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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1146179
審判番号 不服2002-16582  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2006-11-02 
事件の表示 平成11年特許願第236540号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年3月13日出願公開、特開2001-62057〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年8月24日の出願であって、平成14年4月24日付の拒絶理由が通知され、平成14年6月25日付で意見および手続補正がなされ、平成14年7月22日付の拒絶査定がなされ、平成14年8月29日に審判請求されるとともに平成14年9月12日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月12日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年9月12日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の目的
平成14年9月12日付の手続補正は、平成14年6月25日付の手続補正により特許請求の範囲の請求項1を減縮するもので、平成14年6月25日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の内容を下位概念化し、発明を特定するための事項の限定に相当するものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合している。
そこで、平成14年9月12日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項に適合するか)について以下に検討する。

(2)補正後の本願発明
平成14年9月12日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載されたとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「図柄始動手段(13)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段(14)と、前記図柄始動手段(13)が遊技球を検出することを条件に1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する図柄表示手段(20)と、該図柄表示手段(20)の変動後の停止図柄が予め定められた特定図柄又は特定図柄の組み合わせの大当たり図柄となったことに関連して前記可変入賞手段(14)を前記第1状態に変換して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段(40)と、前記大当たり図柄が出現する大当たり発生確率を所定低確率と所定高確率とに変動制御可能な確率変動制御手段(41)とを備えた弾球遊技機において、
複数種類の所定高確率値と、その各所定高確率値に対応する所定変動回数とを組み合わせて、所定高確率値と所定変動回数とを1組として複数組のデータを記憶する記憶手段を備え、前記確率変動制御手段(41)は、複数種類の前記大当たり図柄のうちの一部である所定の大当たり図柄となったことに関連して、前記記憶手段に記憶された複数組の記憶データから1つの記憶データ、即ち1組の所定高確率値と所定変動回数とを選択する機能と、この選択された前記所定高確率値と前記所定変動回数とに基づいて、前記図柄表示手段(20)が該所定変動回数変動する間の前記大当たり発生確率を前記所定高確率値に制御する機能と、前記大当たり図柄となることなく前記図柄表示手段(20)が前記所定変動回数変動したときに前記大当たり発生確率を前記所定低確率値に戻す機能とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)

1)引用例について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-165587号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の技術事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【発明の属する技術分野】本発明は、遊技盤面上に打出された球が特定入賞口へ入賞したとき、所定の図柄合わせゲームを実行し、その実行結果に基づいて遊技者に有利な特別価値を発生させる遊技機に関する。」(段落【0001】)

・記載事項2
「本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、特定入賞口への球の入賞を契機として行われる図柄合わせゲームでの勝敗に色彩的要素を採り入れてゲーム内容に変化を持たせることで、遊技者のスリルと興奮をより喚起することのできる遊技機を提供することを目的としている。」(段落【0005】)

・記載事項3
「・・・前記特定入賞口(12)に球が入賞したとき、前記可変表示手段(20)の各図柄表示領域上に予め定めた複数種類の図柄を巡回的に表示した後、任意の図柄を表示した状態で該図柄の巡回表示を停止する・・・」(段落【0006】)

・記載事項4
「球の入賞を検知した際に入賞検知スイッチ13から出力される入賞信号41は、可変表示手段20に表示される数字のスクロール動作を制御する第1の画面遊技制御手段50に入力されている。第1の画面遊技制御手段50は、図示しない乱数発生器を備えており、入賞信号41が入力された際、乱数発生器により無作為抽選を行なう。」(段落【0025】)

・記載事項5
「第1の画面遊技制御手段50の行なう無作為抽選には、高ランク、中上ランク、低ランク、の3つの当たりのランクが設けられている。」(段落【0026】)

・記載事項6
「第1の画面遊技制御手段50は、入賞信号41が入力された時点から可変表示手段20に表示される数字をスクロール動作させて連続的に変更し、数字合わせゲームを実行する。そして、いずれかのランクの当たりが出たときは、「777」など数字の揃う状態でスクロール動作を停止させる。一方、抽選結果が外れのときは特定の数字の揃わない状態でスクロール動作を停止させるように可変表示手段20の表示状態を制御するようになっている。また、数字合わせゲームを実行している間、図柄表示領域の背景色を白色で、各数字を黒色で表示するようになっている。」(段落【0027】)

・記載事項7
「第1の画面遊技制御手段50は、数字合わせゲームの実行が終了したとき、抽選結果が当たりか否か、および当たりのときはそのランクを示す抽選結果信号42を出力する。該信号42は、第2の画面遊技制御手段60および表示色変更手段70へ入力されている。」(段落【0028】)

・記載事項8
「第2の画面遊技制御手段60は、第1の画面遊技制御手段50から入力される抽選結果信号42が、いずれかのランクの当たりを示しているとき、可変表示手段20に表示されている全ての数字を、数字の揃った状態を保持しながら一定期間スクロール動作させた後、元の数字が表示された状態で該スクロール動作を停止させる機能を備えている。」(段落【0029】)

・記載事項9
「たとえば、第1の画面遊技制御手段50によって行われた数字合わせゲームの結果として「777」が可変表示手段20に表示されたとき、第2の画面遊技制御手段60は「777」のように同一の値が3桁揃った状態のまま図柄を巡回的に一定期間変更した後、再び「777」の状態を表示するように制御する。」(段落【0030】)

・記載事項10
「表示色の赤は高ランクの当たりに、青は中ランクの当たりに、黄は低ランクの当たりにそれぞれ対応しており、表示色変更手段70は、表示色を無作為に繰り返し変更した後、最終的に抽選結果信号42の示す当たりのランクに対応した色で表示色の巡回動作を停止するようになっている。」(段落【0033】)

・記載事項11
「特別価値発生手段30は、第1の画面遊技制御手段50で行われる無作為抽選の当選確率を変更する確率変更部31と、可変入賞口32とから構成される。」(段落【0034】)

・記載事項12
「確率変更部31は、今回行われた無作為抽選の抽選結果が当たりのとき、その当たりのランクに応じて、次回以降、特定入賞口12に球が入賞した際に第1の画面遊技制御手段50の行なう無作為抽選において当たりの出る確率を変動させる回路部分である。すなわち、第1の画面遊技制御手段50の行う図柄合わせゲームで、「777」などの数字の揃った状態でスクロール動作を停止させる確率を変更する機能を有する。」(段落【0035】)

・記載事項13
「可変入賞口32は、通常状態では閉じているが、遊技者に有利な特別価値を付与するときに開かれる大口の入賞口としてアタッカー33を備えている。・・・」(段落【0036】)

・記載事項14
「可変入賞口32は、所定の遊技状態になったとき、一定期間(たとえば29秒)開いた後、短時間(2秒ほど)閉じるアタッカー33の開閉動作を繰り返すよう動作する。アタッカー33の開閉されるラウンド回数の初期値は16回に設定されている。」(段落【0037】)

・記載事項15
「第1の画面遊技制御手段50、第2の画面遊技制御手段60、表示色変更手段70等は、遊技機10における各種制御の中枢的機能を果たすCPU(中央処理装置)と、ROM(リード・オンリ・メモリ)と、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)を主要部とする回路によって構成されている。」(段落【0039】)

・記載事項16
「ROMには、CPUの実行するプログラムや表示される数字の図柄など各種の固定的データが記憶されている。またRAMは、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶する作業用のメモリである。」(段落【0040】)

・記載事項17
「すなわち、可変表示手段20に表示されている数字をスクロール動作させて一定期間、巡回的に変更する。そして、抽選結果がいずれかのランクの当たりのときは、図4に示すように「777」の数字の揃った状態(20a)でスクロール動作を停止させる。この際、数字の色は黒で背景色は白である。抽選結果が外れのときは、数字の揃わない状態でスクロール動作を停止する。」(段落【0042】)

・記載事項18
「いずれかのランクの当たりが出たとき(ステップS103;Y)、第1の画面遊技制御手段50はその旨を示す抽選結果信号42を出力し、これを受けて、第2の画面遊技制御手段60は、図4に示すように可変表示手段20に表示されている数字「777」を再び一定期間スクロール動作させる。この際、3桁とも同一の数字が揃った状態(20b)のままでスクロール動作が行われる。」(段落【0043】)

・記載事項19
「一定期間に渡って数字の変更を行った後、第2の画面遊技制御手段60は再び「777」の表示された状態(図4、20c)でスクロール動作を停止させ、これと同時に表示色変更手段70は抽選結果信号42の示す当たりのランクに応じた色の背景色を表示した状態で表示色の変更動作を停止する(ステップS105)。」(段落【0045】)

・記載事項20
「最終的な表示色が赤(高ランク色)のときは(ステップS106;Y)、3回の権利発生を行なう(ステップS107)。すなわち、特定入賞口12に球が入賞した際に行われる無作為抽選で当たりの出る確率が、通常状態よりも高くなる期間を、以後3回に渡って形成する。」(段落【0046】)

・記載事項21
「最終的な表示色が青のときは(ステップS108;Y)、2回の権利を発生させる(ステップS109)。また最終的な表示色が黄のときは(ステップS110;Y)、1回の権利を発生させる(ステップS111)。すなわち、確率の高くなる状態の形成される回数を変更している。」(段落【0047】)

・記載事項22
「このように、権利の発生回数を変更するほか、表示色に応じて次回以降の所定回数、当たりの出る確率の高さを変更するようにしても良い。すなわち、いわゆる確率変動とし、その確率を表示色に応じて変更するようにしても良い。」(段落【0048】)

・記載事項23
「最終的な表示色がいずれの色であっても、数字合わせゲームで当たりが出た場合には、可変入賞口32を開閉動作させて、球の入賞確率の高い状態を形成する(ステップS112)。第1の画面遊技制御手段50の行った数字合わせゲームの抽選結果が外れとなり、「777」の数字の揃う状態が可変表示手段20に表示されなかったときは(ステップS103;N)、可変入賞口32を開閉動作させることなく処理を終了する(エンド)。」(段落【0049】)

・記載事項24
「このように、特定入賞口12に球が入賞したとき、第1段階の画面遊技として通常の数字合わせゲームを行い、これで当たりが出たとき、数字やその背景の表示色を変更する第2段階の画面遊技を行なうので、画面遊技の内容が変化に富み、遊技者のスリルと興奮を十分に喚起することができる。また、表示色を変更する際、スクロール動作を3桁の数字が揃った状態のまま行うので、第1段階の画面遊技と表示色の変更による第2段階の画面遊技との間に継続性が生まれ、第1段階の画面遊技によって喚起された遊技者の期待感や興奮をそのまま第2段階の画面遊技に継続し、さらに増大することができる。」(段落【0050】)

以上の記載事項1〜24及び図1〜3の記載によれば、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
「特定入賞口12と、遊技者に抽選結果が当たりのときの状態と外れのときの状態とに変換可能な可変入賞口32と、特定入賞口12に玉が入賞したとき、複数備えた図柄表示領域の図柄を一定時間に亘ってスクロール(巡回)して停止する可変表示手段20と、可変表示手段20のスクロール(巡回)動作を順に停止させて確定した図柄が予め定められた高ランク、中上ランク及び低ランクのいずれかの当たり図柄になったことに関連して可変入賞口32を抽選結果が当たりのときの状態に変換して遊技者に有利な特別価値状態を発生させる特別価値発生手段30と、当たり図柄を出現させる第1の画面遊技制御手段における抽選の当選確率を変更する確率変動部31とを備えた遊技機において、
当たりのランクが高ランクのときは赤色で777の図柄で停止し、3回の権利発生を行い、中上ランクでは青色で777の図柄で停止し、2回権利発生を行い、低ランクでは黄色で777の図柄で停止して1回権利発生を行う遊技機。」(以下、「引用例に記載された発明」という。)

2)対比
引用例に記載された発明と本願補正発明を対比すると、引用例に記載された発明の「特定入賞口12」は本願補正発明の「図柄始動手段(13)」に相当している。以下同様に、「抽選結果が当たりのときの状態」は「遊技者に有利な第1状態」、「外れのときの状態」は「不利な第2状態」、「可変入賞口32」は「可変入賞手段(14)」、「玉が入賞したとき」は「遊技球を検出することを条件に」、「複数備えた図柄表示領域の図柄」は「1個又は複数個の図柄」、「一定時間に亘ってスクロール(巡回)」は「所定時間変動」、「可変表示手段20」は「図柄表示手段(20)」、「スクロール(巡回)動作を順に停止させて確定した図柄」は「変動後の停止図柄」、「予め定められた高ランク、中上ランク及び低ランクのいずれかの当たり図柄」は「特定図柄又は特定図柄の組み合わせの大当たり図柄」、「特別価値状態」は「特別遊技状態」、「特別遊技価値発生手段30」は「特別遊技状態発生手段(40)」「遊技機」は「弾球遊技機」にそれぞれ相当している。

そして、引用例に記載された発明は、以下の構成を実質的に具備しているといえる。

・実質的具備事項1
引用例の記載事項10の「表示色の赤は高ランクの当たりに、青は中ランクの当たりに、黄は低ランクの当たりにそれぞれ対応しており、・・・」、及び同記載事項12の「確率変更部31は、・・・当たりのとき、その当たりのランクに応じて、・・・当たりの出る確率を変動させる回路部分である。すなわち、・・・確率を変更する機能を有する。」なる記載に基づけば、引用例に記載された発明は、高ランク、中上ランク、低ランクの複数種類の当たりのランクに応じた所定の高確率が設定されていることは明らかであり、かつ、確率とは一つの事象(出来事)の起こり得る確からしさ(可能性)の度合、また、その数値のことである(大辞林参照)から、確率が数値を有していることも明らかなことである。
そうすると、引用例に記載された発明は、「複数種類の所定高確率値」を実質的に具備しているということができる。
なお、中ランク、中上ランクが混同して使用されているので、本審においては、中上ランクを使用する。以下同様。

・実質的具備事項2
上記実質的具備事項1において示したように、引用例に記載された発明において、高ランク、中上ランク、低ランクの複数種類の所定の確率が設定されていること、及び引用例の記載事項11、同記載事項12、同記載事項20及び同記載事項22の記載に基づけば、引用例に記載された発明の確率変更部31は、高ランク、中上ランク及び低ランクから構成される所定の高確率の中から一つの当たりのランクを選択しているのであるから、低ランクの所定の確率から高ランクの所定の確率の間で当たりのランクに対応する当たり図柄が出現する当たりの出る確率を変更しており、かつ、そのような確率変更制御を行う手段を有していると解される。
そして、引用例に記載された発明の「当たり図柄」は、本願補正発明の「大当たり図柄」に相当していることは上記したとおりであるから、「当たりの出る確率」を「大当たり発生確率」と言い換えることができる。
そうすると、引用例に記載された発明は、「大当たり図柄が出現する大当たり発生確率を所定低確率と所定高確率とに変動制御可能な確率変動制御手段」を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項3
引用例の記載事項20の「最終的な表示色が赤(高ランク色)のときは・・・、3回の権利発生を行なう・・・。すなわち、特定入賞口12に球が入賞した際に行われる無作為抽選で当たりの出る確率が、通常状態よりも高くなる期間を、以後3回に渡って形成する。」、及び同記載事項21の「最終的な表示色が青のときは・・・、2回の権利を発生させる・・・。また最終的な表示色が黄のときは・・・、1回の権利を発生させる・・・。すなわち、確率の高くなる状態の形成される回数を変更している。」なる記載に基づけば、引用例に記載された発明は、確率が高くなる状態の形成される回数を、赤3回(高ランク色)、青2回(中上ランク)、黄1回(低ランク)と変更もしくは変動させているのであるから、所定の高確率とその所定の高確率に対応する変動回数とを組み合わせてそれぞれを組となしていることは明らかであるので、引用例に記載された発明は、「所定の高確率とその所定の高確率に対応する所定の変動回数とを組み合わせて1組として複数組のデータ」なる構成を具備しているということができる。
また、同記載事項16の「・・・またRAMは、プログラムを実行する上で一時的に必要になるデータを記憶する作業用のメモリである。」なる記載に基づけば、上記複数組のデータは記憶手段に記憶されていると解される。
そうすると、引用例に記載された発明は、「複数種類の所定高確率値と、その各所定高確率値に対応する所定変動回数とを組み合わせてなる複数組のデータを記憶する記憶手段」を実質的に備えているということができる。

・実質的具備事項4
上記実質的具備事項3において示したように、引用例に記載された発明は、複数種類の所定高確率値と、その各所定高確率値に対応する所定変動回数とを組み合わせてなる複数組のデータを記憶する記憶手段を有し、その記憶手段に記憶されている高ランク、中上ランク、低ランクの3つの当たりのランクからなる複数種類の所定高確率値と、その各所定高確率値に対応する所定変動回数とを組み合わせてなる複数組のデータの中から一つの当たりのランクのデータを選択しているのであるから、引用例に記載された発明は、所定高確率値と所定変動回数とを組み合わせてなる複数組のデータを記憶させた後、記憶手段に記憶された複数組の記憶データの中から所望の1つの組の記憶データを選択する機能を有しているということができる。
そうすると、引用例に記載された発明は、「複数種類の大当たり図柄のうちの一部である所定の大当たり図柄になったことに関連して、1組の所定高確率値と所定変動回数とを選択する確率変動制御手段の機能として、記憶手段に記憶された複数組の記憶データから1つの記憶データ、即ち1組の所定高確率値と所定変動回数とを選択する機能」を実質的に具備しているということができる。

・実質的具備事項5
上記実質的具備事項4において示したように、引用例に記載された発明は、記憶手段に記憶された複数組の記憶データから1つの記憶データ、即ち1組の所定高確率値と所定変動回数とを選択しており、かつ、引用例の記載事項19の「一定期間に渡って数字の変更を行った後、第2の画面遊技制御手段60は再び「777」の表示された状態(図4、20c)でスクロール動作を停止させ、これと同時に表示色変更手段70は・・・当たりのランクに応じた色の背景色を表示した状態で表示色の変更動作を停止する・・・」及び同記載事項23の「最終的な表示色がいずれの色であっても、数字合わせゲームで当たりが出た場合には、可変入賞口32を開閉動作させて、球の入賞確率の高い状態を形成する・・・」なる記載に基づけば、選択された1組の所定高確率値と所定変動回数に基づいて、可変表示手段が所定変動回数変動している間に、当たりの発生確率を所定の高確率値に制御していることは明らかなことである。
そうすると、引用例に記載された発明は、「この選択された所定高確率値と所定変動回数とに基づいて、図柄表示手段が所定変動回数変動する間の大当たり発生確率を所定高確率値に制御する機能」を実質的に具備しているということができる。

そこで、本願補正発明と引用1に記載された発明を対比すると、
「図柄始動手段と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段と、図柄始動手段が遊技球を検出することを条件に1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する図柄表示手段と、可変入賞手段を第1状態に変換して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段と、大当たり図柄が出現する大当たり発生確率を所定低確率と所定高確率とに変動制御可能な確率変動制御手段とを備えた弾球遊技機において、
複数種類の所定高確率値と、その各所定高確率値に対応する所定変動回数とを組み合わせて、所定高確率値と所定変動回数とを1組として複数組のデータを記憶する記憶手段を備え、
確率変動制御手段は、複数種類の大当たり図柄のうちの一部である所定の大当たり図柄になったことに関連して、記憶手段に記憶された複数組の記憶データから1つの記憶データ、即ち1組の所定高確率値と所定変動回数とを選択する機能と、
この選択された所定高確率値と所定変動回数とに基づいて、図柄表示手段が所定変動回数変動する間の大当たり発生確率を所定高確率値に制御する機能、
を備えたことを特徴とする弾球遊技機。」の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点>
本願補正発明が大当たり図柄となることなく図柄表示手段が所定変動回数変動したときに大当たり発生確率を所定低確率値に戻す機能を有しているのに対して、引用例に記載された発明が大当たり図柄となることなく図柄表示手段が所定変動回数変動したときに大当たり発生確率を所定低確率値に戻す機能を有しているか否か不明である点。

3)判断
上記相違点について検討する。
特開平10-99493号公報の段落【0022】の「・・・また高確率状態になった後に変動図柄表示手段29の停止図柄が高確率用以外の図柄となった時に低確率に戻すようになっている。」、特開平8-229206号公報の段落【0053】及び特開平8-196701号公報の段落【0058】の「・・・そして、高確率動作モードは、特定図柄で大当りした後、予め定められた所定の結果態様として、例えば、所定回数大当りするまで継続するか、もしくは、大当りが発生しない場合には、特別図柄の可変表示装置10が所定回数作動するまで継続し、その後に低確率動作モードに戻る。」、特開平6-304326号公報の段落【0037】の「・・・当たり発生確率が高確率になれば、・・・その高確率状態でゲームを続行し、図柄表示装置13が設定回数Nだけ変動した時に、高確率から低確率へと切り換える。」なる記載に基づけば、パチンコ機技術分野において、大当たり図柄になる場合と大当たり図柄にならない場合のいずれの場合においても、図柄表示手段が所定回数連続して変動したときに、大当たり発生確率を所定の低確率である通常状態に戻す機能を設けることは周知な技術にすぎないことが示されている。
そうすると、引用例に記載された発明と上記周知技術は、ともにパチンコ遊技機の図柄表示を、確率変動制御手段により高確率や低確率に変動制御する点で共通しており、両者間における技術の相互利用に格別の困難性はないから、引用例に記載された発明の確率変動制御手段に、上記周知技術である大当たり図柄になるもしくは大当たり図柄にならない場合のいずれにおいても、図柄表示手段が所定回数変動したときに、大当たり発生確率を所定の低確率である通常状態に戻す機能を採用するに際して、大当たり図柄にならない場合を選択して、大当たり図柄とならない場合に図柄表示手段が所定変動回数変動したときに大当たり発生確率を所定低確率値に戻すような機能とすること、すなわち相違点1に係る構成とすることは、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が必要に応じて容易に選択できる程度の設計事項にすぎない。

以上のとおり、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4)作用効果
本願補正発明によって奏する効果も、引用例に記載された発明及び周知技術から普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められない。

5)むすび
上記のとおりであるので、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項により特許を受けることができない。

(3)補正却下の判断
上記(2)のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、平成14年9月12日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成14年9月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成14年6月25日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1において特定される以下のものである。
「【請求項1】図柄始動手段(13)と、遊技者に有利な第1状態と不利な第2状態とに変換可能な可変入賞手段(14)と、前記図柄始動手段(13)が遊技球を検出することを条件に1個又は複数個の図柄が所定時間変動して停止する図柄表示手段(20)と、該図柄表示手段(20)の変動後の停止図柄が予め定められた特定図柄又は特定図柄の組み合わせの大当たり図柄となったことに関連して前記可変入賞手段(14)を前記第1状態に変換して遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段(40)と、前記大当たり図柄が出現する大当たり発生確率を所定低確率と所定高確率とに変動制御可能な確率変動制御手段(41)とを備えた弾球遊技機において、
前記確率変動制御手段(41)は、複数種類の前記大当たり図柄のうちの一部である所定の大当たり図柄となったことに関連して、複数の相異なる前記所定高確率値と該各所定高確率値に対応して設定された複数の所定変動回数とから、1つの前記所定高確率値とこれに対応する前記所定変動回数とを選択する機能と、この選択された前記所定高確率値と前記所定変動回数とに基づいて、前記図柄表示手段(20)が該所定変動回数変動する間の前記大当たり発生確率を前記所定高確率値に制御する機能と、前記大当たり図柄となることなく前記図柄表示手段(20)が前記所定変動回数変動したときに前記大当たり発生確率を前記所定低確率値に戻す機能とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

1)引用例について
引用例の記載及び周知技術およびそれらの記載事項は上記2.(2)1)に記載したとおりである。

2)対比・判断
本願発明は、上記2.(2)で検討した本願補正発明の「記憶手段」「記憶手段に記憶された複数組の記憶データから1つの記憶データ、即ち1組の所定高確率値と所定変動回数とを選択する機能」の構成要件を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-28 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-09-20 
出願番号 特願平11-236540
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 辻野 安人
塩崎 進
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  
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