• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1145832
審判番号 不服2002-2018  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-04-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-07 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 平成 9年特許願第271757号「ゲームシステムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月20日出願公開、特開平11-104356〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成9年10月3日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成13年4月9日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対して拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成14年3月8日に手続補正がなされたものである。


第二.平成14年3月8日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年3月8日付の手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成14年3月8日付手続補正(以下「本件補正」という)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「画像の表示手段と、
プレイヤーの入力操作に対応した信号を出力する操作入力手段と、
前記操作入力手段を介した前記プレイヤーからの指示に応じて、育成モードまたは対戦モードを選択するモード選択手段と、
前記育成モードが選択された場合、前記操作入力手段に対する前記プレイヤーの育成操作に応じてキャラクタが育成される様子を表現した育成ゲーム画面を前記表示手段に表示させつつ、そのキャラクタの特徴を記述したデータを所定の条件に従って変化させる育成ゲーム制御手段と、
前記対戦モードが選択された場合、前記プレイヤーおよびその対戦相手のそれぞれに与えられた複数の駒の少なくとも一部が、前記プレイヤーおよび前記対戦相手に交互に与えられる手番毎に所定の対戦フィールド内で行動する様子を表現した対戦ゲーム画面を前記表示手段に表示させるとともに、前記行動の内容と各駒の特徴を記述したデータとに基づいて対戦状態の優劣を変化させる対戦ゲーム制御手段と、を具備し、
前記キャラクタの特徴を記述したデータを参照して前記駒の特徴を記述したデータが決定されることにより、前記キャラクタの育成結果がその後の対戦の優劣に影響を与えるように前記キャラクタの特徴を記述したデータと前記駒の特徴を記述したデータとの間に相関関係が設けられていることを特徴とするゲームシステム。」

[2].補正要件(目的)の検討
本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「相関関係」について「前記キャラクタの特徴を記述したデータを参照して前記駒の特徴を記述したデータが決定されることにより、前記キャラクタの育成結果がその後の対戦の優劣に影響を与ええる」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[3].補正要件(独立特許要件)の検討
本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1).引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平9-140938号公報には、以下の事項が記載されている。
(A).特開平9-140938号公報(以下、「刊行物A」という).
(A-1).「【請求項1】 プレイキャラクタ及びその言動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の言動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の言動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの言動内容を記憶する言動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた言動を上記言動記憶手段から読み出して上記プレイキャラクタに行わせる言動制御手段とを有するビデオゲーム装置において、上記プレイキャラクタが有する1または2種類以上の持ち点を記憶する持ち点記憶手段と、上記言動選択内容に応じて上記持ち点記憶手段内の1または2種類以上の持ち点に加減点を積算させる持ち点変更手段と、上記加減点の積算を上記言動選択内容に応じた確率で行わせる確率制御手段と、細分された能力を示す複数の能力値を記憶する能力値記憶手段と、上記持ち点記憶手段に記憶された持ち点を、上記操作部を操作することによって、細分された能力を示す複数の能力値に分配して上記能力値記憶手段に更新記憶させる能力値分配手段とを備えたことを特徴とするビデオゲーム装置。」
(A-2).「【請求項7】 プレイキャラクタ及びその言動内容を表示するとともに、プレイキャラクタの種々の言動に対応するメニューを表示する表示器と、上記種々のメニューから任意の言動に対するメニューを選択的に指示可能な操作部と、上記操作部での操作内容と対応してプレイキャラクタの言動内容を記憶する言動記憶手段と、上記操作部からの指示に応じた言動を上記言動記憶手段から読み出して上記プレイキャラクタに行わせる言動制御手段とを有するビデオゲーム装置において、上記プレイキャラクタに1または2種類以上の持ち点を与えておき、上記言動選択内容に応じて、与えられている持ち点の1または2種類以上の持ち点への加減点の積算を上記言動選択内容に応じた確率で行わせて持ち点記憶手段に更新するとともに、上記操作部を操作することによって、上記持ち点記憶手段に記憶された持ち点を、細分された能力を示す複数の能力値に分配して能力値記憶手段に記憶させるようにしたことを特徴とするビデオゲームのプレイキャラクタ成長制御方法。
(A-3).「【要約】【課題】ロールプレイングにおいて、個性ある能力を有するプレイキャラクタを得る。
【解決手段】 ゲーム本体1にゲームカートリッジ4を装填し、コントローラ3を用いてモニタ上でゲーム展開を図る。ゲームカートリッジ4はゲームプログラムROM41と個性ある能力を有するプレイキャラクタに関するデータを保存するRAM42を内蔵する。コントローラ2でプレイキャラクタに種々の言動を繰り返し指示して「残り経験点」をアップさせるようにし、得られた点数の中で、できるだけ所望の能力になるように点数を割り振ることで、個性化された能力を有するプレイキャラクタを育成することができる。」
(A-4).「【0004】本発明は、上記に鑑みてなされたもので、プレイキャラクタの言動(喋りと行動)を繰り返し種々指示選択することで、プレイキャラクタの持ち点を確率的に増減させ、かつ、得られた持ち点の中でこの点数を種々の能力に割り振りすることで個性ある能力を有するプレイキャラクタを得るビデオゲーム装置、その制御方法及びそのゲームプログラムが格納された媒体を提供することを目的とするものである。
(A-5).「【0017】図2は、本発明に係るビデオゲーム装置の内部ブロック図の一例をマイコンの中央制御部(以下、CPUという。)を中心にして示している。この実施形態は、新人の野球選手(プレイキャラクタ)を成長させる、後述の「サクセス」ゲームを例にしたものである。
従って、このゲームカートリッジ4のROM41に格納されている他のゲームを実行する場合には、例えば野球の試合ゲーム(対戦ゲーム)にあっては野球のルールに従った種々の制御手段が必要である。また、図3〜図17は、「サクセス」ゲームにおけるゲーム展開を説明するためのゲーム画面の変遷の一例を示したものである。」
(A-6).「ゲームの立上り時には、図3に示す画面が形成され、十字キー23を操作して、カーソルを例えば「サクセス」(図中、二重線で示している。)に一致させ、この状態で操作キー24を操作すると、「サクセス」ゲームが開始されるようになっている。
【0021】加減手段は、図6,図7に示すように、「キャンプ」を選択し、種々の練習を積むことで所定の値を「残り経験点」(図15参照)に加算し、あるいはマイナスのイベントによって減算するものである。確率変更手段14は上記加減動作を行う確率をランダムに設定するもので、練習の種類に対して、また種々のイベント等に対して、また、「月・週」の状況、更にはそれまでの練習、イベント等の履歴を変動要素して採用し、それらの要素を考慮に入れて確率を設定するものである。」(第5頁左欄第12〜25行)
(A-7).「【0022】残り経験点分配手段15は「残り経験点」を各種の「能力」に振り分ける際の演算を実行するものである。「残り経験点」の種類としては、「筋力」、「敏捷」及び「技術」があり、これらの点数は「キャンプ」における練習の種類に応じて、また他の要素によっても点数がアップされるようになっている。」(第5頁左欄第31〜36行)
(A-8).「【0025】次に、図3〜図18の各図について簡単に説明する。図3は初期画面で、種々のゲームが選択可能にされている。図3において、「サクセス」ゲームが選択されると、図4の画面が表示される。図4の画面は野球選手の新人を登録するもので、登録要素としては、大きく分けて、選手の成育をマイコンに任せる「オート成長タイプ」と「マニュアル成長タイプ」があり、「オート成長タイプ」では、「万能タイプ」、「1番打者タイプ」〜「4番打者タイプ」及び「8番打者タイプ」が設定可能になっている。図5は、その次の画面で、新人選手を特定するための個人データを入力するものである。例えば「名前」、「きき腕」、「守備」「フォーム」等のデータがあり、右上に現在設定中の内容が表示される。なお、下部には、カーソルが位置する個所のデータに対応するデータが表示されており、これらの中から所望のデータをカーソルで選択し得るようになっている。
(A-9).第4図には、選手作成 オート成長における選手作成として、お任せタイプ-コンピュータにおまかせ、万能タイプ-平均的に成長、1番打者タイプ-出塁率・機動力重視、2番打者タイプ-出塁率・バント率重視、3番打者タイプ-総合的打力重視、4番打者タイプ-パワー重視、8番打者タイプ-守備力重視が記載されている。
(A-10).「【0030】図には示していないが、成長した新人選手が1軍に上がると、初期画面で対戦ゲームを選択した際に、この選手も1軍プレー可能な選手とされ、能力に沿ったプレーを行うこととなる。遊技者は最大8名まで1人ずつ新人選手を育成することが可能である。」
(A-11).「【0040】図11〜図13は監督から2軍の試合へのスタメン出場を指示された場合の画面の変遷を示したもので、図11は、試合出場指示の画面、図12は、バッターボックスに打者として立っている場合の図である。図12では、ピッチャーの投げるボールをミートカーソルMCを十字キー23で上下左右に移動させ、かつ操作キー24を操作することによってスイングを行わせるようにしている。図13は、バッティングの結果を示すもので、安打が多い程、監督、コーチからの信頼度がアップし、そうでなければ信頼度はダウンし、これらは「やる気」に反映される。このように、プレイキャラクタに対する言動内容として、遊技者の能力が直接的に関与する要素を採用することで、プレイキャラクタの成長により多面性を持たせることができ、興趣に富んだゲームとなる。
【0041】図25は、「残り経験点」の分配処理を示すフローで、先ず、図15〜図17に示す画面が表示される(ステップS161)。ここで、「能力」の内でアップさせたい能力の表示個所に十字キー23を合わせ、操作キー24を操作すると(ステップS163)、操作回数分のランクだけ現能力が変化後の能力にアップされる。能力がアップされると、自己の持ち点である「残り経験点」がその分、差し引かれる(ステップS165)。能力アップは差し引く持ち点がなくなるまで可能であるとともに、また、現在のミートサークルはDランクであるが、これを高めると(例えばCランクにアップする)、能力アップに必要な単位点(図15の例では、「攻撃力」を1能力分アップするのに「残り経験点」中の「筋力」から4点が必要)が大きくなるようにしている。このように、図6の画面から必要時に、能力アップ処理が行えるので、プレイキャラクタに種々の能力の付与が可能になっている反面、必ずしも所望するように「残り経験点」が得られないようになっている。
【0042】なお、本発明では、野球選手を成育するゲームとして説明したが、本発明は、これに限定されず、対戦ゲームであって、選手に個々の能力、個性が必要となるような分野のスポーツその他に幅広く適用可能である。」
(A-12).「【0049】請求項6記載の発明によれば、上記表示器を用いて対戦ゲームを行わせる対戦ゲーム制御手段を備え、上記操作部により、プレイキャラクタを育成するモードから上記対戦ゲームを行うモードが選択されると、上記対戦ゲーム制御手段は、この対戦ゲームに、上記細分された能力を示す能力値を有するプレイキャラクタを登場させるとともに、対戦ゲームにおいて、該プレイキャラクターが能力値に沿った動作を行うように制御するように構成したので、遊技者を擬人化したプレイキャラクタを本人の望む能力に近い形で成長させた後、対戦ゲームに参加させて、プレイキャラクタの能力値に沿った動作を実現させることが可能となる。(第8頁左欄第49行〜同頁右欄第10行)
(A-13).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「ゲーム本体1にゲームカートリッジ4を装填し、コントローラ3の十字キー、操作キー等を用いてモニタ上でプレイキャラクタの育成ゲーム、対戦ゲームを行うゲームであって、
プレイキャラクタ育成モードの「サクセス」ゲームを選択すると、プレイヤキャラクタである野球選手の新人登録画面表示、打者タイプの設定、プレイヤキャラクタ特定のための「名前」、「きき腕」、「守備」「フォーム」等の個人データ入力、練習メニュー画面に表示された打撃、ダッシュ、走り込み、ノック、筋トレ等に基づく残り経験点の点数の加減点積算、当該残り経験点の各能力への振り分け、当該振り分けられた能力を具備した成長プレイヤキャラクタの記憶を行ない、対戦ゲームを行うモードが選択されると、対戦ゲーム制御手段は、上記能力を具備した成長プレイヤキャラクタを野球グラウンドに登場させて対戦ゲームを行なうビデオゲーム装置。」

(2).引用発明と本願補正発明との対比
(イ).発明特定事項の対応関係
(I).引用発明における、(i)「コントローラ」、(ii)「サクセス」、(iii)「対戦ゲーム」、(iv)「プレイヤキャラクタである野球選手」(v)「野球グラウンド」は、各々本願補正発明における(i)「操作入力手段」、(ii)「育成モード」、(iii)「対戦モード」(iv)「キャラクタ」、(v)「対戦フィ-ルド」に対応する。
(II).引用発明における「プレイヤキャラクタ特定のための「名前」、「きき腕」、「守備」「フォーム」等の個人データ、プレイヤキャラクタに与えられた持ち点」、は、本願補正発明の「キャラクタの特徴」が、形態、名前、育成状態(生物にたとえれば、年齢や知能の程度、体力、性格等)等、ゲーム上において各キャラクタを他のキャラクタから区別するための各種の要素(段落【0015】参照)であるから、本願補正発明における「キャラクタの特徴を記述したデータ」に対応する。
(III).引用発明における「打撃、ダッシュ、走り込み、ノック、筋トレ等」は、キャラクタの特徴を記述したデータである持ち点を変化させるものであるから、同様に、本願補正発明において、当該キャラクタの特徴を記述したデータを変化させる、「所定の条件に従って変化させる」ことに対応する。
(IV).引用発明における「練習メニュー画面」と、本願補正発明における、「キャラクタが育成される様子を表現した育成ゲーム画面」とは、育成操作に際して表示される「キャラクタ育成用表示画面」で共通する。
(V).引用発明の「成長プレイヤキャラクタ」と本願補正発明における「駒」とは、育成モードで育成された対戦モードにおけるキャラクタである「対戦キャラクタ」で共通する。
(VI).引用発明における「残り経験点の各能力への振り分け、」は、本願補正発明の「駒の特徴」が、「形態や能力(レベル、体力、攻撃力、防御力、移動力、特技)」で対戦モードにおけるキャラクタの対戦能力であるから、本願補正発明における「駒の特徴を記述したデータ」に対応する。
(VII).引用発明における「残り経験点の点数の加減点積算」は、本願補正発明における「キャラクタの育成結果」に対応する。

(ア).一致点
「画像の表示手段と、
プレイヤーの入力操作に対応した信号を出力する操作入力手段と、
前記操作入力手段を介した前記プレイヤーからの指示に応じて、育成モードまたは対戦モードを選択するモード選択手段と、
前記育成モードが選択された場合、前記操作入力手段に対する前記プレイヤーの育成操作に応じてキャラクタ育成用表示画面を前記表示手段に表示させつつ、そのキャラクタの特徴を記述したデータを所定の条件に従って変化させる育成ゲーム制御手段と、
前記対戦モードが選択された場合、前記プレイヤーおよびその対戦相手のそれぞれに与えられた複数の駒の少なくとも一部が、前記プレイヤーおよび前記対戦相手に交互に与えられる手番毎に所定の対戦フィールド内で行動する様子を表現した対戦ゲーム画面を前記表示手段に表示させるとともに、前記行動の内容と各駒の特徴を記述したデータとに基づいて対戦状態の優劣を変化させる対戦ゲーム制御手段と、を具備し、
前記キャラクタの特徴を記述したデータを参照して前記駒の特徴を記述したデータが決定されることにより、前記キャラクタの育成結果がその後の対戦の優劣に影響を与えるように前記キャラクタの特徴を記述したデータと前記駒の特徴を記述したデータとの間に関係が設けられていることを特徴とするゲームシステム。」
(イ).相違点
(i).育成ゲーム用表示画面に関して、本願補正発明は、キャラクタが育成される様子を表現したゲーム画面であるのに対し、引用発明は、当該ゲーム画面がキャラクタの育成される様子を表現していない点。
(ii).対戦キャラクタに関して、本願補正発明は、キャラクタの特徴を記述したデータと前記駒の特徴を記述したデータとの間の相関関係が、キャラクタの特徴を記述したデータを参照して前記駒の特徴を記述したデータが決定される関係であるのに対し、引用発明は、持ち点を各種の能力に割り振ることにより駒の特徴を記述したデータとしている点
(3).相違点の検討
(i).相違点(i)について、
画面に表示される画像が、ゲームに応じた画像となることは周知の技術的事項であるから、モンスター等の生物育成ゲームに例示される様な生物を成長させゲームにおいて、当該生物の成長過程がゲーム画像となることは当業者にとっては自明と言える事項である。
しかも、引用発明における育成対象として、生物育成とすることは当業者が適宜選択し得る設計的事項であり、当該選択によりキャラクタが育成される様子が表現されることとなる点も予測の範囲内のものである。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(ii).相違点(ii)について、
本願補正発明における、キャラクタの特徴を記述したデータと、駒の特徴を記述したデータとの間の「相関関係」は如何なる関係か特定されていないこと。
一方、引用発明においても、キャラクタの特徴を記述したデータである残り経験点が各能力に振り分けられて能力アップすることは、対戦時のキャラクタ、すなわち、駒の特徴を記述したデータに対応するものであるから、引用発明においても、キャラクタの特徴を記述したデータと前記駒の特徴を記述したデータとの間には残り経験点を能力に振り分けるとの所定の関係が存在すること。
してみると、その関係が具体的に特定されていない、本願補正発明における「相関関係」と、引用発明における所定の関係、すなわち、残り経験点を具備した育成キャラクタと、当該残り経験点を能力に振り分けた対戦キャラクタとの所定関係とは、その作用効果上格別の相違点が認められないから、当該相違点は単なる設計的事項である。
(iii).まとめ
したがって、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4).むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第三.本願発明について
[1].本願発明
平成14年3月8日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成13年4月9日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「画像の表示手段と、
プレイヤーの入力操作に対応した信号を出力する操作入力手段と、
前記操作入力手段を介した前記プレイヤーからの指示に応じて、育成モードまたは対戦モードを選択するモード選択手段と、
前記育成モードが選択された場合、前記操作入力手段に対する前記プレイヤーの育成操作に応じてキャラクタが育成される様子を表現した育成ゲーム画面を前記表示手段に表示させつつ、そのキャラクタの特徴を記述したデータを所定の条件に従って変化させる育成ゲーム制御手段と、
前記対戦モードが選択された場合、前記プレイヤーおよびその対戦相手のそれぞれに与えられた複数の駒の少なくとも一部が、前記プレイヤーおよび前記対戦相手に交互に与えられる手番毎に所定の対戦フィールド内で行動する様子を表現した対戦ゲーム画面を前記表示手段に表示させるとともに、前記行動の内容と各駒の特徴を記述したデータとに基づいて対戦状態の優劣を変化させる対戦ゲーム制御手段と、を具備し、
前記キャラクタの特徴を記述したデータと前記駒の特徴を記述したデータとの間に相関関係が設けられていることを特徴とするゲームシステム。」

[2].引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、その記載事項は、前記「第二.[3].(1)」に記載したとおりである。

[3].引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から「相関関係」の限定事項である「前記キャラクタの特徴を記述したデータを参照して前記駒の特徴を記述したデータが決定されることにより、前記キャラクタの育成結果がその後の対戦の優劣に影響を与ええる」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.[3].(3)」に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明、及び、周知慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物Aに記載された発明、及び、周知慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4].むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-08 
結審通知日 2006-08-15 
審決日 2006-09-08 
出願番号 特願平9-271757
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦武田 悟秋山 斉昭  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 川島 陵司
塩崎 進
発明の名称 ゲームシステムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体  
代理人 山本 晃司  
代理人 星野 哲郎  
代理人 中村 聡延  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ