• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1146374
審判番号 不服2005-19841  
総通号数 84 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-13 
確定日 2006-11-02 
事件の表示 平成 7年特許願第 78672号「偏光フィルムの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年12月12日出願公開、特開平 7-325218〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う、出願日が平成7年4月4日(優先日 平成6年4月8日、特願平6-70818号)の出願である特願平7-78672号であって、平成17年9月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成17年10月13日付けで審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年10月13日付けの手続補正を却下する。
[理由] 独立特許要件違反
(1)補正後の本願発明
平成17年10月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液に浸漬してヨウ素を吸着配向させ、次いでホウ酸とヨウ化カリウムを含有する水溶液に浸漬処理した後、緊張状態下に、温度40〜90℃且つ湿度50〜95%RHの雰囲気中で1分〜24時間加湿処理することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1の「ホウ酸含有水溶液」を「ホウ酸とヨウ化カリウムを含有する水溶液」とし、水溶液の成分に限定を付加したものである。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭58-85405号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。

[記載事項1]
「2.特許請求の範囲
一軸延伸親水性高分子フィルムに、沃素及び/又は二色性染料を含有する溶液を全面又は部分的に塗布した後、加湿処理することを特徴とする偏光フィルムの製法。
3.発明の詳細な説明
本発明は良好な染色濃度と偏光特性を有する偏光フィルムの製法に関するものである。」
(第1ページ左下欄第4〜11行目)

[記載事項2]
「ホウ酸類をフィルムに含有させる方法としては、ホウ酸類を溶解させた水溶液中に延伸前のフィルムを概して0.5〜5分間浸漬する方法、或いは予め親水性高分子フィルムを作る段階でホウ酸類を添加する方法などがある。 このような一軸延伸親水性フィルム(ホウ酸類含有フィルムを含む)には、沃素及び/又は二色性染料を含有する溶液を緊張下で片面又は両面の全面に塗布し、次いで加湿処理(条件は50〜85℃×85〜98%R.H×1〜15分間である)することによって、偏光特性に優れた沃素及び/又は二色性染料系偏光フィルムが得られる。」
(第1頁右下欄第20行目〜第2頁左上欄第11行目)

[記載事項3]
「また、加湿処理をするに際して、前述の如く緊張下で行うのは、処理時に一軸延伸親水性高分子フィルムが収縮するのを防止するために行うものであるが、・・・・(中略)処理しても良い。
(第2ページ右上欄第3〜9行目)

[記載事項4]
「実施例
オルトホウ酸3%を含む水溶液(液温30℃)に、厚さ75μmのポリビニルアルコール系フィルムを1分間浸漬後、4倍に延伸し、70℃で10分間乾燥する。
次にダイレクト・スカイブルー6Bを0.2%含む水溶液を、緊張下にある前記一軸延伸ポリビニルアルコールフィルムに塗布して風乾し、さらに60℃×95%R.Hの条件下に5分間放置して加湿処理を行い、二色性染料系偏光フィルムを得る。
このフィルムの透過率は40%で、偏光度は93%であった。」
(第2頁左下欄第13行目〜右下欄第4行目)

[記載事項1]及び[記載事項4]より、「沃素及び/又は二色性染料を含有する溶液」は、水溶液であることがわかる。また、一軸延伸親水性(高分子)フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムを含むことがわかる。
[記載事項2]より、延伸前のフィルムに、ホウ酸類を添加させた水溶液中で浸漬処理を行っていることがわかる。
[記載事項3]より、加湿処理は緊張状態下に行われることがわかる。

したがって上記記載事項及び図面の記載を参照すれば、引用例1には、
「ホウ酸類を添加した水溶液中で浸漬処理した後、ポリビニルアルコール系フィルムに沃素及び/又は二色性染料を含有する水溶液を塗布した後、加湿処理(条件は50〜85℃×85〜98%R.H×1〜15分間である)することを特徴とする偏光フィルムの製法。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

また、同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-215603号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の点が記載されている。

[記載事項5]
「【請求項1】 ポリビニルアルコール系樹脂フイルムを製膜し、ヨウ素染色後ホウ素化合物で処理して偏光フイルムを製造するに当たり、該処理工程中でまず4.5倍以下に一軸延伸し、続いて2倍以下に一軸延伸することを特徴とする偏光性の優れた偏光フイルムの製造法。」

[記載事項6]
「【0003】現在、知られている代表的な偏光フイルムの一つにポリビニルアルコール系フイルムにヨウ素を染色させたものと染料を染色させたものがあり、これはポリビニルアルコールの水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久化処理を行うことによって製造されている。」

[記載事項7]
「【0009】上記の原反フイルムを染色し、ホウ素化合物処理中に2段階一軸延伸をして偏光フイルムを製造する。フイルムへのヨード染色つまり偏光素子の吸着は、フイルムに偏光素子を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常はヨウ素-ヨウ化カリの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/l、ヨウ化カリの濃度は10〜50g/l、ヨウ素/ヨウ化カリの重量比は20〜100が適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない
【0010】接触手段としては浸漬が好ましいが、塗布、噴霧等の任意の手段も適用出来る。染色の終了したフイルムは次いでホウ素化合物によって処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。ホウ素化合物は水溶液又は水-有機溶媒混合液の形で濃度0.5〜2モル/l程度で用いられ、液中には少量のヨウ化カリを共存させるのが実用上望ましい。処理法は浸漬法が望ましいが勿論塗布法、噴霧法も実施可能である。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「沃素及び/又は二色性染料を含有する水溶液」と本願補正発明の「ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液」とは、共に「ヨウ素を含む水溶液」という点で一致している。
また、引用発明の「水溶液を塗布」と本願補正発明の「水溶液に浸漬」とは、共に「水溶液に接触」させている点で一致している。
引用発明の「ホウ酸類を添加した水溶液中で浸漬処理」と本願補正発明の「ホウ酸とヨウ化カリウムを含有する水溶液に浸漬処理」とは、共に「ホウ酸処理」という点で一致している。
そして、[記載事項1]には、従来の偏光フィルムの製造方法として、沃素及び/又は二色性染料を含む水浴中に浸漬してフィルムを膨潤させ、沃素及び/又は二色性染料を吸着配向させて製造するものが記載されており、フィルムを水分によって膨潤させ、沃素及び/又は二色性染料を吸着配向させていることがわかる。したがって、引用発明に記載の一軸延伸親水性フィルムも、ヨウ素が吸着配向させられていると言える。

したがって、両者は、
「ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素を含む水溶液に接触させてヨウ素を吸着配向させ、緊張状態下に加湿処理する偏光フィルムの製造方法であって、ヨウ素の吸着配向処理の前もしくは後にホウ酸処理を行うことを特徴とする偏光フィルムの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
ヨウ素を含む水溶液が、本願補正発明は、「ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液」であり、(ヨウ素を含む水溶液に)接触させる方法が「浸漬」であるのに対して、引用発明は「ヨウ素を含む水溶液」を「塗布」させている点。

[相違点2]
ホウ酸処理が、本願補正発明は「ホウ酸とヨウ化カリウムを含有する水溶液」によるものであって、ヨウ素の吸着配向処理の後に行われているのに対して、引用発明は、「ホウ酸類を添加した水溶液」によるものであって、ヨウ素の吸着配向処理の前に行われている点。

[相違点3]
加湿処理が、本願補正発明は、「温度40〜90℃且つ湿度50〜95%RHの雰囲気中で1分〜24時間」行われるのに対して、引用発明は、「50〜85℃×85〜98%R.H×1〜15分間」である点。

(4)当審の判断
上記[相違点1]〜[相違点3]について検討する。

[相違点1]について
引用例2には、ビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着配向させた偏光フィルムにおいて、ヨウ素を吸着配向させる際に、ヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液を用いること、([記載事項7]の「通常はヨウ素-ヨウ化カリ(ウム)の水溶液が用いられ・・・」との記載参照。なお、これは周知技術である。)、及びヨウ素を含む水溶液に接触させる方法として、浸漬による方法、及び塗布による方法が記載され、これらが任意に選択し得るもののであることが記載されている([記載事項7]参照)。
したがって、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

[相違点2]について
引用例2には、ホウ酸処理がヨウ化カリウムを添加させたものが望ましいことが記載されており([記載事項7]参照。なお、周知技術である)、引用発明のホウ酸類含有水溶液として、ホウ酸とヨウ化カリウムを含有する水溶液を用いることは、格別なものでない。
また、ホウ酸処理は耐久性及び偏光性能の向上のための周知の技術事項であって、ヨウ素の吸着配向処理の前に行うものとするか、後に行うものとするかについても当業者が適宜選択し得る事項である(例えば、特開平2-59336号公報、第3頁右上欄第18行目〜左下欄第4行目の「上記のポリビニルアルコール又はその誘導体の基材フィルムに、ヨウ素及び/又は二色性染料を吸着配向せしめるには、ホウ酸類水溶液に浸漬後、3.5〜10倍に一軸に延伸して吸着配向させるか、或は、3.5〜10倍に延伸後に前記水溶液に浸漬して吸着配向させ乾燥するなど、従来の偏光フィルムの製法に準じて製造可能である。」との記載、特開平5-100115号公報、第4頁左欄第24〜29行目の「また、基材フィルムへの二色性物質の吸着をより強固にすることを目的にホウ酸やホウ砂のようなホウ素系化合物を添加しても良く、ホウ素系化合物の添加は染色や延伸と同時に実施しても良く、染色や延伸の前後またはその間のどの時点で実施しても良い。」との記載参照。)。
したがって、相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。

[相違点3]について
加湿処理は、本願補正発明においても、引用発明においても、共に光学性能の向上のために行われているものである。また、本願補正発明の加湿処理において採用される温度の範囲、湿度の範囲は、引用発明において採用されるそれの、大部分と重なるものである上に、「温度40〜90℃且つ湿度50〜95%RHの雰囲気中で1分〜24時間」との数値限定に、格別な臨界的意義は認められない。
さらに言えば、本件平成14年1月24日付け手続補正書の【0022】【表1】に記載されている光学特性の効果は、【0019】実施例1、【0020】実施例2によってもたらされることが理解されるが、本願補正発明は、これら実施例1、及び2による偏光フィルムの製造方法の一部の構成のみが限定されているものであって、当該記載から上記効果が奏されるかどうかは不明であり、加湿処理における上記数値限定について技術的意義は認められない。
したがって、相違点3に係る本願補正発明の発明特定事項は、格別なものではない。

そして、本願補正発明の効果は、引用例1、2及び周知技術から当業者が容易に予測し得る範囲内のものである。

以上のことより、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するもので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年10月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年8月17日付手続補正書の請求項1に記載された以下のとおりのものである。
「ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素とヨウ化カリウムの水溶液に浸漬してヨウ素を吸着配向させ、次いでホウ酸含有水溶液に浸漬処理した後、緊張状態下に、温度40〜90℃且つ湿度50〜95%RHの雰囲気中で1分〜24時間加湿処理することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、2の記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「2.(1)補正後の本願発明」で述べた、「ヨウ化カリウムを含有する」との限定を省いたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-04 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-21 
出願番号 特願平7-78672
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉野 公夫  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 辻 徹二
森口 良子
発明の名称 偏光フィルムの製造方法  
代理人 中山 亨  
代理人 榎本 雅之  
代理人 久保山 隆  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ