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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1145851
審判番号 不服2003-10866  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-12 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 平成11年特許願第306011号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月17日出願公開、特開2001-104594〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は、平成11年10月5日に出願した特願平11-284602号の一部を平成11年10月27日に新たな特許出願としたものであって、平成14年6月14日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成14年8月19日付けで手続補正され、平成15年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年6月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

【2】本願発明
平成14年8月19日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。
「【請求項1】各種入賞信号若しくは正規の球貸し信号の受信に基づきそれぞれの所定値分増加される一方、実際に払い出した遊技球の検出により発せられる確認信号の受信ごとに1減少されて算出される払い出しの要請球数を演算する要請球数演算手段と、
払い出し単位数が予め大小2種類設定されている払い出し手段と、
要請球数が存在し、大きい払い出し単位数以上であると、大きい払い出し単位数を選択し、大きい払い出し単位数未満であると、小さい払い出し単位数を選択して、払い出しを指令する選択手段と
を含み、
払い出し手段は、球切り爪が周設され、かつ遊技球通路において回転可能に軸支された回転体と、通電によりプランジャを上昇させるソレノイドと、プランジャの下降により回転体を固定し、プランジャの上昇により回転体の係止を解放する停止部材とを含み、
選択手段は、ソレノイドの通電時間によって払い出し単位数を切り替える遊技機。」

【3】引用例に記載の発明
本願発明の原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平5-23422公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「・・遊技部10内を流下する打球が運良く入賞口11…に入賞すると、上記球排出装置7が作動して、入賞の価値に応じた数量の球を球供給皿4に賞球として排出する。」(段落【0006】)
(イ)「図2はパチンコ機1の背面を示すもので、機構盤の上部に設けた球タンク12から球を2列に整列しながら導出する球導出樋13を延設し、該球導出樋13の出口に連通させて球排出装置7を設け、該球排出装置7の下方に設けた球流下樋14を前記した球供給皿4や下皿15に連通させ、球排出装置7から流下した球が球供給皿4または下皿15に排出されるように構成してある。」(段落【0007】)
(ウ)「球排出装置7は、図3乃至図5に示すように、ベース16の一側に球を流下する第1流路17aと第2流路17bを一体的に形成し、該第1流路17aと第2流路17bの下部に第1スプロケット18aと第2スプロケット18bの外周部分を臨ませるとともに、フォトカプラなどの検出器からなる排出準備球検出器19a,19bと排出球検出器20a,20bを設け、第1スプロケット18a及び第2スプロケット18bに関係付けてストッパ機構を設けてなる。第1スプロケット18aと第2スプロケット18bは、図5に示すように、球が1個宛係合する略半円形の球係合溝21…を外周縁にそれぞれ同じ数(例えばn=6)ずつ形成してあり、第1スプロケット18aの球係合溝21…と第2スプロケット18bの球係合溝21…とは球半個分だけ位相を変えて同軸上に一体的に形成してある。そして、ストッパ機構の一部を構成する電磁石23のストッパ片24を第1スプロケット18aと第2スプロケット18bの外周に係脱可能に臨ませる。なお、ストッパ片24は、第1スプロケット18aと第2スプロケット18bの歯先に交互に係合するように、所定の幅を持たせ、第1スプロケット18aと第2スプロケット18bとの間に係止部24′を臨ませてある。」(段落【0008】)
(エ)「電磁石23を励磁すると、鉄芯がストッパ片24の下部を吸引して係止部24′をスプロケットの歯から離脱させるので、第1,第2スプロケット18a,18bが自由に回転できる状態になり、回転すると球係合溝21内の球を球流下樋14に流下する。この様にして、第1,第2スプロケット18a,18bの回転により球が流下すると、排出球検出器20a,20bが球を1個宛検出して電気的制御装置26に排出球検出信号を送出し、また、スプロケット18a,18bの回転により新たな球が球係合溝21に係合すると、排出準備球検出器19a,19bがこの球を検出して、上記と同様に、電気的制御装置26に排出準備球有り信号を送出する。」(段落【0010】)
(オ)「排出球検出器20a,20bからの信号にもとづいて排出すべき数の球が実際に排出されたことを検知すると、電気的制御装置26が電磁石23を消磁する。電磁石23が消磁すると、ストッパ片24が永久磁石25の磁力により戻り揺動して下端の係止部24′がスプロケットの歯に係止する第1状態に復帰する。したがって、第1,第2スプロケット18a,18bの回転が阻止され、球の排出が停止する。そして、電気的制御装置26が再度電磁石23を励磁すると、第1,第2スプロケット18a,18bが回転自由な状態となり、球の排出を再開する。」(段落【0011】)
(カ)「本発明に係る球排出装置7は、球の排出を、1単位排出数に区切って何回か球の排出を行なうとともに、1単位排出数に満たない半端数を排出するように制御されており、この制御は電気的制御装置26により行なう。例えば、・・打球が入賞した場合に「13個」の球を賞球として排出する場合には、1単位排出数「4個」の排出を3回繰り返してから半端数「1個」を排出して、合計排出球数を「13個」とする。なお、1単位排出数は、外部操作により適宜に設定することができ、電気的制御装置26がこの設定にもとづいて半端数を演算して算出し、制御する。」(段落【0012】)
(キ)「次に、球排出装置7を上記のように制御する電気的制御装置26について説明する。電気的制御装置26は、マイクロコンピュータなどにより構成されており、図6に示すように、球排出指令信号発生手段31からの球排出指令信号の価値を、予め設定された排出単位数(例えば4個)に変換する排出単位数演算手段32と、上記球排出指令信号の価値と排出単位数から排出単位数に満たない半端数を算出する半端数演算手段33と、上記排出単位数を外部操作により設定する1単位排出数設定手段34と、上記1単位排出数設定手段34に設定された単位数(例えば4個ずつ)の排出制御を行なう単位排出制御手段35と、上記半端数演算手段33により算出された半端数の排出制御を行なう半端排出制御手段36と、上記単位排出制御手段35からの排出終了信号及び上記半端排出制御手段36からの排出終了信号により上記球排出指令信号の価値に対する排出数を監視する総排出数演算手段37などからなる。」(段落【0013】)
(ク)「球排出指令信号発生手段31は、遊技者が球貸し操作スイッチ6を操作することにもとづいて貸し球排出要求手段38として機能する球貸し用制御回路から貸し球排出要求信号が排出数確定手段39に送られ、また、打球が入賞したことにもとづいて賞球排出要求手段40として機能する遊技用制御回路から賞球排出要求信号が排出数確定手段39に送られ、排出数確定手段39で排出数を確定して球排出指令信号、即ち排出数信号を排出単位数演算手段32に送出するように構成してある。したがって、前記した例のように、遊技者が球貸し操作スイッチ6を1回操作することにより1度数分の球を借りたいとした場合には、貸し球要求手段38である球貸し用制御回路から1度数分の貸し球排出要求信号が排出数確定手段39に送られ、この信号にもとづいて排出数確定手段39が「25個」に相当する球排出指令信号を排出単位数演算手段32に送出する。また、打球が賞球数「13個」の入賞価値を有する入賞口11…に入賞した場合には、賞球排出要求手段40として機能する遊技用制御回路が「13個賞球」に相当する賞球排出要求信号を排出数確定手段39に送り、この信号にもとづいて排出数確定手段39が「13個」に相当する球排出指令信号を排出単位数演算手段32に送出する。」(段落【0014】)
(ケ)「この実施例では1単位排出数設定手段34に1単位の排出数を「4個」設定してあるので、1単位排出数設定手段34から排出単位数演算手段32には1単位に対する排出数信号として「4個」に相当する信号が送られる。したがって、「25個」に相当する球排出指令信号を受けた場合、排出単位数演算手段32は、この信号と1単位排出数設定手段34からの信号にもとづいて排出単位数を演算(25÷4=6 余り1)し、排出単位数記憶手段41および半端数演算手段33に単位数信号「6」を送出する。排出単位数記憶手段41はこの単位数信号「6」を記憶する。」(段落【0015】)
(コ)「一方、半端数演算手段33は、排出数確定手段39からの球排出指令信号、1単位排出数設定手段34からの1単位に対する排出数信号、排出単位数演算手段32からの単位数信号を受けると、これらのデータ信号に基づいて半端数を算出(25÷4=6 余り1)し、半端排出数記憶手段42に半端排出数信号を送って記憶させる。したがって、上記した例の場合、排出数確定手段39からの球排出指令信号「25個」、1単位排出数設定手段34からの1単位に対する排出数信号「4個」、排出単位数演算手段32からの単位数信号「6」を受けると、これらのデータ信号に基づいて半端数「1」を算出し、この半端数「1」に相当する半端排出数信号が半端排出数記憶手段42に送られて記憶される。」(段落【0016】)
(サ)「単位排出制御手段35に単位排出記憶有り信号が送られると単位排出制御手段35からストッパ機構駆動制御手段43にストッパ機構解除要求信号が送られ、または、半端排出制御手段36に半端排出記憶有り信号が送られてもストッパ機構駆動制御手段43にストッパ機構解除要求信号が送られる。なお、本実施例の場合、ストッパ機構駆動制御手段43は単位排出制御手段35からのストッパ機構解除要求信号を優先的に受け入れるものとする。ストッパ機構駆動制御手段43は、排出開始可能信号発生手段44から排出開始可能信号を受けていることを条件として、球排出装置7のストッパ機構にストッパ機構駆動信号を送って球の排出を開始させる。」(段落【0018】)
(シ)「球排出装置7は、ストッパ機構駆動制御手段43から1回目のストッパ機構駆動信号を受けると、電磁石23が励磁してストッパ片24の係止部24′をスプロケットの歯から外すので、第1,第2スプロケット18a,18bが一体的に回転し始め、例えば、先ず第1スプロケット18aの球係合溝21内の球が流下すると、第1流路17aの排出球検出器20aがこの球を検出して排出球検出信号を排出球検出手段48に送り、排出球検出手段48が単位排出制御手段35と半端排出制御手段36に排出球計数信号を送る。この場合、単位排出制御手段35からのストッパ機構解除要求信号にもとづいてストッパ機構駆動制御手段43がストッパ機構を解除しているので半端排出制御手段36は排出球計数信号を受けてもそのままであるが、単位排出制御手段35は排出球計数信号を受けると、球が1個排出されたことを検知し、即ち1単位排出数「4個」のうちの1個目が排出されたことを電気的に判定する。なお、第1スプロケット18aから球が1個流下すると、排出準備球検出器19aが球係合溝21内に係合して次に到来してきた球を検出してストッパ機構駆動制御手段43に「H」信号を送る。」(段落【0020】)
(ス)「第1,第2スプロケット18a,18bが更に回動して、次には第2スプロケット18bの球係合溝21内の球が流下すると、第2流路17bの排出球検出器20bがこの球を検出して排出球検出信号を排出球検出手段48に送り、排出球検出手段48が単位排出制御手段35と半端排出制御手段36に排出球計数信号を送る。この場合も、単位排出制御手段35からのストッパ機構解除要求信号にもとづいてストッパ機構駆動制御手段43がストッパ機構を解除しているので半端排出制御手段36は排出球計数信号を受けてもそのままであるが、単位排出制御手段35は排出球計数信号を受けると、球が1個排出されたことを検知し、即ち1単位排出数「4個」のうちの2個目が排出されたことを電気的に判定する。この様にして、第1,第2スプロケット18a,18bが一体的に回動すると、交互に球を1個宛流下し、1単位排出数「4個」の最終の球(即ち4個目)の球を検出した排出球検出器20bが排出球検出信号を送出して、排出球検出手段48が排出球計数信号を送出すると、この信号を受けた単位排出制御手段35が1単位排出の終了を判断して排出単位数記憶手段41に1単位排出終了信号を送るとともに、1回目の単位排出を終了すべくストッパ機構解除要求信号の送出を停止し、これによりストッパ機構駆動制御手段43が電磁石23を消磁する。したがって、球排出装置7は球の排出を停止する。」(段落【0021】)
(セ)「排出単位数記憶手段41は、単位排出制御手段35から1単位排出終了信号を受けると記憶を「1」減算する。したがって、本実施例の場合には「6」から「1」を引いて記憶が「5」となる。この様に減算結果の記憶が「1」以上ある場合、排出単位数記憶手段41は単位排出制御手段35に単位排出記憶有り信号を送り、この信号を受けた単位排出制御手段35が2回目のストッパ機構解除要求信号をストッパ機構駆動制御手段43に送る。したがって、排出開始可能信号発生信号を受けていることを条件としてストッパ機構駆動制御手段43は、ストッパ機構駆動信号を球排出装置7に送って電磁石23を励磁し、球の排出動作を再開させる。」(段落【0022】)
(ソ)「この様に、排出単位数記憶手段41に記憶が有る限り上記動作を繰り返して行なう。そして、6回目の単位排出動作を終了して排出単位数記憶手段41の記憶が無くなると、単位排出制御手段35に単位排出記憶有り信号が送出されないので、単位排出制御手段35はストッパ機構解除要求信号を送出しない。」(段落【0025】)
(タ)「しかし、この状態では未だ半端排出数記憶手段42に記憶「1」が有るので、半端排出数記憶手段42が半端排出制御手段36に半端排出記憶有り信号を送出し、これにより半端排出制御手段36がストッパ機構駆動制御手段43にストッパ機構解除要求信号を送出する。」(段落【0026】)
(チ)「ストッパ機構駆動制御手段43は、単位排出の場合と同様に、排出開始可能信号発生手段44から排出開始可能信号を受けていることを条件として、ストッパ機構にストッパ機構駆動信号を送って球の排出を開始させる。」(段落【0027】)
(ツ)「球排出装置7は、ストッパ機構駆動制御手段43からストッパ機構駆動信号を受けると、電磁石23が励磁してストッパ片24の係止部24′をスプロケットの歯から外すので、第1,第2スプロケット18a,18bが一体的に回転し始め、例えば、先ず第1スプロケット18aの球係合溝21内の球が流下すると、第1流路17aの排出球検出器20aがこの球を検出して排出球検出信号を排出球検出手段48に送り、排出球検出手段48が単位排出制御手段35と半端排出制御手段36に排出球計数信号を送る。この場合、半端排出制御手段36からのストッパ機構解除要求信号にもとづいてストッパ機構駆動制御手段43がストッパ機構を解除しているので単位排出制御手段35は排出球計数信号を受けてもそのままであるが、半端排出制御手段36は排出球計数信号を受けると、球が1個排出されたことを検知し、ストッパ機構解除要求信号の送出を停止して球排出装置7の球排出動作を停止するとともに、半端排出終了信号を半端排出数記憶手段42に送る。なお、半端排出制御手段36は、半端排出を制御するためのものであるので、排出球検出手段48から信号を受ける度に、即ち、球排出装置7が球を1個排出する度にストッパ機構解除要求信号の送出を停止する。」(段落【0028】)
(テ)「本実施例では半端排出数記憶手段42の記憶が「1」なので、半端排出制御手段36からの半端排出終了信号を受けて記憶を「1」減算すると、記憶が無くなる。このため、半端排出記憶有り信号は送出されず、この時点で球の排出が終了する。なお、半端排出制御手段36からの半端排出終了信号を受けて記憶を「1」減算しても記憶が「1」以上残っている場合には、半端排出制御手段36に再度半端排出記憶有り信号を送出し、球の排出動作を再開させる。そして、半端排出数記憶手段42の記憶が無くなるまで、球を1個宛排出する動作を繰り返し、半端排出数記憶手段42の記憶が無くなった時点で球の排出を終了させる。」(段落【0029】)
(ト)「この様に、本実施例に係る球排出装置7は、1単位排出数設定手段34により設定した1単位排出数である「4個」ずつに区切って何度か排出動作を繰り返して行ない、1単位排出数「4個」に満たなかった端数を1個ずつ区切って何度か排出動作を繰り返し行ない、総排出数演算手段37である排出単位数記憶手段41と半端排出数記憶手段42の演算により総排出数を管理し、球排出指令信号発生手段31から要求された数量の球を確実に、しかも迅速に排出する。」(段落【0030】)
(ナ)「・・また、図7に示すように、プランジャ式ソレノイド50のプランジャにL字状ストッパ51の一端を接続し、該ストッパ51の他端係止部52をスプロケット18の歯に臨ませ、ソレノイド50を消磁した状態ではスプリング53の付勢によりストッパ51の係止部52がスプロケット18の歯に係合してスプロケット18の回転を阻止、即ち球の流下を阻止し、ソレノイド50を励磁すると、ストッパ51が軸54を中心にして回動し、係止部52がスプロケット18の歯から外れてスプロケット18の回転を許容するように構成してもよい。なお、図7中、45は球切れ検出器、19は排出準備球検出器、20は排出球検出器であり、何れの検出器も前記した実施例と同様の機能を果たすものである。」

以上の(ア)乃至(ナ)の記載事項及び図面の記載から、「引用例」には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「球排出装置7は、球係合溝21を外周縁に形成し、第1流路17aと第2流路17bに臨ませた第1スプロケット18aと第2スプロケット18bと、プランジャ式ソレノイド50に接続されたストッパ51を第1スプロケット18aと第2スプロケット18bの外周に係脱可能に臨ませ、プランジャ式ソレノイド50を励磁すると、スプロケットの歯から離脱させ自由に回転できるものであり、
球排出指令信号発生手段31は、貸し球排出要求信号、賞球排出要求信号を排出数確定手段39で排出数を確定し球排出指令信号を排出単位数演算手段32に送出し、排出単位数演算手段32は、排出単位数を演算し、排出単位数記憶手段41および半端数演算手段33に単位数信号を送出し、排出単位数記憶手段41はこの単位数信号を記憶し、半端数演算手段33は、半端数を算出し、半端排出数記憶手段42に半端排出数信号を記憶させ、単位排出制御手段35に単位排出記憶有り信号が送られ、半端排出制御手段36に半端排出記憶有り信号が送られてもストッパ機構駆動制御手段43にストッパ機構解除要求信号が送られ、プランジャ式ソレノイド50が励磁してプランジャに接続されたストッパ51の係止部52をスプロケット8の歯から外し、球が流下すると、第1流路17aの排出球検出器20a、第2流路17bの排出球検出器20bがこの球を検出して排出球検出信号を排出球検出手段48に送り、排出球検出手段48が単位排出制御手段35と半端排出制御手段36に排出球計数信号を送り、排出単位数記憶手段41は、単位排出制御手段35から1単位排出終了信号を受けると記憶を「1」減算し、排出単位数記憶手段41に記憶が有る限り上記動作を繰り返し、一方、半端排出数記憶手段42に記憶が有ると、半端排出制御手段36からの半端排出終了信号を受けて記憶を「1」減算し、半端排出数記憶手段42の記憶が無くなるまで、球を1個排出する動作を繰り返し、半端排出数記憶手段42の記憶が無くなった時点で球の排出を終了させるパチンコ機1。」

【4】対比
本願発明と引用発明との対比
(1)本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「賞球排出要求信号」が本願発明の「各種入賞信号」に相当し、以下同様に、「貸し球排出要求信号」が「正規の玉貸し信号」に、「球」が「遊技球」に、「排出数」が「要請球数」に、「球排出装置7」が「払い出し手段」に、「スプロケット8の歯」が「球切り爪」に、「第1流路17aと第2流路17b」が「遊技球通路」に、「第1スプロケットと18aと第2スプロケット18b」が「回転体」に、「プランジャ」が「プランジャ」に、「プランジャ式ソレノイド50」が「ソレノイド」に、「ストッパ51」が「停止部材」に夫々相当している。
以下、本願発明の「要請球数演算手段」、「選択手段」、「払い出し手段」について本願発明と引用発明とを対比検討すると、

(2)「要請球数演算手段」について
引用例の上記記載事項(ク)「球排出指令信号発生手段31は、・・貸し球排出要求信号が排出数確定手段39に送られ、また、・・賞球排出要求信号が排出数確定手段39に送られ、排出数確定手段39で排出数を確定して球排出指令信号、・・を排出単位数演算手段32に送出する・・」、同じく記載事項(ケ)「・・排出単位数演算手段32は、この信号と・・にもとづいて排出単位数を演算・・し、・・排出単位数記憶手段41はこの単位数信号・・を記憶する。・・」、同じく記載事項(コ)「・・半端数演算手段33は、・・半端数を算出・・し、半端排出数記憶手段42に半端排出数信号を送って記憶させる。・・」、同じく記記載事項(シ)「・・排出球検出手段48が単位排出制御手段35と半端排出制御手段36に排出球計数信号を送る。・・」、同じく記載事項(セ)「排出単位数記憶手段41は、単位排出制御手段35から1単位排出終了信号を受けると記憶を「1」減算する。・・」、同じく記載事項(テ)「・・半端排出数記憶手段42の記憶・・半端排出制御手段36からの半端排出終了信号を受けて記憶を「1」減算する・・」なる記載に基づけば、賞球排出要求信号若しくは貸し球排出要求信号の受信に基づき、払い出しの排出数を演算する排出数演算手段として機能するといえるから、
引用発明は、
「賞球排出要求信号若しくは貸し球排出要求信号の受信に基づき払い出しの排出数を演算する払い出し数演算手段」の構成を備えると解される。
また、引用発明の「賞球排出要求信号」が本願発明の「各種入賞信号」に相当し、以下同様に、「貸し球排出要求信号」が「正規の玉貸し信号」に、「排出数」が「要請球数」に相当するのは、上記したとおりである。
そうすると引用発明は、
「各種入賞信号若しくは正規の球貸し信号の受信に基づき払い出しの要請球数を演算する要請球数演算手段」を実質的に具備しているということができる。

(3)「選択手段」について
引用例の上記記載事項(ケ)「・・排出単位数演算手段32は、この信号と1単位排出数設定手段34からの信号にもとづいて排出単位数を演算・・し、排出単位数記憶手段41および半端数演算手段33に単位数信号・・を送出する。排出単位数記憶手段41はこの単位数信号・・を記憶する。」、同じく記載事項(コ)「・・半端数演算手段33は、・・これらのデータ信号に基づいて半端数を算出・・し、半端排出数記憶手段42に半端排出数信号を送って記憶させる。」、同じく記載事項(サ)「・・単位排出制御手段35に単位排出記憶有り信号が送られると・・ストッパ機構解除要求信号が送られ、または、半端排出制御手段36に半端排出記憶有り信号が送られても・・ストッパ機構解除要求信号が送られる。・・」なる記載に基づけば、1単位排出設定手段34の「1単位の排出数」が「大きい払い出し単位数」となって、排出数が大きい払い出し単位数以上であると、排出単位数演算手段32で排出単位数を演算して排出単位数記憶手段41に単位数を記憶させ、排出数が大きい払い出し単位数未満であると、半端数演算手段33は、半端数を算出して、半端排出数記憶手段42に「小さい払い出し単位数」で構成される半端数を記憶させ、排出数が「大きい払い出し単位数」以上か未満かで、「大きい払い出し」と「小さい払い出し」の選択が行われ、それに応じた払い出しが行われるから、
引用発明は、
「排出数が存在し、大きい払い出し単位数以上であると、大きい払い出し単位数を選択し、大きい払い出し単位数未満であると、小さい払い出し単位数を選択して、払い出しを指令する選択手段」の構成を備えると解される。
そして、引用発明の「排出数」が本願発明の「要請球数」に相当するのは、上記したとおりである。
そうすると引用発明は、
「要請球数が存在し、大きい払い出し単位数以上であると、大きい払い出し単位数を選択し、大きい払い出し単位数未満であると、小さい払い出し単位数を選択して、払い出しを指令する選択手段」を実質的に具備しているということができる。

(4)「払い出し手段」について
引用例の上記記載事項(カ)「・・球排出装置7は、球の排出を、1単位排出数に区切って何回か球の排出を行なうとともに、1単位排出数に満たない半端数を排出するように制御され・・」なる記載に基づけば、予め大小2種類の払い出し単位数を備えるから、
引用発明は、
「払い出し単位数が予め大小2種類設定される球排出装置7」の構成を備えると解される。
また、上記記載事項(ウ)「球排出装置7は、・・第1流路17aと第2流路17bの下部に第1スプロケット18aと第2スプロケット18bの外周部分を臨ませ・・」、同じく記載事項(ナ)「プランジャ式ソレノイド50のプランジャにL字状ストッパ51の一端を接続し、該ストッパ51の他端係止部52をスプロケット18の歯に臨ませ、ソレノイド50を消磁した状態では・・係止部52がスプロケット18の歯に係合して・・回転を阻止、・・ソレノイド50を励磁すると、・・係止部52がスプロケット18の歯から外れてスプロケット18の回転を許容する」なる記載及び【図7】からみて、第1スプロケット18aと第2スプロケット18bが、第1流路17aと第2流路17bにおいて回転可能に軸支され、歯が周設されているから、
引用発明は、
「球排出装置7は、スプロケット18に歯が周設され、かつ第1流路17aと第2流路17bにおいて回転可能に軸支された第1スプロケット18aと第2スプロケット18b」の構成を備えると解される。
また、引用発明は、ソレノイドに通電していない場合はプランジャの下降によりストッパ51が第1スプロケット18aと第2スプロケット18bを固定し、通電するとプランジャの上昇により係止を開放するから、
引用発明は、
「通電により、プランジャを上昇させるプランジャ式ソレノイド50と、プランジャの下降により第1スプロケット18aと第2スプロケット18bを固定し、プランジャの上昇により第1スプロケット18aと第2スプロケット18bの係止を解放するストッパ51」とを含む構成を備えると解される。
そして、引用発明の「球排出装置7」が本願発明の「払い出し手段」に相当し、以下同様に「スプロケット18の歯」が「球切り爪」に、「第1流路17aと第2流路17b」が「遊技通路」に、「第1スプロケット18aと第2スプロケット18b」が「回転体」に、「プランジャ」が「プランジャ」に、「プランジャ式ソレノイド50」が「ソレノイド」に、「ストッパ51」が「停止部材」に相当するのは、上記したとおりである。
そうすると引用発明は、
「払い出し単位数が予め大小2種類設定される払い出し手段」と、
「払い出し手段は、球切り爪が周設され、かつ遊技球通路において回転可能に軸支された回転体と、通電によりプランジャを上昇させるソレノイドと、プランジャの下降により回転体を固定し、プランジャの上昇により回転体の係止を解放する停止部材」の構成を実質的に具備しているということができる。

してみると、引用発明と本願発明とは

「各種入賞信号若しくは正規の球貸し信号の受信に基づき払い出しの要請球数を演算する要請球数演算手段と、
払い出し単位数が予め大小2種類設定されている払い出し手段と、
要請球数が存在し、大きい払い出し単位数以上であると、大きい払い出し単位数を選択し、大きい払い出し単位数未満であると、小さい払い出し単位数を選択して、払い出しを指令する選択手段とを含み、
払い出し手段は、球切り爪が周設され、かつ遊技球通路において回転可能に軸支された回転体と、通電によりプランジャを上昇させるソレノイドと、プランジャの下降により回転体を固定し、プランジャの上昇により回転体の係止を解放する停止部材とを含む遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
各種入賞信号若しくは正規の球貸し信号の受信に基づき、要請球数演算手段が行う払い出し要請球数の演算を、本願発明は、球数で所定値分増加される一方、実際に払い出した遊技球の検出により発せられる確認信号の受信ごとに球数が1減少されて算出するのに対し、引用発明は、球数と、払い出しの単位数とを、2カ所に分けて球数と単位数毎に増加・減少されて算出している点。

<相違点2>
払い出しを指令する選択手段が、本願発明は、ソレノイドの通電時間の長短により、払い出し単位数を切り替えて払い出しを行うのに対し、引用発明は、払い出し単位数を大小に分けて記憶した各払い出し単位数の組み合わせで払い出しを行っており、通電時間の長短により、払い出し単位数を切り替えて払い出しを行うものではない点。

【5】相違点についての検討
<相違点1>について
払い出し手段を備えたパチンコ機分野において、遊技球の払い出しの要請球数の演算を、球数で所定値分増加される一方、実際に払い出した遊技球の検出により発せられる確認信号の受信ごとに球数が1減少されて算出することは、従来周知の技術(特開平9-173603号公報(段落【0046】)、特開平9-135953号公報(段落【0041】)参照)である。
また、種々の装置において構造を簡素化することは、スペースの有効利用・小型化・コストダウンの観点から通常よく行われる周知な技術課題にすぎない。
そうすると、引用発明と上記周知技術の演算手段とは、共に払い出しの要請球数を演算する点で技術分野が共通しており、相互に技術の転用を図ることに格別困難性はないから、周知な技術課題を参酌しつつ、引用発明の大小2単位の別々の単位の要請球数演算手段に代えて、上記周知技術を適用し、要請球数を各種入賞信号若しくは正規の球貸し信号の受信に基づき、球数で所定値分増加される一方、実際に払い出した遊技球の検出により発せられる確認信号の受信ごとに球数が1減少されて算出する簡素な単一の要請球数演算手段とすること、即ち、本願発明に係る相違点1を構成とすることは、当業者であれば適宜になし得る設計事項といえる。

<相違点2>について
回転体で遊技球の払い出しを行うパチンコ機分野において、ソレノイドへのオン状態を続けて所定数の払い出しを行い、続いてタイマーの信号に基づいて所定時間のみオン状態を繰り返して払い出しを行う点が、特開平7-213714号公報(段落【0031】〜【0035】、【0045】参照)や特開平7-213718号公報(段落【0038】〜【0043】、【0067】参照)に記載されていること、また、ソレノイドへの電源がONされた状態においては、流下塞止部材の作用により下方の遊技球をすべて停止回転体で払い出す機能を備えたものであって、停止回転体でソレノイドへの電源のON/OFFが比較的短時間に繰り返され、少数の所定個数を断続的に払い出しを行うものを、電源を比較的長時間ONすることにより、前記所定個数より多い個数(たとえば10個)の遊技球を連続的に払い出せるようにした点が、特開平10-80548号公報(段落【0025】〜【0027】、【0037】参照)に記載されていることに基づけば、通電時間の長短により払い出し動作を切り替える技術において、1回の通電時間における長短が払い出し単位数の大小を各々設定しているものと捉えることができるから、大小の払い出し単位数を、ソレノイドの通電時間の長短による払い出しを行って切り替えることは、従来周知の技術といえる。
そして、引用発明と上記周知技術とは、回転体により払い出しを行う点で技術分野が共通しており、払い出し単位数を、引用発明のように球数の単位として捉えるか、上記周知技術のように所定数払い出す通電時間の単位として捉えるかは、共に両者の払い出し装置が払い出しの際、球数と通電時間と
が対応関係にある以上、払い出す場面においては、単なる単位の種類の相違にすぎず、単位の種類の設定において相互に置換が容易な技術である。
そうすると、大小の払い出し単位数を、球数の大小として選択して払い出しを行う引用発明の選択手段に代えて、大小の払い出し単位数を、ソレノイドの通電時間の長短による払い出しを行って切り替える上記周知技術を適用し、ソレノイドの通電時間の長短により、払い出し単位数を切り替えて払い出しを行う選択手段を具備すること、即ち、本願発明に係る相違点2を構成することは、当業者であれば容易になし得ることである。

【6】作用効果・判断
そして、本願発明における作用効果は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

【7】むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-09 
結審通知日 2006-08-22 
審決日 2006-09-12 
出願番号 特願平11-306011
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
塩崎 進
発明の名称 遊技機  
代理人 石田 喜樹  

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