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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1146995
審判番号 不服2003-9208  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-22 
確定日 2006-11-06 
事件の表示 平成 6年特許願第 46340号「業務用ビデオゲーム装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月29日出願公開、特開平 7-227479〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年2月21日の出願であって、平成15年1月22日付で拒絶理由通知がなされ、同年3月27日付で手続補正がなされ、同年4月15日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月23日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年6月23日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月23日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「ゲーム画面を表示するディスプレイ手段と、
プレーヤがゲーム操作信号を入力するプレーヤ操作手段と、
ゲームオーバ時にプレーヤに、ゲーム終了かゲーム継続かを選択させる継続ゲーム選択手段と、
前記ゲーム操作信号および所定のゲームプログラムに基づき、最終ステージが用意されたゲームを行うゲーム演算を行い前記ディスプレイ手段にゲーム画面を表示させ、ゲームが所定ゲームオーバ状況になった際にゲーム継続が選択されると新たなゲーム料金の支払いを条件に引き続いてゲームを継続して行なわせるとともに、最終ステージでのゲームに到達し当該最終ステージでのゲームがゲームエンディングに到達すると強制的にゲームを終了させる処理を行なうよう形成されたゲーム演算手段と、
を含み、
前記ゲーム演算手段は、
前記ゲームエンディング時にゲーム状況が所定条件を満足すると、前記ディスプレイ手段にエクストラモードのゲーム画面を表示させ、プレーヤにエクストラモードでのゲームを行なわせるように処理を実行するとともに、
前記所定条件を、前記最終ステージにおいて所定成績を残すという条件として設定することを特徴とするゲームエンディング機能付き業務用ビデオゲーム装置。」

と補正された。
上記補正は、平成15年3月27日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ゲーム演算を行い」を「最終ステージが用意されたゲームを行うゲーム演算を行い」と限定し、「ゲーム」を「最終ステージでのゲームに到達し当該最終ステージでのゲーム」と限定し、「前記ゲーム演算手段は、前記ゲームエンディング時にゲーム状況が所定条件を満足すると、前記ディスプレイ手段にエクストラモードのゲーム画面を表示させ、プレーヤにゲームを行なわせること」を「前記ゲーム演算手段は、前記ゲームエンディング時にゲーム状況が所定条件を満足すると、前記ディスプレイ手段にエクストラモードのゲーム画面を表示させ、プレーヤにエクストラモードでのゲームを行なわせるように処理を実行するとともに、前記所定条件を、前記最終ステージにおいて所定成績を残すという条件として設定すること」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)本件出願前に日本国内における周知のゲーム機について、周知のゲーム機を例示するための刊行物特開昭61-193686号公報には、図と共に、
「(1)ディスプレイ装置と;
ゲーム料金・・・を徴収するための徴収装置と;
前記徴収装置によってゲーム料金・・・を徴収したときから、該料金・・・に相当するゲーム時間を計数するタイマー装置と;
段階的に進行するゲームプログラムを記憶した第1の記憶装置と;
ゲーム実行において利用者がキー又はレバーを操作して操作信号を入力するための手入力装置と;
前記タイマー装置の出力によって駆動され、前記手入力装置からの操作信号を受けて前記第1の記憶装置に記憶されたゲームプログラムに従ってゲームプログラムを実行させ、前記ディスプレイ装置にゲーム内容を段階的に表示させる制御装置と;
前記タイマー装置によってゲーム終了となったときの前記ゲームプログラムがいずれの段階かを判別する判別装置と;
前記判別装置によって判別されたゲームプログラム段階を・・・記憶装置に書込む書込装置と;
・・・記憶装置に書込まれたゲームプログラム段階を読出す読出装置と;
前記読出装置によって・・・記憶装置からゲームプログラム段階が読出されたとき、該ゲームプログラム段階からゲームプログラムを開始させるように前記制御装置に開始段階を指示する開始段階指示装置とを備えた業務用テレビゲーム機。」(特許請求の範囲、請求項1)、
「本発明は業務用テレビゲーム機に関する。
近年、ゲームセンターなどに設置されコインの投入などによって行なう業務用テレビゲーム機が著しく普及し、そのゲーム内容も極めて多くの種類のものが開発されている。
しかして、ゲーム内容が容易であると、利用者にすぐ倦きられてしまうため、昨今、新規なゲーム用ソフトウェアが開発されても、そのライフサイクルが極めて短くなってきている。このため、やや複雑だったり困難だったりする内容のゲーム用ソフトウェアが、テレビゲーム機用として要望されている。
しかしながら、従来のテレビゲーム機は、一回のコイン投入によるゲーム終了後、次にコイン投入してゲームを行なう場合、毎回、ゲームはスタート点から再開される。このため、複雑なゲームは、何度試みても初期段階ですぐにゲーム終了となってしまい、そのゲームの初心者には難かしすぎて、なかなかなじめず、ごく一部の熟練者にしか利用しきれないものとなる。
例えば第1図に示すように、ゲームスタートからレベル1、レベル2と経て、レベル30が最高目標であるような複雑なゲームの場合に、ゲームは常にレベル1からスタートするので、コイン1枚分のゲーム時間の制約から、利用者が初心者であると、例えばレベル4でゲーム終了となってしまうと、次回試みても同様な初期段階でゲームが終ってしまい、なかなか高レベルまで到達できないため、ゲーム自体が興味をひかないものとなってしまう。」(第2頁右欄上段第5行?同頁左欄下段第14行)、
「第2図・・・おいて1はディスプレイ装置、2はゲーム料金・・・を徴収するための徴収装置、3は徴収装置2によってゲーム料金・・・を徴収したときから、該料金・・・に相当するゲーム時間を計数するタイマーである。
4は段階的に進行するゲームプログラムを記憶した第1の記憶装置、5はゲーム実行において利用者がキー又はレバーを操作して操作信号を入力するための手入力装置である。
6はタイマー3の出力によって駆動され、手入力装置5からの操作信号を受けて前記第1の記憶装置4に記憶されたゲームプログラムに従ってゲームプログラムを実行させ、前記ディスプレイ装置1にゲーム内容を段階的に表示させ・・・る制御装置である。
7はタイマー3によってゲーム終了となった時の前記ゲームプログラムがいずれの段階かを判別する判別装置、8は判別装置7によって判別されたゲームプログラム段階を・・・記憶装置(例えば磁気カード)に書込む書込装置である。
9は・・・記憶装置(磁気カード)に書込まれたゲームプログラム段階を読出す読出装置、10は読出装置9によって・・・記憶装置(磁気カード)からゲームプログラム段階が読出されたとき、該ゲームプログラム段階からゲームプログラムを開始させるように制御装置6に開始段階を指示する開始段階指示装置である。」(第2頁右欄下段第20行?第3頁右欄上段第9行)、
「業務用テレビゲーム機の動作を第4図に示す・・・。
電源装置12の投入によって各部が電源が供給され、テレビゲーム機を起動する(21)。硬貨が投入されると、・・・所定金額を徴収する(22)。次に・・・記憶装置(例えば磁気カード)を用いて途中の段階からゲームを開始するか否かを、判定する(23)。このための選択ボタンを手入力装置5に設けておけばよい。
ここでゲームが例えば第5図に示すようにレベル1からスタートし最終レベルが30であるような内容であるとする。」(第3頁左欄下段第2行?14行)、
「レベル1?29のいずれかが決められた時点から、制御装置6は、タイマー装置3の出力に基づき、第1の記憶装置4に記憶されたゲームプログラムをレベル設定されたレベルからスタートさせ、手入力装置5からの操作信号に従って実行させ(28)、ディスプレイ装置1に表示させ・・・る。
ゲームが終了すると、判別装置7は終了時点でのゲームプログラムの段階(レベル)を判別する(29)。
次にカードにこのレベルを書込むか否かを、判定する(31)。このための選択ボタンを手入力装置5に設けておけばよい。
カードを用いない場合は、このままゲームは終了し、後にゲームを再び始めるには、レベル1からスタートする。
カードに書込む場合は、・・・、書込装置8によってレベルを書込む。従って、例えば第5図に示すように終了レベルが4の場合、このレベル4がカードに書込まれるから、次にゲームを始める際に、このカードに書込まれた終了レベルを読出させると、前回の終了レベル4からゲームを進めることができる。従って複雑なゲームでも初心者が継続的にゲームをすることができるから、興味を持続させることができる。」(第3頁右欄下段第4行?第4頁左欄上段第10行)、

との記載が認められ、
また、上記摘記事項で、制御装置がタイマー3の出力によって駆動され、手入力装置5からの操作信号を受けて第1の記憶装置4に記憶されたゲームプログラムに従ってゲームプログラムを実行させ、ディスプレイ装置1にゲーム内容を段階的に表示させるということから、ディスプレイ装置1は、「ゲーム内容を表示する」ものと認められ、
また、上記摘記事項および第4図より、ゲーム実行において利用者がキー又はレバーを操作すること、記憶装置を用いて途中の段階からゲームを開始するか否かを、判定するための選択ボタンを手入力装置5に設けておけばよいこと、ゲームが終了すると、判別装置7は終了時点でのゲームプログラムの段階を判別することなどから「ゲームが終了すると利用者に、終了時点で途中の段階からゲームを開始するか否かを選択させる選択ボタン」が設けられていると認められ、
また、上記摘記事項および第4・5図等より、硬貨が投入されると、所定金額を徴収すること、徴収装置2によってゲーム料金を徴収したときから、料金に相当するゲーム時間を計数するタイマーが設けられていること、手入力装置5からの操作信号を受けて第1の記憶装置4に記憶されたゲームプログラムに従ってゲームプログラムを実行させ、ディスプレイ装置1にゲーム内容を段階的に表示させる制御装置であること、ゲームが例えばレベル1からスタートし最終レベルが30であるような内容であること、レベル1?29のいずれかが決められた時点から、制御装置6は、タイマー装置3の出力に基づき、第1の記憶装置4に記憶されたゲームプログラムをレベル設定されたレベルからスタートさせ、手入力装置5からの操作信号に従って実行させ、ディスプレイ装置1に表示させること、ゲームが終了すると、判別装置7は終了時点でのゲームプログラムの段階(レベル)を判別し、次にカードにこのレベルを書込むか否かを、判定すること、カードを用いない場合は、このままゲームは終了し、後にゲームを再び始めるには、レベル1からスタートすること、カードに書込む場合は、書込装置8によってレベルを書込み、例えば終了レベルが4の場合、このレベル4がカードに書込まれるから、次にゲームを始める際に、このカードに書込まれた終了レベルを読出させると、前回の終了レベル4からゲームを進めることができること等から、制御装置6は、「操作信号および第1の記憶装置4に記憶された段階的に進行するゲームプログラムに基づき、最終レベルが30であるゲームを行うゲーム演算を行いディスプレイ装置1にゲーム内容を表示させ、ゲームが例えば終了レベルが4の場合にこの段階からゲームを開始することが選択されると所定金額を徴収し前回の終了レベル4からゲームを進めるとともに、最終レベルが30でのゲームに到達する処理を行なうよう形成され」ていると認められる。
したがって、以下のゲーム機は本件出願前に日本国内における周知のゲーム機である。

「ゲーム内容を表示するディスプレイ装置1と、
利用者がキー又はレバーを操作して操作信号を入力する手入力装置5と、
ゲームが終了すると利用者に、終了時点で途中の段階からゲームを開始するか否かを選択させる選択ボタンと、
前記操作信号および第1の記憶装置4に記憶された段階的に進行するゲームプログラムに基づき、最終レベルが30であるゲームを行うゲーム演算を行い前記ディスプレイ装置1にゲーム内容を表示させ、ゲームが例えば終了レベルが4の場合にこの段階からゲームを開始することが選択されると所定金額を徴収し前回の終了レベル4からゲームを進めるとともに、最終レベルが30でのゲームに到達する処理を行なうよう形成された制御装置6と、
を含む、業務用テレビゲーム機。(以下「周知例発明」という。)」

(3)また、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に公然知られ公然実施されている株式会社SNK製ゲーム装置「餓狼伝説SPECIAL」(参考文献:「ALL ABOUT SNK 対戦格闘ゲーム 1991-2000、株式会社スタジオベントスタッフ、2000年12月25日、初版、第20頁(餓狼伝説スペシャル、発売日、93年9月16日)」)(以下、引用例という。)には、
「餓狼伝説2をベースに、ゲームスピードの向上や連続技の導入など、数多くの調整がほどこされたパワーアップ版。使用できるキャラクターも大幅に増加し、スペシャルの名にふさわしい作品に仕上がっている。隠しキャラクターとして登場する、リョウ・サカザキとの夢の対決も大きな話題を呼んだ。」(第20頁上段下側)、
「●キャラクターの追加
初代「餓狼伝説」から、ダック、タン、ギースの3人が参戦。・・・「龍虎の拳」シリーズのリョウ・サカザキが、CPU専用キャラクターとして登場する。
●前作からの変更点
a連続技
・・・。
bライン移動攻撃
パンチ(AorC)とキック(BorD)で技の形態が、弱(AorB)と強(CorD)・・・。
c通常投げ
・・・。
●対CPU戦
対CPU戦開始時に、10人のキャラクターのなかからひとり目 の対戦相手を選択。2?10人目の順番も決まる。なお、ボーナス ステージは削除された。
■対CPU戦の流れ(同キャラ対戦:あり)
VS1?10人目→・・・三闘士と対戦・・・→VS14人目(ギース)→VS15人目(クラウザー)→エンディング←VSリョウ、条件を満たせば乱入」(第20頁中段左側、GAME SYSTEM)
「●リョウ・サカザキが乱入
対CPU戦の全試合を2勝0敗で勝ち進むと(コンティニュー&メモリーカードは使用可)、エンディングの途中でリョウ・サカザキが乱入してくる。」(第20頁中段右側SECRET FEATUREの上段)、
「▲乱入条件を満たしているとエンディングの表彰台のシーンでこの画面が挿入される。」(第20頁中段右側SECRET FEATUREの中段)、

との記載が認められ、
また、上記摘記事項から、餓狼伝説2をベースに、ゲームスピードの向上や連続技の導入など、数多くの調整がほどこされたパワーアップ版であり、連続技、ライン移動攻撃、通常投げなどを実行するためには「ゲーム演算手段を備えている」ものと認められ、
また、上記摘記事項から、VS1?10人目→三闘士と対戦→VS14人目(ギース)→VS15人目(クラウザー)→エンディングという流れで、最初の対戦相手の1人目となる第1ステージから15人目のクラウザーとの対戦が最終ステージであること、対CPU戦の全試合を2勝0敗で勝ち進むと、表彰台のシーンが現れ、エンディングの途中でリョウ・サカザキが乱入してくること、乱入条件を満たしているとエンディングの表彰台のシーンでこの画面が挿入されること等より、ゲーム演算手段は、「対CPU戦のエンディング時に対CPU戦の全ステージでの試合を終了すると、ディスプレイ手段にリョウ・サカザキとの夢の対決のゲーム画面を表示させ、プレーヤにリョウ・サカザキとの夢の対決のゲームを行なわせるように処理を実行するとともに、前記全ステージでの試合の終了を、クラウザーとの対戦の最終ステージを含む前記全ステージでの試合において2勝0敗で勝ち進むという条件として設定する」ものと認められ、
また、上記摘記事項でエンディングの途中でリョウ・サカザキが乱入して、リョウ・サカザキとの夢の対決ができるということなどから、このようなゲームシステムを持つゲーム装置は、「ゲームエンディング機能付き対戦格闘ゲーム装置」であると認められる。これらの記載によれば、引用例には、

「ゲーム演算手段を備え、ゲーム演算手段は、
対CPU戦のエンディング時に対CPU戦の全ステージでの試合を終了すると、ディスプレイ手段にリョウ・サカザキとの夢の対決のゲーム画面を表示させ、プレーヤにリョウ・サカザキとの夢の対決でのゲームを行なわせるように処理を実行するとともに、
前記全ステージでの試合の終了を、クラウザーとの対戦の最終ステージを含む前記全ステージでの試合において全ステージでの試合を2勝0敗で勝ち進むという条件として設定するゲームエンディング機能付き対戦格闘ゲーム装置。」
との技術的事項(以下「引用例技術」という。)が開示されていると認めることができる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と周知例発明とを比較すると、周知例発明の「ゲーム内容を表示する」、「ディスプレイ装置1」、「利用者がキー又はレバーを操作して操作信号を入力する」、「手入力装置5」、「ゲームが終了すると」、「終了時点で途中の段階からゲームを開始するか否か」、「選択ボタン」、「第1の記憶装置4に記憶された段階的に進行するゲームプログラム」、「最終レベルが30であるゲーム」、「例えば終了レベルが4の場合に」、「この段階からゲームを開始すること」、「所定金額を徴収し」、「前回の終了レベル4からゲームを進めるとともに」および「制御装置6」は、本願補正発明の「ゲーム画面を表示する」、「ディスプレイ手段」、「プレーヤがゲーム操作信号を入力する」、「プレーヤ操作手段」、「ゲームオーバ時に」、「ゲーム終了かゲーム継続か」、「継続ゲーム選択手段」、「所定のゲームプログラム」、「最終ステージが用意されたゲーム」、「所定ゲームオーバ状況になった際に」、「ゲーム継続」、「新たなゲーム料金の支払いを条件に」、「引き続いてゲームを継続して行なわせるとともに」および「ゲーム演算手段」にそれぞれ相当し、両者は、
「ゲーム画面を表示するディスプレイ手段と、
プレーヤがゲーム操作信号を入力するプレーヤ操作手段と、
ゲームオーバ時にプレーヤに、ゲーム終了かゲーム継続かを選択させる継続ゲーム選択手段と、
前記ゲーム操作信号および所定のゲームプログラムに基づき、最終ステージが用意されたゲームを行うゲーム演算を行い前記ディスプレイ手段にゲーム画面を表示させ、ゲームが所定ゲームオーバ状況になった際にゲーム継続が選択されると新たなゲーム料金の支払いを条件に引き続いてゲームを継続して行なわせるとともに、最終ステージでのゲームに到達する処理を行なうよう形成されたゲーム演算手段と、
を含む、業務用ビデオゲーム装置。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:ゲーム演算手段が最終ステージでのゲームに到達した後の処理について、本願補正発明では、「最終ステージでのゲームがゲームエンディングに到達すると強制的にゲームを終了させる」のに対し、周知例発明では、最高目標である最終レベルが30に到達した後にどのような処理がされるのか明らかでない点。

相違点2:ゲーム演算手段のその他の処理と処理条件において、本願補正発明では、「ゲームエンディング時にゲーム状況が所定条件を満足すると、ディスプレイ手段にエクストラモードのゲーム画面を表示させ、プレーヤにエクストラモードでのゲームを行なわせるように処理を実行するとともに、前記所定条件を、最終ステージにおいて所定成績を残すという条件として設定するゲームエンディング機能付き」であるのに対し、周知例発明では、制御装置6にそのような構成が記載されておらず、業務用テレビゲーム機としてゲームエンディング機能付きとなっていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

相違点1について、
一般的に、テレビゲーム機において、全部で7つあるステージの全部を終了した場合に、エンデイング画面を表示しゲームオーバーとなるようにすることは周知であり(一例として、特開平4-269991号公報(段落【0011】、【0019】等)参照。)、周知例発明の最終レベルが30に到達した段階に、上記周知の事項を適用して、本願補正発明のように、最終ステージでのゲームがゲームエンディングに到達すると強制的にゲームを終了させる構成とすることは、格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

相違点2について、
引用例技術には、ゲーム演算手段を備え、ゲーム演算手段は、対CPU戦のエンディング時に対CPU戦の全ステージでの試合を終了すると、ディスプレイ手段にリョウ・サカザキとの夢の対決のゲーム画面を表示させ、プレーヤにリョウ・サカザキとの夢の対決でのゲームを行なわせるように処理を実行するとともに、前記全ステージでの試合の終了を、クラウザーとの対戦の最終ステージを含む前記全ステージでの試合において全ステージでの試合を2勝0敗で勝ち進むという条件として設定するゲームエンディング機能付き対戦格闘ゲーム装置であることが記載されており、本願補正発明と引用例技術とを対比すると、引用例技術の「対CPU戦のエンディング時に」、「対CPU戦の全ステージでの試合を終了すると」、「ディスプレイ手段にリョウ・サカザキとの夢の対決のゲーム画面を表示させ」、「プレーヤにリョウ・サカザキとの夢の対決でのゲームを行なわせるように処理を実行する」および「前記全ステージでの試合の終了を、クラウザーとの対戦の最終ステージを含む前記全ステージでの試合において全ステージでの試合を2勝0敗で勝ち進むという条件」は、本願補正発明の「ゲームエンディング時に」、「ゲーム状況が所定条件を満足すると」、「ディスプレイ手段にエクストラモードのゲーム画面を表示させ」、「プレーヤにエクストラモードでのゲームを行なわせるように処理を実行する」および「前記所定条件を、最終ステージにおいて所定成績を残すという条件」にそれぞれ対応する。そこで検討するに、本願補正発明における所定成績を残す条件が「最終ステージ」であるのに対して、引用例技術は、2勝0敗で勝つ条件が「クラウザーとの対戦の最終ステージだけでなく全ステージでの試合」である点で相違し、その他の対応関係はそれぞれが技術的に相当するものであり、一致すると認められる。そしてさらに、前記相違する点を検討すると、引用例技術における前記「条件」は、各ステージにおける2勝0敗とのステージ成績の達成、かつ、当該成績チェック対象ステージが全ステージとの条件であること、さらに、当該条件はゲーム進行上必然のものではなくゲームの難易度等のゲームの特性に応じて適宜設定変更可能であり、成績チェック対象ステージの数を増減により設定変更可能にすること等は当業者にとって明らかな事項であることを勘案すると、当該「条件」を本願補正発明のように、最終ステージのみの成績とすることは、ゲームの特性に応じて設定する成績チェック対象ステージ数を1としたことによる格別の作用効果は認められず、しかも、最終ステージに限定したことによる格別の作用効果も認められない。
したがって、周知例発明に引用例技術を適用すること、および、適用に際して設定する条件をゲーム特性に応じて「最終ステージ」の成績に設計変更することは当業者が容易になし得ることである。
してみると、本願補正発明は、周知例発明および周知技術に引用例技術を単に寄せ集めたに過ぎず、当業者が格別の発明力を要することなく必要に応じて容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明が奏する効果は、周知例発明、引用例技術および周知技術から当業者が予測し得るものであって格別のものとは認められない。
したがって、本願補正発明は、周知例発明、引用例技術および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年6月23日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、15年3月27日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「ゲーム画面を表示するディスプレイ手段と、
プレーヤがゲーム操作信号を入力するプレーヤ操作手段と、
ゲームオーバ時にプレーヤに、ゲーム終了かゲーム継続かを選択させる継続ゲーム選択手段と、
前記ゲーム操作信号および所定のゲームプログラムに基づき、ゲーム演算を行い前記ディスプレイ手段にゲーム画面を表示させ、ゲームが所定ゲームオーバ状況になった際にゲーム継続が選択されると新たなゲーム料金の支払いを条件に引き続いてゲームを継続して行なわせるよう形成されるとともに、ゲームがゲームエンディングに到達すると強制的にゲームを終了させるよう形成されたゲーム演算手段と、
を含み、
前記ゲーム演算手段は、
前記ゲームエンディング時にゲーム状況が所定条件を満足すると、前記ディスプレイ手段にエクストラモードのゲーム画面を表示させ、プレーヤにゲームを行なわせることを特徴とするゲームエンディング機能付き業務用ビデオゲーム装置。」

(1)引用例および周知例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、周知例発明、引用例技術および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、周知例発明、引用例技術および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、周知例発明、引用例技術および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-29 
結審通知日 2006-08-30 
審決日 2006-09-19 
出願番号 特願平6-46340
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 辻野 安人
林 晴男
発明の名称 業務用ビデオゲーム装置  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 布施 行夫  
代理人 井上 一  

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