• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C05G
管理番号 1146373
審判番号 不服2005-19423  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-04-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-06 
確定日 2006-11-02 
事件の表示 特願2001-305395「着色剤配合肥料」拒絶査定不服審判事件〔平成15年4月18日出願公開、特開2003-112990〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成13年10月1日の出願であって、平成17年8月30日付けで拒絶査定がなされ、平成17年10月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1〜3に係る発明は、平成16年3月19日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、下記のとおりである。
「【請求項1】着色剤と植物の生育段階に応じて決定された配合比率の肥料成分とを含む着色剤配合肥料であって、当該肥料を希釈して得た肥料溶液が、当該着色剤に由来する色調を提示し、かつ当該生育段階に応じた肥料溶液の希釈濃度を指示する、ことを特徴とする着色剤配合肥料。」

3 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由において刊行物Aとして引用された特開昭62-21782号公報(以下、「引用例」という。)には、「識別体を附帯した透水性袋に着色剤と肥料塩類を包容せしめてなる園芸用肥料」(特許請求の範囲)に係る発明が記載され、「本発明は、・・・、より詳しくは肥料塩の希釈濃度を識別する為の色表示体を透水性袋に附帯せしめ該透水性袋中に肥料塩と着色剤とを包容せしめたものを肥料散布容器へ入れ、これに水を入れることにより溶出着色する液の濃度を前記識別体の色表示と一致せしめることにより、施用濃度の肥料液を得ることを目的とするものである。」(摘記a:2頁左上欄14行〜右上欄3行)とあり、「着色剤を施肥作業での肥料液調製時に目的肥料液濃度となる段階で後述する識別体の色表示と同色となるように予め混合量を決め、肥料塩と混合する。」(摘記b:2頁右下欄8〜11行)と記載されている。さらに「識別体の色表示は、肥料塩の溶解希釈倍率を一定として表示した単一色の色表示であってもよいが、使用目的によって肥料塩濃度を変更できるように、各濃度に応じて、変化する液の色別を、段階毎に色濃度表示した識別体であってもよい。」(摘記c:3頁左上欄4〜9行)とあり、実施例には、肥料塩混合粉末(N:P:K=10:20:30)1gと赤色色剤0.015gをパーライトに混合し、赤色の濃度が3リットルの水に溶解した時の色濃度と同色になるようにした色表示体を附帯した園芸用肥料の例が示されている(摘記d:3頁左下欄〜右下欄)。

4 対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明を対比する。
本願明細書の段落【0019】に、「使用者(農業従事者などの消費者)が本発明の着色剤配合肥料を特定の濃度に希釈した後、その希釈率が正しいか否か、すなわち使用濃度に希釈されているか否かを目視にておおまかに確認することができる。さらに、その色調の濃淡を確認することにより、植物の実際の生育具合にあわせて施肥される肥料の濃度をおおまかに調節することも可能である。」と説明されているところからみて、本願発明は、肥料を水で希釈した時の肥料溶液の色濃度を直接目視するものであり、一方、引用例に記載された発明では、上記の摘記a、b、cにあるように、色濃度を表示した識別体を用いて希釈された肥料溶液の色を該識別体の色と一致させてあらかじめ決められた肥料濃度の肥料溶液とするものであるから、共に、着色剤配合肥料に係る発明において、「肥料を希釈して得た肥料溶液が、当該着色剤に由来する色調を提示し、かつ肥料溶液の希釈濃度を指示する」点で同じである。
さらに、本願発明の「植物の生育段階に応じて決定された配合比率の肥料成分」も、引用例の実施例で使用されるN:P:K=10:20:30の肥料塩混合粉末も、共に「特定の配合比率の肥料成分」ということができるから、両者は、「着色剤と特定の配合比率の肥料成分とを含む着色剤配合肥料であって、当該肥料を希釈して得た肥料溶液が、当該着色剤に由来する色調を提示し、かつ肥料溶液の希釈濃度を指示することを特徴とする着色剤配合肥料」という点で一致し、下記の点で相違している。
[相違点]
イ 特定の配合比率の肥料成分が、本願発明は、植物の生育段階に応じて決定された配合比率の肥料成分であるのに対して、引用例に記載された発明では、単に肥料塩とあるだけで、「植物の生育段階に応じて決定された配合比率の肥料成分」とされていない点。
ロ 肥料溶液の色調が指示する希釈濃度が、本願発明は、生育段階に応じた肥料溶液の希釈濃度であるのに対して、引用例に記載された発明では、「生育段階に応じた」とされていない点。
ハ 本願発明は、単に肥料とあるのに対して、引用例に記載の発明は肥料を少量ずつ識別体の附帯した透水性の袋に包容させたものである点。

この相違点について検討する。
[イの点について]
植物の生育段階に応じて必要となる肥料成分は異なり、それに対応して成分の配合比率が異なる配合肥料は、当業界において本願出願前に周知のものである。そして、引用例に記載された発明においても、摘記dの実施例をみれば、N:P:K=10:20:30の肥料塩混合粉末が使用されていて、K成分が多いこの配合肥料は、一つの「植物の生育段階に応じて決定された配合比率の肥料成分」ということができ、この点に差異はない。
[ロの点について]
本願明細書の段落【0019】には、上記のとおり、「色調の濃淡を確認することにより、植物の実際の生育具合にあわせて施肥される肥料の濃度をおおまかに調節することも可能である」と記載されているので、肥料の希釈濃度の調節が生育段階に応じた肥料溶液を実現する手段の一つであると理解できる。
一方、引用例記載の発明における「使用目的によって肥料塩濃度を変更できるように、各濃度に応じて、変化する液の色別を、段階毎に色濃度表示した識別体であってもよい」(摘記c)ということは、色調の濃淡を確認することにより、肥料の濃度を調節することと同じことであり、かつ、植物の種類や実際の生育具合に合わせて施肥される肥料の濃度を調節することは本願出願前より極めて普通に行われていることであるから、該「使用目的によって」の意味するところは、植物の種類や生育状態に応じてということを意味するものと解することができ、引用例における、段階毎に色濃度表示した識別体を用いて使用目的によって肥料塩濃度を変更できるようにすることは、生育段階に応じた肥料溶液の希釈濃度にすることを包含するものであり、その結果、肥料溶液の色調が生育段階に応じた肥料溶液の希釈濃度を指示することになる。したがって、この点においても相違はない。
[ハの点について]
配合肥料という点からみれば、包装体及び識別体の有無には関係がなく、包装体及び識別体についての要件を取り除くことは当業者にとって容易なことである。

なお、請求人は、本願の発明に係る着色剤配合肥料は、消費者(使用者)に販売される時点で、植物の生育段階に応じて決定された配合比率の肥料成分が、多様な着色剤の色調によってすぐに明確に指示されることとなり、消費者が目的の肥料を容易に識別できるようになり、また、希釈液の濃度が好適な濃度範囲に到達すると着色剤に由来する色調が提示され、植物の生育段階に応じた肥料溶液の好適な希釈濃度が指示される、つまり、着色剤という単一の構成要素によって、着色配合肥料の差別化と着色配合肥料の希釈率の認識とを容易かつ確実ならしめるという双方の作用効果を相乗的に奏するものであると主張している。しかし、請求人の主張は請求項3に係る発明についてのものであり、本願発明(すなわち、請求項1に係る発明)に関する主張ではないので、本願発明の進歩性に関して採用すべきところはない。

5 結論
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできないので、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-30 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-20 
出願番号 特願2001-305395(P2001-305395)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C05G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 木村 敏康
岩瀬 眞紀子
発明の名称 着色剤配合肥料  
代理人 古川 安航  
代理人 角田 嘉宏  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ