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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1146049
審判番号 不服2003-12710  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-04 
確定日 2006-10-27 
事件の表示 特願2000-335784「2素子メアンダラインスリーブアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-141732〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年11月2日の出願であって、平成15年5月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月29日付けで手続補正がなされ、その後平成17年7月8日付けで審尋がなされたところ、同年9月9日付けで回答書が提出されたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年7月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明を、
「平板形状の誘電体基板における一方の平面上で中心線からほぼ等しい距離を隔てて対称に配置する二つのメアンダ形状のアンテナ素子と、前記中心線の近傍から二つの前記アンテナ素子それぞれに同一平面上で直線形状に接続するライン導体と、他方の平面上で当該ライン導体にほぼ等間隔に対面しグラウンド電位となるグラウンド板と、前記ライン導体の中心点付近の該ライン導体と同一平面上でオフセットする給電分岐点を二つの前記アンテナ素子に逆相給電する位置に設定し、当該給電分岐点から二つの前記アンテナ素子に給電する給電回路とを備えて2素子のメアンダラインスリーブアンテナを形成することを特徴とする2素子メアンダラインスリーブアンテナ。」(アンダーラインは補正箇所を示す。)という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「一つの平面上」を「平板形状の誘電体基板における一方の平面上」に限定し、同じく「直線形状で接続する」を「同一平面上で直線形状に接続する」に、同じく「ほぼ等間隔で対面し」を「他方の平面上で・・・ほぼ等間隔に対面し」に、同じく「中心点付近でオフセットする分岐点」を「中心点付近の該ライン導体と同一平面上でオフセットする給電分岐点を二つの前記アンテナ素子に逆相給電する位置に設定し、当該給電分岐点」に限定して特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(3-1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(3-2)引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された本願の出願の日前である平成8年12月17日に頒布された特開平8-335819号公報(以下、「引用例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「【構成】 使用波長λに対して十分小さい巻径のヘリカル部の全長がλ/8〜λ/10の第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a.1bを設け、入力信号に対して位相差のある位相差信号を発生するバルン2aを設け、第1のヘリカルアンテナ素子1aと第2のヘリカルアンテナ素子1bとで形成されるアンテナ長の中央部でバルン2aの出力端を接続し、バルン2bの入力端を携帯無線機の送受信回路を接続して送受信する。」(第1頁下欄(57)【要約】)、
ロ.「【0015】具体的には、送信周波数と同じ周波数にアンテナが同調するように第1,第2のヘリカルアンテナ1a,1bのアンテナ長Lをλ/8〜λ/10に設定し、電気的に電気長がλ/4になる所定の巻径にした第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a,1bを同一直線状に並べて総合的にλ/2の電気長にて共振させる。第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a,1bに使用する導体の線径は“λ/ 1,000 〜 λ/ 10,000”の導体をλ/ 100以下の巻径に巻回している。
【0016】この場合、第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a,1bに供給される信号の位相は、第1のヘリカルアンテナ素子1a(位相:0度)に対して第2のヘリカルアンテナ素子1bは逆位相(位相:180度)となる。しかしながら前記のように第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a、1bを同一直線状に配置しているので、第1のヘリカルアンテナ素子1aおよび第2のヘリカルアンテナ素子1bから放射される電波は紙面に垂直な方向で同位相となりその方向に電波を効率よく放射される。」(第3頁3欄)、
ハ.「【0028】図4は第4の実施例を示す。この実施例では、第3の実施例の板状の第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a,1bを第1,第2の実施例に適用した場合の改良例を示している。この第4の実施例では第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a,1bとバルンとが同一の誘電体板39の上に構成されている。
【0029】36は集中定数または分布定数(伝送路)にて構成された移相器、37は線路パターンにて作成した分波合成器、38はグランドパターンで、誘電板39の両面のうちで移相器36と分波合成器37が形成されている面の裏面に設けられており、送受信回路9のグランドに接地される。バルンの入出力端子5bは送受信回路9の入出力端子8に接続されている。
【0030】このように構成にすることにより、第1,第2のヘリカルアンテナ素子1a,1bとバルンとを同一の誘電体板39の上にエッチングあるいは印刷技術によって同時に作成が可能となり、大量生産に適しており生産性コストの低減が図れると共に、性能面においては特性の確保が図れ、バラツキを抑えることができる。」(第4頁5欄)、
ニ.第5頁図4を参照すると、分波合成器37におけるヘリカルアンテナ素子1a、及びヘリカルアンテナ素子1bとの間の接続部分には、誘電体板39の一方の側のヘリカルアンテナ素子のパターンと同一平面上であって直線形状の線路パターン部分が形成されていることが明らかである。

上記引用例の記載、及びこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されているものと認められる。
「平板形状の誘電体板における両方の平面とスルーホールを使い、前記誘電体板の中心線からほぼ等しい距離を隔てて対称に配置する二つのヘリカル形状のアンテナ素子と、前記中心線の近傍から二つの前記アンテナ素子それぞれに、一方の平面上のパターンと同一平面上で直線形状に接続する2つの直線形状の線路パターン部分と、他方の平面上で当該二つの直線形状の線路パターン部分にほぼ等間隔に対面しグランド電位となるグランドパターンと、前記二つの直線形状の線路パターン部分のうち、一方の線路パターン部分に移相器を設けることにより、前記二つの直線形状の線路パターン部分を介して二つの前記アンテナ素子に逆相給電する分波合成器を備えて2素子のヘリカル形状のアンテナを形成することを特徴とする2素子の携帯無線機用アンテナ。」

B.同じく、原審の拒絶理由に引用された特開平9-307341号公報(以下、「引用例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている(下線加筆)。
イ.「【0014】図1は、本発明の一実施の形態における電磁結合型偏波共用平面アレーアンテナを示す図であり、3枚1組の構成の各層を斜め上から見た図である。」(第3頁3欄)、
ロ.「【0016】ストリップ線路2は給電端子9と端部2a,2b,2c,2dとを備えており、端部2a,2b,2c,2dはそれぞれ、アンテナ素子1a,1b,1c,1dに対応している。マイクロストリップ線路4は給電端子10と端部4a,4b,4c,4dとを備えており、端部4a,4b,4c,4dはそれぞれ、スロット3a,3b,3c,3dに対応している。
【0017】ストリップ線路2の端部2aと端部2bとは、互いに反対方向を向いている。また、給電端子9から端部2aまでの距離と給電端子9から端部2bまでの距離とは、端部2aと端部2bとにおいて給電される電波の位相差が180°となるように、図1に示した2aと2bとの間の(λg /2)の長さだけ異なる長さに設定されている。端部2cと端部2dとの場合も同様に、互いに反対方向を向いており、端部2cと端部2dとにおいて給電される電波の位相差が180°となるような長さに設定されている。このようにすることによって、端部2aおよび端部2cと端部2bおよび端部2dとをそれぞれ比較すると、端部が互いに反対方向を向いていることによって偏波が逆方向に発生して打ち消し合うが、給電される電波の位相差が180°となることによって、結局、偏波が同一方向に発生することになる。」(第3頁3欄〜4欄)、
ハ.「【0025】図2は、図1に示した中層部のストリップ線路を詳細に示す図である。給電端子9からマイクロ波を給電する回路は、電力分配器13,14において分配される。アンテナ素子1a,1b,1c,1dのそれぞれの位相調製線路11a,11b,11c,11dの長さを調整することによって、アンテナ素子1a,1b,1c,1dと整合をとることができる。
【0026】アンテナ素子1aの位相調製線路11aの先端部分(図1の端部2aに相当する部分)とアンテナ素子1bの位相調製線路11bの先端部分(図1の端部2bに相当する部分)とでは、上述したように、端子9からのそれぞれの距離が図2に示した(λg /2)の長さだけ異なるので、給電されるマイクロ波の位相差が180°となる。ところが、位相調製線路11aの先端部分と位相調製線路11bの先端部分とは互いに反対方向を向いているので、結局、位相調整線路11aの先端部分と位相調整線路11bの先端部分とにおいて発生する偏波の向きとは同じということになる。」(第4頁5欄)。

上記記載のうち、「ロ.」や「ハ.」の項に記載された「給電される電波の位相差が180°」や「給電されるマイクロ波の位相差が180°」は、「逆相給電」を意味することが技術常識である。また、「ハ.」の項の記載によれば、電力分配器13は位相調製線路11aと位相調製線路11bに分配して給電するものであるが、位相調製線路11aと位相調製線路11bはライン導体の一種であるとともに、前記電力分配器13との接続点は給電分岐点であるということができる。そして、その給電分岐点は、位相調製線路11aに対して位相調製線路11bに逆相給電するため、全体として直線形状となっているライン導体(位相調製線路11a、及び11bの線路パターン)の中心点付近で、その給電分岐点は所定量だけオフセットされていることが明らかである。
すると上記引用例2の記載、及びこの分野における技術常識を考慮すれば、引用例2には、「ライン導体の中心点付近の該ライン導体と同一平面上でオフセットする給電分岐点を、二つの前記アンテナ素子に逆相給電する位置に設定し、当該給電分岐点から二つの前記アンテナ素子に給電する給電回路」が開示されている。

C.周知例として提示するが、特開平4-120902号公報(以下、「周知例1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「[発明の実施例]
第1図は、この発明によるアンテナ装置の第一の実施例を示す図であり、図中、(5)は筐体(1)の上面に幅広面が、その上面と垂直になるよう設けられた誘電体基板、(6)はこの誘電体基板(5)の両面に形成されたマイクロストリップ線路で、(7)は上記誘電体基板(5)の一方の面に形成されたマイクロストリップ線路(6)のストリップ導体、(8)は上記誘電体基板(5)の他の面に形成されたマイクロストリップ線路(6)のグラウンド側導体、(9)はこのグラウンド側導体(8)が両側に折り返し、電気的な長さをλ/4とする位置で開放終端するλ/4ストリップ導体である。(10)は電気長がλ/4のコイル状導体、(11)は筐体(1)内に設けられた上記マイクロストリップ線路(6)の給電回路である。上記コイル状導体(10)は概略、上記グラウンド側導体(8)が両側に折り返す位置で、上記ストリップ導体(7)と接続されている。」(第2頁左下欄10行〜右下欄8行)、
ロ.「第5図は、この発明によるアンテナ装置の第三の実施例を示す図であり、(19)は誘電体基板(5)の上部に設けた誘電体板、(20)はこの誘電体板(19)上に形成した折り曲げ導体である。折り曲げ導体(20)の電気的な長さをλ/4にすれば、折り曲げ導体(20)はコイル状導体(10)と同様な作用をし、上記第一の実施例と同様の特性となる。また、収納時においては、折り曲げ導体(20)が筐体(1)の上部に出る構成にし、マイクロストリップ線路(6)の先端を短絡する構成にすれば、上記第一の実施例と同様の特性となる。本構成では折り曲げ導体(20)はエツチング加工等の微細加工技術により高い寸法精度で形成でき、また堅牢であるため、上記第一の実施例に較べ安定な特性が得られる。」(第3頁左下欄6行〜同欄末行)。

上記記載のうち、「ロ.」の項の「折り曲げ導体(20)」はメアンダ形状のアンテナ素子を指し、また同様に、「コイル状導体(10)」はヘリカル形状のアンテナ素子を指すことが技術常識であるが、その「ロ.」の項に、これらはアンテナ素子として同様な作用をし、同様の特性となることが明示されている。
すると上記周知例1によれば、「移動体通信用のアンテナを、誘電体の一方の平面上にメアンダ素子で形成する」点、及び「アンテナを、メアンダ素子で形成するか、又はヘリカル素子で形成するかは適宜選択しうる事項」であることが周知である。

(3-3)対比

補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「誘電体板」、「グランド電位」、「グランドパターン」は、補正後の発明の「誘電体基板」、「グラウンド電位」、「グラウンド板」に相当する。
b.引用発明の「ヘリカル形状のアンテナ素子」と補正後の発明の「メアンダ形状のアンテナ素子」は「アンテナ素子」という点で一致する。
c.引用発明の「直線形状の線路パターン部分」と、補正後の発明の「ライン導体」とは、「ライン導体」という点で一致する。
d.引用発明の「携帯無線機用アンテナ」と、補正後の発明の「メアンダラインスリーブアンテナ」は、「アンテナ」という点で一致する。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「平板形状の誘電体基板における平面上で中心線からほぼ等しい距離を隔てて対称に配置する二つのアンテナ素子と、前記中心線の近傍から二つの前記アンテナ素子それぞれに一方の同一平面上で直線形状に接続するライン導体と、他方の平面上で当該ライン導体にほぼ等間隔に対面しグラウンド電位となるグラウンド板と、前記ライン導体を介して二つの前記アンテナ素子に逆相給電する給電回路とを備えて2素子のアンテナを形成することを特徴とする2素子アンテナ。」

(相違点1)
補正後の発明では、「誘電体基板における一方の平面上で中心線からほぼ等しい距離を隔てて対称に配置する二つのメアンダ形状のアンテナ素子」であるのに対し、引用発明では、「誘電体基板における両方の平面とスルーホールを使い、前記誘電体基板の中心線からほぼ等しい距離を隔てて対称に配置する二つのヘリカル形状のアンテナ素子」である点。

(相違点2)
補正後の発明では、「前記ライン導体の中心点付近の該ライン導体と同一平面上でオフセットする給電分岐点を二つの前記アンテナ素子に逆相給電する位置に設定し、当該給電分岐点から二つの前記アンテナ素子に給電する給電回路」を備えるのに対し、引用発明では、ライン導体は二つの直線形状の線路パターン部分で構成されるとともに、「二つの直線形状の線路パターン部分のうち、一方の線路パターン部分に移相器を設けることにより、前記二つの直線形状の線路パターン部分から二つの前記アンテナ素子に逆相給電する分波合成器」を備える点。

(相違点3)
補正後の発明は「メアンダラインスリーブアンテナ」であるのに対して、引用発明はメアンダラインのものではなく、スリーブアンテナかどうか不明な点。

(3-4)判断
上記相違点1〜3について、以下のとおり判断する。

(相違点1について)
上記「(3-2)引用発明及び周知技術」の「C.」の項で記載したように、「移動体通信用のアンテナを、誘電体の一方の平面上にメアンダ素子で形成する」点、及び「アンテナを、メアンダ素子で形成するか、又はヘリカル素子で形成するかは適宜選択しうる事項」であることが周知である。そして、当該周知技術を引用発明に適用することに特段の阻害要因はないから、当該周知技術を引用発明に適用し、補正後の発明の「誘電体基板における一方の平面上で中心線からほぼ等しい距離を隔てて対称に配置する二つのメアンダ形状のアンテナ素子」のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点2について)
上記「(3-2)引用発明及び周知技術」の「B.」の項で記載したように、引用例2には、「ライン導体の中心点付近の該ライン導体と同一平面上でオフセットする給電分岐点を、二つの前記アンテナ素子に逆相給電する位置に設定し、当該給電分岐点から二つの前記アンテナ素子に給電する給電回路」が開示されている。
そして引用発明と引用例2に開示されたものは、二つのアンテナ素子に逆相給電する給電回路として共通するとともに、引用例2に開示されたものを引用発明に適用することに特段の阻害要因は見あたらないから、引用例2に開示されたものを引用発明に適用し、補正後の発明のように「前記ライン導体の中心点付近の該ライン導体と同一平面上でオフセットする給電分岐点を二つの前記アンテナ素子に逆相給電する位置に設定し、当該給電分岐点から二つの前記アンテナ素子に給電する給電回路」を備えるよう構成することは、当業者が容易になし得ることである。

(相違点3について)
補正後の発明は「メアンダラインスリーブアンテナ」であるが、その根拠として、請求人は平成18年8月23日付けの応対記録(ファックス)で、「ライン導体13、14とグラウンド板15、16とを対面させた場合、即ち、グラウンド板15、16をライン導体13、14の長さと同等の長さにした場合、グラウンド板15、16を折り曲げなくても、実質上、スリーブアンテナとして作用する」旨、回答している。
これがスリーブアンテナと称することの根拠であるとすれば、引用発明でも、分波合成器37において、2つの直線形状の線路パターン部分は、グランドパターン38と対面しており、且つアンテナ素子に向かう長さについても、その端子3や4は誘電体板の裏側のグランドパターン38の端部と一致しているから、実質的に引用発明のアンテナもスリーブアンテナの部分の構成において特段の差異はなく、引用発明のアンテナもスリーブアンテナと称することができるというものである。
そして、上記「(相違点1について)」で述べたように、「アンテナを、メアンダ素子で形成するか、又はヘリカル素子で形成するかは適宜選択しうる事項」であることを踏まえれば、補正後の発明のように「メアンダラインスリーブアンテナ」のように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

上記相違点1〜3についての判断に加え、補正後の発明が奏する作用効果も、上記引用例1〜3のもの及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は平成17年9月9日付けの回答書において、「前記メアンダ形状のアンテナ素子と共にメアンダラインスリーブアンテナを形成して」との構成を「グラウンド電位となるグラウンド板」の前に挿入することにより、グラウンド板を限定する補正案を提示している。しかしながら、このように補正したとしても、上記「(相違点3について)」で述べたように、ライン導体及びグランウンド板に関する構成に関して、補正後の発明と引用発明の間には実質的な差異が見あたらないので、補正案による発明も、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおり、補正後の発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について

1.本願発明
平成15年7月29日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
「一つの平面上で中心線からほぼ等しい距離を隔てて対象に配置する二つのメアンダ形状のアンテナ素子と、前記中心線の近傍から二つの前記アンテナ素子それぞれに直線形状で接続するライン導体と、当該ライン導体にほぼ等間隔で対面しグラウンド電位となるグラウンド板と、前記ライン導体の中心点付近でオフセットする分岐点から二つの前記アンテナ素子に給電する給電回路とを備えて2素子のメアンダラインスリーブアンテナを形成することを特徴とする2素子メアンダラインスリーブアンテナ。」

2.引用発明及び周知技術
引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の「3.独立特許要件について」の「(3-2)引用発明及び周知技術」の項で認定したと
おりである。

3.対比・判断
本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の「1.補正後の本願発明」の項で認定した補正後の発明から、「2.新規事項の有無、補正の目的要件について」において記載した限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も「3.独立特許要件について」の項に記載したと同様の理由により、引用例1、2に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-29 
結審通知日 2006-08-30 
審決日 2006-09-13 
出願番号 特願2000-335784(P2000-335784)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 麻生 哲朗鈴木 圭一郎右田 勝則  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 小林 紀和
浜野 友茂
発明の名称 2素子メアンダラインスリーブアンテナ  
代理人 池田 憲保  
代理人 池田 憲保  

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