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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K
管理番号 1145767
審判番号 不服2004-4246  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-03 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 平成 6年特許願第 72160号「TIG溶接装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年10月24日出願公開、特開平 7-276050〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年4月11日の出願であって、平成15年10月27日付けで手続補正、平成16年1月30日付けで拒絶査定がなされ、同年3月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月2日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年4月2日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年4月2日付け手続補正を却下する。

[理由]
本件補正は、補正前の請求項1に補正前の請求項2を加えて補正後の請求項1とする内容を含むものであるが、これにより、一部の請求項の番号が繰り上がっている。
本件補正により、補正前の請求項6は、補正後の請求項5として、
「【請求項5】 非消耗電極を支持する先端部材と上部部材との間が二重管構造になっており、その二重管構造の内側流路と外側流路を通して冷却水を流入・流出することにより前記先端部材を冷却することを特徴とするTIG溶接用トーチ。」
と補正された。
上記補正は、請求項5に係る発明を特定するために必要な事項である「二重管構造」について、補正前の請求項6の「前記二重管構造を構成する少なくとも一方の管と先端部材が導電性を有し、その導電性の管ならびに前記先端部材を通して非消耗電極に通電できるように構成されている」なる限定を削除したものである。
かかる補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成16年4月2日付け手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-9に係る発明は、平成15年10月27日付けで補正された特許請求の範囲に記載されたとおりであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「モータ軸の回転により非消耗電極を揺動しながらTIG溶接するTIG溶接装置において、前記モータ軸の軸芯上に非消耗電極を支持する先端部材を設けたことを特徴とするTIG溶接装置。」

4.刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特公平1-57996号公報には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)「本発明は自動ガスシールド・アーク溶接、特に非溶極式電極を使用するアーク溶接機に関する。」(1ページ2欄17-18行)
(2)「これら非溶極は湾曲した尖端を備え、またそれぞれスプリングソケット4,5およびユニオンナット6,7により接触ノズル8,9に固定されている。」(3ページ5欄14-17行)
(3)「本発明の溶接機は更に、溶接ヘッド1の本体14に固着された電極(非溶極)振動機構15を含んでいる。この振動機構はその駆動歯車16、中間歯車17,18、縦動歯車(「従動歯車」の誤記と認められる)19,20・・・を介して非溶極2,3に結合されている。」(3ページ5欄24-30行)

以上より、同公報には、以下の発明(以下、「刊行物発明1」という。)が記載されていると認められる。
「駆動歯車、中間歯車、従動歯車を介して非溶極を振動しながら、自動ガスシールド・アーク溶接する自動ガスシールド・アーク溶接機において、非溶極を保持するスプリングソケットを設けた自動ガスシールド・アーク溶接機。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-57447号公報には、図面とともに、以下の記載がある。
(1)「本発明は溶接構造を有する製品全般に適用されるTIG溶接方法及びその溶接トーチに関する。」(2ページ1欄12-14行)
(2)「7はトーチ本体3の軸心に固定された中空の絶縁管であり、その内部から溶接ワイヤ2が送給されるようになっている。電極1はトーチ3の軸心すなわち絶縁管の側方に配置されており、その先端は内側に曲げられている。トーチ本体3内の上部には円環形状の超音波モータ4が配設されており、この超音波モータ4により電極1が回転方向に駆動されるようになっている。」(2ページ2欄8-15行)
図1を参照しつつ、かかる記載を踏まえると、同公報には、以下の発明(以下、「刊行物発明2」という。)が記載されていると認められる。
「超音波モータの回転により電極を直接回転させるTIG溶接装置。」

5.対比
本願発明と刊行物発明1とを対比する。
ここで、刊行物発明1の「非溶極」、「振動」、「自動ガスシールド・アーク溶接」、「非溶極を保持するスプリングソケット」はそれぞれ本願発明の「非消耗電極」、「揺動」、「TIG溶接」、「非消耗電極を支持する先端部材」に相当する。
したがって、両者は、以下の点で一致する。
「非消耗電極を揺動しながらTIG溶接するTIG溶接装置において、非消耗電極を支持する先端部材を設けたことを特徴とするTIG溶接装置。」

そして、以下の点で相違する。
本願発明は、モータ軸の回転により、直接、非消耗電極を揺動させるとともに、非消耗電極を支持する先端部材がモータ軸の軸芯上にあるが、刊行物発明1は、駆動歯車、中間歯車、従動歯車を介して、非消耗電極を揺動させており、非消耗電極を支持する先端部材の位置は特定されていない点。

6.判断
相違点について検討する。
刊行物発明2は、モータ軸の回転により、直接、非消耗電極を回転させるものである。
刊行物発明1及び2は、いずれも、溶接装置の被消耗電極の作動に関するものであり、刊行物発明1に刊行物発明2の適用を妨げる特段の事情も認められないことから、刊行物発明1の歯車を介した非消耗電極の揺動に代えて、モータにより非消耗電極を直接揺動させることは、設計的事項にすぎない。
非消耗電極を支持する先端部材の位置については、モータにより非消耗電極を直接揺動させた場合、モータ、非消耗電極、非消耗電極を支持する先端部材とは、自ずと、モータ軸の軸芯上に配されることとなるから、上記刊行物発明2の適用に伴う当然の帰結である。
また、かかる相違点により、格別の効果が生じるとも認められない。

7.結論
以上のとおり、本願発明は、刊行物発明1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-09 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-04 
出願番号 特願平6-72160
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B23K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福島 和幸  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 佐々木 正章
菅澤 洋二
発明の名称 TIG溶接装置  
代理人 武 顕次郎  

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