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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1147061
審判番号 不服2002-24958  
総通号数 85 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-01-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-26 
確定日 2006-11-09 
事件の表示 特願2000-182447「サーバ装置、通信販売システム及び通信販売方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月11日出願公開、特開2002- 7888〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯
本願は,平成12年6月19日の出願であって,平成14年6月11日付けで拒絶理由が通知され,これに対し同年8月8日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが,同年11月20日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年12月26日に当該拒絶査定を不服とする本件審判請求がなされるとともに,平成15年1月15日付けで手続補正がなされたものである。(以下,平成15年1月15日付け手続補正を「本件補正」ということがある。)

2.平成15年1月15日付け手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成15年1月15日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(2-1)本件補正の内容
本件補正は,明細書の特許請求の範囲の記載を変更するとともに発明の詳細な説明における関連する記載を変更したものである。請求人は,特許請求の範囲に対して行った補正について,審判請求書で「今回の手続き補正書では,拒絶されている請求項1?7(以下,各請求項のことを,旧請求項と表記する。)のうち,旧請求項1を[特許請求の範囲]から削除し,旧請求項2?5を請求項1?4とする補正を行っている。また,旧請求項1に相当するシステム請求項,方法請求項であった旧請求項6,7を,それぞれ,補正後の請求項1(旧請求項2)に相当するものに修正した上で,請求項5,6とする補正も,行っている。」と説明している。
本件補正がなされる前の「旧請求項6」の記載,及び本件補正がなされた後の請求項5の記載は,それぞれ,以下に示すとおりである。

(本件補正がなされる前の「旧請求項6」)
「複数台のコンピュータ装置とサーバ装置とが通信ネットワークを介して接続された通信販売システムであって,
前記複数台のコンピュータ装置のそれぞれは,
ユーザから,商品を指定する情報である商品指定情報と,そのユーザが希望する,その商品の販売価格である希望販売価格を示す希望販売価格指定情報が含まれる販売環境指定情報とを取得して,それらを含む情報を前記通信ネットワークを介して前記サーバ装置に送信する情報送信手段を備え
前記サーバ装置は,
通信販売の対象とされている複数の商品のそれぞれについて,その商品の販売価格を示す販売価格情報が含まれる販売環境情報を記憶する販売環境情報記憶手段と,
前記複数台のコンピュータ端末のいずれかの情報送信手段によって送信された情報を受信する情報受信手段と,
この情報受信手段によって受信された商品指定情報及び販売環境指定情報を含む情報を,通知条件指定情報として,その送信を行なったユーザを識別するためのユーザ識別情報に対応づけて記憶するための通知条件指定情報記憶手段と,
前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている通知条件指定情報の中から,それに含まれる商品指定情報が示している商品に関する前記販売環境情報記憶手段内の販売価格が,それに含まれる希望販売価格指定情報が示している希望販売価格以下となっている通知条件指定情報を特定する特定手段と,
この特定手段により特定された通知条件指定情報について,その通知条件指定情報に対応づけられて前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている前記ユーザ識別情報によって識別されるユーザに,その通知条件指定情報の商品指定情報で指定される商品の販売環境が当該ユーザが指定したものに変更されたことを前記通信ネットワークを介して通知するための通知処理を行う通知手段と
を備える
ことを特徴とする通信販売システム。」

(本件補正がなされた後の請求項5)
「複数台のコンピュータ端末とサーバ装置とが通信ネットワークを介して接続された通信販売システムであって,
前記複数台のコンピュータ端末のそれぞれは,
ユーザによって指定された商品を示す商品指定情報と,その商品の販売環境が満たすべき,ユーザによって指定された幾つかの条件を示す販売環境指定情報とが含まれる情報を,前記通信ネットワークを介して前記サーバ装置に送信する情報送信手段と,
Webページを,ディスプレイ上に表示するためのWebページ表示手段とを,備え,
前記サーバ装置は,
通信販売の対象とされている複数の商品のそれぞれについて,その商品の現時点における販売環境を示す情報である販売環境情報を記憶する販売環境情報記憶手段と,
前記複数台のコンピュータ端末のいずれかの情報送信手段によって送信された情報を受信する情報受信手段と,
この情報受信手段によって受信された,前記商品指定情報及び前記販売環境指定情報を含む前記情報を,通知条件指定情報として,その送信を行なったユーザを識別するためのユーザ識別情報に対応づけて記憶するための通知条件指定情報記憶手段と,
前記販売環境情報記憶手段に記憶されている幾つかの販売環境情報を参照することにより,前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている通知条件指定情報の中から,そこに含まれる商品指定情報が示している商品についての現時点における販売環境が,そこに含まれる販売環境指定情報が示している各条件を満たしている通知条件指定情報を特定する特定手段と,
この特定手段により特定された通知条件指定情報について,その通知条件指定情報に対応づけられて前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている前記ユーザ識別情報によって識別されるユーザに,その通知条件指定情報の商品指定情報で指定される商品の販売環境が当該ユーザが指定したものに変更されたことを前記通信ネットワークを介して通知するための通知処理を行う通知手段と,
前記通知手段により行われた通知処理の内容をユーザ毎に管理する通知処理内容管理手段と,
前記複数台のコンピュータ端末に含まれる任意のコンピュータ端末の前記Webページ表示手段に,商品の購入注文を受け付けるためのショッピングページを表示させるショッピングページ提供手段であって,ショッピングページを表示させるべきコンピュータ端末を操作しているユーザが前記通知処理が行われている者であるか否かを前記通知処理内容管理手段に記憶されている情報に基づき判断し,そのユーザが前記通知処理が行われている者でなかった場合には,そのコンピュータ端末に前記ショッピングページとして所定内容のWebページを表示させ,そのユーザが前記通知処理が行われている者であった場合には,そのコンピュータ端末に前記ショッピングページとして前記所定内容のWebページにそのユーザに関して通知処理が行われている各商品を発注対象として選択するためのアイテムを付加したWebページを表示させるショッピングページ提供手段と
を備える
ことを特徴とする通信販売システム。」

(2-2)補正の適否
本件補正は特許法第17条の2第1項第3号の補正に該当するから,本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正は,同条第4項の規定により,同条第4項の各号に掲げられた事項を目的とするものに限られる。そこで,本件補正のうち,上記の「旧請求項6」を新たな請求項5とした補正について,補正の目的が特許法第17条の2第4項各号に掲げられた事項のいずれかに該当するかを検討する。
まず,補正の目的が特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」に該当するか否かについて検討する。本件補正がなされる前の上記「旧請求項6」の記載(以下「補正前の記載」という。)と本件補正がなされた後の上記請求項5の記載(以下「補正後の記載」という。)とを対比すると,「販売環境指定情報」について,補正前の記載では「そのユーザが希望する,その商品の販売価格である希望販売価格を示す希望販売価格指定情報が含まれる販売環境指定情報」とされていたのに対して,補正後の記載では「その商品の販売環境が満たすべき,ユーザによって指定された幾つかの条件を示す販売環境指定情報」と変更されており,また,「販売環境情報」について,補正前の記載では「その商品の販売価格を示す販売価格情報が含まれる販売環境情報」とされていたのに対して,補正後の記載では「その商品の現時点における販売環境を示す情報である販売環境情報」と変更されている。ここで,記載事項の概念上の関係は,補正前の記載にいう「希望販売価格」とは補正後の記載にいう販売環境が満たすべき「幾つかの条件」のうちのひとつであり,また,補正前の記載にいう「販売価格情報」とは補正後の記載の「販売環境を示す情報」のひとつということになる。してみると,このような変更は,下位概念あるいは下位属性のひとつに限るとしていた限定を取り払うものであって,発明を特定する事項を限定するかたちでの特許請求の範囲の減縮とはいえないものであるから,上記のように記載を変更する補正の目的は,特許法第17条の2第4項第2号にいう「特許請求の範囲の減縮」には該当していない。
次に,補正の目的が特許法第17条の2第4項第1号の「請求項の削除」に該当するか否かについて検討すると,上記の補正が「旧請求項6」を新たな請求項5とした補正であることは,請求人も審判請求書で述べているとおりであり,明白であるから,上記の補正の目的は「請求項の削除」には該当していない。
そして,補正の目的が特許法第17条の2第4項第3号の「誤記の訂正」又は同項第4号の「明りょうでない記載の釈明」のいずれかに該当するかを検討すると,上記の補正の目的がそれらのいずれにも該当していないことは,記載からみて明らかである。
したがって,上記請求項5に係る本件補正の目的は,特許法第17条の2第4項各号に掲げられたいずれの目的にも該当していない。
してみると,上記請求項5に係る補正以外の特許請求の範囲についてした補正について検討するまでもなく,本件補正は特許法第17条の2第4項各号に掲げられたいずれの事項をも目的としていないから,本件補正は同項の規定に違反してなされたものである。

(2-3)むすび
以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願の発明
平成15年1月15日付け手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成14年8月8日付け手続補正によって補正された請求項1の記載事項により特定される発明である。当該請求項の記載は,次に示すとおりである。

(平成14年8月8日付け手続補正によって補正された請求項1)
「通信販売を行うためのサーバ装置であって,
通信販売の対象とされている複数の商品のそれぞれについて,その商品の販売価格を示す販売価格情報が含まれる販売環境情報を記憶する販売環境情報記憶手段と,
ユーザ識別情報が割り当てられているユーザから,前記複数の商品の中のいずれかの商品を指定する情報である商品指定情報と,そのユーザが希望する,その商品の販売価格である希望販売価格を示す希望販売価格指定情報が含まれる販売環境指定情報とを,通信にて取得する指定情報取得手段と,
この指定情報取得手段によってユーザから取得された商品指定情報と販売環境指定情報とを,そのユーザに関する通知条件指定情報として,そのユーザのユーザ識別情報に対応づけて記憶するための通知条件指定情報記憶手段と,
前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている通知条件指定情報の中から,それに含まれる商品指定情報が示している商品に関する前記販売環境情報記憶手段内の販売価格が,それに含まれる希望販売価格指定情報が示している希望販売価格以下となっている通知条件指定情報を特定する特定手段と,
この特定手段により特定された通知条件指定情報について,その通知条件指定情報に対応づけられて前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている前記ユーザ識別情報によって識別されるユーザに,その通知条件指定情報の商品指定情報で指定される商品の販売環境が当該ユーザが指定したものに変更されたことを通知するための通知処理を行う通知手段と
を備えることを特徴とするサーバ装置。」

4.刊行物に記載された発明
原査定において拒絶の理由の根拠とされた刊行物である特開平9-330355号公報(以下「刊行物1」という。)には,関連する各図とともに,以下のとおりの記載がある。

(4-1)請求項1
「【請求項1】 顧客用端末装置または顧客用入力装置と,顧客情報を格納した顧客情報データベースと商品情報を格納した商品情報データベースとを備えた通信販売側装置とを,通信回線を用いて接続した通信販売システムを用いて,顧客に商品を提示する通信販売方法において,通信回線を用いた顧客からの指示に従って顧客用端末装置に商品を提示し,顧客が購入候補として選択した商品をピックアップした商品として扱い,ピックアップした商品の情報を顧客情報として顧客情報データベースに格納することを特徴とする通信販売方法。」

(4-2)段落0001
「【発明の属する技術分野】本発明は,通信を利用する商品の販売において,顧客が購入を考えている商品の価格や在庫等の情報を顧客に通知する通信販売方法に関する。」

(4-3)段落0007
「【0007】本発明の目的は,通信回線を用いた通信販売システムにおいて,顧客が毎回商品を探し直すことなく,以前検討した商品を検討できる通信販売方法を提供することにある。また,本発明の他の目的は,何度も通信回線を用いて商品の状況を調べる必要のない,検討した商品の在庫が少ない場合や特別価格商品となったときに連絡することができる通信販売方法を提供することにある。特に,顧客が検討した商品の情報を登録することによって,顧客の潜在的な要望に適応した商品の情報を通知することにある。」

(4-4)段落0011
「【0011】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。実施例1では,図1から図11を用いて,請求項1から請求項8に記載された,商品選択処理部1において通信回線を用いて通信販売者の商品をピックアップし,商品情報処理部2において後(時間経過)に通信販売社が商品の在庫情報や生産情報および特別価格商品の価格を記入し,商品案内処理部3において商品の状況を顧客に通知するかどうか判定し通知する場合は通知処理を行う通信方法について説明する。」

(4-5)段落0016から0017まで
「【0016】さらに,実施例6では,図36から図38を用いて,請求項23に記載された通信回線を用いて商品を見ている間にピックアップする商品を登録するのに変えて,他の伝達方法を用いてピックアップする商品を登録する通信販売方法について説明する。
【0017】なお,本明細書においては,顧客が興味を持ったり購入の候補に挙げたりするためにピックアップした商品をピックアップ商品と呼び,注文する商品を注文商品と呼ぶことにする。」

(4-6)段落0018から0056まで
「【0018】
【実施例】まず,本発明にかかる通信販売方法の第1の実施例について説明する。図1は,通信販売のシステム全体の構成およびその処理フローを示す図である。本発明にかかる通信販売方法が適用される顧客が通信回線を用いて通信することができる通信販売のシステムは,商品選択処理部1と,商品情報処理部2と,商品案内処理部3と,顧客情報を格納する顧客情報データベース4と,商品情報を格納する商品情報データベース5と,通信回線を利用できる顧客用端末装置または顧客が指示するための顧客用入力装置部6と,さらに通信販売側の端末装置または通信販売側から指示するための通信販売側入力装置7から構成される。顧客の番号(ID)や,住所および電話番号,決算方法などの顧客情報が格納される顧客情報データベース4と,商品の品番や,価格・在庫などの商品情報が格納される商品情報データベース5はそれぞれ記憶装置に格納される。
【0019】商品選択処理部1は,顧客情報処理部(確認)11と,商品提示処理部(初期処理)12と,商品ピックアップ処理部13と,商品提示処理部14と,商品注文処理部15と,顧客情報処理部(登録)16とから構成される。商品情報処理部2は,在庫情報処理部21と,生産情報処理部22と,特別価格情報処理部23とから構成される。商品案内処理部3は,通知判断処理部31と,通知処理部32とから構成される。
【0020】図2は,顧客用入力装置6における通信販売の商品表示画面の表示例を示し,商品表示画面60には,商品イメージを提示する商品イメージ提示エリア61と,商品情報を提示する商品情報提示エリア62と,顧客が指示するための指示用エリア63と,注文商品およびピックアップ商品を提示する注文・ピックアップ商品提示エリア64が設けられている。この画面表示例では,商品イメージ提示エリア61と,商品情報提示エリア62を用いているが,これ以外の商品を提示するためのエリアがあってもよいし,さらに別の表示画面を用いて商品を提示してもよい。商品表示画面に提示している商品のピックアップに関する指示や注文に関する指示は,顧客が指示するための指示用エリア63で指示する。
【0021】顧客が画面操作を指示するため指示用エリア63には,提示される商品の変更を指示するための「次へ」ボタン631および「前へ」ボタン632と,商品のピックアップを指示するための「ピックアップ登録」ボタン633と,一旦実行したピックアップを取り消す「ピックアップ取消」ボタン634と,商品の注文を指示するための「注文登録」ボタン635と,一旦実行した注文登録を取り消す「注文取消」ボタン636と,注文画面を表示するための「注文画面」ボタン637と,システムを終了するための「終了」ボタン638の各操作領域が設けられている。
【0022】また,注文・ピックアップ商品提示エリア64には,注文商品の商品情報または商品イメージを表示する注文商品表示領域641とピックアップ商品の商品情報または商品イメージを表示するピックアップ商品表示領域642が設けられている。注文商品とピックアップ商品を区別するために,図2に示す例では,上記二つの表示領域の枠の表示を変えている。また,注文・ピックアップ商品提示エリア64の任意の商品を指示したときは,指示した商品のイメージを商品イメージ提示エリア61に提示し,指示した商品の商品情報を商品情報提示エリア62に提示する。
【0023】図3は,通信販売の注文画面の画面表示例である。図2の商品表示画面60上の「注文画面」ボタン637に触れると,顧客用入力装置6の表示装置に図3に示す注文画面65が表示される。注文画面65には,注文商品に関する情報を表示する注文商品情報表示エリア651と,ピックアップ商品に関する情報を表示するピックアップ商品情報表示エリア652と,注文を指示する「注文!」ボタン653と,注文画面での指示の終了を指示する「終了」ボタン658が表示されている。また,商品情報を注文商品情報表示エリア651とピックアップ商品情報表示エリア652との間で移動を指示するためのボタンが設けられ,それぞれ,注文商品エリア651で選択されている商品を指示に従ってピックアップ商品エリア652へ移動する働き,ピックアップ商品エリア652で選択されている商品を指示に従って注文商品エリア651へ移動する働きを有している。商品の移動を指示するためのボタンとして,ピックアップ商品エリア652から注文商品エリア651へ移動するための「注文商品へ」ボタン654と,ピックアップ商品エリア652と注文商品エリア651間で移動させるための「移動」ボタン655と,注文商品エリア651からピックアップ商品エリア652へ移動するための「ピックアップへ」ボタン656と,注文商品エリア651およびピックアップ商品エリア652への登録を取り消すための「取消」ボタン657が設けられる。注文商品情報表示エリアやピックアップ商品情報表示エリアに表示される商品情報は,イメージデータとともに,色やサイズおよび価格等の情報についても画面上に提示される。
【0024】図4は,図1に示した通信販売システムの処理フロー図である。ステップS1からステップS8が商品選択処理部1での処理を示し,ステップS9からステップS11が商品情報処理部2での処理を示し,さらに,ステップS12からステップS13が商品案内処理部3での処理を示している。
【0025】顧客が顧客用入力装置6を通信回線を用いて通信販売側のシステムに接続すると,顧客情報処理部(確認)11では,顧客の番号入力に従って,顧客ID番号など通信販売側で管理している顧客情報を格納している顧客情報データベース4から特定した顧客の情報を呼び出し,顧客を確認する(S1)。顧客情報データベース4に登録されていない新規の顧客の場合は,顧客登録し,登録情報を顧客情報データベース4に格納する。また,顧客が顧客の登録をしないことを選択したときは,顧客の確認や登録をせずに,次ステップS2に進む。
【0026】商品提示処理部(初期処理)12では,顧客用端末装置6に商品を提示するための領域の確保などの処理を行い,図2に示した商品表示画面60の注文・ピックアップ商品提示エリア64の表示を除く通信販売の画面表示を行う。また,顧客情報データベース4に顧客用端末装置6の設定情報が格納されているときは,設定情報に従った商品を提示するための処理を行う(S2)。商品ピックアップ処理部13では,ステップS1で読み出した顧客情報にピックアップ商品が指示されていれば,顧客用端末装置6の注文・ピックアップ商品手提示エリア64のピックアップ商品表示エリア642にピックアップ商品を提示する(S3)。
【0027】商品ピックアップ処理部13は,顧客が「終了」ボタン638に触れて終了を指示するまで,以下のステップS5?ステップS7の処理を繰り返す(S4)。商品ピックアップ処理部13は,顧客が図2に示した商品表示画面60上に提示した商品について「ピックアップ登録」ボタン633に触れピックアップ登録を指示したとき,「ピックアップ取消」ボタン634に触れてピックアップ登録の取消しを指示したとき,商品のピックアップに関する指示を受けたと判定し,ピックアップに関する処理を行う(S5)。その詳細については,図6を用いて後に説明する。
【0028】商品提示処理部14は,顧客の指示に従って商品を商品イメージ提示エリア61および商品情報提示エリア62に順次提示する(S6)。図2に示す商品表示画面60では,「次へ」ボタン631に触れると次の商品情報が提示され,「前へ」ボタン632に触れると前の商品の情報が提示される。
【0029】商品注文処理部15では,顧客が図2に示す商品表示画面60で「注文登録」ボタン635,「注文取消」ボタン636,「注文画面」ボタン637に触れて指示すると,商品の注文に関する指示を受けたと判定し,商品の注文に関する処理を行う(S7)。商品注文処理の詳細については,図8を用いて後に説明する。
【0030】顧客が注文に関する処理を行い「終了」ボタン638に触れて終了を指示すると,顧客情報処理部(登録)16は,顧客情報の登録処理を行う(S8)。顧客情報の登録処理の詳細については,図9を用いて後に説明する。
【0031】在庫情報処理部21では,各商品の在庫数を商品情報を格納する商品情報データベース5に登録する(S9)。生産情報処理部22では,各商品の今後の生産予定を商品情報を格納する商品情報データベース5に登録する(S10)。生産情報登録の内容は,当該商品を今後生産するかしないか,またはおおまかな生産予定数の識別子でも良いし,一定期間毎の生産予定数であっても良い。
【0032】特別価格情報処理部23では,特別価格とした商品について,特別価格を,商品情報データベース5に登録する(S11)。
【0033】通知判定処理部31では,商品情報を顧客に通知するかどうかについて判定する(S12)。通知処理部32では,ステップS12において,商品情報を通知すると判定した顧客に商品情報を通知する(S13)。ステップS12とステップS13の処理については,図11を用いて後に詳細に説明する。
【0034】図5は,顧客情報データベース4内に格納された顧客情報の構造の概要を示す図である。顧客情報データベース4は大別して,顧客IDテーブル41と,顧客情報テーブル42と,ピックアップテーブル43から構成される。顧客IDテーブル41には,顧客を特定するためのID番号が格納されるとともに,当該顧客に対応して設けられた顧客情報テーブル42へのポインタが格納されている。
【0035】顧客情報テーブル42には,顧客の情報として,氏名421,住所422,電話番号423などの連絡先や送付先の情報および決算情報424ならびにピックアップ商品に関する少なくとも一つのピックアップ情報425などが格納され,さらにピックアップ情報425にはピックアップ商品に対応して設けられたピックアップテーブル43へのポインタが格納されている。
【0036】ピックアップテーブル43には,ピックアップ商品または注文商品などの商品ID番号431,ピックアップ状況を示す識別子432,当該商品の色433,サイズ434などのピックアップ商品または注文商品情報430が複数格納されている。ピックアップ状況識別子432は,当該商品がピックアップ商品であるか,注文商品であるかを識別するために用いられる。例えば,ピックアップ状況識別子432として,注文商品に注文商品識別子「B」を,ピックアップ商品にピックアップ状況識別子「P」を用いて,注文商品とピックアップ商品を区別している。また,注文商品については,一旦注文商品として登録したが,最終的な注文処理が行われない場合があるので,ピックアップテーブル43に注文商品識別子「B」を格納する場合は,注文商品をさらに分け,注文処理が終了した商品と注文処理がすんでいない商品とを区別した識別子を用いるようにしても良い。
【0037】図6は,図4に示した処理フローのステップS3およびステップS5で実行される商品ピックアップ処理部13における処理フロー図である。ピックアップ情報は,図5に示した顧客情報データベース4内に形成されるピックアップテーブル43と同様のデータを用いる。まず,顧客用入力端末6からピックアップに関する指示が行われたかどうか判定する(S21)。注文・ピックアップ商品提示エリア64に注文商品表示領域641またはピックアップ商品表示領域642に提示されている商品に触れて商品が指示されたときは,商品内容の提示の指示がなされたと判定し,商品提示処理部12の処理を実行し,商品内容を提示する(S22)。また,ステップS21において,「ピックアップ登録」ボタン633に触れてピックアップ登録が指示されたときは,商品イメージ表示エリア61および商品情報提示エリア62に提示されている商品をピックアップ商品に追加する指示がなされたと判定し,ピックアップ追加処理を実行し,提示されている商品をピックアップ商品に追加する(S23)。さらに,ステップS21において,「ピックアップ取消」ボタン634に触れてピックアップの取消しが指示されたときは,提示している商品をピックアップ商品から削除する指示がなされたと判定し,ピックアップ削除処理を実行し,当該商品をピックアップ商品から削除する(S24)。
【0038】商品内容の提示の指示がなされたときには,商品提示処理部14は,商品のイメージを,商品イメージ提示エリア61に提示し,商品情報を商品情報提示エリア62に提示する処理を行う(S22)。ピックアップ追加指示がなされ,ピックアップ登録を指示された商品がピックアップ商品にない場合は,商品提示処理部14は注文・ピックアップ商品提示エリア64にピックアップ商品642として追加する処理を行う(S23)。ピックアップ削除指示がなされたときには,ピックアップ取消しを指示された商品がピックアップ商品として登録されている場合は,商品提示処理部14は注文・ピックアップ商品提示エリア64に提示されたピックアップ商品を削除する処理を行う(S24)。
【0039】図7は,商品情報データベース5に格納される商品情報の構造の概要を示す図である。商品情報データベース5に格納される商品情報は,商品IDテーブル51と商品情報テーブル52に大別される。商品IDテーブル51には,商品を識別するID番号があり,当該商品に対応する商品情報テーブル52へのポインタを格納している。商品情報テーブル52には,例えば,商品の情報として,商品の色521,サイズ522,価格523,イメージデータ524などの商品に関する情報が格納されている。イメージデータを別にまとめて保持している場合は,イメージデータへのポインタを格納している。さらに,サイズや色が複数ある場合には,複数のサイズや色などの情報を格納している。
【0040】図8は,図4に示した処理フローのステップS7における商品注文処理部15の処理フロー図である。この処理は,図5に示した顧客情報データベース4内に格納されるピックアップテーブル43と同様のデータを用い,また,図7に示した商品情報データベース5内に格納された商品情報テーブル52を参照して実行される。ステップS7において,商品注文処理部15は,提示された商品の注文に関する指示が行われたかどうか判定する(S31)。ステップS31において,顧客が「注文登録」ボタン635に触れて注文登録が指示されたときは,提示している商品を注文商品に追加する指示がされたと判定し,注文商品登録処理を実行する。注文登録を指示された商品が注文商品表示領域641にない場合は,注文商品として注文商品表示領域641に追加する処理を実行する(S32)。また,ステップS31において,「注文取消」ボタン636に触れて注文取消しが指示されたときは,提示している商品を注文商品から削除する指示がされたと判定し,削除処理が実行される。注文取消を指示された商品が注文商品表示領域641に登録されている場合は,注文商品表示領域から削除する(S33)。
【0041】商品注文処理部15は,図2に示した商品表示画面60において,「注文画面」ボタン637に触れて注文画面の指示があったときに,注文画面を表示する指示がされたと判定して図3に示す注文画面65を表示し(S34),「終了」ボタン638に触れて終了が指示されるまで,ステップS36からステップS45までの処理を繰り返す(S35)。
【0042】図3に示す注文画面65の表示においては,注文商品とピックアップ商品を,それぞれ注文商品情報表示エリア651およびピックアップ商品情報表示エリア652に提示する。
【0043】注文画面65が表示された状態で,注文商品情報提示エリア651またはピックアップ商品情報提示エリア652に表示している商品を指定した場合に,商品選択の指示と判定する(S36)。選択が指定された商品がまだ選択されていない場合は,商品の選択を指示したと判定し,指定した商品を選択した商品として認識し画面表示を選択した商品として,表示の形態を例えば枠を太くするなどして強調する(S37)。選択を指定された商品が既に選択されている場合は,商品の選択を取消す指示がなされたと判定し,指定した商品を選択した商品から取り除き,画面表示を選択していない商品として,表示の形態を変える(S38)。
【0044】注文画面65において,「注文商品へ」ボタン654または「移動」ボタン655が指示されると,ピックアップ商品情報表示エリア652で選択している商品を注文商品情報表示エリア651に移す指示がなされたと判定し(S39),ピックアップ商品情報表示エリア652で選択している商品を注文商品情報表示エリア651に移動する(S39)。
【0045】注文画面65において,「ピックアップへ」ボタン656または「移動」ボタン655が指示されると,注文商品情報表示エリア651で選択している商品をピックアップ商品情報表示エリア652に移す指示がなされたと判定し(S41),注文商品情報表示エリア651で選択している商品をピックアップ商品情報表示エリア652に移動する(S42)。
【0046】注文画面65において,「取消」ボタン657が指示されると,注文商品情報表示エリア651およびピックアップ商品情報表示エリア652で選択されている商品を削除する指示がなされたと判定し(S43),注文商品情報表示エリア651およびピックアップ商品情報表示エリア652で選択している商品を取り除く(S44)。
【0047】注文画面65において,「注文!」ボタン653が指示されると,注文商品情報表示エリア651で選択されている商品の注文指示がなされたと判定し(S45),注文商品情報表示エリア651の商品を注文するための処理を行う(S46)。
【0048】図9は,ステップS8における顧客情報処理部(登録)16の処理フロー図である。顧客情報処理部(登録)16は,ピックアップ商品および注文商品のある間,商品をピックアップ商品として顧客情報データベース4内に形成したピックアップテーブル43に格納する処理(S52)を繰り返し実行する(S51)。次いで,顧客情報処理部(登録)16は,顧客情報を登録するかどうかを,既に顧客情報が登録されているかおよび顧客が登録を指示したかによって判定し(S53),登録する場合は,顧客の住所および電話番号および氏名ならびに決済方法などの顧客情報を登録する(S54)。
【0049】図10は,商品情報データベース5に形成される商品情報のデータ53の例を示す概念図である。商品情報として,商品毎に商品ID番号530,商品名531,商品イメージ532,色533,サイズ534,値段535などに加えて,特別価格536,在庫数537,生産予定538,在庫の基準値539などが記入される。
【0050】図11は,図4に示した処理フローのステップS12,ステップS13における商品案内処理部3の処理フロー図である。この処理では顧客情報データベース4および図10に示した商品情報データベース5を用いる。まず,通知判断処理部31は,顧客情報データベース4に格納された顧客情報を読み出す(S61)。次いで,通知判断処理部31は,読み出した顧客情報データベース4のピックアップテーブル43から,顧客がピックアップした商品および注文した商品を判別し(S62),それぞれのピックアップ商品および注文商品を通知商品とするか否かの処理(S63,S64)を繰り返す。すなわち,通知判断処理部31は,商品情報データベース5の商品情報データ53を用いて顧客がピックアップした商品または注文した商品を通知商品とするかどうかを,価格の変更の有無を示す特価情報536および,商品情報の在庫の状況を在庫数537と生産予定538と在庫の基準値539から判定する(S63)。通知判断処理部31が通知商品であると判定した場合は,通知商品として商品情報を蓄積する(S64)。
【0051】通知処理部32は,通知判断処理部31が判断した通知商品があるかどうかを商品情報データベース53の在庫数537,生産予定538,在庫の基準値539を参照して判定する(S65)。通知商品がある場合は,通知処理部32は,商品価格の変更があるか,在庫が少ないなどの商品の状況を顧客に通知するための処理を行う(S66)。この通知は,例えば,手紙,FAX,電子メールなどを用いて通知してもよいし,電話通知の場合は,担当者に商品状況が変更したことを顧客に知らせるための指示を出すようにしもよい。また,顧客が次回通信回線を用いて通信販売システムに接続してきたときに,まず,これらの通知商品の情報を提示する様に設定することもできる。
【0052】この実施例によれば,顧客が通信回線を用いて接続すると,顧客を確認し,顧客情報データベース4内に格納された顧客情報から顧客の情報を読み込む。顧客情報には,ピックアップ商品および注文商品についての情報が格納されているので,顧客が以前検討していた商品についての情報が顧客用端末装置6の商品表示画面60上に提示され,顧客はもう一度商品を最初から検討する必要なく,購入商品を決めることができる。また,顧客情報データベース4のピックアップテーブル43の商品について,商品の在庫状況や価格の変更をなどの商品状況を顧客用端末装置6上に通知するので,顧客は何度も商品の状況を調べることなく,商品状況を把握することができる。
【0053】この実施例には,記載していないが,図3に示した注文画面65において,商品注文処理部15で,顧客が商品の表示順番を変更する指示や商品のサイズおよび色のなどの商品の属性に関する情報を変更できるようにしても良い。また,本実施例では,一つの商品をピックアップ商品としてか注文商品としての片方のみに登録するようにしたが,選択した商品を両方に登録できる様にしても良い。さらに,注文商品やピックアップ商品の提示の順番を任意に変更できる様にしても良い。
【0054】また,この実施例においては,今回注文するための注文商品とちょっと印を付けておく意味のピックアップ商品の2通りを用意した例を挙げ,注文商品とピックアップ商品を分けて指示し,両方の商品をピックアップ商品とする例を用いたが,図2に示される商品表示画面60において注文商品641についてのみ指示し,図3の注文画面65において,今回注文しない保留の商品をピックアップ商品としてピックアップ商品情報表示エリア652に指示してもよい。さらに,図2に示される商品表示画面60において,ピックアップ商品642についてのみ指示し,図3に示される注文画面65において,今回注文する商品のみを注文商品641として指示しても良い。加えて,図2や図3に示される画面において,ピックアップ商品の指示をなくし,注文商品をピックアップ商品として扱っても良いし,注文商品を登録したけれども注文の指示がなされていない場合に,注文商品をピックアップ商品として扱うようにしてもよい。また,購入した商品と購入していない商品が分かるように,印を表示したり,表示の形態を変えるなどして,購入した商品が分かるようにしてもよい。
【0055】さらに,この実施例では,商品選択処理部1において,顧客情報処理部,商品提示処理部や商品ピックアップ処理部,商品注文処理部などを一連の処理としているが,顧客側だけで,商品提示処理部に必要な商品情報を保持(例えば,CD-ROMに商品情報を格納しておくなど)し,通信回線を用いることなく,商品の選択を行い,ピックアップ商品の情報のみ,通信販売側の顧客情報4から読み出し,登録するのでもよい。また,顧客側にも,ピックアップ商品の情報を格納し,顧客が通信販売側にピックアップ商品を通知したいときのみ,通信手段を用いて,通信販売側の顧客情報4に登録するのでもよい。
【0056】また,この実施例においては,顧客情報のみにピックアップ商品のピックアップテーブル43を格納した例を用いたが,顧客情報と商品情報の両方にピックアップ商品の情報を格納するようにしてもよい。この場合は,商品情報の各商品毎に,ピックアップしている顧客ID番号を保持する。さらに,この実施例では,ピックアップ商品の通知まで行う通信販売方法について説明したが,再度接続した時に,ピックアップ商品を提示する通信販売方法では,商品情報処理部や商品案内処理部はなくてもよい。」

(4-7)段落0077から0087まで
「【0077】次に,本発明にかかる通信販売方法の第5の実施例について説明する。実施例5では,図26から図35を用いて,通知方法および通知時期を登録できる通信方法について説明する。また,この実施例において,ピックアップした商品の通知方法および,通知時期の情報を登録する通信方法について説明する。まず最初に,図26から33を用いて,通知方法と通知時期を指示する通信販売方法について説明する。
【0078】図26は,第5の実施例の通信販売のシステム全体の処理フロー図である。図1に示した処理フローに比べ,顧客情報データベース4,商品情報データベース5,顧客情報処理部(登録)16,商品案内処理部3の処理内容が異なっており,さらに,通知情報データベース8が加わっている点が相違している。通知方法や通知時期は,顧客情報データベース4や商品情報データベース5および通知情報データベース8に格納する。
【0079】図27は,顧客情報データベース4の例である。顧客情報データベース4は,顧客IDテーブル41と,顧客情報テーブル42と,ピックアップテーブル43と,通知情報テーブル44とを有している。顧客情報テーブル42に,ピックアップ情報425に加えて通知情報426を設けた。通知情報テーブル44には,通知方法種類441と通知方法の情報442からなる通知方法についての情報と,通知時期種類443と通知時期の情報444からなる通知時期についての情報が格納される。
【0080】図28は,通知方法の画面表示の例である。通知方法として,郵送,電話,FAX,電子メールなどがある。この例では,郵送を指示している。郵送や電話等の場合は,顧客情報テーブル42と一致する場合は,郵送や電話を選択するのみで,住所などの情報は指示しなくてよい。
【0081】図29は,通知時期の画面表示例である。通知時期として,カタログの有効期限前に検討するための「カタログ有効期限前1カ月」,商品価格を変更したときの「商品価格変更時」,商品の在庫数が少なくなったときの「在庫商品が少ない時」,直接日付けを指定する方法などがある。この例では,商品価格変更時と日付指定の両方を指定している。また,日付指定のコメントとして,その用途を記入している。通知する場合は,このコメントを付けて通知する。
【0082】図30は,通知情報データベース8の例である。通知情報データベース8には,通知時期テーブル81と顧客IDテーブル82がある。通知時期テーブル81には,例えば有効期限1ヵ月前811,商品価格変更時812,在庫小時813,特定日時814などからなる通知時期が格納されており,通知時期テーブル81の各通知時期毎に,対応する顧客IDテーブル82(821?825)を保持している。
【0083】図31は,商品情報データベース5の構造の例である。商品情報データベース5には,商品情報テーブル52に顧客ID527を追加し,顧客IDテーブル54を保持している。商品情報テーブル52に,その商品の価格や在庫が少なくなったときに,通知する顧客の情報を保持している。この商品情報の顧客IDテーブル54は,顧客情報処理部(確認)11の処理で,顧客ID番号が除かれ,顧客情報処理部(登録)16の処理で顧客ID番号が追加される。
【0084】図32は,この実施例の顧客情報処理部(登録)16の処理フロー図である。この実施例では,図9に示される処理にステップS55,S56,ステップS551,S552を追加した。まず,ピックアップ商品および注文商品をピックアップテーブル43に登録する(S52)とともに,顧客情報が登録されているかいないかを判断し(S53),未だに登録されていないときには,商品情報データベース5の顧客IDテーブル54に顧客IDを登録する(S54)。通知方法を登録する場合は,図28に示した通知方法を登録するための画面を表示し,通知方法が既に登録されているか否かを判定する(S55)。通知方法が登録されていないと判断されたきには,通知方法を通知情報テーブル44の通知方法種類441に登録する(S551)。通知時期を登録する場合は,図29に示す通知時期を登録するための画面を表示し,通知時期が既に登録されているか否かを判断する(S56)。通知時期が登録されていないときには,通知時期を,通知情報テーブル44と,通知情報データベース8に登録する(S561)。
【0085】図33は,商品案内処理部3の処理フロー図である。この処理では,図11に示される処理にステップS611,ステップS631,ステップS661を加えた。商品案内処理部3では,通知情報データベース8から通知時期情報を読み出し,顧客IDテーブル82から,顧客ID番号を読み込み各顧客毎に実行する。まず,通知時期であるかどうかを判定し(S611),通知時期となった場合は,ステップS61での顧客情報を読み出しピックアップ商品および注文商品であるかの判断をを繰り返す(S62)。ピックアップ商品および注文商品であるときには,通知商品であるか否かを判定し(S631),通知商品の場合は,通知商品と設定する(S64)。次いで,通知商品があるか否かを判断し(S65),通知商品であるときには,顧客情報データベース8の通知情報テーブル44に登録している通知方法で商品の状況を顧客に通知する(S661)。ステップS611での通知時期の設定は,顧客が指示した通知方法が郵送などの時間がかかる方法である場合は,顧客の指示した日に通知できるように早めに設定する。
【0086】上記通知方法や通知時期は顧客の要請に基づいて登録することができる。顧客が指示した日付に通知できるように,通知方法と合わせて,通知時期を決定する。例えば,電子メールやFAXなどの場合は,指定した当日でも良いが,郵送の場合は,指定した日よりも少し前に通知するように設定する。通知時期テーブル81には,顧客の指定した日ではなく,予め通知する日を実際に通知する日に変更して登録しても良い。顧客が通知時期や通知方法を指定していない場合は,任意に通知時期や通知方法を決めることができる。
【0087】この実施例によれば,通知方法や通知時期を顧客情報処理部(登録)16で登録し,顧客情報データベース4や通知情報データベース8および商品情報データベース5に格納することによって,これらの格納した情報をもとに,商品案内処理部3において,登録した通知時期に,商品についての情報を通知するかどうかを判定することができる。また,この実施例では,商品価格変更時や在庫商品が少ない時もしくはカタログ有効期限前などについても通知時期として登録し,この登録内容に基づいて商品情報を通知するようにしたが,これらの通知時期については,登録しなくても自動的に通知がいくようにしてもよい。

(4-8)段落0088から0090まで
【0088】次に,図34と図35を用いて,商品毎に通知方法と通知時期を指示する通信販売方法について説明する。図34は,本実施例における顧客情報データベース4の構造の例である。本実施例では,通知情報テーブル44に,通知方法番号445と通知時期番号446が格納されており,これら2つの番号は,ピックアップ情報425に基づいて各商品毎のピックアップテーブル43を作成する際に読み出され,通知方法番号435と通知時期番号436として格納されている。
【0089】図35は,顧客情報処理部(登録)16における処理のフロー図である。この処理は,図9に示した顧客情報処理部(登録)16における処理にステップS517からステップS519の処理を加えた点が相違している。商品を提示し,ピックアップ商品または注文商品の指示があると(S51),その商品の通知方法を登録するかどうかを顧客に対して設問し(S517),登録する場合は,通知方法の登録画面を表示して,入力された通知方法を商品に登録し,通知方法番号445を番号付けして通知情報テーブル44に格納する(S5171)。この場合,既に登録してある通知方法を選択しても良い。さらに,ピックアップもしくは注文指示があったときにはその商品を顧客に対して提示し,その商品の通知時期を登録するかどうかについて設問する(S518)。登録する場合は,通知時期の登録画面を表示して,入力された通知時期を商品に登録し,通知時期番号446を番号付けして通知情報テーブル44に格納する(S5181)。この場合,既に登録してある通知時期を選択しても良い。通知情報テーブル44への通知方法番号445や通知時期番号446の登録が終了すると,これらの番号に基づいてピックアップテーブル43に通知方法番号435や通知時期番号436を加えて格納する。
【0090】ステップS51で,ステップS517からステップS519を繰り返し実行するので,各商品について通知方法や通知時期を登録することができる。また,通知方法や通知時期が同じ商品については,まとめて通知方法や通知時期を登録する方法を用いても良い。商品案内処理部3では,通知時期の商品のみについて通知するかどうかを検討するのでも良い。また,通知方法や通知時期を指示していない場合は,任意に通知方法や通知時期を決定する。この方法によれば,通知時期や通知方法に番号付けし,商品毎に通知時期や通知方法を指示できるので,指示した時期に,指示した商品の情報を得ることができる。よって,複数の通知方法や通知時期を登録し,利用することが可能となる。」

ここで,摘記した上記の(4-1)から(4-8)までの記載と関連各図の記載とに基づいて,上記の(4-8)の記載の中で説明されている,第5の実施例で「商品毎に通知方法と通知時期を指示」できるようにした場合の通信販売方法(以下「(4-8)の実施例」という。)について,実質的に何が開示されているかを検討する。
まず,この(4-8)の記載事項とそれ以外の記載事項との関係について,(4-8)の実施例を直接説明している段落0088から0090,図34,及び図35の記載では,各処理部1,2,3が受け持つそれぞれの処理の処理フローのうち商品選択処理部1の顧客情報処理部(登録)16の処理フローしか示されておらず,また,各データベース4,5,8のそれぞれの内部のデータ構造のうち顧客情報データベース4のデータ構造しか示されておらず,それら以外の処理フローやデータ構造については明示的な記載が省略されているが,これらの段落及び図面の記載は(「・・・における処理に・・・を加えた点が相違している」とあるように)いわば差分を示す記載であるから,省略されている事項については,「商品毎に」指示可能という固有の特徴に係る事項でない限り,基本的には,その前の(4-7)で第5の実施例として「まず最初に」説明されている通信販売方法(以下「(4-7)の実施例」という。)のとおりと解することができ,その(4-7)の各段落や関連各図の記載でも省略されたり簡略化されている事項については,さらに前の(4-6)で「第1の実施例」として説明されている通信販売方法(以下「(4-6)の実施例」という。)のとおりと解することができる。例えば,画面表示については,(4-8)の実施例においても,商品をピックアップ商品あるいは注文商品とする指示を行う画面は図2のような画面であり,通知方法の登録や通知期間の登録を行う画面はそれぞれ図28や図29のような画面であると解することができる。
してみると,(4-8)の実施例における上記の顧客情報処理部(登録)16の処理フローは,ピックアップ登録をした未処理の商品がある間,繰り返して,通知方法の登録をするか否か(S517)や通知時期の登録をするか否か(S518)の設問をして,通知時期を登録する(S5181)場合に前記の図29の画面を表示し,「商品価格変更時」や「在庫商品が少ない時」の指定も受け付けるかたちで顧客から通知時期の登録を受け,情報をピックアップテーブルへ格納(S519)する,という処理フローとして捉えることができる。
また,商品案内処理部3の処理フローについては,(4-8)の実施例では説明が完全に省略されているものの,基本的に(4-7)の実施例で説明されている商品案内処理部3の処理フロー(段落0085,図33)のとおりと解することができ,さらに,「商品価格変更時」や「在庫商品が少ない時」の指定に基づく場合の処理であれば,(4-6)の実施例で説明されている事項の一部(段落0050)も処理の説明として当てはまると解することができる。この場合の処理については全ての記載を参酌してもはっきりしない点があり,例えば,通知情報データベース8側の顧客IDテーブル82と商品情報データベース5側の(通知情報データベース8側の「商品価格変更時」のテーブル822や「在庫少時」のテーブル823と内容が重複しているとみられる)顧客IDテーブル54とはどのような使い分けがされているのか,段落0085の記載で通知情報データベース8側の顧客ID番号を読み込む(S61)とされているが「商品価格変更時」や「在庫商品が少ないとき」の指定に基づく処理フローでも通知情報データベースの方のテーブルを使うのか,といった点が不明りょうな点として残るものの,少なくとも,通知すべきか否かの判定(S631)には価格の変更の有無を示す特価情報536及び在庫の状況をみての判定(段落0050)が含まれている必要がある,それら特価情報536や在庫数537のデータは商品情報データベース5(段落0049,図10)に記入され更新される必要がある,といったことは,明らかに,(4-7)や(4-8)の実施例の説明として当てはまるといえる事項である。
次に,上記の各処理部1,2,3,及び各データベース4,5,8と,上記(4-1)にいう「通信販売側装置」との関係について,上記(4-1)には「顧客情報を格納した顧客情報データベースと・・・商品情報データベースとを備えた通信販売側装置」という表現があるのみで,それら以外のデータベースや処理部については,「通信販売側」に属すると明示する記載は上記の摘記箇所の記載にも関連各図にもない。しかしながら,技術常識からいって,上記(4-6)の段落0055で言及されている,CD-ROMなどを用いて「顧客側だけで,商品提示処理部に必要な商品情報を保持」させるというような特別な代替形態を想定するのでない限り,各処理部1,2,3,及び各データベース4,5,8はいずれも顧客側から離隔した位置にあって「通信販売側装置」を構成していると解するべきである。
してみると,そのような構成の「通信販売側装置」が離隔した位置の顧客の顧客側端末装置6と通信回線を用いて接続されているのであれば,「通信販売側装置」に属する商品選択処理部1の各処理部は,顧客から前記の図2や図28や図29などの画面での画面操作を通じた各種の指示を通信回線を介して受け,それらの指示に応じて登録の処理や通信回線を介した返答の処理を行う,ということになるから,「通信販売側装置」はそれらの指示を通信回線を介して受けるためのなんらかの受信手段を備えている,ということができる。
最後に,上記の(4-7)及び(4-8)の実施例についての説明が「方法について説明する」とされていることについて,(4-1)の記載にもあるように,そもそも本願における「通信販売方法」とは前記の「通信販売側装置」と顧客用端末装置とを接続したシステムに立脚した「方法」であり,その方法としての特徴はその方法の各手順を実行する「通信販売側装置」の各処理部の機能としても捉えることができる特徴であるから,上記の説明は「通信販売側装置」の特徴の説明でもある,ということができる。

以上の検討を踏まえて,(4-8)の実施例,すなわち「商品毎に通知方法と通知時期を指示」できるようにした場合の通信販売方法に関する全ての記載を参酌すると,刊行物1においては,その記載を通じて,次に示すような構成をもつ「通信販売側装置」の発明(以下「刊行物1の発明」という。)が開示されていると認められる。

(刊行物1の発明)
「通信販売側装置であって,
通信販売の対象となる複数の商品のそれぞれについて商品の価格523やその他の各種の商品情報が格納される商品情報テーブル52(図31),当該商品情報を参照するポインタがその商品の商品IDとともに格納される商品IDテーブル51(図31),並びに,その商品の価格や在庫が少なくなったときに通知の対象となる顧客の情報が保持される顧客IDテーブル54(図31)を備え,各種の商品情報としてさらに特別価格536や在庫数537の情報(図10)を保持する,商品情報データベース5と,
顧客IDが割り当てられている顧客から,商品選択処理における商品提示処理に際して,商品表示画面60(図2)に提示している商品を次の商品に変更させる指示や前の商品に変更させる指示を通信回線を介して受け,また,当該商品選択処理における商品ピックアップ処理に際して,提示している商品のピックアップ登録をする指示情報を前記通信回線を介して受け,さらに,選択処理における顧客情報処理(登録)に際して,ピックアップ登録をした商品のうち商品案内の通知の登録をする商品について,通知時期登録画面(図29)の表示項目に従って商品価格変更時や在庫商品が少ない時などを通知時期として登録する指示を前記通信回線を介して受ける,受信手段と,
前記受信手段によって受信された前記通知時期の情報が通知時期番号446で番号付けされた上で登録される通知情報テーブル44(図34),その通知時期番号436が前記ピックアップ登録をした商品ごとに商品ID431とともにピックアップ商品情報430として格納されるピックアップテーブル43(図34),そのピックアップ商品情報430をポインタにより参照するピックアップ情報425が顧客の氏名421などの顧客情報とともに顧客ごとに格納される顧客情報テーブル42(図34),並びに,その顧客情報を参照するポインタが顧客IDとともに格納される顧客IDテーブル41(図34)から構成される顧客情報データベース4と,
商品案内処理における通知判断処理に際して,顧客情報データベースの顧客情報テーブル42(図34)から顧客情報を読み出し(S61),その顧客のピックアップ情報が参照しているピックアップ商品情報430の商品ごとに,通知商品とするかどうかを価格の変更の有無を示す特価情報536(図10)などの商品情報データベース5の各種商品情報から判定し(S63,S631),通知商品とすると判定した場合にその商品情報を蓄積する(S64)通知判断処理部31と,
商品案内処理における前記通知商品の通知処理に際して,当該通知商品があるかどうかを判定し(S65),通知商品がある場合に,商品価格の変更があるなどの商品の状況を電子メールなどを用いて顧客に通知するための処理を行う(S66)通知処理部32と
を備えることを特徴とする装置。」

5.対比
上記の刊行物1の発明を本願発明と対比する。
刊行物1の発明の「商品情報データベース5」をみると,その中に含まれる価格523や特別価格536や在庫数537といった情報は,販売中のそれぞれの商品に関する変動する販売条件や販売状況を示す情報であり,その商品についての変動する販売環境を示す情報といえるから,これらの情報を保持している「商品情報データベース」は,本願発明にいうところの「通信販売の対象とされている複数の商品のそれぞれについて,その商品の販売価格を示す販売価格情報が含まれる販売環境情報を記憶する販売環境情報記憶手段」に相当するものである。
刊行物1の発明の「受信手段」をみると,まず,顧客IDが割り当てられている「顧客」は,明らかに,本願発明でいうところのユーザ識別情報が割り当てられている「ユーザ」に相当する。また,商品価格変更時や在庫商品が少ない時などを通知時期として登録する「指示」については,この「指示」の情報は,前記の価格523や特別価格536や在庫数537で表されるような販売条件や販売状況の情報,すなわち本願発明でいうところの「販売環境」について,その環境のどの要素がどうなったとき通知してほしいかを選んで「指定」する情報であるから,その意味では希望する販売環境を指定する「販売環境指定情報」であるといえる。この通知時期の登録の指示,次や前の商品を提示させる指示,そしてピックアップ登録の指示のうち,どの指示に伴って本願発明の「商品指定情報」に相当する情報が通信販売側に送られてくるかは,刊行物1の上記の説明からははっきりと把握することができないが,「商品指定情報」に相当する情報がいずれかの指示の時点で送られてくること自体は,その情報がピックアップ登録の対象を特定するため不可欠である以上,自明のことである。してみると,刊行物1の発明の「受信手段」は,本願発明に即していえば,「ユーザ識別情報が割り当てられているユーザ」から「商品指定情報」とそのユーザが希望する販売環境を指定する「販売環境指定情報」とを「通信にて取得」する「指定情報取得手段」に相当する,ということができる。
刊行物1の発明の「顧客情報データベース4」をみると,その中のピックアップテーブル43上のピックアップ商品情報430は,商品ID431を含み,通知情報テーブル44上の通知時期の情報を参照しており,かつ,顧客IDテーブル42上の顧客IDから参照を受けている情報であるから,このようにピックアップ商品情報430とその関連情報とを各テーブルに格納している「顧客情報データベース」は,本願発明でいうところの「この指定情報取得手段によってユーザから取得された商品指定情報と販売環境指定情報とを,そのユーザに関する通知条件指定情報として,そのユーザのユーザ識別情報に対応づけて記憶する」ための「通知条件指定情報記憶手段」に相当するものである。
刊行物1の発明の「通知判断処理部31」をみると,上記のように,当該処理部は,ピックアップ商品情報430の商品ごとに通知商品とするかどうかを特価情報536など「販売環境情報」によって判定してその商品情報を蓄積しており,換言すると,当該処理部は,特価情報536などからみて通知商品とすべき商品,すなわち「販売環境情報」が現在示している「環境」が指定どおりの「環境」となった商品を特定して,その上でそれらの商品情報を蓄積しているといえるから,このような処理を行っている「通知判断処理部31」は,本願発明に即していえば,「前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている通知条件指定情報」の中から「それに含まれる商品指定情報が示している商品」に関する販売環境がそれに含まれる販売環境指定情報が指定している環境となっている「通知条件指定情報」を特定する「特定手段」に相当する,ということができる。
刊行物1の発明の「通知処理部32」をみると,上記のように,通知商品がある場合には,商品価格の変更があるなどの商品の状況を電子メールなどを用いて顧客に通知するための処理を行っており,ここで通知している「顧客」とはいうまでもなく上記のピックアップ商品情報430に係る顧客IDの顧客であるから,この「通知処理部32」は,本願発明にいうところの「特定手段により特定された通知条件指定情報について,その通知条件指定情報に対応づけられて前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている前記ユーザ識別情報によって識別されるユーザに,その通知条件指定情報の商品指定情報で指定される商品の販売環境が当該ユーザが指定したものに変更されたことを通知するための通知処理を行う通知手段」に相当するものである。
そして,刊行物1の発明は「通信販売側装置」として捉えられるものであるところ,本願発明の「サーバ装置」も明らかに通信販売を行う側の装置と解されるから,刊行物1の発明の装置と本願発明の「サーバ装置」とは,「通信販売側」の装置として共通のものである,ということができる。

以上をまとめると,本願発明と刊行物1の発明とは,次の点で一致しているということができる。
(一致点)
共に,
「通信販売側の装置であって,
通信販売の対象とされている複数の商品のそれぞれについて,その商品の販売価格を示す販売価格情報が含まれる販売環境情報を記憶する販売環境情報記憶手段と,
ユーザ識別情報が割り当てられているユーザから,商品指定情報と,そのユーザが希望する販売環境を指定する販売環境指定情報とを,通信にて取得する指定情報取得手段と,
この指定情報取得手段によってユーザから取得された商品指定情報と販売環境指定情報とを,そのユーザに関する通知条件指定情報として,そのユーザのユーザ識別情報に対応づけて記憶するための通知条件指定情報記憶手段と,
前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている通知条件指定情報の中から,それに含まれる商品指定情報が示している商品に関する販売環境が,それに含まれる販売環境指定情報が指定している環境となっている通知条件指定情報を特定する特定手段と,
この特定手段により特定された通知条件指定情報について,その通知条件指定情報に対応づけられて前記通知条件指定情報記憶手段に記憶されている前記ユーザ識別情報によって識別されるユーザに,その通知条件指定情報の商品指定情報で指定される商品の販売環境が当該ユーザが指定したものに変更されたことを通知するための通知処理を行う通知手段と
を備えることを特徴とする装置」
である点。

そして,本願発明と刊行物1の発明とは,以下の各点において相違している。
(相違点1)
本願発明においては,「指定情報取得手段」は,ユーザから取得する「販売環境指定情報」として「その商品の販売価格である希望販売価格を示す希望販売価格指定情報が含まれる」情報を取得しており,したがって,「通知条件指定情報として」記憶するとはその「希望販売価格指定情報」をも含めたかたちで記憶するということであり,「特定手段」がある「通知条件指定情報」を特定するにあたっては,「それに含まれる」すなわち記憶している中に含まれている「希望販売価格指定情報」が示すところの「希望販売価格」からみて,「それに含まれる」すなわち同様に記憶している中に含まれている「販売環境情報記憶手段内の販売価格が」,「希望販売価格以下となっている」か否か,という観点から特定を行っているのに対して,刊行物1の発明においては,「指定情報取得手段」は,「販売環境指定情報」として価格の指定が含まれるような情報は取得しておらず,そのため,「通知条件指定情報として」記憶している中に「希望販売価格指定情報」は含まれておらず,「特定手段」はある「通知条件指定情報」を特定するにあたって「希望販売価格以下となっている」か否かの観点からは特定を行っていない,という点。

(相違点2)
本願発明においては,通信販売側の装置は「サーバ装置」であるのに対して,刊行物1の発明においては,通信販売側の装置がどのような装置であるかは明らかでない,という点。

6.判断
(6-1)相違点1について
値下がりの機会を逃すことなく購入したい,もし値下がりしていたら購入を検討したい,といった要望をもつ客のために,価格についての明示的な指定を受けた上でその客に代わって市場価格の変動を追跡し,指定された価格に到達するような値動きが判明したら速やかにその客にメッセージを通知するようにする,という技術思想は,例えば下記の各文献にもみられるように,本願の出願前にすでに広く着想され,サービスとしても実現されていたことであって,当業者にとっては周知の技術思想であったと認められる。
・長野弘子.『グループ購入サービスの「accompany」 共同購
入をネットで演出 希望者増えれば低価格に』.日経ネットビジネス,
第58号,2000年4月15日,190?194ページ.(※)
・特開平5-250388号公報.(※)
・松浦由希子.『在宅取引,手軽に安く Eトレード,無料情報を充実』.
日経産業新聞,1998年10月7日,2ページ.
・CDW Computer Centers.“Buyer’s
Alert”のヘルプページ[オンライン].(C)1998,1999
(Internet Archiveによる保存日:1999年2月
19日).Internet ArchiveのURL: .archive.org/web/19990219214327/http://www.cdw.com/buyersalert
/buyersalerthelp.asp>.
・[無記名]‘PriceGrabber Introduces
MyPriceGrabber; The“Personal
Shopper”for the Cybershopper’[オン
ライン].Business Wire,2000年5月4日.
(※を付した文献は,原査定に係る拒絶理由通知若しくは拒絶査定において参考として示されていたもの。)
そして,刊行物1の発明は,「特別価格商品となったときに連絡することができる通信販売方法を提供する」((4-3)段落0007)ことを目的としており,常識的にいって「特別価格商品となったとき」連絡するとは値下がりによる購入機会を捉えて通知するということであるから,どういう「とき」に連絡すべきかについてより具体的に正確に設定させ処理するための形態として上記の周知の技術思想を採り入れて発展させた形態を想起することは,当業者であれば容易にできたことといえる。すなわち,より具体的に正確に「特別価格商品となったとき」に連絡できるよう,正確な値による指定を受け付けることとし,指定された値に到達するかそれを超えるような値下がりが生じているか否かに基づいて通知を行うこととした形態,換言すると,「販売環境指定情報」として所望の「希望販売価格」を示す「希望販売価格指定情報」が含まれた情報を取得できるようにし,「通知条件指定情報として」その情報を記憶し,通知すべき「通知条件指定情報」を特定するにあたって「希望販売価格以下となっている」か否かの観点から特定を行うようにした形態は,当業者であれば容易に想起できた形態であるといえる。
したがって,刊行物1の発明において相違点1に係る構成について本願発明のとおりの構成をとるようにすることは,当業者にとって容易にできたことである。

(6-2)相違点2について
通信販売を始めとするオンライン電子商取引のための機器環境において,サーバソフトウェアやそれが稼働する「サーバ装置」はごく一般的に採用されているものであり,刊行物1の発明の通信販売側の装置が「サーバ装置」であるような形態を想起することは当業者であればごく容易にできたことといえる。
したがって,この相違点2の構成について本願発明のとおりの構成をとるようにすることも,当業者にとっては容易にできたことである。

7.むすび
相違点は上記の各点のみであり,いずれの点についても,刊行物1の発明において上記各相違点に係る構成を採用することは,当業者であれば上記の周知の技術思想に基づいて容易にできた程度のことである。
本願発明が奏する効果は,当業者であれば,刊行物1の発明において本願発明のとおりの構成を採用するに際して刊行物1の記載と上記の周知の技術思想とから予測することができた程度のものであるといえる。
したがって,本願発明は,刊行物1に記載された発明及び上記の周知の技術思想に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-09-08 
結審通知日 2006-09-12 
審決日 2006-09-25 
出願番号 特願2000-182447(P2000-182447)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (G06Q)
P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青柳 光代  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 佐藤 智康
阿波 進
発明の名称 サーバ装置、通信販売システム及び通信販売方法  
代理人 金井 英幸  

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