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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C12Q
管理番号 1147058
審判番号 不服2002-23315  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-04 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 特願2000-606777「システインプロテアーゼ阻害剤のスクリーニング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月28日国際公開、WO00/56918〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、2000年3月17日を国際出願日(パリ条約による優先権主張1999年3月19日、日本)とする国際出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年5月11日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「生体内に存在する多価金属イオン存在下で、被検化合物をシステインプロテアーゼに作用させて、システインプロテアーゼ活性の測定をすることを特徴とする、システインプロテアーゼ阻害剤をスクリーニングする方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由で刊行物1として引用された本願優先日前に頒布された刊行物である国際公開第98/22619号パンフレット(以下、「引用例」という。なお、当審の拒絶理由時に番号を国際公開第84/22619号と誤って通知したが、本件請求人は意見書において国際公開第98/22619号と読み替えて対応し、当審でもその後に通知した審尋書中で番号を訂正した。)には、
(i)「本発明の好ましい方法においては、セリンプロテアーゼインヒビターの濃度に少なくとも等しい量の亜鉛がアッセイ媒体に存在する。一般的に、インヒビターを含む調製物又は媒体に含まれる亜鉛の量は、少なくとも0.1μM、典型的には少なくとも1μM、より好ましくは少なくとも10μM、及びより好ましくは少なくとも100μMである。典型的には、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%及びより好ましくは実質的にすべてのインヒビターが亜鉛によりキレート化されるであろう、使用される亜鉛濃度が提供されるであろう。生理学的システムにおいては、存在する亜鉛の量は通常、亜鉛錯体をもたらすのに十分であろう。」(第11頁第17?26行)
(ii)「二価の金属カチオンとの会合において、又は二価の金属カチオンとのプレ-会合された二元錯体として、本発明の実施において有用な及びその実施により同定されるセリンプロテアーゼインヒビターは、セリンプロテアーゼの活性部位残基と二価の金属カチオン三元錯体を形成し、そしてこれにより、その活性を阻害する。本発明の実施において有用であり、そしてその実施により同定されるセリンプロテアーゼインヒビターは、(a)標的セリンプロテアーゼ上のP1部位を占有する化学的官能基、及び(b)酵素の触媒部位のHis57及びSer195の側鎖に関与する四元錯体中に二価のカチオンを捕獲する構造的に隣接する二配座キレート化剤を含んで成る。単一の組成物におけるP1結合及び二配座キレート化特性の組合せは、二価のカチオン様亜鉛の生理学的レベルでセリンプロテアーゼ阻害のために相乗効果を提供する。たとえば、典型的なP1認識要素をそれぞれ有する、ベンズアミジン(化合物3)及びベンジルアミン(化合物5)は、セリンプロテアーゼトリプシンの弱いインヒビターである。同様に、典型的な亜鉛金属イオン封鎖要素を含んで成る2-ピリド-2-イルベンズイミダゾール(化合物9)は、トリプシンの阻害を引き起こさない。しかしながら、典型的なP1結合及び亜鉛金属イオン封鎖要素の構造的組合せを含んで成る5-アミジノ-2-ピリド-2-イル-ベンズイミダゾール(化合物10)は、トリプシンの可能性あるインヒビターである。従って、本発明の実施において有用であり、そしてその実施により同定されるセリンプロテアーゼインヒビターは、阻害を示すKi(除去される亜鉛)≫Ki(添加される亜鉛)の値が亜鉛の存在下で高められる場合、上記構造的必要条件を満たす。従って、本発明の方法及び組成物は、セリンプロテアーゼのインビトロ及びインビボ阻害のために、セリンプロテアーゼインヒビターのスクリーニング及び同定のために、及びタンパク質加水分解からペプチド及びタンパク質を保護するために有用である。
インヒビター-亜鉛-セリンプロテアーゼ錯体のX線結晶学は、最新の生物理学的方法論及び市販の装置を用いて得られる。そのような結晶学データは、セリンプロテアーゼインヒビターがセリンプロテアーゼ阻害の亜鉛強化のために必要な構造的必要条件を有するかどうかを最終的に決定するために使用され得る。そのようなX線結晶学決定の例は、下記に示される。」(第17頁第1行?第31行)
(iii)「例1.インビトロ酵素阻害アッセイ 下記のものは、化合物のセリンプロテアーゼ阻害活性を測定するためのアッセイを表わす。
パート(a)-亜鉛除去 アッセイ媒体(pH8.0に調節された緩衝溶液中、10%のDMSO;0.05%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Tween-20);及び1mMのEDTAを含む)中、ヒトトリプシン(3.4nM)及び試験化合物(種々の濃度)を、室温で1時間インキュベートし、そして次に、基質N-トシル-gly-pro-lys-pNA(Sigma #T6140、水中、0.5mM)を添加し、アッセイ混合物の最終濃度を0.125mMにした。基質の加水分解を、405nmで5分間、分光光度的に追跡した。見掛けの阻害定数(Ki)を、標準の数学的な態様を用いて、酵素進行曲線から計算した,。
パート(b)-亜鉛による変更 亜鉛の存在下での阻害の測定のためのアッセイプロトコールを、パート(a)のために使用される条件と実質的に同等のアッセイ条件下で実施する。但し、アッセイ媒体はEDTAを含まず、そして100mMの原液の形での150μMの塩化亜鉛により変性する。
バート(c)-周囲の亜鉛 周囲レベルの亜鉛での阻害の測定のためのアッセイプロトコールを、パート(a)に使用される条件と実質的に同等のアッセイ条件下で実施する。但し、アッセイ媒体はEDTAを含まない。
例1におけるように進行して、式Iの化合物を、活性化されたプロテインC、チマーゼ、キモトリプシン、第Xa因子、第VIIa因子、血漿カリクレイン、組織カリクレイン、β-ラクタマーゼ、プラスミン、トロンビン、トリプシン、トリプターゼ及びウロキナーゼに対するそれらの阻害活性について試験した。式Iの化合物を、個々のプロテアーゼのために同定し、ここでパート(b)により測定される場合の化合物の阻害活性は、パート(a)により測定される場合の化合物の阻害活性よりも少なくとも10倍、典型的には102?103倍高かった。」(第21頁第10行?第22頁第7行)と記載され、また、式Iの化合物はビス(5-アミジノベンズイミダゾール-2-イル)メタンであることが第16頁第5行に記載されている。
3.対比・判断
そこで、本願発明と引用例の発明を比較すると、亜鉛イオンは生体内に存在する多価金属イオンであるので、両者は、生体内に存在する多価金属イオン存在下で、被検化合物をプロテアーゼに作用させて、プロテアーゼ活性の測定をすることを特徴とする、プロテアーゼ阻害剤をスクリ-ニングする方法である点で一致しているが、阻害の対象であるプロテアーゼが、本願発明ではシステインプロテアーゼであるのに対して、引用例ではセリンプロテアーゼである点で相違する。
しかしながら、システインプロテアーゼにおいても、セリンプロテアーゼと同様に、P1ポケット及び触媒活性His、Cys群から構成される触媒作用部位の構造が存在し、両者の活性部位の類似性は、本件優先日前周知の事項(必要であればNature(1998)Vol.391,p.608-612参照。)であったのであるから、システインプロテアーゼにおいても、セリンプロテアーゼと同様に、生体内においてその活性を阻害する化合物が、生体内に存在する亜鉛イオンとともにキレート化することにより強力な阻害活性を有することがあり得ることは十分想定されることであり、そのような化合物をスクリーニングにより得ようとすること、具体的には、亜鉛イオンの存在下、被検化合物をシステインプロテアーゼに作用させて、システインプロテアーゼ活性の測定をしてシステインプロテアーゼ阻害剤をスクリ-ニングすることは、引用例と上記周知の事項から当業者であれば容易に想到し得たことである。
これにつき、本件請求人は、システインプロテアーゼの阻害剤のスクリーニングにおいては、セリンプロテアーゼの場合と異なり、システイン残基保護の目的でチオール化合物を存在させる必要があり、チオール化合物と結合しやすい亜鉛イオンを存在させることは当業者といえども想到し得ない旨主張しているが、亜鉛イオンがチオール化合物あるいは阻害剤化合物あるいはシステインプロテアーゼの、はたしてどれと結合しやすいかは実際に確かめなければわからないことも当業者における技術常識であるから、このことがシステインプロテアーゼの阻害剤のスクリーニングを亜鉛イオンの存在下に行ってみることを阻害するほどの要因となるとはいえない。
そして、本願発明は、当該スクリーニング系におけるチオール化合物における影響を除くために何らかの工夫をしたというものでもない。
なるほど、本願明細書においては、システインプロテアーゼとしてカスパーゼ3を用いた場合には、亜鉛の存在下においてのみ強力な阻害剤として作用する化合物が実際にスクリーニングにより得られたことが記載されているが、本願発明はカスパーゼ3だけでなく、システインプロテアーゼ全般を対象としているので、上記カスパーゼ3に対する単独の成功例をもって、本願発明においてシステインプロテアーゼを対象として、亜鉛イオン存在下で阻害剤のスクリーニングを行う方法を採用したことにより、引用例と上記周知の事項から予測できない程の格別な効果が奏せられたということもできない。
したがって、本願発明は引用例及び上記周知の事項から当業者が容易に発明し得たものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.特許法第36条違反について
本願請求項5には「請求項第4項記載のスクリーニング方法により見いだされたカスパーゼ3阻害剤を含有する医薬組成物」と記載され、請求項5に記載の医薬組成物は、請求項4、請求項4が引用する請求項3、及び請求項3が引用する請求項1に記載されたスクリーニング方法、すなわち「生体内に存在する2価の亜鉛イオン存在下で、被検化合物をカスパーゼ3に作用させて、カスパーゼ3活性の測定をすることを特徴とするカスパーゼ3阻害剤をスクリーニングする方法であって、カスパーゼ3阻害剤が、2価の亜鉛イオンが存在しないときに比べ、存在するときカスパーゼ3の阻害活性を増強するものであって、2価の亜鉛イオンが存在するとき実質的にカスパーゼ3を阻害するカスパーゼ3阻害剤である」というスクリーニング方法で得られるあらゆるカスパーゼ3阻害剤を含有する医薬組成物を包含するものである。
ここで、当該スクリーニング方法で実際に得られたカスパーゼ3阻害剤として、本願明細書には実施例3の化合物A?Dが開示されているが、化合物A、Bは引用例で式Iの化合物として記載されたビス(5-アミジノベンズイミダゾール-2-イル)メタンの類似化合物であり、化合物C、Dも特定のスピロ骨格を共有する基本骨格を同じくする化合物であることからみて、当該スクリーニング方法で実際に得られたカスパーゼ3阻害剤として、本願明細書には化学構造として2群の化合物が記載されてるだけである。また、化合物A?DのうちC、Dについては、亜鉛イオンの非存在下では存在下に比べ102のオーダーで阻害活性が低下することが記載され、非存在下ではカスパーゼ3の阻害剤とはいえるか不明であり、また公知の他のカスパーゼ3阻害剤も亜鉛イオン存在下で阻害活性が増強されないことが記載されているので、亜鉛イオンの非存在下で阻害活性を有する公知のカスパーゼ3阻害剤が請求項5のカスパーゼ3阻害剤の候補となるということでもなく、本願明細書にはどのような化学構造の化合物であれば当該阻害剤の候補となるかという化学構造等の手がかりが記載されていない。
このように、本願請求項5に記載の医薬組成物の有効成分である化合物である阻害剤として、化合物A?D以外の化合物を当業者が想定できない以上、本願請求項5に記載の発明の実施にあたっては、無数の候補化合物を製造し、スクリーニングして確認するという当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤を求めるものであり、また、該阻害剤にはどのような化合物が包含されるか不明であり、その化合物の範囲を特定できないので、本願請求項5に記載の発明が明確であるとはいえない。
したがって、本願発明の詳細な説明は、本願請求項5に記載の発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、本願請求項5には、特許を受けようとする発明が明確に記載されているものとは認められないので、本願は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
なお、本件請求人は平成18年8月8日付けで提出した回答書中で、審査基準の例を挙げて本願請求項5に記載の発明が明確である旨主張している。しかしながら、請求人が指摘する事例2-2は、H2受容体を阻害することが抗アレルギー効果をもたらすことを見出したことを評価しようとするものであり、しかもH2ブロッカーとして種々のものが公知であったことを前提とするものである。これに対して、いわゆる「スクリーニング方法によって得られた物」に該当する本願請求項5に記載の「カスパーゼ3阻害剤」については、事例2-2のように化合物の特定の性質と用途の関係を見出したものではなく、しかも、上述のごとく、本願明細書で具体的に開示された化合物はわずか4つであり、本願出願時に公知であったカスパーゼ3阻害剤のみがスクリーニング候補化合物となるものでもなく、これ以外にどのような化合物が包含されるかという具体的な化合物を想定できないというものであって事例2-2とは全く状況が異なるものであり、本件請求人の上記主張は採用できない。

5.付記
本件請求人は、当審からの平成18年6月6日付け審尋書に対して、平成18年8月8日付けで回答書を提出し、本願請求項1?3を削除する補正案を示している。
しかしながら 、本願請求項5は依然として上記補正案の請求項2として存在するので、上記4.で述べた理由により特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本願は特許を受けることができないから、このような手続補正の機会を与える必要は見い出せない。
6.むすび
以上のとおりであるから、請求項1及び請求項5以外の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-08-30 
結審通知日 2006-09-05 
審決日 2006-09-19 
出願番号 特願2000-606777(P2000-606777)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C12Q)
P 1 8・ 534- WZ (C12Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新見 浩一  
特許庁審判長 種村 慈樹
特許庁審判官 冨永 みどり
鈴木 恵理子
発明の名称 システインプロテアーゼ阻害剤のスクリーニング方法  
代理人 矢野 恵美子  
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