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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23B
管理番号 1146007
審判番号 不服2004-20841  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-11-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-07 
確定日 2006-10-26 
事件の表示 特願2002-119828「新規漬物、調味液及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 5日出願公開、特開2003-310151〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年4月22日の出願であって、平成16年8月30日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年10月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年11月5日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年11月5日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月5日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正は、特許請求の範囲の請求項1を、「醤油ベースの調味液(味噌および/または砂糖を添加したものを除く)に、辛味種未完熟の青唐辛子(加熱処理した青唐辛子を除く)を漬け込むことにより製造される青唐辛子の漬物。」に補正するものである。
上記補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「醤油ベースの調味液」を「醤油ベースの調味液(味噌および/または砂糖を添加したものを除く)」と限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開平10-150946号公報」(以下、「引用例」という。)には、
(a)「唐辛子を刻んで熱処理をしたものに適量の醤油を加えてからなる唐辛子の醤油漬の製造方法。」(特許請求の範囲の項)、
(b)「このため唐辛子の紅熟前のまろやかな辛味を利用されておらず利用法が限られていた。本発明は、以上の欠点を解決するため紅熟前の唐辛子を利用するものである。」(段落【0003】)、
(c)「以下本発明の実施の形態について説明する。
第1工程 唐辛子の果実は通常春に種を蒔くと秋に紅熟する。紅熟すると辛味が強くなり果実は固くなるので、まだ柔らかくても十分育成した夏の終わり頃に収穫して用いる。
第2工程 上記の唐辛子の果実を洗い適当な大きさに刻む。この際、へたは取り除く。種は入っていてもかまわない。
第3工程 第2工程を経たものを電子レンジなどで殺菌のため熱処理を行う。そうすると果実の色が緑色から少し黄色に変わり、固さも少し柔らかになる。
第4工程 上記の唐辛子の果実に適量の醤油を加える。
第5工程 上記の唐辛子の果実に醤油を加えたものを容器に入れ密封すると最終製品となる。」(段落【0005】)、及び
(d)「(イ)本発明の唐辛子の醤油漬を味見すると程良い辛さの唐辛子に醤油の味が溶け込み、各種の料理、特に和食の香辛料として用いると一段と料理を美味にする。
(ロ)「唐辛子は毛細血管を刺激する作用があるので健康食品として役立つ。
(ハ)「唐辛子と醤油を組み合わせた味は従来の香辛料にはなかった味である。透明感のある味覚が食欲を誘う。」(段落【0006】)
と記載されている。

(3)対比
引用例で使用される唐辛子は、摘示事項(b)によると「紅熟前の唐辛子」であるところ、本願明細書には「特に辛味種の唐辛子は完熟して深紅色となった、いわゆる赤唐辛子として主に香辛料に使用される。」(段落【0002】)及び「特に唐辛子の完熟前の青唐辛子を醤油に漬け込んだ漬物は知られていない。」(段落【0007】)との記載があり、これらの記載によると、辛味種の唐辛子は完熟して深紅色となり、完熟前は青唐辛子であることに照らし、引用例に係る「紅熟前の唐辛子」とは、「辛味種未完熟の青唐辛子」であると解することができる。また、引用例には、使用する醤油に味噌及び/又は砂糖を添加する旨の記載は何もない。
そこで、本願補正発明と引用例に記載された発明を対比すると、後者の「「醤油」は、前者の「醤油ベースの調味液」に相当するから、両者は、「醤油ベースの調味液(味噌および/または砂糖を添加したものを除く)に、辛味種未完熟の青唐辛子を漬け込むことにより製造される青唐辛子の漬物」で一致し、ただ、前者は、加熱処理していない青唐辛子を漬け込むのに対して、後者では、加熱処理した青唐辛子を漬け込む点で、両者は相違する。

(4)判断
上記相違点について検討するに、ナス、キュウリ等の各種野菜を漬物母料に漬け込んで漬物を製造する際、その野菜を熱処理することなく漬け込むことは従来から極く普通に行われていることである。
そうすると、青唐辛子を醤油ベースの調味液に漬け込むにあたって、青唐辛子を熱処理することなくそのまま醤油ベースの調味液に漬け込むことは、当業者であれば容易に実施し得ることである。
そして、本願補正発明に係る効果も、引用例から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
本願補正発明に係る効果について、請求人は、平成17年1月11日付で「未完熟生青唐辛子漬食味テスト報告書」を、さらに平成18年5月8日付で「未完熟生青唐辛子漬食味テスト報告書」(追加試験)を提出し、本願補正発明に係る「青唐辛子の漬物」は、加熱処理している引用例に係るものよりも、歯ごたえ・食感及び香味・風味で優れている旨主張している。
しかし、歯ごたえ・食感は、多分に主観的な好みであり、しかも、加熱すれば組織が軟弱になり、歯ごたえ・食感が無くなることは、当業者が容易に予測できることであるから、上記報告書の実験結果をもって、本願補正発明が格別の効果を奏するものであるということはできない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2、5項で準用する同法126条5項の規定に違反するので、特許法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成16年11月5日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成15年9月19日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「醤油ベースの調味液に辛味種の未完熟の青唐辛子(加熱処理した青唐辛子を除く)を漬け込むことにより製造される青唐辛子の漬物。」
(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(3)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、両者は、「醤油ベースの調味液に、辛味種未完熟の青唐辛子を漬け込むことにより製造される青唐辛子の漬物」で一致し、ただ、前者は、加熱処理していない青唐辛子を漬け込むのに対して、後者では、加熱処理した青唐辛子を漬け込む点で、両者は相違する。
この相違点についは、前記「2.(4)判断」に記載したとおりに理由により、青唐辛子を熱処理することなくそのまま醤油ベースの調味液に漬け込むことは、当業者が容易に実施し得ることである。
また、本願発明は、前記「2.(4)判断」に記載したとおり、格別の効果を奏するものではない。
(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-24 
結審通知日 2006-08-29 
審決日 2006-09-12 
出願番号 特願2002-119828(P2002-119828)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23B)
P 1 8・ 575- Z (A23B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 淳子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 長井 啓子
河野 直樹
発明の名称 新規漬物、調味液及びその製造方法  
代理人 三好 秀和  

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