂン、・・・、その他乾性油を用いた有機自硬性砂に0.5〜1.5%添加される添加剤として用いるもので酸化鉄を主成分とし、他に有効金属酸化物を含む溶湯浸透防止剤においてPH5.0〜7.10の範囲でFe2O385.0〜99.9%、Fe3O4中のFeOを1.0%以下にすることを特徴とする有機自硬性バインダ中子砂の溶湯浸透防止剤。」が記載され、また、上記(2b)(2d)には、それぞれ、「本発明は有機自硬性バインダー中子砂の溶湯浸透防止剤に係る。有機質バインダー・・・を粘結剤とした鋳物砂を用いて作つた中子は鋳込みの際溶湯が浸透しやすい。これを防止するため従来から酸化鉄粉末を主成分とし、他に有効金属酸化物粉末を含む溶湯浸透防止剤が用いられており、・・・」、「本発明添加剤は・・・、又塗型剤として用いてもよい。」と記載されているから、引用文献2には、前記溶湯浸透防止剤を塗型剤として用いる、有機自硬性バインダー中子砂への溶湯浸透防止法が記載されているといえる。さらに、上記(2c)の「この浸透防止剤を例えば次のように配合する。即ち砂100部、フラン樹脂2.0%、フラン樹脂に対し硬化触媒(リン酸)20〜40%、・・・」と記載されているから、中子砂に対する硬化触媒(リン酸)中のリン原子含有量は、0.13〜0.25%〔=2.0×{(20〜40)/100}×(リン原子量31/リン酸の分子量98)〕であるといえる。
以上の事項を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献2発明」という)が記載されていると認められる。
「フラン樹脂を用い、中子砂に対する硬化触媒(リン酸)中のリン原子含有量が0.13〜0.25%である有機自硬性砂に0.5〜1.5%添加される添加剤として用い得るもので、酸化鉄を主成分とし他に有効金属酸化物を含む溶湯浸透防止剤においてPH5.0〜7.10の範囲でFe2O385.0〜99.9%、Fe3O4中のFeOを1.0%以下にする有機自硬性バインダ中子砂の溶湯浸透防止剤を塗型剤として用いる、有機自硬性バインダー中子砂への溶湯浸透防止法。」

3-2.本願補正発明と引用文献2発明との対比
本願補正発明1は、塗型剤が鉄酸化物の1種を耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部含有する態様を包含するし、また、本願補正発明2は、そのような態様に限定されたものと認められるから、そのような態様の本願補正発明1ないし本願補正発明2(以下、これらをまとめて「本願補正発明」という)と引用文献2発明を対比すると、
(A)引用文献2発明における「中子」、「フラン樹脂」、「硬化触媒」、「リン酸」、「酸化鉄」(ないし「Fe2O3」、「Fe3O4」、「FeO」)は、それぞれ、本願補正発明における「鋳型」、「酸硬化性粘結剤」、「硬化剤」、「含リン化合物」、「鉄酸化物」に相当する。
(B)次の周知例1の記載からみて、焼着のうち物理的焼着は、溶湯が鋳型中に浸透固着して起るものであると認められるところ、引用文献2発明の「有機自硬性バインダー中子砂への溶湯浸透防止法」は、鋳物を鋳造する際に、リン原子を含有する中子(鋳型)へ溶湯が浸透するのを防止するものであるから、鋳物の欠陥となる(物理的)焼着を防止するものといえる。
周知例1:「改訂4版 鋳物便覧」丸善株式会社(昭和61年1月20日発行)第795〜797頁
(周1a)「焼着には次の(イ)、(ロ)の2種がある。(イ)溶鋼が鋳型中に浸透固着して起る物理的焼着、(ロ)鋳型材料と鋳鋼表面に生成された酸化鉄などとの反応生成物により鋳型基材が焼結され、鋳肌に固着されて起る化学的焼着である。」(第796頁下から5〜3行)

以上の(A)、(B)の事項を勘案すると、両者は、
「酸硬化性粘結剤と含リン化合物を含有する硬化剤とを用いて造型されたリン原子含有量が所定値の鋳型に、鉄酸化物の1種を含有する塗型剤を塗布し鋳造する鋳物の欠陥防止法。」である点で一致し、鋳型のリン原子含有量の点でも重複するが、次の点で相違する。
相違点1:「鋳物の欠陥」が、本願補正発明では、「リンによる」ものであるのに対し、引用文献2発明では、リン原子を含有する中子(鋳型)への溶湯の浸透によるものである点。
相違点2:本願補正発明では、塗型剤が、「耐火性骨材を含有する」ものであり、塗型剤に含有される鉄酸化物の含有量が、「耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部」であるのに対し、引用文献2発明では、それらの事項が規定されていない点。

3-3.相違点の検討
(i)相違点1について
本願明細書の「【発明が解決しようとする課題】・・・含リン化合物を硬化剤として用いると、再生砂中にリンが濃化し、ピンホールや焼着欠陥が生じやすくなる。鋳物の表面欠陥を防止し鋳肌を向上させる等種々の目的で、従来から塗型剤が用いられている。窒素分による巣欠陥防止のために、鉄酸化物、クロム酸化物、マンガン酸化物を塗型することは提案されているが(特開昭54-147127〜9号)、鋳型からのリン原子の影響に対して有効な手段はなかった。本発明は、リン原子を含有する鋳型で鋳造する場合に特有な鋳物の欠陥防止法、及びこれに用いる塗型剤の提供を課題とする。」(段落【0003】〜【0004】)などの記載からみて、本願補正発明は、リン原子を含有する鋳型で鋳造する場合に生起する焼着等の鋳物の欠陥を防止しようとするものと認められる。
これに対し、引用文献2発明は、前述のとおり、リン原子を含有する中子(鋳型)で鋳造する場合に生起する(物理的)焼着を防止するものであるから、「リン原子を含有する鋳型で鋳造する場合に生起する焼着を防止する」点で、本願補正発明と格別に相違するとはいえない。
したがって、相違点1は、実質的な相違とはいえない。

(ii)相違点2について
引用文献2発明における「溶湯浸透防止剤」は、中子(鋳型)を形成する有機自硬性砂の添加剤として用いる場合、その添加量は、前述のとおり、0.5〜1.5%であるが、塗型剤は、溶湯に直接に接触して溶湯の浸透を防止しようとするものであるから、塗型剤の成分として用いる際に、その溶湯浸透防止機能をより確実にするために、砂等の耐火性骨材に対する量を多くしようとすることは、当業者がその機能との関連で普通に考慮する程度のことである。
一方、耐火性骨材を含有する塗型剤は、引用文献1の上記(1a)、(1c)や、次の周知例2の(周2d)、周知例3の(周3a)、(周3b)の記載に見られるように、本出願前に周知に事項であるし、また、次の周知例2の(周2a)〜(周2c)の記載に見られるように、鋳物の欠陥を防止するための酸化鉄を、鋳物砂の強度低下や型割れ不良が生起する鋳物砂中への混合に代えて、塗型剤の成分として、黒鉛、ジルコン粉末、珪石粉末等の塗型基材(本件補正発明における「耐火性骨材」に相当するもの)に対して5〜30重量%程度含有させ、焼着等の鋳物の欠陥を防止することは、本出願前に周知の事項である。
周知例2:特公昭48-24126号公報
(周2a)「5〜30重量部の酸化鉄を含有してなる鋳鉄砂型鋳物用塗型材。」(特許請求の範囲)
(周2b)「従来砂型による鋳造においては鋳物製品の表層部に、ピンホールやブローホールなどのガス欠陥が発生し易くその過半数以上が時によっては80%もの不良品が発生する。この欠陥を防止するために黒鉛の如き塗型剤を鋳型表面に塗布したりあるいは鋳物砂中に酸化鉄を混合する等種々試みられたが、何れも強度的にあるいはガス欠陥の解消の点において満足なものと言えなかった。特に酸化鉄を鋳物砂中に混合する場合は、鋳物砂の強度が低下して型割れ不良が発生し、これを防止するため鋳型の乾燥方法を変えたり、有機質系の粘結材や添加材の種類、添加量を変えることによって種々調整しているが、それでもガスの欠陥の発生は完全に防止できない。
本発明者はこの点に検討を加えた結果、酸化鉄を鋳型砂に混合することなく塗型液に配合し、この酸化鉄配合の塗型液を鋳型の表面に塗布して乾燥し、鋳型とするときは鋳物製品のピンホールおよびブローホールの欠陥を完全に防止することができ、焼着や目ざし欠陥のない優れた鋳物製品を得ることに成功したものである。」(第1頁左欄14行〜右欄3行)
(周2c)「本発明で塗型液に配合する酸化鉄の量は塗型基材に対して5〜30重量%が適当で、・・・」(第1頁右欄4〜5行)
(周2d)「本発明における塗型基材としては黒鉛のほかにジルコン粉末および珪石粉末でもよく、また砂の種類には何等制約されない。」(第1頁右欄13〜15行)
周知例3:特開昭54-19419号公報
(周3a)「1 骨材に対し0.5〜10部の過酸化物又は酸化物を含んでいることを特徴とする有機鋳物砂用塗型材。」(特許請求の範囲)
(周3b)「本発明で用いる塗型材の骨材としては、・・・フラン鋳物砂等の有機鋳物砂による鋳型に用いる塗型材の骨材をそのまま利用できるのである。即ち従来の塗型材は、例えばジルコンフラワーを骨材とし、・・・」(第1頁右下欄15〜20行)
(周3c)「添加する過酸化物としては、Fe2O3の他に、例えばFe3O4、・・・KMnO4等も適当であり、・・・」(第2頁左下欄3〜5行)

しかも、本願明細書の次の記載から明らかなように、本願補正発明は、マグネシア(酸化マグネシウム、すなわち、マグネシウム酸化物)等の鋳物欠陥防止能を有する酸化物を耐火性骨材としても含有し得るものであるから、鋳物欠陥防止能を有する酸化物からなる耐火性骨材の有無と無関係に、鋳物欠陥防止能を有する酸化物のうち鉄酸化物の1種を耐火性骨材100重量部に対する量で規定しても、そのような量の規定に格別の技術的意義が存在するとは認められない。
「本発明に用いられる塗型剤は、耐火性骨材を含有する塗型剤であって、マグネシウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、マンガン酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物の少なくとも1種を耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部含有する。これらの酸化物のうち、鋳物欠陥の防止能の点からチタン酸化物、クロム酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物が好ましく、鉄酸化物がより好ましい。また添加量は、やはり鋳物欠陥防止能の点から好ましくは10〜30重量部、より好ましくは15〜30重量部である。耐火性骨材としては黒鉛、マグネシア、ジルコン、アルミナ等が、鋳鉄、鋳鋼等の目的に応じて適宜選択される。」(本願明細書の段落【0009】)
「【実施例】実施例1〜12、比較例1〜2
5℃、55%RHの条件下で、フリーマントル珪砂(5号)の新砂に対して硬化剤としてリン酸を、鋳型中のリン原子含有量が0.5重量%となるように混合した。その後2,5-ビスヒドロキシメチルフランを10重量%含有するフラン樹脂をフリーマントル珪砂に対して1重量%添加混合し、図1のテストピースを鋳造できる型枠に充填し硬化させて鋳型を作成した。鋳型表面に塗型剤を刷毛塗りによって塗布し、乾燥させた。この塗型剤はシリカ60重量部、マグネシア25重量部、及び黒鉛15重量部からなりアルコールで希釈される一般的な黒鉛系塗型剤をベースとし、さらに酸化物を表1に示す種類及び量で含有するものである。」(本願明細書の段落【0011】)

してみれば、引用文献2発明において、前記浸透防止剤を塗型剤として用いる際に、塗型剤を「耐火性骨材を含有する」ものとするとともに、鉄酸化物の含有量を「耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部」とすることは、前示の周知事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものというべきである。

(iii)相違点検討のまとめ
以上の検討のとおり、相違点1、2は、実質的な相違でないか、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願補正発明、すなわち、本願補正発明1ないし本願補正発明2は、引用文献2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明1ないし本願補正発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明について
1.本願発明
平成16年2月6日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1〜4に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 リン原子含有量が0.05重量%以上の鋳型に、耐火性骨材を含有する塗型剤であってマグネシウム酸化物、チタン酸化物、クロム酸化物、マンガン酸化物、鉄酸化物、ニッケル酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニウム酸化物の少なくとも1種を耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部含有する塗型剤を塗布し鋳造するリンによる鋳物の欠陥防止法。
【請求項2】 鉄酸化物を用いる請求項1の鋳物の欠陥防止法。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された本出願前に頒布された刊行物である引用文献1、2とその主な記載事項は、上記[2]2.のとおりである。

3.対比・判断
本願発明1は、塗型剤が鉄酸化物の1種を耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部含有する態様を包含するし、また、本願発明2は、そのような態様に限定されたものと認められるから、そのような態様の本願発明1ないし本願発明2(以下、これらをまとめて「本願発明」という)と引用文献2発明を対比すると、両者は、
「リン原子含有量が所定値の鋳型に、鉄酸化物の1種を含有する塗型剤を塗布し鋳造する鋳物の欠陥防止法。」である点で一致し、鋳型のリン原子含有量の点でも重複するが、次の点で相違する。
相違点1’:「鋳物の欠陥」が、本願発明では、「リンによる」ものであるのに対し、引用文献2発明では、リン原子を含有する中子(鋳型)への溶湯の浸透によるものである点。
相違点2’:本願発明では、塗型剤が、「耐火性骨材を含有する」ものであり、塗型剤に含有される鉄酸化物の含有量が、「耐火性骨材100重量部に対し5〜30重量部」であるのに対し、引用文献2発明では、それらの事項が規定されていない点。

これらの相違点について検討するに、これらの相違点は、上記II.3-3.で検討したとおり、実質的な相違でないか、周知事項に基づいて当業者が容易に容易に想到し得たものである。
したがって、本願発明、すなわち、本願の請求項1、2に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1、2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-16 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-04 
出願番号 特願平11-129659
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B22C)
P 1 8・ 575- Z (B22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 憲一郎酒井 英夫  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 日比野 隆治
池田 正人
発明の名称 鋳物の欠陥防止法  
代理人 持田 信二  
代理人 古谷 聡  
代理人 溝部 孝彦  
代理人 義経 和昌  

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