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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H03G |
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管理番号 | 1146234 |
審判番号 | 不服2004-10066 |
総通号数 | 84 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-06-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-13 |
確定日 | 2006-11-02 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第318306号「増幅回路」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 6月20日出願公開,特開平 9-162661〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は平成7年12月6日の出願であって,その請求項1〜3に係る発明は,平成18年8月11日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,特許請求の範囲の請求項1〜3の各請求項に記載されたとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。 「【請求項1】演算増幅器(221)と入力抵抗(222)と帰還抵抗(223)がICとして構成されてパッケージ(50)内に収納されており, 前記入力抵抗および前記帰還抵抗は,同一種類の抵抗により構成された入力抵抗群(222a〜222e)と帰還抵抗群(223a〜222e)をそれぞれ有して構成され,前記入力抵抗群の各接続点および前記帰還抵抗群の各接続点に接続された複数の調整用パッド(a〜d,A〜D)が前記ICに一列に配置形成されており, 前記パッケージ内において前記一列に配置された複数の調整用パッドと対向するように前記複数の調整用パッドの配列方向に沿って延設され,かつ基準電圧に設定された共通パッド(30)が設けられ, この共通パッドと前記入力抵抗群の調整用パッド(a〜d),および前記共通パッドと前記帰還抵抗群の調整用パッド(A〜D)とが,それぞれワイヤ(40)により選択的にボンディングされて,前記入力抵抗および前記帰還抵抗の抵抗値が設定されていることを特徴とする増幅回路。」 2.引用文献 これに対して,当審における拒絶の理由に引用された,本願出願前公知の特開平4-35169号公報(以下,「引用文献」という。)には,以下の事項が記載されている。 (1)「第2図は,この発明が実施されるイメージセンサの部分概略ブロック図である。・・・中略・・・。 オペアンプ6は,シリコンICチップ構成であり,その内部構成において,この実施例の最も特徴とするところである。オペアンプ6の内部回路構成を第1図に示している。第1図において,P1,P2,・・・,P7及びPi ,Poはパッドであり,パッドP1,P2,P3及びP4は,感度調整用の抵抗の選択用パッド,パッドP5,P6,P7は,それぞれGND,VSS,VDD用のパッドであり,パッドPiは入力用,パッドPoは出力用である。 入カパッドPiは抵抗R3を介して増幅器11の(+)入力端子に接続され,また増幅器11の(+)入力端子とアース間に抵抗R4が接続されている。また,増幅器11の(-)入力端子とパッドP1間に抵抗R1aが,同様に増幅器11の(-)入力端子と各パッドP2,P3,P4間に抵抗R1b,R1c,Rldがそれぞれ接続されている。これらR1a,R1b,R1c,R1dは,それぞれ抵抗値の異なるものが使用されている。増幅器11の(-)入力端子と出力端子間に抵抗R2が接続され,さらに増幅器11の出力端子がパッドPoに接続されている。 オペアンプ6のパッドP1,・・・,P4は,第2図に示すように,図示しないセンサ基板にパターン化された,選択回路用のパッドP11,Pl2,P13,Pl4にそれぞれワイボン12,・・・,12で接続され,さらにこれらのパッドPl1,・・・,P14は,1つまたはいくつかが選択されて同じくセンサ基板に形成されるアースパターンP15にワイボン13で接続されている。いずれのパッドP11,・・・,P14を選択接続するかは,LED光源の光量レベルに対応して,オペアンプの増幅器の感度(利得)がどの程度,要請されるかにより決定する。 今,オペアンプ6のパッドP1のレベルをe1,バッドPiのレベルをe2とすると,出カパッドPoのレベルeoは, e0={(R1+R2)/(R3+R4)}・(R4/R1)・e2-(R2/R1)・e1 であり,抵抗R1を変化させることにより,出力eoを調整することができる。抵抗Rla,Rlb,R1c,Rldは,それぞれ異なる抵抗値を持つので,いずれかが単独にアースパッドP15にワイボン13により接続されるほかに,いくつかの組み合わせによる並列接続により種々の抵抗値を選択接続することができ,段階的に出力レベル調整できる。」(第2頁右上欄第11行〜第3頁左上欄第18行。なお,「パッドP4,P5,P6は,それぞれGND,Vss,Vnn用のパッド」が「パッドP5,P6,P7は,それぞれGND,Vss,Vnn用のパッド」の誤記であることは明らかであるので書き換えた。「抵抗P1a」についても,「抵抗R1a」の誤記のため書き換えた。また,途中の数式については,数行に跨るため,書き換えてあるが,数式としては同一である。), (2)「(へ)発明の効果 この発明によれば,アナログ出力部の増幅器を,外部より選択可能な複数の感度調整用の抵抗を内蔵したICチップで構成するとともに,このICチツプ外部に前記感度調整用の抵抗を選択接続する抵抗選択回路を備えている」(第3頁右欄第4〜9行), と記載されている。 上記摘記事項(1)において,「抵抗(R1a,R1b,R1c,R1d及びR2)」が抵抗の群であることは明らかであり,また,第2図から,「選択用パッド(P1,・・・,P4)が前記IC」に一列に配置形成されいること及び「アースパッド(15)」が前記複数の選択用パッドと対向するように前記複数の選択用パッドの配列方向に沿って延設されていること」は明らかであり,ワイボンにより接続することはボンディングすることであるから, 引用文献には, 「増幅器(11)と抵抗(R3,R4)と抵抗(R1a,R1b,R1c,R1d及びR2)がICとして構成されており, 前記抵抗(R1a,R1b,R1c,R1d及びR2)は,抵抗群を有して構成され,前記抵抗群の各接続点に接続された複数の選択用パッド(P1,・・・,P4)が前記ICに一列に配置形成されており, 前記一列に配置された複数の選択用パッドと対向するように前記複数の選択用パッドの配列方向に沿って延設されたアースパッド(P15)が設けられ, このアースパッドと前記帰還抵抗群の選択用パッドとが,選択回路用のパッドP11,Pl2,P13,Pl4を介して,それぞれワイボンリード(12,13)により選択的にボンディングされて,前記抵抗の抵抗値が設定されているオペアンプ(6)。」との発明(以下,「引用発明」という。)が開示されている。 3.対比 そこで,本願発明と引用発明を対比検討する。 引用発明中の「増幅器(11)」は演算増幅器であり,同「抵抗(R3,R4)」は「増幅器(11)」の動作・作用からして入力抵抗であり,同「抵抗(R1a,R1b,R1c,R1d及びR2)」は「増幅器(11)」の動作・作用からして帰還抵抗であり,同「アースパッド(P15)」はその名称からして,当然,接地電位に設定されており,しかも各「選択用パッド(P1,・・・,P4)」に対して共通に使用されるものであるから,接地電圧に設定された共通パッドということができ,同「ワイボンリード(12,13)」は当然ワイヤであり,同「オペアンプ」は増幅回路である。 そして,接地電位は基準電圧の一種であり,同「選択用パッド(P1,・・・,P4)」は抵抗値を設定するものであるから,本願発明の「調整用パッド」に相当するものである。したがって,両者は, 「演算増幅器と入力抵抗と帰還抵抗がICとして構成されており, 前記帰還抵抗は,帰還抵抗群を有して構成され,前記帰還抵抗群の各接続点に接続された複数の調整用パッドが前記ICに一列に配置形成されており, 前記一列に配置された複数の調整用パッドと対向するように前記複数の調整用パッドの配列方向に沿って延設され,かつ基準電圧に設定された共通パッドが設けられ, 前記共通パッドと前記帰還抵抗群の調整用パッドとが,それぞれワイヤにより選択的にボンディングされて,前記帰還抵抗の抵抗値が設定されている増幅回路。」の点で一致し,以下の点で相違する。 ・相違点1 本願発明は,「IC」及び「共通パッド」がパッケージ内に収納されているが,引用発明にはパッケージがなく,また,「共通パッド」についても,パッケージ内に設けられているか,不明である。 ・相違点2 本願発明では,「入力抵抗」についても,「帰還抵抗」と同様の,「抵抗群」「調整用パッド」「共通パッド」「ボンディング」に関した構成が採用されているのに対し,引用発明では,「入力抵抗」は固定された「R3,R4」からなる構成である。 ・相違点3 本願発明では,入力抵抗も帰還抵抗も「同一種類の抵抗により構成され」ているのに対し,引用発明では,どのような種類の抵抗か不明である。 4.当審の判断 そこで,上記相違点について検討する。 ・相違点1について 引用文献には,ICをパッケージ内に収納する旨の記載はないが,通常,ICはパッケージ内に収納して用いられており,ほとんど自明の事項であるから,「IC」をパッケージ内に収納する点は当然の技術的事項でしかなく,また,ワイヤボンディング前にICを容器に収納することも技術的にありえないことである。したがって,「IC」をパッケージ内に収納することは単なる技術的付加事項の域を出ず,また,「共通パッド」もパッケージ内に設けることも単なる設計的事項の域を出ない。 ・相違点2について 原審の拒絶理由通知で既に引用された特開昭64-61109号公報の第3図からも明らかなように,増幅回路の利得制御において,入力抵抗の抵抗値を調整することは周知といえるものであるから,引用発明中の「入力抵抗」においても,帰還抵抗と同様の構成を採用する程度のことに格別な創意工夫を認めることはできない。 ・相違点3について 引用発明では,IC内に抵抗が内蔵されているが,このような抵抗は通常は拡散抵抗であり,同一種類のものといえる。また,入力抵抗も帰還抵抗も,あえて異なる種類の抵抗で構成することに技術的な意味はない。したがって,入力抵抗も帰還抵抗も「同一種類の抵抗により構成され」るようにすることは,単なる設計的事項にすぎない。 そして,上記相違点1〜3に係る変更によって格別な作用・効果を奏するに至ったともいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,引用文献記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-01 |
結審通知日 | 2006-09-05 |
審決日 | 2006-09-19 |
出願番号 | 特願平7-318306 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畑中 博幸 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
小林 紀和 中木 努 |
発明の名称 | 増幅回路 |
代理人 | 加藤 大登 |
代理人 | 伊藤 高順 |
代理人 | 碓氷 裕彦 |