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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1145853
審判番号 不服2003-11475  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-09-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-19 
確定日 2006-10-25 
事件の表示 平成 8年特許願第 69165号「パチンコ機の球抜機構」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 2日出願公開、特開平 9-225095〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願の手続の経緯
本願は、平成8年2月28日の出願であって、平成15年2月18日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成15年4月25日付けで手続補正がなされ、平成15年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成15年6月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成15年7月22日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年7月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年7月22日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成15年7月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項1】前面枠の表側に打球供給皿と余剰球受皿とを設けると共に、前面枠の裏側に打球供給皿のパチンコ球を一列に整列して導き出す供給通路と、該供給通路の終端部に臨んでパチンコ球の流下を阻止し、回動によってパチンコ球を1個ずつ受け入れて発射レールの発射位置に送り出す打球供給装置とを設けたパチンコ機において、
前記供給通路の終端部の側壁に余剰球受皿に連通する球抜取口を開設し、前記球抜取口にはスライド式の可動体を臨ませて、常には前記可動体が前記球抜取口へのパチンコ球の球抜方向と直交する一方向に付勢されて閉鎖され、外部操作がなされると前記可動体が前記球抜方向と直交する他方向に摺動して開放されるようにし、
さらに、前記供給通路の終端部に臨む打球供給装置の球止部の先端を球抜取口に向けてパチンコ球を案内する傾斜縁に形成したことを特徴とするパチンコ機の球抜機構。」(以下、「本願補正発明」という。)

2.補正の適否の検討
本願補正発明に係る請求項1の補正は、平成15年4月25日付けで補正された【請求項1】の「可動体」に関して、「球抜取口を開設すすると共に、前記球抜取口に常には閉鎖し、外部操作により該球抜取口と直交方向に摺動して開放する可動体を設け」を、「球抜取口を開設し、前記球抜取口にはスライド式の可動体を臨ませて、常には前記可動体が前記球抜取口へのパチンコ球の球抜方向と直交する一方向に付勢されて閉鎖され、外部操作がなされると前記可動体が前記球抜方向と直交する他方向に摺動して開放されるようにし」と限定的に特定するものであって、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.引用例に記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された実公平6-3648号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(ア)「本考案は、遊技終了時に残った遊技球(以下「残り球」という)を抜き出す機構に改良を施したパチンコ機に関する。」(第1頁第2欄第6〜8行)
(イ)「11は遊技球12を貯留するための上皿で、この上皿11はパチンコ機の台板(図示せず)の前面に設けられている。そして、この上皿11の下流側(図示左側)には、遊技球12を1列状態で流下させる球流下通路13が設けられている。この球流下通路13は、盤面に沿って配置されているが、その下端出口13aは、盤面に対し直角後方(図示前方)に向けられている。14は球流下通路13の下方に設けた球抜通路で、その入口である球抜口15が、球流下通路13の下端出口13aの斜め下方に設けられている。そして、球抜通路14の出口14aは、台板前面の下皿(図示せず)に連通している。」(第2頁第4欄第13〜24行)
(ウ)「一方、16は球流下通路13の下端出口13aから出た遊技球12aを下方か支える受け部材で、この受け部材16は、前記下端出口13aの下方に近接すると共に球抜口15の図示左側方にも近接し、軸17を中心にして第1図に示す送球停止位置と第2図に示す送球位置との間を左右に回動可能になっている。この受け部材16の頂部には、前後方向に延びる幅狭の又受面16aが形成され、この球受面16aから図示左側方にかけて球転落用の凹面部16bが形成され、更に、この凹面部16bから図示左側方にかけて突片部16cが形成されている。」(第2頁第4欄第24〜34行)
(エ)「・・第4図に実線で示すように受け部材16が送球停止位置にあるときには、球受面16aがその真上の遊技球12aの中心よりも図示左側(球抜口15とは反対側)に片寄ったところに位置しており、従ってこの状態では該遊技球12aを球抜口15側に転動させようとするが、その転動は、後述する球抜部材22によって阻止される。そして、第4図に二点鎖線で示すように、受け部材16が送球位置に回動されると、球受面16aが遊技球12aの中心よりも球抜口15側に変位し、これによって該遊技球12aが凹面部16bに沿って転げ落ち、その凹面部16bの図示前方に面した発射球供給口18(第5図参照)から発射装置(図示せず)に供給される。この送球位置では、球流下通路13内の後続の遊技球12が下端出口13aから落下するのを阻止するために、受け部材16のうちの下端出口13a側の端縁部には突片状の球止め部16dが上向きに形成されており、第4図に二点鎖線で示すように、受け部材16が送球位置に回動されたときに、該球止め部16dが下端出口13aに臨んで後続の遊技球12の落下を阻止する」(第2頁第4欄第34行〜第3頁第5欄第3行)
(オ)「一方、19は発射球供給機構20の作動レバーで、この作動レバー19は、軸21を介して上下方向に回動可能に支持され、その先端部によって受け部材16の突片部16cを下方から受け支えている。この場合、作動レバー19は、発射装置の打球槌(図示せず)の打撃動作に連動して上下動するように、例えば打球槌に固定された突片(図示せず)によって突き上げられる構成であり、これによって、打球槌が打撃動作を1回行う毎に、作動レバー19を1回上下動させて、受け部材16を送球停止位置から送球位置へ一往復させる。而して、22は残り球の球抜を行うための球抜操作部材で、軸23を支点にして上方から押し操作可能に設けられている。この球抜操作部材22には球抜部材24が一体に下向きに形成され、この球抜部材24の下端の球受面24aが受け部材16に対し球抜口15側に位置した構成となっている。この場合、球抜操作部材22をばね22aによって上方に付勢することによって、球抜部材24を第4図に実線で示す球抜阻止位置に保持するようにしており、この球抜阻止位置では球抜部材24の球受面24aと受け部材16の球受面16aとの間の隙間寸法が遊技球12の球径の1/2よりも若干大きくなるように設定している」(第3頁第5欄第3〜24行)
(カ)「球抜操作部材22を押し下げると、球抜部材24の球受面24aが受け部材16から離れる方向に移動して、該球抜部材24と受け部材16との間の隙間が遊技球12aの球径よりも大きくなり、これによって受け部材16上の遊技球12aが球抜口15内へ落下するのを許容する。」(第3頁第5欄第24〜30行)
(キ)「遊技停止中は、受け部材16が送球停止位置(第4図で実線で示す位置)にて保持される。そして、遊技すべく、遊技球12を上皿11内に入れると、その遊技球12が一列状態で球流下通路13内を流下し、その先頭の遊技球12aが下端出口13aを出たところで受け部材16の球受面16aに乗る。この状態では、球受面16aがその真上の遊技球12aの中心よりも図示左側(球抜口15とは反対側)に片寄ったところに位置しているため、該遊技球12aを球抜口15側に転動させようとするが、その転動は、球抜阻止位置にある球抜部材22によって阻止され、従って該遊技球12aは受け部材16と球抜部材24とによって受け止められた状態になる。この後、遊技者が操作ハンドル(図示せず)を回動操作して、発射装置を動作させると、その発射装置の打球槌が打撃動作を1回行う毎に、それと連動して発射球供給機構20作動レバー19が1回上下動して、受け部材16を送球停止位置から送球位置(第4図に二点鎖線で示す位置)へ一往復させる。これにより、受け部材16が送球位置に回動される毎に、受け部材16の球受面16aが遊技球12aの中心よりも球抜口15側に変位し、これによって該遊技球12aが凹面部16bに沿って転げ落ちて発射球供給口18から発射装置に供給される。この送球位置では、受け部材16の球止め部16dが球流下通路13の下端出口13aに臨んで後続の遊技球12の落下を阻止し、これによって打球槌の打撃動作1回毎に遊技球12aを1個ずつ供給するという発射球供給動作を確実に行わせる。」(第3頁第5欄第35行〜第3頁第6欄第12行)
(ク)「一方、遊技を終了すると、受け部材16は送球停止位置(第4図で実線で示す位置)にて保持される。この後、球流下通路13や上皿11内に残った遊技球12を抜き取るべく、球抜操作部材22をその上方から指で押し下げると、第4図に二点鎖線で示すように、球抜部材24の球受面24aが受け部材16から離れる方向に移動して、該球抜部材24と受け部材16との間の隙間が遊技球12aの球径よりも大きくなり、これによって受け部材16上の遊技球12aが球抜口15内へ落下するのを許容する状態となる。この状態を維持する間は、球流下通路13内を流下する遊技球12が、受け部材16の球受面16aを転動して球抜口15内に落下し、球抜通路14を通って下皿内に貯留される。そして、球抜終了後に球抜操作部材22の押下げを解除すれば、球抜操作部材22がばね22aの弾発力によって元の位置に戻り、これに追従して球抜部材24も球抜阻止位置に戻る。」(第3頁第6欄第13〜28行)
(ケ)「・・発射装置への供給のために待機する遊技球12のうちの先頭の遊技球12aを、球抜口15側へ転動させ得る状態で受け部材16によって下方から支え、その遊技球12aの転動を側方から球抜部材24によって阻止するようにしたから、遊技終了後に球抜操作部材22を操作して球抜部材24を球抜位置へ移動させれば、先頭の遊技球12aを含む全ての残り球を、球抜口15内に落し込むことができて、残り球の全量抜取りが可能になる。しかも、この場合、受け部材16上の遊技球12aをその側方(球抜口15側)から球抜部材24で受ける構成であるから、この受け部材24に加わる遊技球12a,12の球圧は本来的に小さく、その上、球抜操作時には、この球抜部材24を、受け部材16から離すように移動させるものであるから、遊技球12a,12の球圧に抗した球抜操作を行う必要が全くなく、操作力を著しく軽減できて球抜操作性を大幅に向上できる。」(第3頁第6欄第29〜45行)
(コ)「また、本実施例では、受け部材16の球受面16a上の遊技球12aを球抜口15側に転動させ得る状態をつくるのに、その球受面16aを遊技球12aの中心よりも第4図図示左側(球抜口15とは反対側)に片寄らせるようにしたが、例えば、受け部材の球受面を、球抜口15側が低くなる斜面状に形成して、その傾斜面の作用によって遊技球12aの転動方向を球抜口15側に向ける構成としても良い。」(第4頁第7欄第28〜35行)
(サ)「その他、本考案は、球抜操作部材22(球抜部材24)を左右方向にスライドさせる構成としたり、球抜操作部材と球抜部材とを別体に構成して両者を連結部材で連結する構成としたり、或は受け部材や球抜部材等の形状を適宜変更しても良い等、種々の変形が可能である。」(第4頁第8欄第1〜5行)
上記記載事項(ア)乃至(サ)の記載及び図面からみて、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「パチンコ機は、台板の前面に上皿11と下皿とを設けると共に、上皿11の下流側には、遊技球12を1列状態で流下させる球流下通路13が盤面に沿って配置され、その下端出口13aは、盤面に対し直角後方に向けられ、球抜口15は、球流下通路13の下端出口13aの斜め下方に設けられ、球抜通路14の出口14aは、台板前面の下皿に連通しており、球流下通路13の下端出口13aから出た遊技球12aを下方から支える受け部材16は、下端出口13aの下方に近接すると共に球抜口15にも近接し、軸17を中心に送球停止位置と送球位置との間を左右に回動可能で、受け部材16が送球停止位置にあるとき、球受面16aがその真上の遊技球12aの中心よりも球抜口15とは反対側に片寄ったところに位置し、遊技球12aの球抜口15側の転動が球抜部材24によって阻止され、受け部材16が送球位置に回動されると、球受面16aが遊技球12aの中心よりも球抜口15側に変位し、遊技球12aが凹面部16bに沿って転げ落ち、発射球供給口18から発射装置に供給される機能を備えるものであって、
遊技球を抜き出す機構として、球抜操作部材22には上記球抜部材24が一体に下向きに形成され、球抜部材24の下端の球受面24aが受け部材16に対し球抜口15側に位置し、球抜操作部材22をばね22aで上方に付勢して球抜部材24を球抜阻止位置に保持しており、球抜操作部材22を押し下げると、球抜部材24の球受面24aが受け部材16から離れる方向に移動して遊技球12aの球抜口15内への落下を許容し、受け部材16の球受面16aを、球抜口15側が低くなる斜面状に形成して、その傾斜面の作用により遊技球12aの転動方向を球抜口15側に向ける構成とするパチンコ機。」

4.対比・判断
本願補正発明と引用発明との対比
(1)本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「上皿11」が「打球供給皿」に相当し、以下同様に「下皿」が「余剰球受皿」に、「遊技球12を1列状態で流下させる」が「パチンコ球を一列に整列して導き出す」に、「球流下通路13」が「供給通路」に、「パチンコ機」が「パチンコ機」に、「遊技球を抜き出す機構」が「玉抜機構」にそれぞれ相当している。
また、引用発明の「打球供給皿」及び「余剰球受皿」は、上記記載事項(イ)「上皿11はパチンコ機の台板・・の前面に設けられ・・台板前面の下皿」なる記載、及びパチンコ機における打球供給皿及び余剰球受皿の通常の配置位置(例えば、実公平4-32147号公報、第2頁第3欄第36〜40行参照)からみて、本願補正発明と同様に「前面枠の表側に打球供給皿と余剰供給皿とを設ける」構成であることは明らかである。
そして、引用発明の「供給通路」は、上記記載事項(イ)「・・遊技球12を1列状態で流下させる球流下通路13が設けられ・・この球流下通路13は、盤面に沿って配置されている・・」なる記載及び【図5】からみて、盤面の裏側、即ち前面枠の裏側に打球供給皿の遊技球を1列に整列して導き出すといえるから、本願補正発明と同様に「前面枠の裏側に打球供給皿のパチンコ球を一列に整列して導き出す」機能を備えるといえる。
そして、本願補正発明の「打球供給装置」に関して、引用例の上記記載事項(ウ)「・・16は球流下通路13の下端出口13aから出た遊技球12aを下方か支える受け部材で、・・軸17を中心にして・・送球停止位置と・・送球位置との間を左右に回動可能になっている。・・」、同じく記載事項(エ)「・・受け部材16が送球停止位置にあるときには、・・球抜部材22によって阻止される。・・」、「・・受け部材16が送球位置に回動されると、球受面16aが遊技球12aの中心よりも球抜口15側に変位し、これによって該遊技球12aが凹面部16bに沿って転げ落ち、その凹面部16bの図示前方に面した発射球供給口18(第5図参照)から発射装置(図示せず)に供給される。・・」なる記載及び【図3】【図4】から、引用発明の「受け部材」は、供給通路(球流下通路13)の終端部(下端出口)に臨んでおり、送球停止位置にあると遊技球(パチンコ球)の流下を阻止し、回動により送球位置になると、遊技球(パチンコ球)を凹面部16bにより1個ずつ受け入れて発射装置に供給する打球供給装置を構成するから、本願補正発明と同じく「供給通路の終端部に臨んでパチンコ球の流下を阻止し、回動によってパチンコ球を1個ずつ受け入れて発射レールの発射位置に送り出す打球供給装置」を構成するといえる。
さらに、本願補正発明の「打球供給装置」に関して、引用例の上記記載事項(コ)「受け部材16の球受面16a上の遊技球12aを球抜口15側に転動させ得る状態をつくるのに、・・例えば、受け部材の球受面を、球抜口15側が低くなる斜面状に形成して、その傾斜面の作用によって遊技球12aの転動方向を球抜口15側に向ける構成としても良い。」なる記載、及び上記記載事項(ウ)(エ)に基づけば、引用発明の「球受面16a」は、供給通路の終端部に臨んでおり、打球供給装置の球止部としても機能しており、球抜口15側に転動させるように球抜口15側が低くなる斜面状に形成されるから、本願補正発明の「球止部」と同じく「供給通路の終端部に臨む打球供給装置の球止部の先端を球抜取口に向けてパチンコ球を案内する傾斜縁」の構成を備えたものといえる。

してみると、引用発明と本願補正発明とは、

「前面枠の表側に打球供給皿と余剰球受皿とを設けると共に、前面枠の裏側に打球供給皿のパチンコ球を一列に整列して導き出す供給通路と、該供給通路の終端部に臨んでパチンコ球の流下を阻止し、回動によってパチンコ球を1個ずつ受け入れて発射レールの発射位置に送り出す打球供給装置とを設けたパチンコ機において、
前記供給通路の終端部に臨む打球供給装置の球止部の先端を球抜取口に向けてパチンコ球を案内する傾斜縁に形成したパチンコ機の球抜機構。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点>
本願補正発明は、供給通路の終端部の側壁に余剰供給皿に連通する球抜取口を開設し、球抜取口にスライド式の可動体を臨ませて、常には球抜取口へのパチンコ球の球抜方向と直交する一方向に付勢されて閉鎖され、外部操作がなされると他方向に摺動して開放されるのに対し、引用発明は、供給通路の終端部に側壁や球抜取口を設けているか否か明らかでなく、球抜取口を開閉するスライド式の可動体も備えていない点。

5.相違点についての検討
<相違点>について
パチンコ機分野において、供給通路に余剰供給皿に連通する球抜取口を開設し、球抜取口にスライド式の可動体を臨ませて、常には球抜取口へのパチンコ球の球抜方向と直交する一方向に付勢されて閉鎖され、外部操作がなされると他方向に摺動して開放させることは、従来周知の技術(例えば、実願平2-59208号(実開平4-18572号)のマイクロフィルム(第6頁第4行〜第7頁第11行、第12頁第5行〜第13頁第5行)、実願昭61-91882号(実開昭62-202881号)のマイクロフィルム(第7頁第10〜第8頁第6行)参照、以下、「周知技術1」という。)である。
また、パチンコ球の球抜方向と直交する可動体の開放・閉鎖を行うに、側壁に球が通過し得る球抜穴を開設することが、特開平7-328207号公報(段落【0029】、【0030】参照)や、同じく側壁に球出口を開設することが、特開昭62-246390号公報(第24頁右上欄第8〜18行、第52図参照)に記載されており、これらから、パチンコ球の球抜方向と直交する可動体の開放・閉鎖を行う際に、側壁に球抜取口を開設することは、パチンコ機分野において、従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。)といえる。
そして、引用発明及び上記周知技術1,2は、可動体を開放・閉鎖してパチンコ球を通過させる点で技術分野が共通し、また、引用発明は、パチンコ球をその側方から球抜部材(開動体)で受けて球抜部材に加わる球圧を小さくし、玉抜き操作を容易にする点で本願補正発明と課題が共通しており(引用例の第2頁第4欄第5〜10行参照)、供給通路の終端部の構成及び球抜部材の構成につき相互に技術の転用を図ることに格別困難性はないから、引用発明の供給通路の終端部及び玉抜部材に、供給通路に球抜取口を開設し、スライド式の可動体を臨ませて、常には球抜取口へのパチンコ球の球抜方向と直交する一方向に付勢されて閉鎖され、外部操作がなされると他方向に摺動して開放する可動体を備える上記周知技術1、及び側壁に球抜取口を開設する上記周知技術2を各々適用し、本願補正発明に係る相違点を構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

6.作用効果・判断
そして、本願補正発明における作用効果は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が当然予測できるものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下されるべきものである。
よって、上記「補正の却下の決定の結論」のとおり決定する。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成15年7月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月25日付けの手続補正書の明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりである。
「【請求項1】前面枠の表側に打球供給皿と余剰球受皿とを設けると共に、
前面枠の裏側に打球供給皿のパチンコ球を一列に整列して導き出す供給通路と、該供給通路の終端部に臨んでパチンコ球の流下を阻止し、回動によってパチンコ球を1個ずつ受け入れて発射レールの発射位置に送り出す打球供給装置とを設けたパチンコ機において、
前記供給通路の終端部の側壁に余剰球受皿に連通する球抜取口を開設すると共に、前記球抜取口に常には閉鎖し、外部操作により該球抜取口と直交方向に摺動して開放する可動体を設け、さらに、前記供給通路の終端部に臨む打球供給装置の球止部の先端を球抜取口に向けてパチンコ球を案内する傾斜縁に形成したことを特徴とするパチンコ機の球抜機構。」

2.引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、前記【2】3.に摘記したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から前記【2】2.で検討した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに、上記限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】5.で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-02 
結審通知日 2006-08-08 
審決日 2006-09-01 
出願番号 特願平8-69165
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤田 年彦池谷 香次郎  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 川島 陵司
辻野 安人
発明の名称 パチンコ機の球抜機構  
代理人 伊藤 浩二  

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