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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1145791
審判番号 不服2004-12838  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-07-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-23 
確定日 2006-10-19 
事件の表示 特願2001-323906「検査方法およびその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月19日出願公開,特開2002-203233〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は,平成13年10月22日(優先権主張,平成12年10月23日)の出願であって,平成16年5月21日付で拒絶査定がされ,これに対し平成16年6月23日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり,その特許請求の範囲は,平成16年3月15日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】 対象物を撮像して得られた濃淡画像を用いて前記対象物の輪郭の適否を検査する方法であって,
前記濃淡画像上で対象物の輪郭を構成する画素をエッジ画素として抽出するとともに各エッジ画素についてエッジ画素の向きをそれぞれ計測し,
抽出されたエッジ画素に順に着目しつつ,着目中のエッジ画素の向きをそのエッジ画素から所定距離だけ離れたエッジ画素の向きと比較し,各エッジ画素毎の比較結果に基づき輪郭上の欠陥の有無を判別することを特徴とする検査方法。」

2.引用刊行物記載の発明
原審が拒絶の理由で引用した,特開昭61-150080号公報(以下「引用例」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。
(1) 「3.発明の詳細な説明
技術分野
本発明は,被検出物体を撮像して得られた画像データに基づいて,被検出物体の表面に生じた割れや欠けなどの欠陥を検出する方法に関する。
背景技術
被検出物体の表面における割れや欠けなどの形状欠陥を画像処理によって検出する方法がある。従来技術では被検出物体をテレビカメラで撮像し,テレビカメラからの画像信号をデジタル化し,デジタル化画像データを画像メモリにストアし,そのストアされた画像データを演算処理して被検出物体の欠陥を検出している。
その欠陥検出するための画像処理として,濃淡画像のパターン認識が必要となる。被検出物体が撮像して得られた原画像から被検出物体の輪郭であるエッジで線画を作成し,その線画の特徴を抽出してパターンの認識を行なっている。濃淡画像からエッジを抽出するには,画像中の濃度の変化を取り出せば良いので一般に微分法が用いられる。」(1頁左下欄15行〜右下欄14行)

(2) 「このような操作を原画像の総ての画素について行なうと,微分画像およびその画像における微分方向が得られる。
次にエッジ抽出処理について説明する。第7図(2)は,微分画像での任意の3×3画素を抽出して,各画素をその微分値|e|〜|i|で示したものである。微分値|e|を有する画素に着目し,微分方向∠eの方向に対して90度の方向にある2つの微分値と前記画素の微分値と比較する。その微分値|e|が,両隣の2つの微分値よりも大きい場合のみ,エッジ抽出画像上の前記画素に対応するアドレスにエッジフラグを立てる。たとえば|e|1を微分値|e|のしきい値とし,|e|2をその画素の微分方向に対して直角方向にある微分値とすると,次の第5式を満足すればエッジフラグが立てられる。
|e|1 < |e| > |e|2 ・・・(5)
この操作をすべての画素について行なうことによって,エッジ線抽出画像が得られる。
このようにして得られたエッジ線抽出画像から欠陥の状態を知るためにエッジ線の変形量が求められる。従来技術では前記エッジフラグの行列アドレスにより,隣接する次のエッジフラグの行列アドレスとの角度差を求め,その角度の大きさによってその変形度合を求めている。」(2頁左上欄12行〜右上欄13行)

(3) 以上の記載からみて,引用例には,次の発明が記載されているものと認められる。
「被検出物体を撮像して得られた画像データに基づいて,被検出物体の表面に生じた割れや欠けなどの欠陥を検出する方法であって,濃淡画像の微分画像およびその画像における微分方向を用いてエッジ線抽出画像上の画素に対応するアドレスにエッジフラグを立てることにより被検出物体の輪郭であるエッジを抽出し,エッジフラグの行列アドレスにより,隣接する次のエッジフラグの行列アドレスとの角度差を求め,その角度の大きさによってその変形度合を求める欠陥検出方法」(以下「引用発明」という。)

3.対比
(1) 本願発明と引用発明とを対比すると,両者共,濃淡画像を処理するもので,引用発明における輪郭であるエッジを抽出する,欠陥検出方法は,本願発明の輪郭上の欠陥の有無を判別することを特徴とする検査方法と,技術分野を同じくし,かつ引用発明における「非検出物体」は本願発明の「対象物」に相当することは当業者に明らかである。
そうすると,本願発明と引用発明とは次の一致点及び相違点が認められる。

(2) 一致点
「対象物を撮像して得られた濃淡画像を用いて前記対象物の輪郭の適否を検査する方法であって,前記濃淡画像上で対象物の輪郭を構成する画素をエッジ画素として抽出し,抽出されたエッジ画素に基づき輪郭上の欠陥の有無を判別する検査方法」

(3) 相違点1
本願発明では,各エッジ画素についてエッジ画素の向きをそれぞれ計測しているのに対して,引用発明ではエッジ抽出画像上の画素に対応するアドレスにエッジフラグを立て,エッジフラグの行列アドレスにより,隣接する次のエッジフラグの行列アドレスとの角度差を求めている点。

(4) 相違点2
本願発明では,着目中のエッジ画素の向きをそのエッジ画素から所定距離だけ離れたエッジ画素の向きと比較し,各エッジ画素毎の比較結果に基づき欠陥の有無を判別するものであるのに対して,引用発明では,求められた角度の大きさによって欠陥の有無を判別するものである点。

4.当審の判断
(1) 相違点1について
引用発明の「エッジフラグ」は,エッジ抽出画像上の画素に対応するアドレスに立てられるものであるから,各エッジ画素に対して立てられたフラグであることは明らかである。
また,引用発明の「エッジフラグの行列アドレス」とは,前記2(1)の記載中に「デジタル化画像データを画像メモリにストアし,そのストアされた画像データを演算処理して被検出物体の欠陥を検出している。」とあることから,エッジフラグの立ったエッジ抽出画像上の座標に対応する画像メモリ上のアドレスを意味するものと理解できる。
したがって,引用発明おける,エッジフラグの行列アドレスと隣接する次のエッジフラグの行列アドレスから求められる角度差とは,着目中のエッジ画素と当該着目中のエッジ画素に隣接するエッジ画素とを結ぶエッジ線の角度差であるといえる。
ここでエッジ線とは,着目中のエッジ画素から隣接するエッジ画素が存在する向きを表すものであるから,引用発明では,着目中のエッジ画素とそれに隣接するエッジ画素の位置関係から当該着目中のエッジ画素の向きを求め,このように求められた各エッジ画素の向きに関して,互いに隣接するエッジ画素の向きの違いから角度差を求めているものである。
したがって,引用発明においても,角度差を求める前にエッジ画素の向きを実質的に求めているものであり,本願発明のエッジ画素の向きを計測することに相当する手段を備えているといえるから,当該相違点は格別な物ではない。

(2) 相違点2について
相違点1で判断したように,引用発明では,各エッジ画素の向きを求め,互いに隣接するエッジ画素の向きの違いから角度差を求めており,この求められた角度の大きさによって欠陥の有無を判定しているものであるが,エッジ画素の向きの違いによる角度差を求めることなく,単純にエッジ画素の向きの違いそのものを比較し,その比較結果から欠陥の有無を判断するようにすることは,当業者であれば適宜実施し得る事項と認められる。
また,エッジ画素の向きを比較する際に,互いに隣接するエッジ画素の向きと比較するか,所定距離だけ離れたエッジ画素の向きと比較するかについても,発明の実施に際して当業者であれば適宜選定して実施し得る程度の事項であり,当該相違点に格別の創意工夫を要するものではない。

(3) 以上のとおり,上記各相違点は,引用例に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に実施し得るものであり,また,高速に欠陥検出を行うことができるという本願発明の効果についても,当業者であれば当然予測することができる程度のもので格別顕著なものではない。

5 むすび
したがって,本願発明は,引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
本願は,他の請求項について論ずるまでもなく拒絶をすべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-21 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-04 
出願番号 特願2001-323906(P2001-323906)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 脇岡 剛  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 岡本俊威
佐藤敬介
発明の名称 検査方法およびその装置  
代理人 鈴木 由充  

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